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石井 巧(22歳・NTT東日本)遊撃 179/79 右/右 (作新学院-中央大出身)





 「ようやく才能が開花してきた」





 作新学院時代に観た時に、早稲田から日ハム2位指名でされた兄・一成よりも、才能では上を行くのではないかと評価していた 石井 巧。その才能からすれば、中央大学時代には伸び悩んだ感すらあった。しかし、NTT東日本に進み、その才能がようやく花開いてきている。


(守備・走塁面)

 正直、走塁の印象はあまりありません。高校時代に計測した時は、右打席から4.6秒前後(左打者換算で4.35秒前後に相当)と、かなり遅いタイムでした。中央での4年間でも、通算で4盗塁。しかし、社会人の公式戦13試合では3盗塁(失1)を記録するなど、走塁への意欲も変わってきているかもしれません。

 高校時代から、最初の一歩目の判断力・反応が良く、
軽快かつ堅実なプレーをする選手という印象がありました。今観ていると、非常に冷静で落ち着いたショートだなという感じがします。肩も水準以上ですし、派手さはないのですが、地に足の着いたプレーができる選手だと感じ、安心して観ていられます。

 走力は多くは望めないかもしれませんが、足を引っ張ることはなさそう。守備に関しては、プロレベルでも二遊間で勝負していける選手だと思います。想像以上に、遊撃の守備は上手いのではないかとみています。






(打撃内容)

 秋の日本選手権では、7打数3安打と活躍。
外野に飛ぶ飛球が多いのも、特徴の一つとなっている。高校時代から、意外に大きなスイングをする選手だと驚いたことがありました。

<構え>
☆☆☆ 3.0

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えて少し捕手側に引き気味です。腰の据わり・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては並ぐらいでしょうか。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下がりきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、ボールをギリギリまで見定めてから動き出す、生粋のスラッガーや二番打者に多く見られる始動のタイミングです。彼の場合、二番タイプなのかなと思いきや、その後の動作を見ると、むしろ長距離タイプのように感じてきました。

<足の運び>
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて回し込み、少しアウトステップ気味にベースから離れて踏み出してきます。始動~着地までの「間」は短めで、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められそうです。アウトステップを採用するように、内角への意識が強いタイプかもしれません。

 踏み込んだ間の足も、インパクトの際にブレません。そのため、アウトステップでも、甘めの外角球や低めの球でも対応できると考えられます。

<リストワーク>
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力まずにボールを呼び込めています。スイングは、意外に上から振り下ろしてくる
インサイドアウトのスイング軌道です。それでも、ボールの下にバットを潜り込んでインパクトすることが多く、打球に角度を付けるのが上手いです。さらに、大きなスイングの弧とフォロースルーを使って、ボールを遠くに運ぶ後押しができています。それほど確実性の高いスイングではないように思いますが、ボールを高い確率で上げられるという意味では興味深い選手です。

<軸>
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが静かなので、目線の動きは小さいです。身体の開きも我慢できていますが、少し
軸足が前に傾きがち。それだけに、身体が突っ込まないように注意したいところです。それでも、軸足の内モモの筋肉も発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 高校時代は、バットが少し遠回りに出てくる感じでした。しかし、今は上から振り下ろすことで、そういった部分も解消されています。スイングのメカニズム的には、それほど確実性の高そうなスイングではないです。むしろ、長打・破壊力を重視したスタイルのように思えます。それでも、結果が残せるようになってきているので、かなり
長打力を含めて興味深い打者になりつつあります。


(最後に)

 ショートがしっかり守れる上に、打撃も長打力を秘めていて興味深い打者になってきました。今年の候補の中では、右打ちショートの筆頭に位置づけられる選手ではないでしょうか。今年度も存在感をアピールできれば、大卒社会人でも3位前後の指名があっても不思議ではありません。今年は、モノの違いを魅せてくれることを期待しています。


(2024年 日本選手権)


 








石井 巧 (作新学院3年)遊撃 178/74 右/右 
 




 「意外に強打者」





 兄・一成は、早稲田から日ハムにドラフト2位で入団した 石井 巧 。兄よりも身体能力や派手さはないが、実に堅実で玄人好みするタイプに見える。しかしその打撃フォームを分析してみると、かなりの強打者タイプなのがわかってきた。


走塁面:☆☆ 2.0

 一塁までの塁間は、右打席から4.6秒ぐらい。これを左打者に換算しても、4.35秒ぐらいとかなり遅い。たまたま計測した時がそうだったのかはわからないが、夏の栃木大会では5試合で2盗塁だった。甲子園では3試合で0盗塁だったが、もう少し速く駆け抜けることはできるかもしれない。しかし足で、ガンガンアピールするようなプレースタイルではなさそうだ。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 最初の一歩目の判断・反応が良く、軽快かつ堅実なプレーをします。目の前でバウンドが変わっても、とっさに反応できる反射の良さに、この選手の可能性を感じます。物凄く守備範囲が広いとか凄い強肩だとは思わないのですが、送球が安定していてさばける範囲のボールは高い確率でアウトにしてくれるのではないのでしょうか。

 高校からプロの匂いがして来ないのは、肩や足という身体能力に特別ものを感じられないから。実戦で良さが発揮されるセンス型で、こういった選手は大学などで経験と実績を重ねてからという判断になるのは致し方ないところでしょう。


(打撃内容)

 素直に来た球をはじき返す順応型かと思ったのですが、内角の球を全く開かずにレフトポール際に飛ばしたり、外角の球を大きな弧を描くするスイングでライトまで飛ばすなどを見ていると、想像以上に強打者タイプの打者なのがわかります。ひょっとすると、将来は、二岡 智宏(近大-巨人-日ハム)のような大型内野手に育つかもしれません。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは低めに添えていて脱力している。腰の据わりは深く、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスは平凡。少々構え全体が窮屈に感じられ、余裕がないのが気になるところか。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈み込んだ時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足をほとんど引き上げず、地面をなぞるように回し込み、真っ直ぐ踏み出して来る。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できる。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも幅広く対応したいという意志が感じられる。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にしっかり止まっている。したがって外に逃げてゆく球や低めの球にも、食らいついて対応することができる。打球自体も、右方向にもキッチリはじき返していた。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れないようにできている。バットの振り出しは、若干遠回り出てくる感じだが、インパクトの際にはヘッドは下がっておらず、大きなロスは感じられない。そのぶん大きな弧を描いてしっかり振れれるので、右方向にも大きな打球をキッチリ飛ばすことができている。

 また内角の球に対しては、肘をうまく畳んで全く開かずとも打球をポール際まで飛ばせる技術を持っている。若干懐が窮屈そうな構えなのだが、むしろ内角をさばくのは上手い部類とみて良さそうだ。あとは、ここにくれば逃さないという、自分のツボみたいなところが出てくると良いのだが。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げがないので、目線の上下動はせずに安定している。身体の開きも我慢できいるし、軸足の内モモの筋肉も発達していて強い打球を生み出すことができている。しいて言えば、少し軸足が前に傾いているので、身体がツッコマないように注意したい。

(打撃のまとめ)

 プレースタイル的に派手さはないように見えるが、実はスイングの弧は大きく、軸足の内モモの筋肉は発達しているなど、強打者的な色彩が強いことに驚かされた。筋力などがついてきたら、もっと長打でも存在感を示せるのではないのだろうか。

 技術的にもしっかりしたものを持っており、レベルの高い野球を経験してゆけば高いレベルにも到達してゆきそう。守備だけでなく、打撃でも今後の可能性が感じられたのは、今回詳しく調べてみて大いなる発見だった。


(最後に)

 兄同様に、六大学など有力な大学で野球を続けるのだろう。その中でも存在感を示せるだけの技量や素材だけに、最終学年ぐらいにはどのぐらいの選手に育っているのだろうというワクワク感はある。現在のイメージは、大引啓次(オリックス-日ハム-ヤクルト)内野手的な攻守に堅実なプレーヤーという感じがする。しかし打撃分析をすると、二岡智宏 的なより長打力も含む打者になっているかもしれない。そういった期待も込めて、今後も注視して見守ってゆきたい。


(2019年夏 甲子園)