19ky-3





山瀬 慎之介(巨人)捕手のルーキー回顧へ







山瀬 慎之助(星稜3年)捕手 177/82 右/右 





「とにかく粘っこい」 





 山瀬 慎之輔 のことを語られる時は、高校球界屈指のスローイングが話題になることが多い。しかしむしろ私の目をひいたのは、打席での粘っこさである。できるだけ投手に球数を投げさせようと粘ったり、けしてボール球に手を出さなかったり、体勢を崩してでもヒットにしてしまう粘っこさがある。打撃は確かにプロに入る選手としては非力なのだが、そのぶん打てなければ打てないなりに爪痕を残せる選手なのだ。


(ディフェンス面)

 奥川 恭伸 とは、小学生時代からバッテリーを組みお互い以心伝心できる間柄。ミットこそしっかり奥川に示し的をつけやすくするし、ズバッとコースに決まったボールがストライクコールされやすいようにミットがブレないで捕球できる。しかし細かいところまで意識が行く洞察力だとか、投手の気持ちを汲み取るとかいう部分ではそれほど特別なものを感じられない。またそれでいてガンガン投手を引っ張って行くような、そういったタイプでもない。まさに表には出さないが、陰ながら投手をバックアップするという、黒子に徹したプレーヤーなのだ。

 それでも奥川の尋常じゃなく変化球に鍛えられ、ワンバウンド処理などの悪球にも素早く対応できる。一個一個の動作にそれほど丁寧さは感じられないが、しっかりやるべきことをやれる選手。そのへんは普段は座ったまま返球しリズムを重視するが、ランナーがいればしっかり立って投手に返球するなど手抜き感は感じられない。

 奥川の多彩な球種を活かすために、いろいろ程度考えてリードもできている。また捕ってから投げるまでの流れやボールの握り変えが素早く、しっかり型を作れないまま投げてもボールをコントロールできるだけの地型の強さと技術を持っている。昨年までは、腕が横から出たり動作は素早くても、送球の精度の部分で不安があった。しかしこの一年間で、そういった部分も大きく改善されてきた。捕手の人材が揃った19年度のドラフト戦線においても、地肩の強さは全体でも一番ではないかという高い評価がされるようになった。いずれにしてもディフェンスに関しては、高校からプロに入るべきレベルに達している。


(打撃内容)

 上記でも述べたが、キッチリ打ち返してヒットを打つというタイプではない。バランスを崩してでも外野の前に落としたりとか、難しい球に食らいつきゴロで抜けて行くとかそういった形にこだわらない打撃を持ち味としている。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 軽くクローズスタンス気味に構え、グリップの高さは平均的な高さに添えます。腰の据わりは悪くないのですが、全体のバランスや両眼で前を見据える姿勢には癖があります。昨年から変わったのは、いくぶん腰が据わるようになって、構えに安定感は出てきたように思えます。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきった底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を、バランスよく兼ね備えます。この仕掛けは、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。始動のタイミングは、昨年と同じでした。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて回し込み、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強い打ち方です。

 踏み込んだ足元は、インパクトの際にはブレません。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。今回見ていて驚いたのは、カーブを投げられた時に早く足を降ろしてしまいました。しかしまだボールが到達しておらず、つま先だけを地面に着きながらも変化に応じてカカトを降ろしてタイミングを合わせていた点です。そういったことが瞬時に行い対応できていたことは、非凡だと感じました。

<リストワーク> 
☆☆★ 2.5

 打撃の準備である「トップ」の形は、早めに作れていました。そういった意味では、速い球に立ち遅れる心配は無さそう。振り出しも腰が早く逃げて、スイングも身体から離れて遠回りに出てくるので強くボールを叩けません。それでもバットの先端であるヘッドは下がらず、広い面でボールに当てられます。そのため、打球はフェアゾーンの中に飛びやすいのでしょう。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは小さい割に、結構目線は動いてしまいがち。自分から、ボールに向かって身体を当てに行ってしまうからだろうと考えられます。それでも身体の開きはある程度のところで抑えられており、軸足にも粘りがあることでスイングが成り立っているのがわかります。

(打撃のまとめ)

 しっかりしたスイングで強く振り抜くということができない選手で、なんとかバットに当てて前に飛ばすといったタイプ。ただしボールに当てる技術には優れているので、ある程度ヒットにもなっていたのでしょう。問題は、プロレベルの球を木製バットで振った場合に、同様のパフォーマンスができるのか?といった部分には疑問を持たざるえません。打撃に関しては、ドラフト指名レベルにあるのかと言われると疑問が残ります。


(最後に)

 今年のルーキーの中でも、送球に関しては1,2を争うレベルにあります。またディフェンス全般に関しては、充分指名レベルにあったと評価できます。一方で打撃に関しては、正直プロレベルではありません。それでも当てるのが上手いので粘って球数を投げさせたり、体勢を崩してもヒットにできたり、四球を選んで出塁するだけの眼の良さも持っています。そういっ打率よりも出塁を重視して考えるならば、この打力でもありなのではないかと思える部分はあります。このしぶとさで長くプロの世界の中で生き残って行けるのか、どんな未来が待っているのか、今は見届けてみたい気がします。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年夏 甲子園)


 








山瀬 慎之助(星稜2年)捕手 177/82 右/右 




 「肩はいい」





 ドラフト1位候補の 奥川 恭伸 と、小学生時代からバッテリーを組む 山瀬 慎之助 。中学では軟式で日本一になり、秋の神宮大会では準優勝に輝いた。そんな経験豊富なキャッチャーについて、今回は考えてみたい。


(ディフェンス面)

 ディフェンス重視の捕手です。重心を低くし、低めに球が集まりやすいように構えます。これは、投手への目付けという意味だけでなく、審判からもできるだけ死角を作り難くする働きがあるのでしょう。そういった、気配り・配力ができる選手です。

 ミットを投手に示してから、グラブを地面に下げるようなことはありません。ミットも捕球時にブレませんし、低めの球にも素早く反応できています。奥川の球筋を、知り尽くした捕手といった気がします。

 捕ってから投げるまでの流れがよく、腕は多少横から出たり、しっかり型を作って投げるというタイプではありません。そのため、コントロールが安定しているかは微妙といった気はします。それでも地肩も強いですし、二塁までの到達タイムは 1.85秒前後とプロでも強肩の部類。リードセンスも悪く無さそうですし、ことディフェンスだけで見ればドラフト級だと評価できます。





(打撃内容)

 その一方で、打撃に関しては物足りません。打順もチームで8,9番などを打つことが多く、実際打撃への欲は感じません。ある程度カットして投手に球数を投げさせようとか、進塁打を打つために徹底的に右方向への打撃を目指します。そのため、自分で決めてやろうという欲が全く感じられないのです。

<構え> 
☆☆ 2.0

 両足は揃えて構えているのですが、センターカメラからみても背番号が読み取れるようにクロス気味に立っています。グリップの高さは平均的で腰の据わりも浅く、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしてもイマイチです。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が、沈みきったあたりで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られます。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足をほとんど引き上げずに、ベース側にインステップして踏み込んでくる。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。インステップするように、外角を強く意識していた。

 踏み込んだ前の足はブレずに止まっているので、逃げてゆく球や低めの球に対し食らいつくことができる。また追い込まれると、ノーステップに切り替えて対応しようとする。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力むことなくボールを呼び込めている。バットが内から出てこないので、内角の捌きは窮屈そう。外角の球に対しても、少し遠回りに出てくるのだが、ある程度意識してポイントを後ろにしている感じはする。それでもバットの先端であるヘッドは下がらないので、ドアスイングというほどはひどくはない。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動も大きくはない。体の「開き」も我慢でき、軸足も安定している。気になるのはステップが狭く見えて、しっかり前に体重移動できているのか?という部分。何かその場で、上げ下ろしている感じがして、これでは木製バットでは打球は飛んでゆかない。

(打撃のまとめ)

 基本的に見ていると、右方向に打って進塁打を打つか、球数を投げさせて粘ってやろうということしか普段考えていなそうに見えるのだ。まぁそれが自分の役割だと割り切ってやれているのはある意味凄いのだが、もう少し欲がないとプロを目指すのは厳しいだろう。実際打力に関しては、ドラフト候補云々のレベルではないように見える。


(最後に)

 さすがにディフェンスは、捕手らしい捕手でもあり好捕手との印象があります。肩もいいですし、キャッチングなどにも大きな欠点は見当たりません。そうった意味では、守りだけで言えばプ有力大学でも充分やって行けるのでは。

 しかし打撃に関しては、全く自分で走者を返そうとかそういった意欲は感じません。逆に選抜では、そういった場面でどういった打撃を魅せてくれるのか注目したいところです。現状は、ドラフト候補としては見られない気がします。一冬越えて、そのへんがどう変わっているのか注目してみたいです。


(2018年 神宮大会)