19ky-29





木下 元秀(広島)外野手のルーキー回顧へ







木下 元秀(敦賀気比3年)左翼 182/86 左/左 
 




「ちょっと緩いなぁ」 





 高校通算30本塁打を記録し、プロ志望届を提出している 木下 元秀 。今年では数少ない強打者の一人ではあるが、そのプレーをみていると動作が緩い印象を受けてしまう。果たして今回のドラフトで、指名されるか否か検証してみた。


走塁面:
☆☆★ 2.5

 一塁までの塁間は、左打席から 4.25~4.35秒前後。これはドラフト指名される左打者としては 中の下 レベルであり、プロで足を売りにすることは無さそうだ。この夏の福井大会・甲子園含めての7試合で、盗塁は1個。元々足で、ガンガン揺さぶって来るタイプではない。

守備面:
☆☆ 2.0

 左翼の守備を見ている限り、少々動きは緩慢に見える。特に昨年までは大型左腕として130キロ台中盤のボールは投げており、地肩は弱くないはず。それでも右翼でなく左翼であることを考えると、守備力はけして高くはないのだろう。球際でのキャッチングはともかく、守備範囲が広く見えないのだ。これだとプロでも、左翼か一塁ぐらいといった感じで守備位置が限定されてしまう。





(打撃内容)

 夏の甲子園では 3試合で.583厘と打ちまくったが、福井大会では.235厘と対応力はあまり高いようには見えない。高校通算30本塁打の数字を示す通り、甘く入ればスタンドインできる長打力はある。しかしオーバー・フェンスを連発するような、天性の長距離砲かと言われるとそういった感じではない。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。背筋を伸ばしつつ、全体のバランス・両眼で前を見据える姿勢は並ぐらい。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。本質的には、野手の間や外野の頭を越えるような二塁打などが多いタイプの中距離打者なのではないかと感じます。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」はそここで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込むように、外角を強く意識したスタイルです。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にしっかり止まっています。そのため外角に逃げゆく球や低めの球には、食らいつくことができます。特に試合を見ていると、低めの球をうまく拾うのが上手いこと。踏み込みが強いことが、彼の良いところではないのでしょうか。


<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めています。バットの振り出しも、インサイドアウトのスイング軌道で、インパクトまで最短距離で捉えられています。縦振りのスイング軌道なので、低めの球を拾うのが上手い反面。サイドの変化には、弱いのかもしれません。ボールを捉えてからは、バットの先端をうまく残しながら、しっかり振り切れています。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動も大きくはない。身体の開きをしっかり我慢しつつ、軸足の内モモにも強さが感じられ、強烈な打球を生み出しているし、低めの球にも粘って流すことができている。

(打撃のまとめ)

 打てる球が限られていて、脆い印象を受ける。しかし技術的には、結構高いものがあり驚いている。低めの球を拾うのは上手いので、それ以外のゾーンの球も逃さず叩ける技術を磨いて欲しい。


(最後に)

 天性の長距離砲といったほどの強打者ではないので、守備・走塁が基準以下であるのは気になる材料。それでいて、対応力が極めて高いわけでもない。こうなると、高校からの指名は正直厳しいのではないかとみている。もし指名漏れした場合は、アマでしっかり実績を残し、プロ入りを目指して頂きたい。フォーム分析をしてみて、想像以上に面白い技術の持ち主であり、それをうまく活かせる日が来ることを今は待ちたい。


(2019年夏 甲子園)