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森 敬斗(DeNA)内野手のルーキー回顧へ







森 敬斗(桐蔭学園3年)遊撃 175/68 右/左 





 「ポンテシャルは高い」





 けして身体こそ大きくはないが、プロでも上位クラスの脚力・肩があり、打力も高校球界でトップクラスの技量の持ち主。U18のワールドカップではチームの核弾頭として8試合に出場し、打率.320厘と改めてその能力の高さを示してくれた。


走塁面:
☆☆☆☆ 4.0

 一塁までの塁間は、左打席から3.9秒台をコンスタントに記録するなど、プロに混ざっても上位クラス。トップスピードまでの速さ、ベースランニングでの加速などをみても、野球選手に適した脚力がある。盗塁の技術という意味ではまだ発展途上といった感じはするが、さわやかなルックスとは裏腹にかなり野性味のある積極性が感じられる。こういった選手は、プロでもガンガン走れるようになっても不思議ではない。

守備面:
☆☆☆ 3.0

 夏の神奈川大会などを見ていても、遊撃手としての安定感はイマイチ。プロで鍛えても、ショートは厳しいのではないかと見ている。攻撃的なプレースタイルの選手だが、こと守備に関しては後ろで下がって処理しようとしたり、一歩目の反応が鈍かったりと自信がないのか消極的に見える。後手後手に回るので慌てて処理して、送球を乱すことも少なくない。しかし深いところでも刺せる肩は一級品であり、サードやセンターあたりではその強肩を活かせるのではないのだろうか。U18ではセンターから素晴らしい返球を魅せていたが、できればセカンドあたりが担えるようだと付加価値という意味では大きいのだが。ただし肩が強すぎる選手は距離が近すぎると制御が難しいことが多く、返ってイップスに陥ったりしがちなのでどう出るかはやらせてみないとわからない。いずれにしても将来のコンバートを前提に獲得するのであれば、この選手は評価できるのではないのだろうか。


(打撃内容)

 森のこれまでのイメージは、打つときは打つが打たないときは全然というムラがあるタイプという感じでした。昨秋の関東大会のように3本塁打放つなど、その爆発力を感じていました。しかしこのU18では、安定して一番打者としての役割を果たしていたように思います。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップを高めに添えます。腰を深く沈め下半身に安定感があり、両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスも程よい構えだと言えます。それでいて、特に力みや固さみたいなものは感じられませんでした。選抜で見たときは柔軟性が感じられなかったですが、そのへんはだいぶ改善されてきたように思います。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えており、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。選抜のときは「早めの仕掛け」のタイミングだったので、若干その時よりも始動を遅くして引きつけて叩くスタイルに変わってきました。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を上げて、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できています。アウトステップを採用するように、内角を強く意識したスタイル。∪18のアメリカ戦でも、アメリカ投手の強いインハイのストレートに力負けすることなくライト線を破り、スリーベースを放っていました。

 また踏み込んだ足元も無理なく止まるようになり、アウトステップでも真ん中~高めのゾーンの球ならば充分に対応できるようになっています。同じアメリカ戦では、外角の難しいチェンジアップに対しても、身体を残してうまくレフト前にはじき返していました。引っ張っても流しても良し という打撃を実践しています。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、特に速い球に立ち遅れるという心配はありません。外の球でもロスなく振ることができ、それでいて大きな弧を描いてしっかり最後まで振り切れます。ボールの呼び込み~スイング軌道~フィニッシュまで大きな欠点がなく、それを可能にするだけの確かなヘッドスピードと打球の速さが木製バットでも実現していました。

<軸> 
☆☆☆☆★ 4.5

 素晴らしいのは、足の上げ下げのあいだ頭の位置がほとんど変わらないのこと。身体の「開き」も我慢しつつ、軸足にも粘りと内モモの筋肉の強さも感じられる素材だということ。安定した下半身により、上半身がブレないようになっている。この点は、本当に素晴らしいです。

(打撃のまとめ)

 春までは思いっきりひっぱたく思いっきりの良さは感じられたものの、柔軟性や幅の広さみたいなものはあまり感じられませんでした。しかしこの夏は、技術的にも欠点が大いに改善され、打撃の幅が広がったのではないかと考えられる。神奈川大会があまり良くなかっただけに、∪18での内容には目を見張るものがあったち言えます。いまならば将来・2割8分・15本・30盗塁級 ぐらいの未来像は描けるのではないのでしょうか。


(最後に)

 正直∪18を見るまでは、春からここまで成長しているとは思いませんでした。この選手さわやかな顔立ちなのですが、それとは裏腹に野性味だとか好い意味での図太さがあり、そういったマインドもプロ向きかと感じます。野球エリートで涼しくプレーするような選手ではなく、後先考えずで突っ込んで来るような熱すぎる闘争心の持ち主。こういった選手は、アマでは持て余して空回りしそうで逆に怖いです。時々大きなチョンボもしそうですが、それを上回る積極性を尊重してくれそうなプロの世界の方が才能が爆発しそうな気はします。

 よりレベルの高い世界に入ることで、秘めたる能力をどんどん引き出されそう。大学で学ぶことは少なく、私は断然高校からプロに入るべき選手だと思います。ドラフトでも3位以内には、まず指名されるのではないかとみています。将来のショートが欲しいとかいう球団にはオススメしませんが、彼の高い能力が何かしらチームに活かせるのではないかと考える球団にぜひ指名して頂きたいと考えます。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 U-18ワールドカップ)


 








森 敬斗(桐蔭学園3年)遊撃 173/70 右/左 
 




 「選抜で最も評価を高めた内野手」





 さき選抜大会で、野手の中で最も評価を高めたのが、この 森 敬斗 ではないのだろうか。秋の関東大会では3本塁打を放って注目されていたものの、神宮大会では攻守に精彩を欠いた。リベンジとなった選抜の舞台では、緒戦で破れたものの3安打を放ち存在感を示すことができた。

走塁面:
☆☆☆☆ 4.0

 秋の神宮大会や選抜では緒戦で破れてしまったため、盗塁を試みる機会はなかった。しかしショート内野安打で出塁するなど、走力の片鱗は垣間魅せた。普段の試合では、隙きがあれば積極的に盗塁を仕掛けて来る。昨秋計測した時には、一塁までの塁間を3.9秒台で走り抜けるなどプロでも上位の走力の持ち主。もっと走塁に意識を傾ければ、プロでも足を売りにして行けるポテンシャルは秘めていそうだ。

守備面:
☆☆☆ 3.0

 守備に関しては、可も不可もなしといった感じ。しかし神宮大会では、ミス連発で精細を欠いた。将来的にプロのショートを任せられるほどかと言われると、その点では正直不安。ただし地肩の強さは一級品で、走力・地肩のポテンシャルはプロでも充分に売りにして行ける。将来的には、セカンド・サード・外野あたりならば期待できるのではないのだろうか。


(打撃内容)

 体はけして大きくはないのだが、大きな弧を描いたスイングで長打が多いのが特徴。むしろ対応力や当て勘の方が、どうなのか?といった疑問は残る。それでも甘い球は、迷いなく振り抜いてくる。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスとしてはそれなりで、両眼で前を見据える姿勢は悪くない。ただしあまり体を揺らいで構える選手ではないので、柔軟性は感じられない。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始めるときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて、真っ直ぐ踏み出してくる。始動~着地までの「間」には余裕があり、速球でも変化球でもスピードの変化にも対応しやすい。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ前の足がブレそうなところを、なんとかカカトを地面に押し付けて、「開き」を最小限に留めている。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を早めに作り、速い球には立ち遅れない。バットの振り出しは、少しバットを寝かせて振り出して来る。けしてインサイドアウトにバットが出てくるタイプではないのだが、バットのしなりを活かしつつも遠回りになっていない。バットの先端であるヘッドも下がってもらず、広い面でボールを射抜いて来る。

 スイングの弧は大きく反発力が大きなスイングではあるが、けしてフォロースルーを生かしてボールを遠く運ぶというスイングではない。甘い球を強烈なしなりとヘッドスピードで、思いっきり引っ叩く感じのスイングだ。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあるが、目線の上下動は激しくはない。体の「開き」もなんとか我慢できており、軸足の内モモにも強さが感じられる。したがって、強烈な打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 柔軟性に飛んだミート力に優れた打者と言うよりも、バットのしなりを活かせる木製向きのスイングに加え、強烈なヘッドスピードで甘い球を逃さないタイプの強打者だろう。体は小さいが、けして打撃が小さくないところは魅力。桐蔭の先輩である 茂木栄五郎(楽天)にもヒケを取らない打撃のポテンシャルを秘めていそうだ。


(最後に)

 体格は大きくはないが、走力・地肩・破壊力に飛んだ打撃には、高い潜在能力が秘められている。そういった部分でも、桐蔭時代の茂木を彷彿させるものがある。むしろ地肩などは、茂木にはなかった武器も持っている。なかなか同校から直にプロ入りする選手はいないのだが、志望届けを提出したら3位以内での指名は期待できるのではないのだろうか。非常に、将来楽しみな選手だと評価したい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 選抜)