19ky-12





武岡 龍世(ヤクルト)内野手のルーキー回顧へ







武岡 龍世(八戸学院光星3年)遊撃 180/80 右/左 
 




 「バランスがとれている」





 今年のドラフト戦線におけるショートは、打てるけれど守れない、守れるけれど打撃が心もとない という、両極端の選手が多く、攻守で基準を満たしている選手が極めて少ない特徴がある。そんななか、この 武岡 龍世 は、攻守にバランスの取れた選手だと評価できるのではないのだろうか。


走塁面:
☆☆☆ 3.0

 一塁までの到達タイムは、4.1~4.3秒ぐらいと平凡で、けして足の速い選手ではない。プロに指名される選手の左打者のタイムは、4.1秒前後。そう考えると、ドラフト候補としては 中~中の下 ぐらいとみて良いだろう。ただし夏の甲子園では4試合で2盗塁と、全く走塁への意欲が低いわけではない。トータルで考えると、平均的と考えて良さそうだ。ただしプロの世界において、足でガンガンアピールするということはないのではないのだろうか。

守備面:
☆☆☆★ 3.5

 打球への一歩目の反応も良いし、フットワークも軽快かつダイナミックなプレーをします。さすが名門で、鍛え上げられてきた選手といった気はします。また地肩も、まずまず強いと言えます。時々バウンド対して慎重になったり送球が乱れこともあり、守備の天才というよりも鍛えあげられてここまできたといった感じでしょうか。プロのショートを1シーズン任せられるような選手になれるのかは微妙なのですが、上のレベルでもニ遊間で勝負して行ける選手だとは思います。ドラフト候補としては、中の上 ぐらい。これからプロで、さらに上の領域に到達できるのかは意見が分かれるところだと思います。


(打撃内容)

 選抜では厳しい内角攻めに苦しめられ打てる球は限られている印象でしたが、真ん中~低めのゾーンの打球は良く飛びます。甘く入れば、スタンドインするだけのパンチ力を秘めています。現状は、確実性はそれほどではないものの、時々目の醒めるような当りを放ってくれます。夏の甲子園では4試合で.286厘、∪18ワールドカップでは.125厘という内容が、その辺をよく物語っている数字ではないかと。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を大きく引いて、グリップを高めに添えバットを前に倒して構えます。腰の据わりや全体のバランスあまり良くないのですが、両目でしっかり前を見据えられているところは良いところ。かなり癖のある構えなので、高い評価はできません。ただし構えに関しては、本人がしっくりする形で良いのではないかと考えます。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。また追い込まれるとノーステップ打法に変わり、「遅すぎる仕掛け」に切り替えます。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を上げて、真っ直ぐから幾分インステップ気味に踏み込んで来ることもあります。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できます。ストレートをきっちり叩くだけでなく、シンカー気味の球でもうまく拾うことができていました。真っ直ぐ~インステップですから、真ん中~外角寄りへの意識が若干強い感じはします。

 踏み込む足が、しっかりインパクトの際には止まっています。したがって逃げてゆく球や低めの球には食らいつくことができます。その一方で、内角の球でも前の足がしっかり止まってしまっています。幾分ベース側に踏み込む傾向もあるので、ただでさえ懐が窮屈になりがちなのに、足元が固定されてうまくバットが抜け難いのです。だから内角の厳しい球に対しては、苦手なのだと思います。内角の球は、アウトステップしてスペースを空けるなどしない打者の場合、踏み込んだ足を早く地面から離して開放してあげた方が、キレイに身体が抜けます。特に前さばきの選手は前の足が止まっていても良いのですが、引きつけて叩くタイプの選手は踏み込んだ足元を開放させた方が良いと私は考えています。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。バットの振り出しは、インサイドアウトの軌道をたどるスイングです。したがって始動~インパクトまでのボールを捉えるまでには、大きなロス感じられません。それならばもう少し確実性があってもと思うのですが、この選手構えた時にはバットを前に投げ出し、ボールを呼び込む時にバットの先端であるヘッドが投手側にかなり倒れています。このヘッドの部分だけを追って見ていただけると気がつくと思うのですが、意外にロスの大きな動きをしているのです。このへんはせっかくインサイドアウトで無駄のない振り出しをしているのに、ボールを呼び込むまでにロスの大きな動きが見られるのはもったいない気がします。

 また外の球をしぶとく拾う食らいつく打撃は得意なのですが、インサイドアウトのスイング軌道のためにあまりバットのしなりを生かした大きなスイングができません。そのため木製バットで外に強い球を投げられたら、まだ打球が飛ばないのではないかと考えられます。そうすると現状きっちり叩けるのは、内角も窮屈外角も強く叩けないとなり、打てる球が真ん中近辺と狭いことがわかります。これが、この選手の幅の狭い打撃になっている原因ではないかと。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 頭の動きは静かなので、目線の上下動が少ないこと。身体の「開き」が抑えられていること。軸足の形は結構崩れるので安定感という意味では疑問なのですが、外角の難しい球でも軸足で良く粘って対応できている点は非凡です。

(打撃のまとめ)

 内角のさばきの窮屈さ、外角を強く叩け無いスイングなど、打てるコースが真ん中低め近辺に集中し対応力が高くないのが課題です。今後いかに、この幅を広げて行けるかが課題でしょうか。しかしけしてひ弱な選手ではないので、しっかりした技術を身につければ、打つ方でも存在感を魅せてくれそうな選手です。そして何より、ボールに食らいついて姿勢には好感が持てます。


(最後に)

 野球強豪校で多くのプロを輩出している 八戸学院光星。そこで鍛え上げられてきた選手だけに、ある程度安心してプロでも伸びていってくれるのではないかという期待は抱きたくはなる。確かに爆発力がある一方で、安定感も兼ね備えた良い選手。しかし一つ間違えると、思ったほど率が上がってこない、守備や走力に絶対的なものはないという中途半端に陥る危険性もあるのではないかと思えてきた。そういった意味では高校生レベルで攻守にバランスが取れた選手ではあるが、あまり高い評価をするのは怖いのではないかと思う。ドラフトでは3,4位ぐらいには指名されそうだが、それ以上の順位で入れ込んで指名する場合には不安が残る。それでも悪くても、一軍半・控えレベルぐらいには最低でも育つのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 ∪18ワールドカップ)








武岡 龍世(八戸学院光星3年)遊撃 180/75 右/左 
 




 「指名は濃厚」 





 下級生のときから全国大会を経験してきた洗練されたプレーは、高校球界でもトップクラスの遊撃手。個人的にはあまりピンと来たことがない選手ではあるが、秋のドラフト会議においては指名が濃厚な選手の一人だと言えよう。改めて、この 武岡 龍世 という選手について向き合ってみた。


守備面:
☆☆☆★ 3.5

 プロを想定した時に、この選手の最大の良さは守備にあるのではないのだろうか。動きも軽快で判断力も良いし、地肩もまずまず強い。球際でのグラブ捌きも柔らかいし、将来上手いショートになれる片鱗も感じさせる。ものすごくスケールを感じさせる守備ではないが、プレーが洗練されているというか高校生としてはレベルが高い。すんなり上のレベルの野球にも、混ざって行ける段階ににはあるのだろう。しかし時々送球が乱れたりすることもあるので、もうワンランク上の精度を追求して欲しい。

走塁面:
☆☆☆ 3.0

 甲子園など全国大会では盗塁を仕掛けすることが少ないのだが、秋の成績は22試合で13盗塁と積極的に走ってきている。しかしインステップしてベース側踏み込んでから走るので、一塁到達タイムは4.25秒前後と平凡なタイム。高校からプロに入るような左打者ならば、4.1秒前後で走り抜けるぐらいの走力は欲しい。そう考えるとプロレベルで走塁で存在感を示せるのかには、懐疑的な見方をせざるえない。

(打撃内容)

 上手く捉えられたときは、スタンドインさせるパンチ力を秘めている。しかしむしろこの選手の打撃で買いたいのは、ボールに食らいついて行く姿勢ではないのだろうか?

<構え> 
☆☆☆ 3.0 

 前の足を引いて、グリップの高さは平均的。バットをグッと前に伸ばして構え、腰を深く沈めている。両眼で前を見据える姿勢は良いが、全体のバランスは癖がある構えだと言えよう。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始める時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、アベレージヒッターに多く見られる始動となる。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を軽く上げて、ベース側に踏み出すインステップを採用。始動から着地までの時間があるので、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすい。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いスイング。そのため内角への球には、窮屈になり苦しいところも。

 足を早めに引き上げ、引き上げた足を使ってタイミングを図ってくる。踏み出した前の足は、インパクトの際にもブレずに留まっている。したがって外へ逃げて行く球や、低めの球には食らいつくことができていた。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 早めにバットを引いて、打撃の準備である「トップ」の形は作れている。したがって、速い球に立ち遅れる心配はない。バットの振り出しは、インサイドアウトでも遠回りに出てくることもなく、オーソドックスなスイング軌道。インパクトの際にも上手くヘッドを残しており、ボールをフェアゾーンに落としやすい。

 スイングの弧の大きさやフォロースルーなどは平凡であり、ボールを遠くに飛ばすというよりも野手の間を抜けて行くタイプなのだろう。気になったのは、河野圭(広陵)級の内角への速球には詰まらされ、外角の強い球に対しても右投げ左打ちの作られた打者の弱さをまだ感じさせるひ弱さがあるということ。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げはあるものの、静かなので目線の上下動は小さい。身体の開きは我慢できており、力を内に貯め込むことはできている。軸足にも粘りが感じられ、低めや逃げて行く球にも食らいついて粘れる良さがある。

(打撃のまとめ)

 スタンドインできるパンチ力はあるものの、まだまだ内角や外角のコースに強い球を投げられるとひ弱さを露呈する。良いのはボールに食らいつく姿勢と軸の安定感には光るものがある。打撃に関しては、プロレベルに順応するのに少し時間はかかるかもしれない。


(最後に)

 物事を深く追求できる性格ならば、プロでも守備は上手いレベルまで行けるかもしれない。打撃は時間はかかりそうだが、ボールに食らいつく姿勢は良く、軸がしっかりしているという点では大きく伸びる可能性は秘めている。現状は突出した選手との印象はないが、プロ志望届けを提出すれば指名は濃厚のレベルではないのだろうか。ドラフト的には中位(3位~5位)ぐらいの指名があっても不思議ではないが、個人的にはそこまでの魅力はまだ感じられない。それでも春の時点で、指名リストに名前を入れてみたいと思わせる選手ではあった。全国でも指折りのショートストップであるのは、間違いないだろう。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年 選抜)