19ky-1





 有馬 諒(関西大4年)捕手 181/83 右/右 (近江出身)
 




 「秋より良かった」





 秋に見たときは、送球こんなだったけ? という部分があった 有馬 諒 。しかし、この春は、そういった部分は陰を潜め、実戦的なプレーができるまでに回復していた。


(ディフェンス面)

 近江高校時代から、世代屈指と言われるディフェンス力を誇っており、大人びた捕手 といった感じでした。ミットをしっかり投手に示し、それを下に下げることなくビシッと捕球できます。そのため、審判からは信頼され、ストライクを呼び込みやすいスタイルです。多少
ワンバウンド処理などに、少しのんびりしたところを感じさせる部分は気になるので、そういったフットワークなどの足回りを磨き直して欲しいと思う部分はあります。

 プレーが落ち着いているぶん、
視野の広さは感じられ冷静です。そのためスローイングも、1.8秒台中盤~1.9秒台前半とドラフト候補としては驚くほどではないのですが、走者の滑り込んでくるところに集まることも多く刺すことが多いです。リードは、1試合を意識して組み立てるタイプなので、その分立ち上がりに打ち込まれてしまうリスクがあります。局面局面で相手を見ていろいろ変えようといったタイプではないように見えます。プロに混ぜた時に、何か突き抜けたものがあるというよりも、トータルバランスで勝負するタイプの捕手だと捉えています。


(打撃内容)

 3年終了時点での通算打率は、ちょうど4割。しかし今春はチームに4番に座るも、打率.273厘 と、平凡な成績に終わりました。それでも平塚合宿では、討ち取られた打席でも芯に近いところで捉えており、
根本的な打撃能力とミートセンスの高さは感じられました。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、カカトを浮かして爪先立ち。グリップを高めに添えて捕手側に引いて添えられており、背筋を伸ばしつつも全体のバランスとしては癖があります。それでも、両眼で前を見据える姿勢は並ぐらい。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が沈む時にベース側につま先立ちし、本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。これだけ遅いタイミングだと、プロレベルの投手のスピードや伸びのあるボールに対し、日本人の筋力やヘッドスピードだと対応しきれないことが多い。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 小さくステップして、真っ直ぐから若干ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」が短いので、狙い球を絞りその球を逃さない「鋭さ」が求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内外角を同じようにさばきたいという意識があるように思えます。

 追い込まれるまでは、引っ張り中心の意識ではないかと。そのため、踏み込んだ足元が動いてしまうことも少なくありません。しかし、追い込まれたり外角への意識が強いときは、しっかり足元が止まっているので、
いろいろなスイングを状況に応じては使い分けてはいるのでしょう。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 早めに「トップ」の位置にグリップを持っていっているので、速い球に立ち遅れないようにしています。始動の遅さを、ここで補おうとしています。「トップ」自体が浅く遊びもないので、そういった意味での反発力やリストワークの柔軟さという意味ではどうでしょうか?

 バットの振り出しはそこまで癖がないのですが、多少腰が早く開いて逃げてしまうところがあります。そのため、足元がしっかり止まっている時には、体勢を崩してでも逃げて行く球や低めの球に食らいつくことはできています。ただし、根本的には、そういった球を強くキッチリ叩くのは得意ではないのでしょう。

 それでもインパクトまでの起動や、バットの先端であるヘッドも下がっては来ないので、広い面でボールを捉えています。
捉えてからのスイングの孤が大きくなり、オーバー・フェンスこそ見られせんが、外野手頭を超えるような長打も期待できるようになってきました。昨年までは、インサイドアウトへの意識が強すぎてスイングの孤が大きくとれなかったのですが、そのへんは変わってきている可能性はあります。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きは、我慢できている時とそうじゃない時があります。また、軸足の形も安定している時とそうじゃない時があります。ただしこれは、意図的にスイングを使いわけすることで生じているのかもしれません。

(打撃のまとめ)

 メカニズム的には癖が強い打ち方なのですが、根本的にボールを捉える能力は高いように思います。そういった意味では、プロの指導により、打撃部分はまだまだ精度を高めて行ける選手ではないかと考えています。捕手であることも考えると、現時点でのレベルを、そこまで気にする必要はないかと。


(最後に)

 ディフェンスは、2年目ぐらいには一軍を意識できそうなところにきてています。打撃も、環境に慣れて技術の向上も臨めれば、徐々に成績を伸ばして行ける、そういった可能性は感じます。
捕手としての勘どころや視野の広さを持っている選手なので、徐々に信頼を得て行くのではないかと。物凄く高い評価はできませんが、充分に中位ぐらいでは指名される力はあるとみています。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年 平塚合宿)









有馬 諒(関西大3年)捕手の本当に凄いやつへ







有馬 諒 (近江3年)捕手 183/81 右/右 





 「世代引っ張って欲しい」





 昨夏は、2年生ながらチームを全国ベスト4に導いた 有馬 諒 。高校生離れたしたリードに、状況判断の的確さは世代でも屈指ものがあった。驚くような地肩や長打力はないので、高校からプロというよりもアマチュアのトップクラスで球界を引っ張って行って欲しいタイプ。しかし今回は、あえてドラフト目線で考えてみたい。


(ディフェンス面)

 ガンガンと俺についてこいといった、投手や周りを引っ張ってゆくというタイプではありません。それでもチームの司令塔として、投手とは細かくやり取りをしつつ、周りにも指示を出せる細やかさはあります。捕ってから間髪入れずに投手に返球し、テンポの良いボール回しを意識しています。しかし返球が不安定だったりするので、少々プレーが雑というか、もう少し「間」も入れながらやれば良いのにと思う部分はあります。それでもランナーがいれば、しっかり立って返球するので本質的に雑なわけでもないとは思います。

 昨年はコースから外れた球が来るとミット負けするところがあったのですが、その辺はこの一年で改善されつつあります。ワンバウンドするような球に対しても、ミットは下からさっと出るなど基本はしっかり叩き込まれている。走者が少しでもオーバーランだとみるや、素早く送球するなど常に広い視野を持ってプレーできています。

 スローイングは捕ってからワンテンポ遅れるところがあったのですが、今は無駄なく素早く送球。塁間は、1.8秒台後半~1.9秒台半ばぐらいで 中の上 ぐらいの送球能力はあります。ただし甲子園での東海大相模戦では、ツーアウトで一塁という盗塁が想定される場面で、あっさり進塁を許すあたりは警戒感が薄いのかと。ちょっと世代屈指の捕手にしては残念なところが見られたり、一塁への悪送球も含めて注意力に物足りなさを感じました。リードは、高校生にしてはえげつない組み立てをするなと昨夏は思ったものです。当然ディフェンス面では、高校からプロに入るレベルにあります。そういった能力は、トーナメントよりもリーグ戦でより発揮されるのではないのでしょうか。


(打撃内容)

 近江では、捕手ながら4番を務めます。長打で魅了するというよりも、状況に応じた打撃ができるので、勝負強さが売りのポイントゲッターという感じでした。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた右のオープンスタンスで、グリップの高さは平均的。背筋をしっかり伸ばし、両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスも取れている。昨年までは構えに硬さが感じられましたが、そういった力みは薄れました。

<仕掛け> 早すぎ

 投手の重心が下がり始める前から動き出す、「早すぎる仕掛け」を採用。まだ投手が投げるタイミングを変えられる段階から動き出すので、フォームで崩される可能性がある。それでも本質的には、対応力重視の打撃であることがわかった。昨年は始動が遅すぎたので、かなり両極端に始動のタイミングを変えてきている。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足を早めに引き上げ回し込み、まっすぐ踏み出してくる。始動~着地までの「間」は充分あるので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応しやすい。まっすぐ踏み出しているように、内角でも外角でも対応したいという万能型。

 踏み出した前の足はしっかり止まっており、外に逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができる形にはなっている。昨年は早く地面から足が離れる引っ張り重視のスイングをしていたが、今はしっかり前が止まるようになり幅広く対応できるようになったのではないのだろうか。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込むことができている。バットの振り出しは、インサイド・アウトというほどでもなく平均的。バットの先端であるヘッドは下がらずドアスイングではなく、広い面でボールを捉えることができている。そのため、フェアゾーンにボールは落ちやすい。スイングの弧の大きさやヘッドスピードは平均的で、バットを最後まで振り切ってくる。そのため、打球が上がるというタイプではないだろう。

 元々脇をしっかり締めて、真ん中~内角寄りの球をさばくのはうまかった。しかし今は、外角の球も打ち損じが減り、穴は少なくなっていると考えられる。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げはあるが、目線の上下動は平均的。身体の開きは我慢でき、軸足も地面からまっすぐ伸びて安定している。調子の波が少なく、軸足の内モモの筋肉も強そう。そのため、打球にもそれなりに強さが感じられる。

 昨年は「開き」が早かったり、軸足も前にツッコミがちだった。しかし今は、軸を起点にボールを呼びこんで軸回転でスイングできるようになっている。

(打撃のまとめ)

 めっぽう長打力があるとかミート力が非凡だとか、ヘッドスピードが凄いといった派手さはない。しかし技術的には高く、捕手でも高いレベルの投手に対応しうる技術を持っている。プロレベルに混ぜても、下位を打っても自分の仕事はしっかりこなすタイプに育つのではないかと思われる。

 特に昨年は随分癖があって、得意なゾーンはあっても苦手な球もハッキリしていた。しかし技術的に大幅に改善が見られ、非常に穴の少ない打者になっている。この一年の取り組を、高く評価したい。


(最後に)

 ちょっと期待値が高すぎたので、正直こんなものかなというガックリ感はありました。東海大相模の揺さぶりに翻弄される姿は、まだまだ彼ほどの捕手でも、高校生なんだと実感させられました。特にA級の地肩や打力がある選手ではないので、良い進学先があるのならば、そちらを選択するというのもありなのかな?という気がします。

 それでもインテリジェンス・視野の広さは、全国でも屈指の捕手だと思います。もしプロ志望届を提出したら、中位(3位~5位)の間には指名されると思います。こういったセンス型の捕手を探している球団には、非常に面白い存在ではないのでしょうか。大学生に例えると 郡司 裕也(慶応大)捕手に似たタイプではないのでしょうか。個人的には、昨夏指摘した欠点に対し、真摯に向き合ってきた意識の高さを買いたいところ。4年後には、最上位でのプロ入りを実現して欲しい。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2019年夏 甲子園) 









 有馬 諒(近江2年)捕手 180/75 右/右





                       「高校NO.1」 





 19年世代を代表する捕手だと言われる 有馬 諒 。果たして一体彼の何処が優れていて、高校球界屈指の捕手だと評価されているのか? 考えてみたい。


(ディフェンス面)

 一学年上の先輩に遠慮していたかもしれないが、ガンガンチームを引っ張ってゆくといった感じはしない捕手でした。インサイドワークに定評があるということでしたが、個人的にはそれほどリードに関しても良いとは思いませんでした。しかし、考えてプレーをしているといった印象は受けます。

 しっかり投手にミットを示し、的をつけやすくします。キャッチングの時の押し込みが弱いのか?構えたところと違うところに来ると、ミットが負けて流されてしまうところがあります。しかし低めの球に対しては、下から素早くグラブを出すことはできていました。キャッチングに関しては、まだまだ課題を残すところがあるとみています。

 スローイングも、捕ってからワンテンポ遅れる傾向があり、1.90~2.10秒ぐらいとタイム的には平凡。それでも地肩自体は強い上に、コントロールもまずまず安定。ベースから飛び出した走者を刺すなど、視野の広いプレーが見られます。洞察力や視界は広く、捕手らしい捕手ではないのでしょうか。ただし現状は、絶対的な凄みまでは感じません。





(打撃内容)

 近江では、旧チームでは6番あたりを担っていました。物凄い当てるのが上手いとか、長打力があるわけではありません。捕手に必要な、ある程度の打力を持っているといった感じでしょうか。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添えます。やや後ろ足に重心をかけつつ、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢も悪くありません。少し全体的に構えが固く、柔軟性に欠けるのかな?といった印象は受けます。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下る時に、足をベース側に持ってゆきます。本格的に動き出すのは、リリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いと、日本人の筋力やヘッドスピードだと、プロレベルのスピードやキレに対応するのは厳しいと考えます。

<足の運び> 
☆☆ 2.0

 足を軽くステップさせ、真っ直ぐからベース側にふみこんできます。始動~着地までの「間」はなく、狙い球を絞って逃さず叩く打撃が求められる 点 の打撃。ベース側に踏み込むということは、外角の球に意識があることがわかります。

 気になるのは、踏み込んだ足が早く地面から離れてしまうこと。そのため基本的に、引っ張ることを重視していることがわかります。外角に逃げてゆく球や低めの球に対しては、「開き」が早く厳しいのではないのでしょうか。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形は、早めに作れていて始動の遅さを補っています。バットの振り出しは、脇を閉めてロスなく真ん中~内角寄りの球を捌けます。外の球に対しても、インパクトまでロスがありません。バットの先端であるヘッドも下がらないので、打ち損じの少ない確実性の高さがあります。

 脇をしっかり閉じてさばく選手に多いのは、外角の球を強く叩け無い選手が多いこと。また先に述べたように「開き」が早いことで、外角への対処が気になります。ボールを捉えてからは、最後までしっかり振り切ります。けして打球を上げるというよりは、鋭く野手の間を抜けてゆくことが多いスイングだと言えます。

<軸> 
☆☆★ 2.5

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は大きくはありません。しかし「開き」が我慢できないのと、軸足が前に傾いて伸びており、体が前にツッコミがちなのがわかります。そういった意味では、けして軸が安定したスイングとは言えません。

(打撃のまとめ)

 始動の遅すぎなのと、前の足が止まらないスイングのために引っ張り中心の打撃になってしまっています。このへんの幅の無さを、いかに最終学年広げて行けるかではないのでしょうか。


(最後に)

 確かに地肩自体は強いですが、捕ってから投げるまでの切り返しが遅いのが気になります。捕手として考える姿勢、視野の広さは感じますが、ミット負けするキャッチングには改善の余地がありそうです。捕手として良いところと悪いところが同居しており、最終学年で何処まで資質を高められるかでしょう。

 打撃も引っ張り中心の偏った打撃であり、開きが我慢できていないこと。そのため外角への見極めや対処が、改善されるのかがポイントだと言えるでしょう。上半身の使い方は上手いので、下半身がしっかり受け止められると面白いと思います。

 現状は、良い方に転ぶか悪い方に転ぶか流動的であり、順位もそれによって大きく変わってきそうです。しかし現時点では、19年度を代表する高校生捕手として、世代を引っ張ってゆく捕手だと言えるのではないのでしょうか。



(2018年夏 甲子園)