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廣澤 優(23歳・愛媛MP)投手 193/102 右/右 (日大三-JFE東日本) | |
日大三高時代の下級生時から、全国でも屈指のロマン型として注目されてきた 廣澤 優 。高3の時は調子を崩し、その後は社会人に進む。しかし、そこでも高い壁に跳ね返され独立リーグに進んだ。そんな中、ようやく悲願のプロ入りに漕ぎ着けたのである。 (投球内容) それほど、投球の基本スタイルは、高校時代から変わっていませんでした。高校時代は細身の長身投手でしたが、今はだいぶ骨太の体型に変わっていて、マウンドでの投球にも迫力が出てきました。 ストレート 145キロ~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0 角度と球威を感じさせる、140キロ台後半のボールには迫力を感じます。その一方で、まだ球筋が定まらず、決まって欲しい時に決められない制球力の不安があります。そのため、なかなか自分の思い通りのピッチングできず、相手を仕留めるために球数を要してしまうことも少なくありません。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォーク ☆☆☆ 3.0 球種自体は高校時代から持ち球と、あまり変わっていません。カットボールのような小さな曲がりのスライダーでカウントを整え、左打者にはチェンジアップ系の球とのコンビネーション。この球の抜けは良く、効果的に使えています。フォーク系の球もあるのですが、この球は打者が振ってくれないことが多いです。余裕があると、ブレーキの効いたカーブも使ってきます。 その他 クィックは、1.05秒前後とまずまず。牽制も、モーションが大き過ぎる気もしますが、適度に鋭いものを入れて走者を刺しにきます。「間」を意識しすぎて、ボールを長く持ちすぎるきらいがあります。そのため、球数が多いだけでなく、投球テンポが悪いのは気になりました。 (投球のまとめ) 一つ一つのボールのクオリティは高い一方で、制球を含めて投球をまとめる、要所で、ここでという時の決められない、収まりの悪さは気になります。先発をした時の投球も観ましたが、リリーフの方がこの選手は合っている用に感じました。 (成績から考える) 今回は、今シーズンアイランドリーグで残した成績を元に考えてみます。27試合 2勝2敗 56回2/3 49安 44四死 49三 防 2.54 といった内容で、シーズン序盤は先発だったが、中盤以降はリリーフでの登板だった。。 1,被安打は投球回数の70%以下 △ 独立リーグなので、70%以下の厳しいファクターを設けた。いずれにしても被安打率は 86.5% とやや高い。ボールの威力は一級品も、被安打はそれなりにあったことは覚えてきたい。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕ 四死球率は、77.7% と高い。いつも言うように、基準は投球回数の1/3(33.3%)以下であり、それの倍以上のペースで出している。観た印象以上に、コントロールの粗さがあることがわかった。 3,三振は1イニングあたり 0.9個以上 △ 1イニングあたりの奪三振率は、0.86個 。これは、先発投手の基準の0.8個以上は満たしているものの、リリーフの基準である0.9l個は満たせていない。三振が取れる能力はあるものの、まだNPBレベルの打者相手だと、仕留めるのに苦労するかもしれない。 4,防御率は1点台以内 △ 防御率 2.54 は、けして悪い数字ではない。しかし、NPBのレベルを考えると、1点台ぐらいは残しておきたいところ。そういった意味では、まだまだ、絶対的な存在ではなかった。 (成績からわかること) どれでもリーグ戦において絶対的な数字は残せておらず、即戦力というよりも、二軍でまずはどのぐらいの成績を残せるのかといった部分で、ある程度の時間はかかるのかなといった気がする。細部のレベルの向上がないと、支配下登録から一軍への足がかりは見えて来なそうだ。 (最後に) 相変わらず素材としての素晴らしさは感じられるものの、すでに若手という年齢では無くなってきているだけに、ある程度2~3年以内には支配下・一軍登板まで持ってゆきたい。ただし、年齢の割には粗い素材だけに、そこまで持ってこられるかは微妙。そういったことを込みしての、育成枠指名なのだろう。プロの指導・環境で、何処まで総合力を引き上げられるのか? そういった一か八かに期待する、今でもロマン型だった。 (2024年 アイランドリーグ戦) |
広澤 優(日大三2年)投手 189/78 右/右 | |
「高校ビック4」と言われる4人に肉薄する存在でもあるチームメイトの 井上 広輝 以上に、その器の大きさでは上をゆくのが、この 広澤 優 。まだまだ素材型で、夏までにどこまでのまとまりを魅せるのかは未知数。しかし指にかかった時のボールは、素晴らしい球を投げ込んでくる。素材型の選手達の中でも、全国屈指のロマン枠 と言って差し障りはないのではないのだろうか。 (投球内容) 190センチ近い体格があるのだが、まだまだ線の細さが目につく。またその長身を活かし、ノーワインドアップから投げ込んでくる。 常時145キロ前後~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0 ストレートは、コンスタントに140キロ台中盤~後半を記録する。特にボールにしっかり指がかかったボールを投げられるので、荒削りでも球の質・勢いも素晴らしい。ただし細かいコントロールはさほどなく、大まかに右打者の外角近辺に集めて来るといった感じで、全体的に球は高めに集まりやすい。またスタミナがないのか? 50球近くなると、ボールの勢いが目に見えて落ちて来る。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォーク ☆☆☆ 3.0 球種は、一通りのものを扱う器用さがある。スライダーは、横滑りというよりも縦に切れ込む感じ。カーブも、うまく指にかかるとブレーキの効いたままストライクゾーンに決まってくる。その他左打者にはチェンジアップを使ってカウントを整えられるし、追い込むとフォークで空振りも誘える。このフォークの精度が、夏までに何処まで上がってくるかで投球の余裕も変わってくるだろう。 どの変化球も曲がり・変化自体は好いので、あとはどのぐらい上手くコントロールし制御できるかではないのだろうか。ただの速球派でもなく、変化球1つ1つにも好いものを持っている。 その他 クィックは、1.1~1.2秒で投げ込めるなど平均的。牽制もそれなり鋭くターンできるし、多めに入れてくる。フィールディングは、今後の確認事項。 (投球のまとめ) この投手の素晴らしいのは、ただ大きな体から速い球を投げ込んでくるだけの素材ではないということ。速球の質がよく、それでいて変化球1つ1つの曲がりもしっかりしている。あとは、夏までにどのぐらいのレベルまでまとめきれるのかといった部分が興味の対象になる。名門・日大三だけに、一冬超えればかなりのレベルまで来ているかもしれない。スペック的には、上位候補と言われている選手たちにも負けず劣らずといった感じ。非常に、楽しみな素材型だと言えるのではないのだろうか。 (投球フォーム) ではフォームの観点から、この選手の将来性と課題を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 お尻は完全にバッテリーライン上に残ってしまっていて、体を捻り出して投げるカーブやフォークには適さない投げ方です。 「着地」までは、前にステップさせることで時間はある程度稼げています。しかしまだステップが狭いのか? 投げ終わったあと体が一塁側に流れてしまっています。好い変化球を投げられる下地はありますが、下半身の柔軟性を養いつつ着地までの粘りをさらに伸ばせるようだと、さらにキレや曲がり幅が大きな変化球を投げられる可能性はあります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ分けはしやすいと考えられます。しかし足の甲での地面への押しつけが浮いてしまっており、どうしても力を入れて投げるとボールが上吊りやすい傾向にあります。それでも「球持ち」が割合好いので、ボールゾーンにまで抜ける球が少なく、全体的に高めに集まるといった程度で抑えることができています。質の好い真っ直ぐを高めに決まることで、高めでも空振りが誘えるのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせない割に、カーブやフォークなども投げるので肘への負担が心配されます。現状は滅多に投げていないので問題はないと思うのですが、フォークの精度が上がるにつれて依存度が高くなってきたときは心配です。 腕の送り出しを見る限りは、肩への負担は少ないように見えます。それほど力投派ではないので、疲労は溜め難くフォームを崩して故障に繋がるといったリスクは低いのではないかとみています。ただし2年夏の時点では体力がなかったので、今後立場が上がるにつれ登板が増えた時に、何処まで対処できるのかは気になる材料ではあります。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 ステップの狭さは気になりますが、「着地」までの時間は早すぎることはありません。したがって長身の角度も相まって、打者にとって合わせやすいということはないでしょう。また「開き」自体も、早すぎることはありません。したがって、コントロールミスをして甘く入らなければ、それほど問題はないのではないのでしょうか。 腕はしっかり振れており、打者の空振りを誘うような勢いは感じます。またある程度体重を乗せてからリリースはできているので、打者の手元までしっかり伸びてきています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。まだまだどの部分も並レベルなので、今後の意識とトレーニング次第では動作にもっと粘っこくして実戦的になれる伸び代が残されています。 制球を司る動作は、足の甲の押し付けが浮いてしまい高めに集まりやすいこと。故障のリスクは、お尻が落とせないことで肘への負担は多少あります。カーブやフォークに依存し難いフォームのため、いかに他の球で緩急と縦の変化を代用して行けるかがポイントではないのでしょうか。 (最後に) 確かに現時点では素材型の域を脱していないのですが、今後改善できる、もっと良くなる可能性が高い素材です。そういった意味では、非常に伸び代のある楽しみな選手だと言えるのではないのでしょうか。 問題は、高校の時点でどのレベルまで引き上げられるのかといった部分。そのへんが改善されないようだと、強豪大学や有力社会人チームに進む可能性も否定できません。その結論を出すのは、夏までの成長をというよりも、春の段階でなされる可能性が高いと思います。そう考えると、春季大会ぐらいの成長具合で、プロ入りの決断をするのか迫られるのではないのでしょうか。いずれにしても今は、春季大会でどのぐらいのパフォーマンスを魅せてくれるのか、楽しみに待ちたいところです。 (2018年夏 甲子園) |