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村上 舜 (ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







村上 舜 (山形中央)投手 174/69 左/左 





「投げっぷりはいい」 





 勢いのある真っ直ぐを投げ込むサウスポー、そんな記憶しかない 村上 舜 が、ソフトバンクからドラフト指名された。そういえば以前も、同じ山形球児の 吉住 晴斗(鶴岡東)をドラフト指名したことがあった。ソフトバンクは、山形にご執心といった感じがする。


(投球内容)

 この夏は、背番号を1を付けながらも全てリリーフでの登板。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

ストレート 135~140キロ台前半 
☆☆★ 2.5

 球速は常時130キロ台後半ぐらいと、左腕としてもドラフト指名される投手としては平凡です。しかし見えないところからピュッとボールが出てくるので、打者は思わず差し込まれるキレがあります。高めの球で空振りを誘えるのが持ち味ですが、基本的にコントロールはアバウト。決勝戦の鶴岡東戦では、ピンチで登場するも死球を連発し火に油を注ぐ形となってしまいました。

変化球 スライダー・チェンジアップ 
☆☆ 2.0

 2試合ほどみた感じでは、スライダーとチェンジアップがあるように見えます。チェンジアップはほとんど使っていませんでしたが、スライダーはカウントを整えたり緩急を利かせるめに使っていました。ただし変化球の精度もまだ低いようで、現状はストレートに頼らざるえないといった感じがします。

その他

 クィックは1.1秒前後とまずまずで、牽制もそれなりに鋭いものがあります。そういった意味では、走者が一塁に出てもスタートは切り難いのではないのでしょうか。ただし細かい駆け引きや、上手く「間」を入れるといった巧みな投球術はありません。あくまでも、勢いで押すリリーフタイプなのでしょう。

(投球のまとめ)

 ストレートの勢いは悪くないですし、フォームもタイミングは図り難いかと。ただしじっくり見られると、コントロールに不安があるので苦しくなります。それでいて、カウントをしっかり整えたり勝負球になる変化球はないので、ストレートを投げ続けるしかありません。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、その可能性を模索してゆきます。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は高いところでピンと伸びているので、お尻は三塁側(左投手の場合)に落ちています。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げるのには適していると考えられます。

 ただし現状、着地するまでの時間が確保できていないので、身体を捻り出す時間は物足りません。これだと武器となる変化球の習得は難しく、変化球に特徴が見出だせないのは頷けます。今後股関節の柔軟性や下半身強化などを図りながら、「着地」までの時間を稼げるようになるかではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに留まり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため左右へのコントロールは安定しやすいはずですが、まだリリースが不安定なのかその辺もアバウトです。

 足の甲での地面への押しつけも浅く、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。そのため力を入れて投げるとと、どうしてもボールが高めに抜けたりして制御できていません。しかし「球持ち」自体は悪くはないので、リリースポイントが安定して来ると、もう少しコントロールは定まってきそうなのですが。そのためには、安定した下半身を作ってブレを少なくする必要があります。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークなどを投げても窮屈には感じないはず。また現状は、そういった球種の球も観られないので、肘への負担は少なそう。

 腕の送り出しをみても無理は感じないので、肩への負担も少ないと考えられます。少々力投派のところはあるので、疲労は溜めやすいかもしれません。そこからフォームを崩し、故障に繋がらなければという心配は多少あります。それでも故障のリスクは、かなり低いのではないかと。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはなく合わせやすそうなのですが、ボール出どころは隠せているので、見えないところから突然ピュッと来る感覚には陥りそうです。

 ただし降り下ろした腕が身体に絡まないなど振れていないので、ボールには勢いはあるもの変化球が見極められてしまう恐れはあります。しかし思ったよりも体重を乗せられてからリリースはできているので、打者の手元まで勢いのある球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの時間を稼げるような粘りが欲しいところ。制球を司る動作自体は悪くないので、リリースを安定させて再現性を高めたい。故障のリスクは低いので、どんどん新しいことには取り組めそう。球種自体はいろいろ増やせる下地はあるが、武器になる変化球をの習得となると身体を捻り出す時間を確保できるかに懸かっている。


(最後に)

 育成枠でも最後での指名だけに、やはり現時点では☆を付ける云々の選手ではないように思います。しかし何かしらイケるという手応えがあったからこその指名だと思うので、ソフトバンクの育成力に期待してみましょう。打ちづらさとボールの勢いはある選手なので、制球力と変化球が上手く身につくと投球も一変するかもしれません。


(2019年夏 山形大会)