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佐藤 一磨(オリックス)投手のルーキー回顧へ



 




佐藤 一磨(横浜隼人3年)投手  187/87 左/左 





 「まるでコルデロ」





 コルデロと訊いてピンと来る、どんな投手か見たことがあるという方は、DeNAファンの中でもかなりコアなファンだろう。コルデロとは、昨年ドミニカで行ったトライアウトで合格しベイスターズが獲得した、育成枠でプレーする長身左腕のことなのだ。この 佐藤 一磨 を見ていると、投球フォームや角度を生かした投球などは、まさに コルデロ を見ているようだった。


(投球内容)

 足を勢い良く引き上げ、足を曲げ伸ばししたあと投げ込んでくる変則左腕。腕が身体から離れて、ブンと外旋しながら投げ込む荒っぽいフォームをしている。

ストレート 130キロ台後半~MAX89マイル・143キロ 
☆☆☆ 3.0

 私が観戦したのは、夏の日大藤沢戦。しかし会場に着いたときには、すでに序盤戦は終わっていた。あとから訊いた話によると、初回は140キロ台中盤を連発していたとのことで、145キロが出たとか148キロを記録したなど驚きの話が飛び出していた。私が観戦してからは、130キロ台後半~140キロ台前半ぐらい。しかしピンチになれば、常時140キロ台の力で押す投球が見られた。ちなみに私のガンでも1球ほど92マイル・148キロを記録したが、ほかの球との兼ね合いでエラーだと認識している。

 ボールは両サイドに散っているものの、本当のコントロールはなくアバウト。高めに抜ける球も多く、まだ充分に制御できているとはは言い難い。両サイドに散っている球でも高めに浮いて、その球を打ち返されてしまうことも少なくなかった。ビシッとミットに収まり角度を感じさせる球で、ちょっとカット気味に変化してくるクセ球でもあるようだ。

変化球 スライダー・チェンジアップ など 
☆☆ 2.0

 スライダーの曲がり自体は大きいのだが、早く曲がり過ぎて振ってもらえなかったり、ストライクがうまく取れていない。他にも緩いカーブやチェンジアップをたまに投げるが、投球のほとんどはスライダーが中心。変化球が制御できないので、ほとんどストレートを投げ続けるしかないという、苦しいピッチングスタイル。

その他

 クィックは、1.10~1.20秒と平均的で、牽制もそこそこといった感じだった。特に細かい駆け引きができるとかいうタイプではなく、ひたすらストライクゾーンに速球を投げ込むといった投球に終始している。

(投球のまとめ)

 本当にまだ素材型といった感じで、変化球・制球力・投球術といった部分では殆どできていない。これを原石とみるか、単に不器用とみるかは意見の別れるところではないのだろうか。ただし春季大会の頃は130キロ台中盤ぐらいまでがやっとだったというから、短期間に大幅に球速を伸ばしてきたのは確かなのだろう。





(投球フォーム)

今度は、フォームの観点から将来の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は完全にバッテリーライン上に落ちてしまっていて、身体を捻り出すスペースは確保できていません。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げようとすると窮屈になります。

 しかし地面に着きそうなところまで降ろした足を、そこから前に長く逃がすことができており、「着地」までの粘りは作れています。したがって身体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークといった球種でなければ、キレや変化の大きな球を習得できる可能性は秘めています。実際にスライダーの曲がり自体は大きいのですが、それを上手くコントロールすることができていません。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは身体の近くにあるので、両サイドにはボールは散りやすい投げ方ではあります。足の甲の地面への押しつけは、やや浅いのが気になるところ。「球持ち」も浅く、ボールが高めに集まったり抜けたりしまいがち。また腕の振りと頭の位置が離れているので、どうしても腕が外旋してブンと振られてしまいます。こういう投手は、得てしてコントロールに課題があります。

<故障のリスク> ☆☆ 2.0

 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので肘への負担は少なそう。ただしボールを持っている肩は上がりグラブを持っている方の肩が下がるような送り出しなので、肩への負担は少なくないはず。特に腕が身体から離れてブンと振って来るので、そこでも肩への大きいことがわかります。それほど力投派ということはないと思いますが、肩の疲労は溜まりやすくケアには充分に務めて欲しいものです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが作れていて、ボールの出どころも隠れているので打者としてはタイミングが取り難い。しかしテイクバックした時にボールの握りが見えるので、打者としてはそこで球種だけでなくタイミングも図りやすいのではないかと考えられます。そのためコースに散った球でも、簡単に打ち返されてしまいます。逆に言えば、テイクバックの位置を修正できれば、打ち難いフォームになれるのではと。

 腕は適度に振れており勢いはあるので、変化球の精度が高まれば空振りも誘えるのでは? ボールへの体重の乗せは、踏み込んだ足が突っ張ってしまい、充分に前に体重移動できていません。したがって打者の手元まで勢いに乏しく、生きた球がまだまだ投げられない要因を作っていると考えられます。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に課題を残します。また故障のリスクが高く、制球を司る動作にも課題がある。球種に欠ける点は、投げられる下地はあるので投球の幅を広げてゆくことは可能だと考えています。かなり癖のある技術の持ち主で、打ち難さはあるものの、制球力と故障という部分をいかに改善して行けるかではないのでしょうか。


(最後に)

 本当にまだストライクゾーンの枠の中に、ストレートを投げ込んでいるだけといったシンプルなスタイルです。ある意味、コルデロ以上の素材型といった印象を受けます。こういった素材を、一軍で使えるようにするには、球団の忍耐力と本人の努力が求められるところ。そういったところが、彼にあるのかがどうかが見極めのポイントかもしれません。しかし春からの成長力を考えると、まさに今が伸び盛り。プロ入り後もその勢いが止まらければ、掘り出しものになるかもしれませんね。

 ドラフト的には、下位指名~育成枠あたりになるのではないのでしょうか。長身の左腕というスペックからも、何かしらの形で指名されるのではないかとみています。個人的には、指名リストに入れるほどの魅力は残念ながら感じませんでした。育成枠ならば、イチかバチかでアリかなとは思いますが。



(2019年夏 神奈川大会)