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林 優樹(21歳・西濃運輸)投手 174/61 左/左 (近江出身) | |
近江高校時代は130キロ前後だった球速が、今や140キロ台中盤を連発するまでになった 林 優樹 。高卒3年目を迎え、にわかにプロ入りがクローズアップされる存在に成長してきている。 (投球内容) 高校時代は、左のサイドハンドで、左打者にとっては厄介な横の角度を武器にしていました。今はかなり肘をあげて、さほど左打者が苦にするような球筋ではなくなっています。しかしその引き換えに、球威・球速を身に付けたと言えるでしょう。 ストレート 常時145キロ前後(MAX146キロ) ☆☆☆ 3.0 短いイニングでは、コンスタントに140キロ台中盤を叩き出せるまでになりました。ボールの質や勢いも悪くないように思えるのですが、今シーズンの登板では6回を投げて8安打を食らうなど、打者からは合わされやすい部分が気になります。今年の都市対抗ENEOS戦においおても、2回を投げて3安打をきしたのですが、いずれもヒットは左打者から打たれていたのは気になります。 都市対抗でも、初回はストライクゾーンにポンポンと投げ込みテンポの良い投球が目立ちました。今年は、6イニングで2四死球ということで、今は微妙な出し入れというよりも、枠の中には安定して集められるといった感じではないのでしょうか。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 以前ほど肘をあげたことで、左打者の外角に大きく逃げてゆくスライダーには特徴が無くなったように感じます。それでも、この球でカウントを整えてこれます。また近江時代は、右打者の外角へのチェンジアップが良かった印象ですが、今はそれほど右打者にこの球を武器にしている感じはしませんでした。今年は、6イニングで3三振ということで、基本的に三振を奪うというよりも、相手の打ち損じを誘うタイプのピッチングスタイルです。 その他 クィックは、1.05~1.10秒ぐらいと素早く投げ込めますし、足を振り子ように使っていたかと思えば、急にクィックのように投げ込んだりと、投げるタイミングを変える工夫はみられます。また、フィールディングの動きも上手い部類ではないのでしょうか。都市対抗では確認できたかったのですが、牽制は鋭いというよりも上手いタイミングで入れてくる投手だったと記憶しています。 (投球のまとめ) 元々は、130キロ前後でも全国大会で活躍していた技巧派のサウスポー。それだけ、マウンドさばきや制球術など、なかなか高校生としては優れ選手手でした。プロ入りを明確に意識したことで、球威・球速を追求したのは良いのですが、以前のような特徴な的な球筋や、嫌らしさが無くなってきたのは気になります。そういった意味では、プロ入り後は再び特徴を出すために、もう少し肘を下げたフォームになってゆくかもしれません。しかし、高卒3年目でこのパフォーマンスなので、会社側の許可が出れば指名順位にこだわらなければ、指名されるところまで来ているのではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今のフォームに、どのへんに課題があるのか? 検証してみましょう。セットポジションから、足を振り子のように使い反動を付けて投げてこんできます。足を引き上げる勢いや高さがあり、タイプ的にはリリーフ向きなのかなとは感じます。そして軸足の膝もピンと伸び切ることなく立てており、バランスも取れて力みなく軸足一本で立てているのは良いところではないのでしょうか。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足をかなり二塁方向に送り込むので、お尻の沈みは浅くないものの、お尻はバッテリーライン上に残りがちです。そういった意味では、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げられないことはないものの、変化は鈍くなりやすいのではないのでしょうか。 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、けして淡白な印象は受けません。そういった意味では、身体を捻り出す時間もそこそこで、ある程度は大きく曲がる変化球を習得しても不思議ではありません。ただし、高校時代よりもスライダーの曲がり幅や、チェンジアップの抜け方が平凡になっているようにも感じます。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールもつけやすいのではないかと。また足の甲での地面の捉えも、やや浅くは見えるものの、最後までしっかり地面を捉えています。実際にボールが高めに集まりやすいとか高めに抜けるといった場面は観られません。「球持ち」もまずまずで、指先の感覚も悪くない感じで、もっと微妙なコントロールも付けられそうな感じがします。制球に関しては、大きく乱すようなフォームではないように思ええます。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としには甘さは残るものの、カーブやフォークを投げられないほどではないですし、実際そういった球種もほとんど投げてはきません。また肘を上げたフォームになっても、ボールの送り出しには無理は感じられないスリークォーター。以前よりは全身を使って投げ込んでくる感じにはなりましたが、そこまで疲労が溜まりやすいフォームかと言えば、そうでもないのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りも適度に作れ、それでいてボールの出どころもある程度は隠せています。そういった意味では、フォームが合わされやすい・見やすいから被安打が多いというわけでも無さそうです。むしろ、球威がそこまでではないとか、ストライクゾーンの中で甘く入っているという方が問題なのではないのでしょうか。 腕は適度に振れているようにみえるのですが、身体に巻き付くような粘っこさはありません。その辺が、まだ打者の空振りを誘うほどの勢いにはつながっていないのかもしれません。また体重の乗せ具合も発展途上ではありますが、ある程度乗せてからは投げられていて「体重移動」に課題があるといった感じでもありません。このへんは、さらにウェートや筋力を付けることで、パフォーマンスは向上するのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特別に優れているところはないものの、大きな欠点もないフォームでした。制球を司る動作も良く、故障のリスクもさほど高くない。今後は、いかに武器なるものをを習得して行けるかに課題が残りそうです。 (最後に) 肘を上げることで球威・球速を得たものの、フォーム・球筋に嫌らしさが薄れた感じはします。しかし、フォームに関しては、思ったよりも大きな欠点は見当たりませんでした。恐らく今のままだと、一軍では通用しないでしょう。そういった意味では、プロでの生き残りを模索する中で、再び肘を下げたフォームに変わることが想定されます。肉体的にも成長した現在、そんなフォームでどのぐらいのボールや投球ができるのか気になります。そういった時間が必要なことを考えると、プロ入りしても戦力になるのには、数年を要するかもしれません。それでもすでにプロに入って何が足りないのか考える、その段階には来ていると思うので、個人的には指名リストに名前を記してみたいところです。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2022年 都市対抗) |
林 優樹(20歳・西濃運輸)投手 174/61 左/左 (近江出身) | |
U-18の日本代表に選出され、社会人入りが濃厚とされるなか志望届を提出した 林 優樹 。結局指名されることなく社会人に進むことにはなったのだが、130キロ前後だった球速は10キロ以上引き上がり、だいぶそのイメージは変わってきている。 (投球内容) 近江時代は、大きく一塁側にインステップして投げ込む横の角度を売りにした技巧派でした。しかし今は、かなり速球を中心に押してきて色彩が変わってきています。 ストレート 常時140キロ前後~中盤 ☆☆☆ 3.0 出力が上がった分、精細なコントロールがという感じではなくなり、真っすぐは結構バラツキます。それほど球威があるわけではないのですが、適度な勢いとキレがあり真っ直ぐを魅せるということはできています。21年度の公式戦では、26回1/3イニングで11四死球だそうなので、四死球率は41.8% と、かなりアバウト。高校時代の甲子園での通算成績では、41回2/3イニングで11四死球で、26.4% だったことを考えると、かなり制球が悪くなっていることが伺えます。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 近江時代から、右打者の外角に小さく逃げるチェンジアップを使うのが上手い選手でした。今もその傾向は強く、左打者にはスライダーでしっかりカウントを整えてきます。26回1/3イニングで18奪三振ということで、1イニングあたりの奪三振は 0.68個 と平凡。けして、三振をバシバシ奪うといった投球スタイルではありません。 その他 クィックは、1.1秒前後とまずまずです。けして、投げるタイミングなどを一球ずつ変えて来るといった投球術はありませんが。それでも、高校時代はクィックができなかったので、このへんは成長している部分かと。牽制は、鋭いというか入れるタイミングが上手いタイプ。フィールディングは、落ち着いてボールを処理できています。 (投球のまとめ) 大きく一塁側にインステップして、横の角度を活かしていた近江時代。それに比べると今は、ボールの出力も上がり、かなりオーソドックスなタイプになってきた気はします。それでも縦の変化というよりは、スライダー・チェンジアップなどを交え、横の変化・揺さぶりで勝負するタイプ。けして、三振をバシバシ奪うというよりも、相手の打ち損じを誘う投球スタイルではないのでしょうか。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を振り子のように大きく反動を付けて高い位置まで引き上げてきます。軸足一本で立ったときには、膝に力みがなくバランス良くは立てています。かなりエネルギー捻出が最初から激しいタイプなので、元来はリリーフタイプなのではないかと。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 比較的高い位置で足がピンと伸ばされており、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは悪く有りません。そういった意味では、カーブやフォークを投げるだけのスペースは確保できています。しかし、腕の振りがかなり下がって出てくるスリークォーターなので、その点でこういった球の変化が鈍くなる可能性があります。 「着地」までの地面の捉えはそれなりといった感じで、体を捻り出す時間もそこそこ。腕の角度の関係もあり、縦系よりも横の変化を中心にならざる得ない感じだし、かなり球速のある小さな変化が現状は中心になっているようには見えます。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで体の近くで抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい傾向にあります。ただし、かなり投げ終わったあと一塁側に流れるので、その点で制球もブレやすい側面はあるのかなといった気がします。 足の甲の地面の捉えもしっかりしており、ボールが上吊るのを防げています。そのためか、ボールが高めに抜けるという場面は見られません。以前はもっと粘っこい「球持ち」をしていたイメージがあったのですが、腕の振りが強くなることでリリースは不安定になっている可能性があります。そのへんが、以前よりも制球を乱す要因になっているのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせているので、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種を投げても負担は少なそう。しかし、腕の振りからそういった球は有効ではなく、あまり使って来ないのではないかと考えられる。 腕の送り出しを見ても肩への負担も少なそうには見えるのだが、かなりの力投派なので、疲労は溜めやすいのでは? そしてその反動は、思わぬところに出る可能性も否定できない。社会人一年目は、肘痛で投げられなかったのも気になる材料ではあります。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、ボールの出どころも隠せているように見える。そのため、投げミスをしなければ痛手は喰らい難いのでは? ただし、以前ほどインステップしなくなっているので、独特の横の角度は損なわれてきている。 投げ終わったあとに、思ったほど腕が体に絡んで来ない。そのため打者は、意外に吊られ難いのかもと思う部分も。体が投げ終わったあと一塁側に流れるので、どうしてもボールにダイレクトに力が伝わらずロスしている部分がある。26回1/3イニングで、被安打は21本。被安打率は、80.0% ということで、この数字をどうみるかは意見が別れるところではないのだろうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、出力が上がったことで「球持ち」の粘っこさが損なったこと。これにより、制球に乱れが生じているのかもしれない。肩・肘への負担は少なそうに見えるが、力投派なので思わぬところに出る可能性も。腕をかなり下げて投げる関係上、横の変化中心になり縦の変化は鈍くなりやすい。良い面と悪い面が混在しているフォームであり、よりフォームの特性を活かす術を身につけてゆくべきではないのだろうか。 (最後に) 志望届を提出してもプロ入りが実現できなかったのは、明らかな球威・球速不足があったから。そういった意味では、この2年間で、そういった部分は相当解消されたと見て良いだろう。そのぶん制球が粗くなったり、横の角度が薄まるなど良かった部分も損なっているので、バランスが難しいところ。出力が上がる分、実戦力を犠牲にしてきた点を、この一年間で上手く調整できるかに懸かっている。それでも、高卒2年間でここまで社会人で通用する術を見出しており、有力な指名候補とみて間違いない無さそうだ。 (2021年 都市対抗予選) |
林 優樹(近江3年)投手 174/64 左/左 | |
社会人入りが濃厚と訊いていたので、林 優樹 が、プロ志望届を提出したのは意外だった。∪18の日本代表メンバーに選ばれ、そこでの経験が彼の考えに変化をもたらせたのかもしれない。しかし常識的に考えると、順位縛りのあるプロ志望届提出なのではないのだろうか。 (投球内容) 一塁側に踏み出して投げ込む、インステップをして投げ込むサウスポー。インステップすることで打者にとっては、横手投げ同様に身体に当りそうな背中越しから当りそうになって飛んでくる恐怖感が生まれる。左打者としては、なかなか踏み込み難いフォームとなる。 ストレート 常時120キロ台後半~130キロ台前半 ☆☆★ 2.5 球威・球速という意味では、明らかにドラフト候補としては見劣りする。しかし独特の横の角度から繰り出す球筋と、ボール自体にキレがあるので、そこまで大きくは見劣りしない。その上この選手は、両サイドにボールを散らせられ低めに集めるコントロールを持っている。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5 右打者の外角に小さく逃げるチェンジアップが、昨夏から光っていた。今年はその球に依存しすぎないように、カーブ・スライダーの精度を磨いてきた。スライダーでしっかりカウントを整えられ、緩いカーブで緩急を効かせることができる。ただし通常左のスリークォーターは、左打者外角のボールゾーンに逃げてゆく球を振らせるのが上手いのだが、この選手はスライダーで空振りを誘うといった曲がりの大きさや活かし方はしていない。何か空振りを誘うという球は、現時点では持ち合わせていない。 その他 左投手とはいえ、クィックは1.3秒台と遅め。牽制は動作が鋭く刺すというよりも、入れるタイミングが実に上手い。ボール処理などのフィールディングも、落ち着いてできている。 (投球のまとめ) 球威・球速はドラフト候補としては見劣りするものの、横の角度と高い制球力をどう評価するかで意見が別れる。洗練されたマウンド捌き、冷静な精神面の持ち主で、そういった部分では評価できる。 特に左打者に強い左投手という明確な特徴があるので面白いとは思うのだが、高い順位での指名は厳しい。恐らく育成枠でのプロ入りは難しそうで、各球団どのぐらいの条件を提示できるかに懸かっている。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を振り子のように大きな反動をつけて振り上げてくる。実は全身を使って投げ込んでくるので、リリーフタイプなのかもしれない。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を大きく投手側にまで送り込むので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっている。したがって身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブ緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方にはなっている。 それでも大きく足を回し込み、着地までの時間を確保できている。スリークォーターの腕の振りからカーブやフォークなどには適さないが、それ以外の球種ならばモノにして行けるど土台はある。投手としても、かなり器用なタイプではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5 一塁側にインステップすることでフォームは横にブレやすいのだが、グラブを内に抱えることで外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため、両サイドへの投げわけはできている。足の甲でも地面を押し付けられているので、ボールも高めに抜け難い。「球持ち」も良く、指先の感覚にも優れていそうだ。変則フォームは細かいコントロールに欠ける選手が多いが、この選手にはそういった心配は無用だ。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻が落とせない割に、結構カーブを多めに使ってくる。そのため窮屈になりがちで、肘への負担は少なくはないだろう。しかし腕の送り出しには無理はなく、肩への負担は少ないのでは? 結構反動をつけて投げるなど、疲労は溜まりやすいフォームではないのだろうか。そこからフォームを崩し、故障に繋がなければ良いのだが。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りも充分あり、ボールの出どころも隠せている。また独特の横の角度もあるので、この球威・球速でもそれを補う打ち難さがある。 気になるのは、振り下ろす腕の振りがあまり身体に絡んで来ないなど勢いに欠けるとこ。またどうしても体重が流れてしまう投げ方なので、どうしても上半身や腕の振りでキレを生み出してゆくしかない。こういったキレを長く持続させてゆくのはなかなか難しい。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を抱えている。このへんが、球威のある球を生み出せない要因だが、大きく一塁側に踏み出して投げるフォームの構造上難しい。制球を司る動作には優れているが、故障のリスクが高いのは気になる材料。将来的には、もっと武器になる変化球を習得できる可能性は秘めている。極端なフォームをしているメリットとデメリットが共存したフォームだと言えるであろう。 (最後に) 左打者に強い左投手という、横の角度を持っていることは特徴があって面白い。また変則投手には珍しい、コントロールの確かさがあったり、投手としてのセンスや精神面の安定感も見逃せない。個人的には面白いと思うので、下位指名ならばありなのではないかとみている。しかし、その条件でのプロ入りが可能かどうかにも懸かっている。こういう投手がいないチームにとっては、一人加えてみたい選手ではないのだろうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2019年夏 甲子園) |