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林 優樹(21歳・西濃運輸)投手の個別寸評へ







林 優樹(20歳・西濃運輸)投手の本当に凄いやつへ








林 優樹(近江3年)投手 174/64 左/左 
 




 「志望届を出すとは」





 社会人入りが濃厚と訊いていたので、林 優樹 が、プロ志望届を提出したのは意外だった。∪18の日本代表メンバーに選ばれ、そこでの経験が彼の考えに変化をもたらせたのかもしれない。しかし常識的に考えると、順位縛りのあるプロ志望届提出なのではないのだろうか。


(投球内容)

 一塁側に踏み出して投げ込む、インステップをして投げ込むサウスポー。インステップすることで打者にとっては、横手投げ同様に身体に当りそうな背中越しから当りそうになって飛んでくる恐怖感が生まれる。左打者としては、なかなか踏み込み難いフォームとなる。

ストレート 常時120キロ台後半~130キロ台前半 ☆☆★ 2.5

 球威・球速という意味では、明らかにドラフト候補としては見劣りする。しかし独特の横の角度から繰り出す球筋と、ボール自体にキレがあるので、そこまで大きくは見劣りしない。その上この選手は、両サイドにボールを散らせられ低めに集めるコントロールを持っている。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5

 右打者の外角に小さく逃げるチェンジアップが、昨夏から光っていた。今年はその球に依存しすぎないように、カーブ・スライダーの精度を磨いてきた。スライダーでしっかりカウントを整えられ、緩いカーブで緩急を効かせることができる。ただし通常左のスリークォーターは、左打者外角のボールゾーンに逃げてゆく球を振らせるのが上手いのだが、この選手はスライダーで空振りを誘うといった曲がりの大きさや活かし方はしていない。何か空振りを誘うという球は、現時点では持ち合わせていない。

その他

 左投手とはいえ、クィックは1.3秒台と遅め。牽制は動作が鋭く刺すというよりも、入れるタイミングが実に上手い。ボール処理などのフィールディングも、落ち着いてできている。

(投球のまとめ)

 球威・球速はドラフト候補としては見劣りするものの、横の角度と高い制球力をどう評価するかで意見が別れる。洗練されたマウンド捌き、冷静な精神面の持ち主で、そういった部分では評価できる。

 特に左打者に強い左投手という明確な特徴があるので面白いとは思うのだが、高い順位での指名は厳しい。恐らく育成枠でのプロ入りは難しそうで、各球団どのぐらいの条件を提示できるかに懸かっている。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を振り子のように大きな反動をつけて振り上げてくる。実は全身を使って投げ込んでくるので、リリーフタイプなのかもしれない。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を大きく投手側にまで送り込むので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっている。したがって身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブ緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方にはなっている。

 それでも大きく足を回し込み、着地までの時間を確保できている。スリークォーターの腕の振りからカーブやフォークなどには適さないが、それ以外の球種ならばモノにして行けるど土台はある。投手としても、かなり器用なタイプではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5

 一塁側にインステップすることでフォームは横にブレやすいのだが、グラブを内に抱えることで外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため、両サイドへの投げわけはできている。足の甲でも地面を押し付けられているので、ボールも高めに抜け難い。「球持ち」も良く、指先の感覚にも優れていそうだ。変則フォームは細かいコントロールに欠ける選手が多いが、この選手にはそういった心配は無用だ。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻が落とせない割に、結構カーブを多めに使ってくる。そのため窮屈になりがちで、肘への負担は少なくはないだろう。しかし腕の送り出しには無理はなく、肩への負担は少ないのでは? 結構反動をつけて投げるなど、疲労は溜まりやすいフォームではないのだろうか。そこからフォームを崩し、故障に繋がなければ良いのだが。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りも充分あり、ボールの出どころも隠せている。また独特の横の角度もあるので、この球威・球速でもそれを補う打ち難さがある。

 気になるのは、振り下ろす腕の振りがあまり身体に絡んで来ないなど勢いに欠けるとこ。またどうしても体重が流れてしまう投げ方なので、どうしても上半身や腕の振りでキレを生み出してゆくしかない。こういったキレを長く持続させてゆくのはなかなか難しい。

(フォームのまとめ)

フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を抱えている。このへんが、球威のある球を生み出せない要因だが、大きく一塁側に踏み出して投げるフォームの構造上難しい。制球を司る動作には優れているが、故障のリスクが高いのは気になる材料。将来的には、もっと武器になる変化球を習得できる可能性は秘めている。極端なフォームをしているメリットとデメリットが共存したフォームだと言えるであろう。


(最後に)

 左打者に強い左投手という、横の角度を持っていることは特徴があって面白い。また変則投手には珍しい、コントロールの確かさがあったり、投手としてのセンスや精神面の安定感も見逃せない。個人的には面白いと思うので、下位指名ならばありなのではないかとみている。しかし、その条件でのプロ入りが可能かどうかにも懸かっている。こういう投手がいないチームにとっては、一人加えてみたい選手ではないのだろうか。


蔵の評価: (下位指名級)


(2019年夏 甲子園)