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 西舘 昂汰(専修大4年)投手 188/92 右/右 (筑陽学園出身)





 「少しずつは良くなっている」





 筑陽学園時代は、正統派の投手といった感じだった 西舘 昂汰 。大学に入って球威・球速は上がったものの、まだまだ「勝てる投手」といった意味では、物足りない春だった。秋の投球を見て、力と技のバランスが、うまく取れ始めてきているかもといった気がしてきた。


(投球内容)

 この秋の成績は、
69回2/3 38安 17四死 53三 防 1.01 で、東都二部リーグの防御率2位となる内容だった。内容的には、キャリアハイとなるシーズンだったと言えるのではないのだろうか。

ストレート 常時145キロ~150キロぐらい 
☆☆☆★ 3.5

 
適度に球威と勢いを感じさせるボールを投げ込みますし、力を入れた時には150キロ近い球速を誇ります。ボールは大まかに両サイドに投げ分けることができているのですが、真ん中~高めにゆくことも多いので、ある程度のレベルの打者には対応されてしまう傾向にあります。当然相手が一軍打者のレベルになってくると、そういった球が致命的になる恐れはあります。

 二部の打者だと、この球威の投手だと対応するのが厳しい。そのため被安打率は、54.6% と圧倒できています。しかし、これがレベルが上がると、途端に打たれてしまう
ゾーン内での甘さがあります。四死球率は 24.4% なので、四死球で自滅するような、そういった危うさはないのですが ・・・。

変化球 スライダー・カーブ・カット・ツーシーム・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 右打者外角低めに逃げてゆく、大きな曲がりをするスライダーが最大の武器です。他にも、緩いカーブ・カットボールやツーシーム系の球、左打者にはチェンジアップなどを使い、結構多彩です。明確に空振りを奪えるといった球がスライダーぐらいなので、この球に食らいつかれたり、見極められると苦しくなります。その辺は、69回2/3イニングで53三振と、1イニングあたり 0.76個と、
さほど決め手があるといったわけではないことからも伺えます。

その他

 牽制は自信を持っているのか? セカンドにいても鋭いものを投げてきます。クィックは0.9秒台と素早く、フィールディングも俊敏ではないのですが、落ち着いてボールを処理できています。むしろ、高校時代から淡々と投げるタイプで、
投球の強弱だとか、間のとり方などのセンスに欠ける部分がありました。

(投球のまとめ)

 
スペックは確かにアマでは上位なのですが、それほど細かいことができるわけではありません。その辺が、接戦になると今でも出て、好投していても最後勝ちきれない、そういった投球が秋にも見られました。そういった何か勝つためのコツ、要所での踏ん張り等、詰めの甘さをいかに改善して行けるかだと思います。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時には、膝にそれほど力みは感じられず、適度にバランスの取れた立ち方になっている。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足は高い位置でピンと伸ばされており、
お尻は適度に一塁側に落とせている。すなわち、体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出し投げる球種でも無理なく投げられる。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、体を捻り出す時間も適度に確保。そういった意味では、曲がりの大きな変化球の習得も期待できる。実際のところスライダーの曲がりは大きいのだが、あとは縦の変化などをモノにしたいところ。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドの投げ訳は安定しやすい。気になるのは、足の甲での地面の捉えが浅く浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが高めに集まりやすい。「球持ち」自体は悪くないので、そこまで制球は乱さないが、ゾーン内では時々高めに甘く入って痛打を浴びることが多い。けして空振りを誘う球質ではないので、ボールが浮くとそのままヒットに繋がりやすい。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせているので、窮屈にならずに投げられている。そういった意味では、肘などへの負担も少なそうだし、現状カーブやフォークなどを多くは使って来ないので気にしなくても良さそう。

 むしろ若干、
ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている方の肩が下がり気味な腕の送り出し。そういった部分では、肩への負担はそれなりにあるのではないのでしょうか。それほど力投派ではないので、疲労を溜め込むといったほどではないと思うのだが。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れ、ボールにも出どころもある程度隠せている。そういった意味では、投げミスをしなければ特に合わされやすいということはないだろう。

 腕もしっかり振れて体に絡んできているので、打者としてはボールになる球に対しバットは吊られやすいはず。ある程度はウエートを乗せてからリリースしているようには見えるので、打者の手元まで力のある球は投げられている。あとは、
回転軸などに気をつけて、質の良い球を追求して欲しい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たりません。制球を司る動作では、足の甲が浮きがちでボールが上吊りやすいこと。肩への負担が高そうなのが、懸念材料でしょうか。変化球に関しては、多彩なだけでなく、もっと武器になる球を見出して行けても不思議ではありません。
思った以上に、フォームは実戦的でした。


(最後に)

 投球内容的には、まだまだ一軍半レベルぐらい。ここから一軍戦力になるためには、プロでの成長・進化が求められます。そういった意味では、ベースとなるフォームは悪くないので、本人の意識と発想力などのセンスによっては、まだまだ良くなっても不思議ではありません。

 1年目から即戦力となるのは厳しいかもしれませんが、
2年後、3年後と徐々に良くなって行ける。そういった可能性は、感じなくもありません。そういった部分に期待したり、春よりは少し力と技のバランス良くなってきている、そういった部分を評価して、ワンランク評価を引き上げた最終評価にしたいと思います。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2023年 東都二部リーグ戦)


 








西舘 昂汰(専修大4年)投手 188/92 右/右 (筑陽学園出身) 





「思ったほど実戦的にならず」





 筑陽学園時代は、凄みのある球を投げる投手というよりも、4年間でかなり勝てる実戦的な投手になるのではないかと期待していた 西舘 昂汰 。むしろ今は、ボールの力で勝負する素材型といった色彩が強い。


(投球内容)

 3年秋には、東都二部リーグながら、最優秀投手 を獲得。一部二部入れ替え戦では、150キロのボールを投げ込み注目された。エースとして期待された最終学年では、イマイチ勝ち味に遅く、一時は3部との入れ替え戦にまわる可能性もあったぐらいだった。

ストレート 常時145キロ前後~MAX93マイル(150キロ) ☆☆☆★ 3.5

 空振りを誘うというよりは、球威のある球を両サイドに散らせてきます。ボールの威力の割に簡単に打ち返される印象があり、合わされやすいというよりも、やや高めに伸びに欠ける球を投げるので、外野の頭を越されることは少なくても、外野手の前にはじき返されてしまうことは少なくないように感じます。

変化球 スライダー・カット・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 大きな曲がりをする
スライダーを武器にしており、微妙に芯を外すカットボールや緩いカーブなどの球も混ぜてきます。また、左打者にはチェンジアップを駆使して相手を討ち取ろうとします。変化球も空振りを誘うというよりも、微妙に芯ズラしたりカウントを稼ぐためのものですが、スライダーに関しては空振りを誘うことができます。

その他

 クィックは、0.9秒台と高速。牽制も、適度に鋭いものを織り交ぜます。またその投球は、間を使ってとか微妙にコースの出し入れをするような、巧みなな投球術はありません。

(投球のまとめ)

 現状は、力のある球を両サイドに散らす。あるいは、変化球を織り交ぜ打ち損じを誘う投球です。しかし、上記にもしたように、微妙な制球力、武器になる変化球はなく、相手の打ち損じを誘うピッチングとなっています。



(成績から考える)

 今シーズンの成績は、東都二部リーグで 
3勝3敗 62回2/3 38安 17四死 53三 防 1.01(2位) といったものでした。

1、被安打は投球回数の70%以下 ◯

 東都二部リーグの選手なので、ファクターは地方リーグ並に設定した。被安打率は、60.6% と、基準を満たしている。簡単に打ち返されることはあるが、連打は喰らい難いのかもしれない。

2、四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯

 四死球率は、27.1% と、こちらも基準を満たしている。余計な四死球で試合を壊すことはないが、
ゾーン内の球筋が高いのは気になる材料だろうか。

3、1イニングあたりの奪三振は、0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振率は、0.85個 と、先発投手の基準を満たしている。絶対的な決め球があるわけではないが、真っ直ぐがコースに決まったときの見逃しやスライダーのキレで三振を稼いでいるのかもしれない。

4、防御率は1点台以内 ◯

 防御率は1.01 、絶対領域の0点台にあと一歩足りなかった。本格的に先発入りした昨シーズンも 1.72(3位)と悪くはないが、まだ二部の中でも圧倒的な内容は示せていない。

(成績からわかること)

 どのファクターも満たしているなど、ある程度の総合力は身につけている。しかしそれが、東都一部相手にできるのか? ましてプロの打者相手にできるのかといった部分では、実際見ていると不安は残る。


(最後に)

 一年目から一軍でガンガン活躍するというよりも、ファームで多少の育成期間は必要そう。それだけに、あまり入れ込んで上位指名でといった感じはして来ない。ボールの強さや素材としての面白味はあるので、2~3年目ぐらいにどのぐらいの選手になれているかを期待して、少し長い目で見守って行きたい。


蔵の評価;
☆☆ (中位指名級)


(2023年 春季リーグ戦)


 








西舘 昂汰(筑陽学園3年)投手 187/84 右/右 
 




 「微妙なところを突ける」





 選抜や春季九州大会でも見たが、何処かピンと来るものがなかった 西舘 昂汰 。しかしこの夏は、少しずつではあるがゆるやかな成長を感じさせてくれた。特に右打者の外角一杯のゾーンにボールを集めることができるなど、アバウトそうで結構繊細ななコントロールを持っているのである。

(投球内容)

 187センチの恵まれた体格から、大きなテイクバックをとって投げ込んでくる。

ストレート 135~143キロ ☆☆★ 2.5

 球速自体は、130キロ台中盤~140キロ台前半ぐらいとドラフト候補としては物足りない。またボールが常に動いているような癖球で、キレイな回転ではなく手元まで伸びてくる感じがしない。良く言えば動いて飛び難い、悪く言えば汚い回転で空振りが誘えない球質。それでもボールはストライクゾーンの外へ外へと散りやすく、また打者の内角も厳しく突くこともできるなどコマンド面では評価できる。

変化球 スライダー・カットボール・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 変化球は、右打者外角低めにしっかり集められるスライダーが武器。また左打者の内角を中心に、小さく微妙に食い込んでくるカットボールで詰まらせる。逆クロスへの球は意識してなのか?無意識なのか? ツーシーム的にショートする。春まで投げていたチェンジアップは、夏の大会ではよくわからなかった。また余裕が出てくると、緩いカーブも使って来る。打者の空振りを誘うといった球種はないが、微妙なゾーンに変化球を集めて打たせて取る投球が持ち味。そういった技術には、高いものを持っている。

その他

 クィックは、1.25秒前後とやや遅い。牽制の動作自体は並だが、ノーマークで盗塁をあっさり許してしまうことも少なくない。全体的に投球以外の部分は、大型故にやや緩慢な印象を受ける。

(投球のまとめ)

 凄みのあるボールを投げるのではなく、黙々と動く球を微妙なところに集めて打たせて取る。まだ球速自体がドラフト候補としては平凡な上に、球質もイマイチなので打ち返されてしまうことも少なくない。ヒットは打たれても大量点は許さず、粘り強くイニングを刻み試合を作ってゆく。もう少しプロを目指すには、全体の出力を引き上げたい。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の可能性を模索してみたい。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種を投げられないことは無さそう。「着地」までの粘りもそれなりで、身体の捻り出す時間もそこそこ。決め球になるような球を習得できるかは微妙だが、多彩な球種で相手に的を絞らせない投球は将来的には期待できそう。

<ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがって両サイドへのコントロールは、つけやすいのではないのだろうか。

 足の甲での地面への押しつけも深く、ボールは上吊り難い。「球持ち」も良いので、今後リリースが定まってくれば低めにも安定して集まるようになりそう。将来的には、かなりコントロールの良い投手に育ちそう。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としもある程度できているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球を投げても肘への負担は少ないはず。またそういった球への依存も少なく、現状は肘への負担は気にしなくてよいだろう。

 ボールには適度な角度は感じられるものの、腕の送り出しにも無理はない。したがって、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいということもないだろう。故障のリスクも、かなり低いのではないかと考えている。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも並ぐらい。また角度により芯で捉えられ難く、クセ球も相まってキッチリ捉えるのが難しいタイプではないのだろうか。

 腕も投げ終わったあと身体に絡んで来るなど、適度な勢いと粘りが感じられる。ボールにも体重は乗せられており、打者の手元までの球威は悪くない。しいて言えば、重心を下げる時に膝小僧が地面に着くぐらい深く沈んでしまっている。ここまで深いと、前へ体重が乗ってゆかないので打者の手元まで勢いのある球が投げ難くなる。そういった「体重移動」は、改善の余地があるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、重心が深く沈み過ぎるが故に「体重移動」と、さらに「開き」が抑えられると厄介になりそう。故障のリスクは低く、制球を司る動作にも優れている。将来的に決め球を習得できるかは微妙だが、多彩な変化球で相手を翻弄できるようになる可能性は高そうだ。大型でも、フォームの土台は優れていると評価できる。


(最後に)

 2年秋~3年夏までの成長は緩やかながら、着実な成長が感じられた。高校からプロといった絶対的なものはまだ感じられないが、大学などでは相当勝てる投手になれるのではないかという期待が持てる。全体の出力を引き上げるのと平行して、技術的な部分も改善されてゆけば、卒業する頃には即戦力を期待されるような存在になっていても不思議ではない。

 特にボールが動くようなクセ球投手に大事なのは、低めやコースにボールが集められること。この投手は、そういったことができるだけに、更に球速が引き上がって来ると計算できる投手に成長できそうだ。今回は指名リストには入れないが、数年後には即戦力としてのプロ入りが期待できるようになっていて欲しい。


(2019年夏 甲子園)







 球速は85マイル(136キロ)ぐらいで、カーブ・スライダー・チェンジアップなどを織り交ぜるが、コントロール・変化球・投球術と特に際立つものは感じられず。順調に一冬越えていれば、選抜でも 大畑 蓮(明豊)のような存在になれていたと思うのだが、夏までに何処まで調子を上げて来られるのか? 素材の良さを買って育成あたりで狙う球団もあるかもしれないが、個人的には大学進学することになるのではないかとみている。

(2019年 春季九州大会)