19kp-44
西舘 勇陽(中央大4年)投手 185/79 右/右 (花巻東出身) | |
春は、上位候補と目されながら、いまいちピリッとしなかった 西舘 勇陽 。しかし、この秋は、地に足を着けた投球で、かなり見方が変わってきた。 (投球内容) これまでは150キロ台の中盤の真っすぐなど、ボール1つ1つは凄いものの、制球力や試合を上手くまとめられないバラツキが目立っていた。しかし、この秋は、球速を殺してでも、しっかりピッチングを組み立てられるようになってきた。その証に成績も、57回 27安 9四死 60三 防 1.11(2位) と、格段に、被安打率・四死球率 を下げて、自己キャリアハイの成績を残して魅せた。 ストレート 145キロ~150キロ台前半 ☆☆☆☆ 4.0 以前は常時150キロ前後~150キロ台中盤と圧倒的な球速を誇っていましたが、この秋は球速をおさえてでも、落ち着いて投げることに終始していたように思います。ゾーン内でのバラツキや甘さは残すものの、ストライク先行で相手を早めに追い込むことができていたのではないのでしょうか。四死球率も、15.8% と低く、ストライクが入らず苦しむといった危うさは感じられませんでした。 変化球 スライダー・カット・カーブ・スプリット ☆☆☆☆ 4.0 最大の成長は、追い込んでから、かなりの確率でスプリットが落ちて空振りを誘えるようになったこと。こういった決め手ができたことで、早めに追い込めれば、あとは落として仕留められるという自信というか余裕が生まれたのではないのでしょうか。元々あったスライダーに、カットボールを時々交えつつ、余裕が生まれるとカーブなども使ってきます。真っ直ぐを意識させておいての変化球は、かなり有効だと言えるでしょう。 その他 クィックは、1.05~1.15秒とそれなり。牽制は非常に鋭い。細かい出し入れや、駆け引きができるほどではないものの、落ち着いて投球できるようになったところは、精神的な成長が感じられます。 (投球のまとめ) 春までの印象は、ボールの威力は一級品なので、リリーフならば1年目から戦力になるかもといった感じでした。しかし今は、圧倒的なポテンシャルを活かし、先発でもやれそうになってきました、そういった幅を、少しずつ身につけつつあるように思います。ボール自体はプロでも上位なので、あとは要所での力加減や、詰めの甘さなどが解消できるようになると、1年目から二桁前後狙えるまでになっているかもしれません。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点からみてみましょう。ランナーがいなくても、セットポジションからクィック投法で投げ込んできます。そのため、軸足にしっかり体重を乗せてからといったフォームではありません。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻は適度に一塁側に落ちており、体を捻り出すスペースはある程度確保できています。そのため、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理は感じません。昨年フォーム分析をしたときは、足をピンと伸ばす動作がなく、お尻もバッテリーライン上に残りがちでした。そういった意味では、かなり変わってきているのはないのでしょうか。 「着地」までも大きく前にステップすることで、体を捻り出す時間も確保。したがって、曲がりの大きな変化球の習得も可能になり、スプリットの落差にも繋がったのかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力も内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいのでは? 足の甲での地面の捉えが浅いので、力を入れてしまうとボールが上吊りやすい。この点はあまり変わっていなかったようだが、「球持ち」は前で放せており、指先での感覚は良くなってボールを制御できているのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせるスペースが確保できたことで、カーブやスプリットなどでも負担がかかり難くなったのでは? 腕の送り出しにも無理は感じられないし、以前ほど力まず投げられるようになって、体への負担は減ったのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りもそれなりに、それでいてクィック投法も相まって打者としてはタイミングが図り難いのかもしれません。ただし、ボールの出どころは見やすい部分があるので、コースを突いたはずの球が打ち返されてしまう恐れなどもあります。 腕の振りは勢いがあって良いのですが、「開き」が早いことで縦の変化を振ってもらえないかな?と思いました。しかし、思いのほか打者から空振りが取れているので、それほど問題はないのかもしれません。「球持ち」も良いので、適度に体重を乗せてからリリースもできています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があるように思います。制球は、足の甲での抑えが浅いので、力を入れて投げるボールが上吊りやすい恐れはあります。その辺を「球持ち」の良さとある程度力を落として投げることで、今シーズンの安定に繋げたのかと。故障のリスクは低くなり、ピッチングの幅も広げて行けるフォームにもなってきました。そういった意味では、この一年で技術的にも改善が見られ、それがパフォーマンスに繋げられるようになってきたのではないのでしょうか。 (最後に) 制球力・落ち着き・決め手という部分でも、春より格段に良くなっています。それを裏付けるように、投球フォームにも改善が見られ、良い方向に向いてきているのではないのでしょうか。ボールの力に頼ったリリーフタイプから、今なら、ある程度プロでも先発でイケるのではないかと思わせてくれるところまで来ています。この感じで行ければ、1年目から二桁前後、そのぐらいを期待できるまでになっているのかもしれません。そうすれば、自ずと 新人王候補 にあがってこられると思います。 蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級) (2023年 秋季リーグ戦) |
西舘 勇陽(中央大4年)投手 185/79 右/右 (花巻東出身) | |
不調だった今シーズンも、けしてボールが走ってなかったわけではなかった 西舘 勇陽 。 ただし、試合をトータルでまとめるといった意味では、まだまだ課題が多いところを露呈したシーズンだったのではないのだろうか。 (投球内容) ランナーがいなくてもクィック投法で投げ込む独特のスタイルで、それ自身が問題があるとはみていません。ただし、彼独特の投球だけに、中々バランスを崩すと修正するのが難しい。そのため、微妙なバランスの上で成り立っている投球であるように思えます。シーズン序盤は冴えませんでしたが、リーグ戦終盤ではだいぶ調子を上げた形で終了しました。 ストレート 140キロ台後半~150キロ台中盤 ☆☆☆☆ 4.0 コンスタントに、140キロ台後半~150キロ台中盤を記録できるスピード能力は、今年の大学でも1,2を争う存在です。そういったボールの勢いには見るべきものがあるのですが、ボールのバラツキが顕著だということ。特に高めに抜けてしまうことが多く、、決まって欲しい時に決められないところがあり、この選手の投球の物足りなさにも繋がります。ちなみに平塚合宿では、マイガンで92マイル・148キロぐらいでした。 変化球 スライダー・カット・カーブ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5 スライダー・カット系のボールを中心に織り交ぜてくるのですが、平塚合宿ではカーブを結構使っていました。また落差は大きくないのですが、チェンジアップやスプリットなどの沈む球も織り交ぜます。空振りをバシバシ誘うというよりも、球速のある小さな変化で芯をズラしたり、カウントを整えたりといった役割だと考えられます。 その他 クィックは、1.05~1.15秒とそれなり。牽制は非常に鋭いものを混ぜてくるが、ちょっと神経質過ぎるのではないかと思うぐらいに入れてくるので、もう少し投球に集中した方がと思うことも。細かい出し入れや、駆け引きができるというよりは、やはりボールの勢いや力で勝負するタイプだと言えそうだ。 (投球のまとめ) プロで一年目から大活躍といったイメージは湧き難く、そういった意味では短いイニングで勝負して行くタイプではないのだろうか。ボールの勢いは、プロに混ぜてもトップクラスだろう。まだ持っている能力を上手く投球に活かし切れていないので、その能力を素直にマウンドで発揮できるようだと、プロでも異彩を放つ可能性を秘めている。そういった素材としての凄みこそ、この選手の最大の魅力となる。 (成績から考える) この春のリーグ戦の成績は、2勝4敗 57回2/3 53安 19四死 59三 防 3.43(9位) といった内容に。昨年の春・秋のシーズンは、いずれも1点台だったことを考えると、物足りないシーズンとなりました。 1、被安打は投球回数の80%以下 △ 被安打率は、91.9% と、基準を満たすまでには行きませんでした。ストライクゾーンの枠の中での甘さや、一辺倒になって集中打を浴びてしまうなど、まだまだ実戦的だとは言えません。ただし、通算では66.3% と圧倒的なので、今シーズンが調子悪かったという見方もできます。 2、四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯ 四死球率は、33.0%であり、基準を満たすなど、極端に制球が悪かったわけではありません。むしろ通算では 47.9% と、大幅に制球力は改善したシーズンとも言えます。逆に制球を気にしすぎて、大胆さが薄れてしまっていたのかもしれません。 3、奪三振は1イニングあたり 0.8個以上 ◎ 奪三振は投球を回数を上回るなど文句なしで、通算でも同様の傾向がみられます。この部分に関しては、普段のリーグ戦並の数字をキープできていました。 4、防御率は1点台以内 △ 今シーズンは 3.43 と、完全に基準からはかけ離れています。しかし、3年春・秋のシーズンでは1点台の数字を残しており、けして残せる能力がないわけではありません。ただし今シーズンは、四死球こそ減ったものの、そのぶん被安打が増えてしまい、その結果防御率を悪化させてしまったのかもしれません。 (成績からわかること) 目に見えて悪化したのは被安打率で、それが防御率の悪化にも繋がっていたのかもしれません。その一方で、四死球率の低下など制球力の改善が見られ、奪三振は普段のシーズン並みには奪えていました。立て直しを図れれば、充分に普段並の成績への回復も期待できそうです。 (最後に) 今シーズンは、確かにピリッとしないシーズンではありました。しかし、ボールが走らないから打たれていたわけでも無さそうですし、微妙な狂いを改善できれば、元のパフォーマンスを取り戻すのには、それほど時間はかからなそう。しかし、いずれにしても不安定さがつきまとう選手であり、現状はリリーフの人材とみておくのが妥当ではないかと思います。不安定さと起用が限定されそうなことを考えると、ボールの威力は図抜けていても、ハズレ1位~2位の最初のあたりの評価になるのではないかとみています。ただし、秋のシーズンの最初に、一味違う投球を印象づけられれば、単独1位指名の話しも出てくるかもしれませんね。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2023年 平塚合宿) |
西舘 勇陽(中央大3年)投手 183/79 右/右 (花巻東出身) | |
花巻東時代は、たまにリミッターを外した時には凄い球を投げ込む、そんな投手だった 西舘 勇陽 。 しかし今は、安定して速いボールを投げられるようになった。まだまだ粗っぽさは残すものの、指にかかったときの真っすぐの勢いは本物だ。 ストレート 常時145~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0 勢いと角度を感じさせる真っすぐは、コンスタントに145キロ~150キロ級のボールを投げ込んでくる。秋の青学戦では、154キロを記録。この仕留めに行く時の、ボールの威力には見るべきものがある。その一方で、全体的にボールが高めに行ったり、ボールゾーンに抜けてしまうなど、高低の制球力に課題を残している。ボールが勢いがあるので、学生相手には容易には打たれない。しかし、少しでも勢いが鈍れば、プロの打者は見逃してくれるのだろうか? 変化球 スライダー・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 スライダー系の球で、カウントを整えてきます。他にも、左打者にはチェンジアップ系の球でカウントを奪えます。追い込むとフォーク系の球もあるのですが、まだまだこの球の精度・落差は発展途上。今後、この球の精度が磨かれるかどうかで、投球の色彩は大きく変わってきそうだ。あくまでも現時点では、真っ直ぐ意外に突出した球種はないように見えるが。 その他 クィックは、1.05~1.15秒とそれなり。高校時代は、1.2秒台が多く、遅かったのが改善されてきた。牽制も非常に鋭いものを混ぜてくるが、ちょっと神経質過ぎるのではないかと思うぐらいに多目に入れてくる。高校時代はあまり鋭い牽制を見たことがなかったので、この辺の動作の不安は払拭されている。 それほど間を使ってとか、微妙な出し入れがといった投球術は感じない。気持ちが流行ってくると、前に体が突っ込みやすいので注意したい。 (投球のまとめ) 高校時代にリミッターを外した時に投げていたボールが、今は安定して出せるようになってきた。また、本気になった時の勢いは高校時代の比ではなくなっている。その一方で、投球術や制球力は、それほど変わっていないように見える。そのため、出力は確かに上がっているが、そこまで実戦力・総合力が引き上がっているのかは微妙なのではないかと。現状は、プロを想定すると、リリーフ色が強いのかなといった感じがする。全体的に、もう少し制球力含めて、地に足の着いた投球を最終学年では期待したい。 (投球フォーム) では具体的に、フォームのどのへんに問題があるのか考えてみた。高校時代からテイクバックは小さめだったのですが、今は軸足に体重を乗せることなく一気に投げ込んでくるクィック投法になっている。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 足をピンと伸ばすことなく重心を沈めてくるので、基本的にお尻はバッテリーライン上に落ちます。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークのような捻り出して投げるのには無理があります。 前にステップして、「着地」までの時間を稼ごうとしますが、ステップが狭めで体を捻り出す時間も並ぐらいなのでしょう。そういった意味では、大きな変化は望み難く、球速のある小さな変化などを中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできている。したがって縦推進のフォームでもあり、両コーナーへの投げ分けは安定しやすい。その一方で、足の甲での地面の捉えが浅く、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。故に力を入れたボールは、上吊りやすいのだと考えられます。それでも投球が破綻しないのは、「球持ち」がまずまずで、指先である程度力が伝えられているからではないのでしょうか。やはり課題があるとすれば、高めに集まりやすい高低の制球力だと考えられます。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻が落とせない割には、カーブやフォークなど体を捻り出して投げる球を結構使ってきます。窮屈になりやすく、肘への負担はそれなりに感じられます。 腕の送り出しには無理は感じないので、肩への負担は少ないのでは? それなりに力投派ではあると思うので、疲労はある程度たまりやすいフォームだと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 クィック投法でタメはないものの、いち早く投げ込んでくるので、打者はタイミングがとり難いかもしれない。ボールの出どころは並ぐらいだが、フォームが直線的なので、球筋などが予期しやすい可能性はある。 腕は強く振れているので、打者としては吊られやすい勢いがフォームにはある。ただし球筋が予期されやすいとなると、高校時代同様に、縦の変化を振ってもらえない可能性は考えられる。体重にグッと乗せられてからといった「体重移動」が上手く行っている感じのフォームではないのだが、現時点で相応の威力のある球が投げられているので、その点ではあまり悲観しなくても良いのかもしれない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、上記で記したように「体重移動」に課題を残すものの、そこを改善しようとしなくても良いように思える。足の甲の地面の捉えが浅くボールが高めに抜けやすい制球力・お尻が落とせない割にカーブやフォークをそれなりに使って来る肘への負担。将来的に、武器になるほどの変化球を習得できるのかといった疑問は残ります。そういった実戦的な投球を身につけられるかには懐疑的にはなってしまいます。 (最後に) そういった意味では、今の持ち味を活かすとすれば、プロではリリーフなのではとは思います。短いイニングならば、現時点で150前後~中盤を叩き出せるスピード能力もあるので。ただし、変化球・制球力のレベルがそこまでではないので、何処までこの勢いでプロの打者を圧倒できるかに懸かっています。高校時代と比べ、スピード能力は着実に上っていますが、実戦力という意味ではそこまで引き上がっていない。この辺をどう見るか? あるいは、最終学年で改善されてゆくかではないのでしょうか。それでも、上位候補ではあると思うので、このままのレベルを維持できれば、上位24名(2位)以内の中には、充分に入ってこられる素材ではないかとみています。 (2022年 秋季リーグ戦) |
西舘 勇陽(花巻東3年)投手 184/80 右/右 | |
下級生の時から見てきて、この 西舘 勇陽 のことを好いと思ったことがなかった。その印象は、最後の夏の大会に入っても同様だった。しかしこの夏、岩手大会準決勝・黒沢尻工戦のリリーフで登板した 西舘 の投球は、いつもとは一味違っていた。相手打者は、ドラフト候補の 石塚 綜一郎 。それも審判からは、不正投球と判定され彼の中のスイッチが入ったようなのだ。この直後の球は明らかに勢いが違い、この日最速の149キロに到達。以後も145~後半を連発し、私の評価は一変した。 (投球内容) 均整の取れた体格から、少し小さめなテイクバックから投げ込んできます。 ストレート 140~MAX149キロ ☆☆☆★ 3.5 普段は、常時140キロ前後~140キロ台中盤ぐらいとドラフト候補としては平均的な球速。それほど、周りに訴えて来るような凄味は感じられない。むしろ両サイドや低めに、制球力重視で投げ込んでくる。甲子園ではやや制球を乱したが、岩手大会では23回1/3イニングを投げて6四死球とコントロールも安定していた。特に上記で記したように、リミッターを外した時には145~150キロ級のボールを投げ込みその迫力は一変する。 変化球 スライダー・チェンジアップ・フォークなどか ☆☆☆ 3.0 右打者には、小さく横曲がりするスライダーを外角低めに集めカウントを稼ぐ。また左打者には、チェンジアップ系の球でカウントを整える。追い込むとフォークだかスプリット系の沈む球で空振りを誘うが、この球は見極められて振ってもらえないことが多い。今後は、この球の精度をいかに高めて行けるかではないのだろうか。 その他 クィックは、1.20~1.25秒前後と若干遅い。牽制も軽いものを挟める感じで、走者を刺すような鋭いものは見られない。特に動作が緩慢には見えないものの、それほど素早く動くタイプではないのだろう。 (投球のまとめ) このリミッターを外した時の投球を見たことがあるのとないのとでは、この選手の印象が全然違うのではないかと思われる。これまでは指名もどうかなと思っていたが、この投球を見てからは指名は確実なのではないかと思うようになった。少なくても瞬間風速的には、凄いボールが投げられるということ。その割にコントロールや変化球も一定水準あり、けして素材型だとか荒れ荒れの選手ではない。あくまでもまだ、発展途上の段階だということ。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 サイドスローのように、身体を前に折りながら重心を下げて来るので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまう。したがって身体を捻り出すのに必要なスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球には適さない投げ方。 それでも足を大きく前にステップさせることで、「着地」までの粘りが作れている。身体を捻り出す時間は確保できているので、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレや決め球になるような曲がりの大きな変化球を習得しても不思議ではないだろう。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ訳はつけやすい。足の甲での地面への押しつけが浅いのが気になるが、ボール自体はそれほど高めには抜けて来ない。「球持ち」も比較的ボールを前で放せており、指先の感覚も悪くないのだろう。四死球で自滅するような、危うさは感じない。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻が落とせない割に、フォークだかスプリット気味の沈む球を結構使ってくる。そういった意味では、肘への負担は少なくないのでは? また腕の送り出しも、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がる傾向が見られるので、肩への負担も少なくは無さそう。肘・肩への負担が極端というほどではないが、それほど力投派ではないので疲労を溜めやすいということは無さそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りもまずまずの上に、ボールの出どころも隠せている。テイクバックも小さめで、ピュッと見えないところから一瞬でミットに収まるような感覚に陥るのではないのだろうか。 腕も振りは平均的だが、将来的にはもっと強くなると空振りが誘えそう。夏の岩手大会では、23回1/3イニングで25奪三振なので三振が奪えないわけではない。またボールに適度に体重を乗せてからリリースはできているので、力を入れて投げた時などのボールの勢い・迫力には見るべきものを持っている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。比較的各場所まで、神経の行き届いたフォームではないのだろうか。足の甲の押し付けの浅さは見えるが、それほどボールは上吊っていない。制球を司る動作にも優れているが、若干故障のリスクが高いのをどう見るか? 将来的には、縦系の変化球ではないかもしれないが、武器になる球を習得できる下地は持っている。技術的にはしっかりしており、肉体の成長が積めれば常時140キロ台後半~150キロ台前半ぐらいの投球は充分に期待しても良さそうだ。 (最後に) 土台となるフォーム、投球にも大きな欠点は見当たらない。逆に これは! という決め手に欠けるところがあり、能力には疑問を持っていた。しかし黒沢尻工業戦で魅せたボールは本物で、こういった球が安定して投げられたら、プロでも充分通用するのではないかと確信した。比較的コントロール・変化球も好いので、素直に全体にパワーアップが図れれば一軍でも活躍できる可能性があるのではないかとみている。やや評価は落ち気味だが、個人的には意外に面白いのではないかと、最後の夏に評価を高めた選手だった。指名としては育成あたりであるかないかぐらいかもしれないが、そのぐらいで穫れたならば美味しい指名になるかもしれない。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2019年夏 甲子園) |