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小林 珠維(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ







小林 珠維(東海大札幌3年)投手 183/86 右/右 





「意外に考えてプレーしている」 





 ドラフト前に、投手としてのレポートを行った 小林 珠維 。その時は、持っているポテンシャルは高そうだが素材だけで投げている印象が深かった。しかし今回野手としての指名だと訊き、改めて野手視点で見てみることにした。すると、なかなか興味深いことがわかったのである。


(守備・走塁面)

 残念ながら走力を確認する場面は見られなかったが、獲得したスカウトの話しだと脚力もかなりのものらしい。スカウトの話しからは、今宮や周東や柳田といった一流選手との比較が出てくるあたりに、この選手への期待の高さが伺える。

 守備に関しても、投手としてしかよくわかりません。クィックはやや遅めで、フィールディングもやや緩慢に見えました。投手として150キロ近いボールが投げられるので肩は、間違いないと思います。見た感じでは、内野手というよりも外野手向きなのではないかと感じました。


(打撃内容)

 打席に入る時の足場の馴らし方などをみていると、それほどこだわりを持ってやっている感じはしませんでした。それでもチームでは背番号10を付けながらも、4番を夏は任されていました。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のカカトを軽く浮かせます。グリップを高めに添えており、腰の据わり具合・全体のバランスには優れています。両眼で前を見据える姿勢は並みぐらいで、少しボールを呼び込む時にはクロス気味な形になります。

 驚いたのは、相手投手に合わせて微妙に構えを変えてきている点です。観戦した第一打席では両足を揃えたスクエアに構えていたのですが、違う打席では前の足を軽く引いたりします。あるいは、両足をベタ足で着いていたのを、前の足をカカトを浮かしたりと、いろいろなバリエーションを細かく変えて構えているフシがありました。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下る時に一度ベース側につま先立ちしてから、チョンとステップしてきます。あるいは、そこから大きく足を引き上げて打ちに行きます。しかし本格的に動き出すのは、投手の重心が前に移動する段階である「遅めの仕掛け」です。通常こういった二段階で動き出す選手は、リリース直前ぐらいに動き出すのですが遅れないように動けている点は買えます。ボールをよ~く引きつけてから叩く、長距離打者に多く見られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を小さくチョンとステップするときと、大きく引き上げて打ちに行くときがあります。投手によって、足の上げ方も使い分けてきます。最初の投手の時はタイミングのとり難い変則だったので小さなステップで、次の投手はオーソドックスなフォームだったので大きく足を引き上げて踏み込んでいました。踏み込みは、ややベース側に踏み込むインステップです。

 始動~着地までの「間」は短いので、あらかじめ狙い球を絞って逃さないことが求められます。そういった「鋭さ」があるのか?と言われると、その点は心配ではあります。ベース側に踏み込むように、外角を意識したスタイルです。それでも観戦した試合では、真ん中からやや内角寄りの球を、うまく開いてレフトスタンドに叩き込んでいました。踏み込んだ足元もインパクトの際にブレないので、外角に逃げる球や低めの球にも食らいつくことができると思います。実際確認した試合では、第2打席にライトに犠牲フライを放っていました。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めています。バットの振り出しもそれほど癖はなく、インパクトまでのロスは平均的。バットの先端であるヘッドの下がりも少なく、大きな弧を描きつつもフォロースルーもある程度使えてボールを遠くに運べます。

 それほど腕をうまくたたんでさばけるわけではないので、ある程度ボールとバットの距離をとってスイングしたいタイプではないのでしょうか。打球が速いとのスカウトのコメントを見たのですが、この試合ではヘッドスピード含めてあまりそういったことは感じられず。しかし投手として150キロ級のボールが投げられるように、体幹はかなり発達しているのだと思います。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはあっても、目線の上下動は気になりません。腰は早めに開きますが、足元がブレないのである程度のところで開きは止められます。気になるのは軸足が窮屈なので、内角の捌きはどうかと。それでも>軸足を適性な位置にズラしてスイングできるので、見た目ほど窮屈にならずに対応できてしまうのかもしれません。内角寄りの球をパッと開いてレフトスタンドに叩き込んだのは、そういった身体の使い方を瞬時にできるからかもしれません。

(打撃のまとめ)

 当て勘に優れた選手は見えませんし、動作にキレは感じられません。それでも打席で魅せたように、相手によっていろいろ変えて工夫するだけの意識・引き出しは持っているのは驚きでした。投手でのただ速い球を投げているだけという典型的な素材型のイメージとは、少し違ったものが見えてきた気がします。


(最後に)

 高い身体能力と飛距離を活かし、投手としての150キロのスピードよりも野手としての才能を買っての指名らしいです。本人が投手への未練を捨て野手だと割り切って専念できれば大化けするかもという期待感は抱きたくなる素材ではありました。時間はかなりかかると思いますが、長い目で見守ってみたいポテンシャル型です。ひょっとすると、凄い選手になるかもしれませんね。現在のレベルでは投手同様に指名ギリギリのレベルだとは思いましたが、可能性を感じさせるという部分を評価して野手としても ☆ を付けてみたいと思いました。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2019年 南北海道大会)


 








小林 珠維(東海大札幌3年)投手 183/86 右/右 





「能力は高い」 





 ∪18の高校日本代表候補にも選出されていた、道内屈指の素材 小林 珠維 。登板を期待していた南北海道大会・準決勝・決勝戦では登板がなくガックリさせられた。しかし準々決勝での登板の模様を確認できたので、今回はレポートさせて頂きたい。


(投球内容)

 183/86 の骨太の体格の投手で、ノーワインドアップから投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ前後~MAX147キロ 
☆☆☆★ 3.5

 適度な球威と勢いを感じさせる速球で、グイグイと押してきます。それほど細かいコントロールはありませんが、両サイドにボールが散っているのは良いところ。打者の外角にズバッと決めての見逃しの三振は奪えるものの、それほど空振りを誘える球質ではない。特に力のある球で、詰まらせるのが持ち味ではないのだろうか。

変化球 スライダー・カーブなど 
☆☆★ 2.5

 身体の近くでキュッと曲がるスライダーで、カウントを整えることができる。ただしこのスライダーは、あくまでもストライクゾーンの枠の中に集められるといった感じで、何処に決まるかなど精度という意味ではアバウト。それと空振りを奪うほどの曲がりではないので、この球で仕留められるといった球ではない。ほかにも余裕が出てくると緩いカーブを投げていたのをみたが、現状は速球とスライダーのコンビネーションの投手とみて間違いなさそうだ。

その他

 クィックは、1.2~1.25秒ぐらいとやや遅い。牽制も間を外したりするのには使うが、鋭くランナーを威嚇するほどのものは観られない。フィーディングもけしてうまそうな感じではなかったので、上のレベルではこういった部分はかなり鍛えないと行けないだろう。

(投球のまとめ)

 140キロ台後半の威力のある球を投げられるというポテンシャルは確かで、それでいて極端にコントロールが悪いとか、ストレート以外が使えないとかそういった荒々しさはない。ただし投球にそれほど奥深さや繊細さがあるわけではなく、あくまでも力のある球を投げられるだけといってしまえばそれまでだろう。今後いかに、投球に味を加えて行けるかではないのだろうか。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから勢い良く足を引き上げて、軸足一本で立った時のバランスには優れている。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としはまずまずで、身体を捻り出すスペースを確保。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのには無理はない。

 「着地」までの粘りもそれなりで、けして下半身が使えていないわけではない。現状はまだ発展途上なので、武器になるほどの変化球は習得できていない。しかし将来的には、フォークなどの縦の変化球をモノにできる可能性は秘めている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすい。しかし足の甲の地面への押しつけが浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでも肘をしっかり立てて振れており、「球持ち」も悪くないので大きなブレは生じ難いフォームなのだろう。もう少し下半身を使えるようにして足の甲がしっかり地面を捉えられるようにするか、リリースでもっとボールを押し込めるようになると、低めにもボールが集まるようになるのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆★ 4.5

 お尻は落としせている上に、カーブやフォークをほとんど投げない。したがって現時点では、肘への負担も少ないだろうと考えられる。また腕の送りだしを観ても、ボールには角度があっても肩への負担はかかっているようには見えない。ましてそれほど力投派でもないので、疲れからフォームを乱す可能性も低いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも早すぎることはない。したがって甘く入らなければ、痛打は浴び難いのではないのだろうか。思ったほど腕が投げ終わったあと身体に絡んで来ないのは気になったのだが、もっと腕が振れるようになり勢いが出てくる空振りが奪えるようになりそう。ボールへの体重の乗せ具合も発展途上なので、下半身の鍛錬や股関節の柔軟性を養えれば、グッと打者の手元まで生きた球が投げられるようになるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。そのかわり全てがまだ良くなる余地が残されており、本人が自己追求できるような選手ならばもっともっと良くなるだろう。

 足の甲の押し付けの浅さから全体にボールが高い傾向にはあるものの、ストライクが入らないとかそういった危うさはない。故障のリスクは低いし、将来的には縦の変化球などを武器にできる下地は持っている。確かに成長途上のフォームではあるが、土台となるものは想像以上だった。


(最後に)

 現状は勢いのあるボールをストライクゾーンに投げ込んでくるだけといった感じで、細かい制球力、繊細なコントロール、微妙な駆け引きができるようなセンスは感じられない。それでも打っても4番を務め、ボールを飛ばす能力にも長けておりポテンシャルの高さには確かなものがある。

 素材としては充分に高校からプロ級だと思うので、あとは何処まで野球を深く追求できる貪欲さと、それを成し遂げるだけの器用さがあるかではないのだろうか。若干その辺の部分には不安が残るものの、高校からプロに入る能力は充分あると評価する。おそらくドラフトでは、下位指名~育成あたりになるかもしれない。しかし指名漏れの可能性は、かなり低いのではないのだろうか。近い将来、常時150キロ前後~150キロ台中盤ぐらいは望める才能があるのではないのだろうか。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2019年 南北海道大会)