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鈴木 寛人(広島)投手のルーキー回顧へ







鈴木 寛人(霞ヶ浦3年)投手 186/79 右/右 





 「好素材ではあるけど」





 春先から評価がうなぎのぼりとなった 鈴木 寛人 。私自身も球場に足を運んだが見られず悔しい思いをしたが、まさか甲子園まで勝ち上がって来るとは思わなかった。関東屈指の好素材だとは思うが、果たして最上位でゆくほどの素材なのか考えてみたい。


(投球内容)

 スラッとした手足の長い投手体型の投手で、ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込んでくる。

ストレート 140~140キロ台後半 
☆☆☆★ 3.5

 適度な勢いとスピード感のある速球を軸に、多彩な変化球を織り混ぜ討ち取ってきます。けしてストレートの力でねじ伏せようという投球スタイルではありませんし、また球速ほど手元で伸びるとか球威が凄いとかそういったボールでもないように思います。ただしボールには角度が感じられるので、バットの芯では捉え難いのではないのでしょうか。

 立ち上がりはバラつく傾向が強く、あまり細かいコントロールはありません。それでもストライクゾーンの外に外にと散るので痛打は浴び難いのですが、甘くない球でもハイレベルな速球でも打ち返せる履正社打線に捕まってしまいました。元来ならばイニングが進むに連れ球筋が安定し、低めに膝下付近に角度のあるボールを集めるが彼の持ち味です。しかし履正社戦では、球筋が定まる前に捉えられてしまって、その後も味方のエラーなども重なり元来の力を出しきれなかったのが甲子園だった気がします。しかしボールの走り自体は、普段以上に序盤から飛ばしてはいました。

変化球 スライダー・カットボール・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 横のスライダーでカウントを整え、縦のスライダーやフォークで空振りを誘う投球が持ち味。他に左打者内角を突くカットボール、緩いカーブなどもあります。気になるのは、縦の変化が見極められてしまうことが多いこと。これは履正社打線だけでなく、茨城大会の決勝で対戦した常磐大戦でもそうでした。この辺がもう少し、身体の近く落ちるようになると、速球も生きてくるようになると考えられます。

その他

 クィックは、1.05~1.10ぐらいとまずまずですが、牽制などは見られませんでした。ランナーを背負うと、ボールを長く持って走者や打者を焦らすなど、ランナーを背負っても冷静なところはこの選手の好いところ。

(投球のまとめ)

 立ち上がりさえ乗り越えられれば、淡々と低めに角度のある球を集めてきます。その間走者を出しても、ジタバタしない冷静さはこの選手の良さではないのでしょうか。ボール自体はまだ高校生の球といった感じで、全国の強豪校相手だと厳しいかなと思ってみていましたが、案の定履正社打線に圧倒されてしまいました。このへんがまだ、成長途上の投手といった感じがします。それでも伸び代は充分であり、数年後にはプロでもローテーションを任される存在への期待は膨らむのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 足をスッと引き上げますが、どちらかというとゆったり自分の投げられる先発タイプかと。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としは甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種でも無理は無さそう。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間は並。したがって多彩な球種は投げられる下地はあるものの、決め球になるような変化球を身につけられるかは微妙といった感じがします。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドへの投げ訳はつけやすい。足の甲でも地面を押し付けることができており、力を入れても高めには抜け難い。「球持ち」適度に前で放せており、将来的にはブレの少ない高い制球力を誇る投手に育つ可能性が高そう。今はリリースが不安定な部分があるのだろうから、そのへんは下半身がしっかりして身体ができてくると改善されてきそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、それほど悲観するほどではないだろう。ただし、今後縦の変化への依存がさらに多くなるようだと肘への負担は心配にはなる。

 ボールには角度を感じさせる投げ方だが、腕の送り出しには無理がない。したがって、肩への負担もけして大きくはないのでは。けして力投派といった感じでもないので、疲れを溜めてフォームを崩す。そこから、故障に繋がるというリスクは低そうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平凡で、打者としてはそれほど打ちづらくはないだろう。ボールの出どころも平均的で、可もなく不可もなしといった感じだろうか。それでも投げミスをしなければ、そんなに痛手は喰らわないのではないかという気はするのだが。

 振り下ろした腕は身体に絡んで来るなど、腕は振れている。ボールにもある程度体重を乗せて投げられているが、まだ充分とは言えない。ウエートを増やしつつ股関節の柔軟性や下半身を強化図ることで、まだまだ球威や打者の手元までの勢いは増してゆくことが期待できるだろう。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」はいいが、あとは平均的といった感じ。全体の動作がもう少し粘り強くなるようだと、もっと嫌らしくなりそう。

 故障のリスクもさほど高くはなく、制球を司る動作も好い。あとは、今後武器になる球が習得できるのか?という不安は残る。全体的にはまずまず土台もしっかりしているので、今後の肉体の成長・技術への探求を続ければグッと良くなる可能性を秘めている。


(最後に)

 まだボールの強さなど総合力では発展途上であり、今後の成長次第といった感じがする。それでも土台となるフォームもよく、技術的にも肉体的にも伸び代を秘めた素材。たちあがりさえ乗り越えれば、あとは淡々とピンチでも自分の投球を続けられる精神的な強さも持っている。1位となるとちょっと怖いが、2位・3位あたりには指名されるであろう選手ではないのだろうか。近い将来、一軍ローテーションへの期待を抱いても好い選手だろう。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 甲子園) 








鈴木 寛人(霞ヶ浦1年)投手 185/74 右/右 





 「好素材」





 綾部翔(DeNA)や遠藤淳志(広島)などの好投手を輩出した霞ヶ浦高校に、先輩達に勝るとも劣らない好素材がいる。その男の名前は、 鈴木 寛人 。残念ながら1年秋の投球しか確認できていないが、手足の長いスラッとした投手体型から繰り出される滑らかなフォームは、誰がみても只者ではないと一目わかるほど。そんな鈴木が、いま12球団のスカウトから熱い視線を浴びているのだという。


(投球内容)

 投球の模様は、1年秋のもの。現在は、コンスタントに140キロ台を叩き出し、最速では140キロ台中盤を記録できるまでに力強さを増してきているという。

ストレート 常時130~135キロぐらい 
☆☆ 2.0

 映像は1年秋の関東大会のものだと思われるが、当時は常時130キロ台~中盤ぐらいの勢い・球威に見える。入学以来球速を20キロも伸ばしていると言われており、その発展途上の段階のもの。まだ球筋も安定しておらず、とりあえずストライクゾーンの枠の中に投げ込んできているだけといった感じはする。そのため球威も強豪校相手だと、打ち返されてしまう感じだった。今年になって強豪校とも相次いで試合をしているが、相変わらず失点は多い。やはり球威・球速は増してきても、細かいコントロールなどはどうなのかは気になる。

変化球 カーブ・スライダー 
☆☆☆ 3.0

 柔らかい腕の振りを生かして、大きなカーブを無理なく投げられるセンスがある。さらにスライダーなどを交えるピッチングだが、現在他にも球種が増えているのか気になるところ。

その他

 牽制もまずまず上手いし、クィックも1.15~1.20秒ぐらいと基準レベル。運動神経に優れているというよりも、野球センスに秀でたタイプといった感じがする。

(投球のまとめ)

 素材の良さは、誰もがひと目みればといった感じの美しいフォームをしている。その土台を元に、順調に肉付きしてきたのだろう。まだまだ素材型の域を脱していないようだが、フォーム分析をして将来像に迫ってみたい。





(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、スッと足を引き上げてきます。ただし元にした映像は、1年秋のもので現在とは多少変わっているかもしれないことはご了承くださいませ。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。したがって身体を捻りだすスペースは充分とは言えません。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適さない投げ方になっています。

 しかし足を大きく前に滑り出すことで、「着地」までの時間を確保。カーブやフォークといった捻り出す球種でなければ、キレや曲がりの大きな変化球を武器にできる可能性があります。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を抑え込めているので両サイドへの制球はつけやすい。足の甲でも地面を捉えているように見えるので、浮き上がろうとする力を抑え込めて上吊り難いのでは? 球持ちも悪くは無さそうだが、身体ができてきてリリースが安定してくれば、球筋も定まってくるように思える。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻を落とせないフォームなので、カーブなどを多めに使っているようだと肘への負担は心配にはなる。また腕の送り出しの際に、グラブを持っている方の肩が極端に上がり、ボールを持っている方の肩が下がっているので肩への負担は大きい。それほど力投派ではないので疲れは溜め難いかもしれないが、故障のリスクは高いフォームだと言える。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りがあるうえ、ボール出どころもある程度隠せている。そういった意味では、けして合わせやすいフォームではないはず。ボールにも角度があり、多少甘くても打ち損じしてくれる確率は高いフォーム。

 長い腕が最後まで身体に絡んで来る粘っこさがあり、また地面を最後強く蹴り上げているように、最後までボールにエネルギーを伝えることができている。そういったフィニッシュの形は、本当に素晴らしい。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」が素晴らしく、エネルギー伝達には優れたフォームといえる。質の好い真っ直ぐが、期待できるのではないのだろうか。

 制球を司る動作で、将来的にピッチングの幅を広げて行ける可能性は感じさせるものの、非常に身体への負担が大きいのが将来的に暗い影を落とす。それ以外の部分では、非常に好いフォームだと思うだけに。


(最後に)

 最終学年において、一体どのぐらいの投手に育ってきているのかというのは、ぜひ確認してみたい北関東屈指の好素材。本人もプロ志望だと訊くし、現在の評判などを訊く限り、綾部・遠藤に続くプロ野球選手の誕生は近いのではないのだろうか。


(2017年 秋)