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井上 温大(巨人)投手のルーキー回顧へ







 井上 温大(前橋商3年)投手 175/72 左/左





「一番好み」 





 大学・社会人まで含めても、今年のサウスポーの中で一番私好みだと言えるのが、この 井上 温大 。あの 松坂大輔 を左にしたようなフォームから、切れ味バツグンのボールを投げ込んでくる。


(投球内容)

 ワインドアップから、振りかぶって投げ込んできます。実際の投球だけでなく、全ての部分で投手としての筋の良さが溢れています。

ストレート 135~MAX142キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ストレートの球威・球速といった部分では、けして左腕として平凡な数字でしょう。しかしボールの出どころも隠せており、そこからビシッとミットに収まる球は、容易に捉えることができません。打者にとっては、プラス5キロぐらいは速く感じられるのではないのでしょうか。

 普段は、両サイドに大まかにボールを散らせてきます。体力の温存やコントロールを重視しているのでしょうが、普段はそれほど速い球を投げようという意識はないようです。逆に力を入れて投げようとすると、制球が乱れる恐れがあるからではないのでしょうか。この夏の群馬大会では、50回1/3イニングで16四死球と四死球率は31.4%。投球回数の1/3以下には抑えられていて基準以内なのですが、プロレベルの狭いストライクゾーンには苦労するかもしれません。そういった本当の意味での、コントロールはまだないように感じます。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 投球の多くは、速球とスライダーとのコンビネーション。速球に勢いがあるので、思わず抜かれるスライダーに並の高校生はついて行けません。ただしそのスライダーが結構甘いところに入ったりとか、精度はそれほどでもないのは気になります。このへんは、上のレベルの打者はキッチリ対応してくるはず。他には、右打者の外角にチェンジアップ系の小さく逃げる球と、余裕が出てくると緩いカーブも投げてきますが、あまり多くは使ってきません。

その他

 左腕ということもあり、一塁走者を見て投げられます。そのためか? クィックは1.3秒台と遅いです。これは、投球に集中してフォームを崩したくないなどの思いもあるのかもしれません。牽制自体はうまく、動作が鋭い以上に入れるタイミングが上手いです。さらにフィールディングの反応・動きもよく、野球センスの高さを感じます。

(投球のまとめ)

 投球にまだひ弱さや制球の不安定さは残すのですが、投手としてのセンスの良さはピカイチだと言えるでしょう。ランナーを出すとじっくりボールを持って、走者や打者を焦らし踏み出すタイミングをつかまさせん。プロで戦えるだけの体力・筋力を養うのに3年ぐらいはかかるかもしれませんが、身体ができた時にどのぐらいのボールを投げられるようになっているのか非常に楽しみです。しなやかさに、強さが加わった時の未来像に夢が広がります。


(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 昨夏よりも引き上げた足を二塁側に送りこまなくなったことで、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としが明確になってきました。そのことで身体を捻り出すスペースが確保できたことは、将来的に大きいかと。捻り出して投げる、カーブやフォークといった球種も無理なく投げられそう。

 深く重心を沈めつつも、なかなか地面を捉えない粘りも出てきました。そのため身体を捻り出す時間をある程度確保できるようになり、将来的にもキレや曲がりの大きな変化球の習得も可能で、速球に依存しすぎない投手になれそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めています。したがって上半身のブレが小さく、両サイドのコントロールがつけやすい傾向にあります。足の甲でも地面を捉えており、浮き上がろうとする力を抑えこめています。これにより高めに集まりやすいのを防ぐことができます。

 「球持ち」自体も良く見えるのですが、まだリリースが安定していないのかもしれません。ボールにバラツキが見られたり、押し込めないからなのか? 時々高めに抜けたりします。しかしこういった部分は、元のフォームの土台・技術がしっかりしているので、身体ができてくれば自然と改善されるのではないかと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆★ 4.5

 お尻も落とせている上に、カーブもそれほど投げませんし現状フォークなども見られません。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく肘への負担は少ないと考えられます。

 腕の送り出しを見ていても無理はなく、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、消耗も少ないと考えられます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆★ 4.5

 「着地」までの粘りが作れる上に、ボールの出どころも隠せているので、打者としては見えないところからピュッと来る感じがすると思います。そのためわかっていても、ワンテンポ差し込まれやすいのではないのでしょうか。

 腕も思った以上にしっかり振れており、投げ終わったあと身体に絡んできます。これだけ振れていれば、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むスライダーに、思わずバットが出てしまいそうです。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、これにウエートや筋力が伴ってくると、打者の手元までバーンと凄味のある球が投げられるようになってくるのではないのでしょうか。

(投球フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の全ての点でハイレベルです。コントロールを司る動作や故障のリスクも少ない上に、将来的にはもっと好い変化球を習得できても不思議ではありません。これにしっかり筋力・ウエートなど肉付けがしっかりできれば、すごい投手になれる可能性を秘めています。おそらく今年フォーム分析した全てのドラフト候補の中でも、一番高いフォーム評価をしているのではないのでしょうか。


(最後に)

 まだ身体のひ弱さ・制球の不安定さを露呈する部分もあり、投球内容としては突出したものはありません。しかしこのフォームの土台・持っている野球センス・冷静な精神面などを加味すると、将来格段に良くなってゆく可能性があります。現状は上位指名級ぐらいの内容だと思いますが、その将来性からもイチオシのサウスポーです。ドラフトでは2位・3位ぐらいかなと思っていますが、私のように入れ込む球団が出てきたら、ハズレ1位に彼を入れている球団が現れても私は驚きません。今年のサウスポーでは、彼がNO.1だと評価します。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2019年夏 群馬大会)


 








井上 温大(前橋商2年)投手 174/68 左/左 





                     「センスが良い」





 しなやかなフォーム、滑らかな体重移動、洗練されたマウンド捌きなどを見ていると、センスの良さを感じずにはいられない 井上 温大 。昨夏投げていた時は、常時130前後~135キロぐらいといった感じだったが、今や最速で140キロ台中盤まで到達するという。センス型から、見事にパワーUPを遂げることに成功した。そのため今や、夏の大会に向けて密かにスカウトの間で評価急上昇中だと言われているサウスポー。

 
(投球内容)

 残念ながら今年の成長ぶりは確認できていないので、昨夏の投球の模様からレポートを作成してゆきたい。試合は、夏の高崎経済大付戦の模様で、試合の途中からの登板のものだった。

ストレート 常時130キロ台前後~135キロ 
☆☆★ 2.5

 昨夏の時点では、まだセンス型でストレートの球威・球速に際立つものはなかった。しかし時々力を入れて投げた球には、才能の片鱗は感じられる。ストレートに関しては、結構高めに抜けたりとバラツキが目立った。球威・球速・コマンドと、この時点では発展途上との印象を受ける。

変化球 カーブ・スライダー・ツーシーム系? 
☆☆☆★ 3.5

 むしろ光っていたのは、変化球のキレ・精度の方。曲がりながら沈むスライダーを中心に、この球でカウントを整えたり、低目に切れ込む球で空振りが奪える。他にはさらに緩いカーブもあるのだが、この球も左腕らしく大きな軌道で曲がりストライクがとれる。他に右打者に関しては、少しだけ逃げてゆくツーシーム系の球があるようだが、この球は沈まないのであまり空振りは誘えない。

 いずれにしてもストレートの粗さを、変化球で補いピッチングを作ることができている。下級生の時点では、変化球の割合が多い投手だった。

その他

 クィックは1.3秒前後と、一塁ランナーを見て投げられる左腕でも少し遅かった。しかしマウンド捌きは経験豊富という感じで、その所作1つ1つにも投手らしさが伝わってくる。

(投球のまとめ)

 この変化球がありながら、ストレートが常時140キロ前後は出せるようになっているとなると、なるほどスカウトが色めきたつのも頷けるところ。ぜひ、その成長を確認してみたいと思わせるものはある。問題は、どのぐらいストレートが制御できるようになっているのか? クィックなどの投球以外の部分も追求して来られているのか見てみたい。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から将来像を見てみたい。ノーワインドアップから、スッと足を上げて投げ込んでくる。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の沈み方自体は悪くないのだが、引き上げた足を二塁側に送り込み過ぎているので、お尻はバッテリーライン上に落ちがち。したがって身体を捻り出すスペースは、やや窮屈になりやすい。それでもお尻自体はある程度落ちていいるので、それほどカーブを投げるのにも負担は少なそう。

 「着地」までの粘りを感じさせるフォームで、身体を捻り出す時間は確保できている。そのためキレや曲がりの鋭い変化球は、習得しやすいと考えられる。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しすい。むしろ足の甲の押し付けが浮き勝ちなので、ボールが高めに上吊りやすい。また「球持ち」も良くはないので、細かい制球をつけ難いという部分もある。その辺を、夏の大会ではどうなっているのか見てみたいポイント。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちだが、カーブをそれほど投げないのであれば現時点では悲観するほどでもないだろう。腕の送り出しにも無理は無さそうなので、肩に負担はかかり難い。けして力投派でもないので、疲労も貯め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもまずまずで、けして合わされやすいフォームではない。まして球の出どころも隠せており、見えないところからピュッと出てくる感じで、打者としては差し込まれやすいはず。

 降り下ろした腕も身体に絡んできており、腕の振りに強さが出てくれば勢いで空振りを誘いやすいはず。「体重移動」もできており、ボールに体重を乗せて投げることができている。これならば、体重が増えれば効率的に球威・球速を増せるだろう。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」にもう少し粘りが出てくれば申し分がない。足の甲のが浮き勝ちなのと指先の感覚がどうなのか?という制球の部分は気になるが、故障のリスクも低く、将来的にもピッチングの幅を拡げて行ける可能性は秘めている。高校生ながら、実戦的なフォームをしていると評価できるのではないのだろうか。


(最後に)

 
センスやマウンド捌きは良いが、実は細かいコントロールがイマイチという左腕は結構多い。そういった部分が、この選手はどうなのか?ということを夏は注視してみたい。そしてストレートで、どのぐらい打者を圧倒できるようになっているのか? その成長ぶりを、最後の夏には、ぜひ見極めてみたいと思っている。


(2018年夏 群馬大会)