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玉村 昇悟(広島)投手のルーキー回顧へ







玉村 昇悟(丹生高校3年)投手 177/77 左/左 
 




 「動じない」





 驚くような球を投げるというよりは、むしろどんな状況でも自分のピッチングを貫く高い精神力を評価したい 玉村 昇悟 。そのことを象徴するのが、夏の福井大会決勝戦・敦賀気比戦。味方のエラーで3失点はしたが、以後のイニングは無失点で抑え込んだ。序盤に失点してしまいワンサイドになりがちな展開だったが、最後まで右打者内角を厳しく突き、低めに変化球を集めるという投球はブレなかった。


(投球内容)

ノーワインドアップから投げ込んでくるサウスポー。

ストレート 常時135キロ前後~140キロ台前半 
☆☆☆ 3.0

 夏の緒戦では、7者連続三振でMAX147キロまで到達したのだという。しかし春季大会での登板や、この夏の準決勝・決勝の投球を見る限りは、驚くようなボールは投げていなかった。むしろキレこそ感じさせるが、球威・球速という意味ではまだ物足りないものが残る。

 その一方で、両サイドにしっかり投げ分けられるコントロールがある。特に狙って打者のインハイを突ける制球力であり、左腕にしてはかなりコントロールが好い方ではないかと思う。夏の福井大会では、42回1/3イニングで四死球は1/4強(26%)の11個と少なめ。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆★ 2.5

 曲がりながら沈むスライダーを低めに集めて来るが、変化球の多くはスライダーで構成されている。時々さらに緩いカーブ、たまに右打者の外角にチェンジアップを投げて来るタイプ。特に武器になるほどの球はないが、どの球も両サイド・低めと集められているので、甘く入っての痛打が少ない。

その他

 クィックは、1.05~1.10秒と左腕としては素早い。牽制は軽く挟む程度だが、フィールディングの動きはまずまず。マウンド捌きも冷静であり、ランナーを背負うとボールを長く持ったりして、走者や打者を焦らすなどして投げ込めている。ピンチでも冷静に、自分の投球に徹することができていた。

(投球のまとめ)

 「コントロールの好い左腕は買い」という私の格言を信じるならば、この選手は高く評価したい。またピンチでも動じず、自分の投球を貫ける精神力も高く買いたい。ボール自体はまだまだ高校生レベルではあるが、変化球も、定して低めてに集められていた。


(投球フォーム)

春先と何か変わったところがあったら、比較してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 春先は引き上げた足を地面に向けて伸ばしていたのが、高い位置でピンと伸ばせるようになってきました。そのためお尻の三塁側(左投手の場合)に落ちやすくなり、身体を捻り出すスペースは確保できるようになっています。したがってカーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げても、窮屈になり難くなりました。

 「着地」までの粘りもよくなり、大きく前にステップしてきます。身体を捻り出す時間も春より粘っこくなっており、キレや曲がりの大きな変化球を習得しやすくなっています。現時点では絶対的な変化球はありませんが、今後そういった球を身につけられる可能性は感じられます。


<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへのコントロールはつけやすい。しかし足の甲の地面への押しつけは浅いので、力を入れて投げるとボールは上吊りやすいのでは? 「球持ち」自体はそれほどでもないが、指先の感覚は良さそう。したがって四死球で自滅するような、不安定なピッチングをすることはないだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせるようになって窮屈さが無くなりつつある上に、カーブもそれなりに投げるが、現時点ではフォークも見当たらない。そういった肘への負担は、神経質にならなくても良さそう。

 腕の送り出しを見ても、若干ボールを持った肩は上がりグラブを持った方の肩は下がり気味。そのため肩の方にも、負担がかかりやすいフォームになっている。ただしそれほど力投派ではないので、疲労を溜め難くフォームを崩す可能性は低そうだ。ただし1つ気になる点をあげるすれば、テイクバックした時に背中のラインよりも肩が入りこんでいるので、その部分で負担がかかっているのではないかと思えるところもある。肩のケアには、充分注意して頂きたい。


<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りが作れるようになって合わせ難い上に、ボールの出どころも隠せていて見難い。打者にとっては、その球速以上に見えないところから出てくる感じになり、差し込まれやすいのではないのだろうか。

 腕の振りはさほど強くは感じられないので、勢いに欠け変化球をあまり振ってくれないのかと思える部分はある。ボールへの体重の乗せ具合も発展途上であり、ボールの球威に欠けているのは作り出したエネルギーをロスしている部分があるからだと考えられる。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「着地」「開き」などは良くなってきているので、これに「球持ち」や「体重移動」がさらに良くなると、より実戦的なフォームになるのではないのだろうか。制球を司る動作・故障のリスクはさほどでもないが、将来的に武器になる球を見出したり、もっと変化球が磨かれてゆく可能性は高い。


(最後に)

 ポテンシャルで圧倒するというよりは、実戦的なサウスポーとして存在感を示してゆくタイプではないのだろうか。好調時には145キロ級のボールも連発できるようなので、もしそういったパフォーマンスを安定して出せるようになれば、その未来像も変わってゆくのかもしれない。

 夏の投球を見る限りは、5位前後ぐらいの指名になるのではないかとみている。そのぐらいの順位で穫れるのならば、面白い選手ではないのだろうか。凄味はないが、好い投手だと思います。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年夏 福井大会)









玉村 昇悟(丹生3年)投手 177/75 左/左 
 




                     「センスがいい」





 残念ながら直には確認できなかったが、この春評価をあげた投手の一人なのが、この 玉村 昇悟 。左腕からバランスの取れたフォームで、腕の振りもシャープな有望株。


(投球内容)

ノーワインドアップから、ゆったりとした感じで投げ込んでくるサウスポー。

ストレート 135~140キロ台中盤 
☆☆★ 2.5

 この春の敦賀気比戦の映像を見る限りは、球速は135~MAX143キロぐらい。他の試合では140キロ台中盤を連発していたとか、MAX147キロまで到達しているといった話もある。しかし先発での投球を見る限りは、常時140キロ前後といった感じ。ボールも手元でピュッとキレる空振りを誘える球質ではあるが、ドラフト候補としてはまだボールの芯が弱いというか球威に欠ける部分がある。それでも両サイドに散らすことができているが、右打者外角高めに抜けることは多い。それでも四死球で自滅するような、危うさはない。

変化球 スライダー・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 映像を見る限りは、横滑りするスライダーでカウントを整え、緩いカーブを織り交ぜて投球を組み立ててくる。チェンジアップもあるそうだが、この春の数試合の映像を見る限り右打者外角にはストレートを投げ込んで仕留めに来ていた。絶対的な変化球はないが、カウントや緩急をつけるということはできていた。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒と左腕としては早い部類。牽制は軽く挟む程度だが、フィールディングの動きはまずまず。マウンド捌きも冷静であり、投球以外の部分にも大きな欠点は見当たらない。

(投球のまとめ)

 まだボール1つ1つに凄みは感じられないが、センスの良い左腕として将来が楽しみ。ただしまだ強豪校を破るとか、上位指名でといった絶対的なものは感じられない。その物足りない部分を補うためには、どうすれば良いのかフォームを分析して考えてみたい。





(投球フォーム)

力むことなく、スッと足を引き上げる落ち着いたフォームです。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に完全に残っています。したがって身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような鋭く縦に落とす球種には適さない投げ方です。

 「着地」までの粘りはそこそこで、身体を捻り出す時間はそれなり。カーブやフォークといった球種以外ならば、キレや曲がりの大きな変化も望めるかもしれません。ただし武器になるほどの、絶対的な球種を習得できるのかは微妙でしょう。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへのコントロールはつけやすい。しかし足の甲の地面への押しつけは浅いので、力を入れて投げるとボールは上吊りやすい傾向にある。「球持ち」自体はそれほどでもないが、指先の感覚は良さそうな投手ではある。したがって、四死球で自滅するような不安定なピッチングをすることは無さそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻を落としていない割に、カーブは結構使って来る。そういった意味では、窮屈になって肘への負担は少ないとは言えない。また腕の送り出しを見ても、若干ボールを持った肩は上がりグラブを持った方の肩は下がり気味。多少肩の方にも、負担がかかりやすいフォームになっている。ただしそれほど力投派ではないので、疲労を溜め難くフォームを崩す可能性は低そうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもそれなりの上に、ボールの出どころも隠せていてタイミングはとり難いのでは? しいて言えばテイクバックした時に、ボールの握りが背中越し見えている可能性があり、読まれやすいのは修正ポイントではないのだろうか。

 腕はしっかり振れ身体に絡んできており、速球と変化球の見分けは勢いがあってつけ難い。ボールにも適度に体重は乗せられており、投げ終わったあとの地面の蹴り上げも良い。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に優れ、他の2つも悪くない。足の甲の押し付けの甘さから多少ボールが上吊りやすいこと、そして故障のリスクがそれなりに高い。さらに、将来的に決め手となる変化球を習得できるのかは微妙だということ。しかしフォームの4大要素は満たされていて、比較的実戦的なフォームをしていることがわかる。けして技術的には悪くないのだが、際立つ特徴がない中途半端な位置づけに陥る危険性は秘めている。

(最後に)

 肉体的にはまだまだ発展途上ではあるが、マウンド捌きも良くフォーム技術も低くない。これから素直に肉付けして行ければ、将来プロでも大成する可能性を秘めている。個人的には下位ぐらいが現在の位置づけだと思っているが、夏までの上積みや左腕であることを考えると、中位(3~5位)ぐらいでの指名があっても不思議ではないだろう。いずれにしても夏に向けて、全国でも要注目の左腕ではないのだろうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年 春季福井大会)