19kp-3
及川 雅貴(横浜3年)投手 183/74 左/左 | |
高校ビッグ4として期待された選抜の舞台では、明豊打線に3回に捕まり5失点。一気に、その評価は急落した。しかしその明豊戦でも、最初の2回までは素晴らしいピッチング。今春の春季神奈川大会でも、交代したばかりの7回は素晴らしい投球で切り抜けた。しかし、イニングによってガラリと悪いところが顔を覗かせるときがある。誰もがその潜在能力は、今年のサウスポーでもNO.1と評価する逸材。夏に向けて、少しずつ良化しつつある 及川 雅貴 の現状を考える。 (投球内容) 線の細さが目立った昨秋に比べると、だいぶ体つきも良くなってきている。体ができつつあることで、フォームのブレも少なくなってきたのではないのだろうか。 ストレート 常時140キロ台~150キロ ☆☆☆★ 3.5 昨秋ぐらいまでは、ストレートが暴れて中々ストライクゾーンに決まらずコントロールに苦しんでいた。しかし今春からは、ストライクゾーンの枠の中に収まるまでには来ており、バランスを崩してイニングによって波はあるものの、ストライクゾーンに決まらないというケースは減ってきている。まともに決まれば、そう易々とは打ち返されない勢いがある。またこの投手の球質は切れ型なので捉えられれば飛んで行くが、ピュッと手元でキレるので空振りが誘える強味もある。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0 大きく曲がりながら沈むスライダーは一級品であり、むしろ下級生の時はこの球頼りだった。さらに今春は、この球よりさらに緩いカーブを使うことで、カウントが悪くなっても整えることに成功。また選抜では使わなかったチェンジアップ系の球も使うようになり、ピッチングの幅を広がっている。今は暴れる速球に、カーブ・スライダー・チェンジアップと的を絞りづらい。 その他 クィックは、1.2秒台とやや遅め。それでも左投手だけに、一塁走者の方を向いて投げられる。走者を刺すような牽制は見られないが、、二塁牽制なども苦にしない。フィールディングも無難にこなせており、投球以外の部分で大きな欠点は見当たらない。 (投球のまとめ) 1にも2にも、自分ペースで投げられない時に、いかに乱れないで投球できるのか? 味方の思わぬエラーや、際どいところをとってもらえなくての四球などをきっかけに、ガタガタと崩れてしまう脆さが常に見え隠れしている。しかし春季神奈川大会後の練習試合でも、かなりフォームのブレが減って安定感を増して来ているという。ハマれば凄いから、安定して凄い投球ができるのか? 最後の夏の大会に注目が集まる。 (投球フォーム) 昨秋は、ランナーがいなくてもセットポジションからの投球でした。しかし今春は、ワインドアップから振りかぶっての投球に変わっています。このへんは、かなりコントロールの不安がなくなってきているからではないかと考えられます。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 昨秋の方が、足をピンと伸ばす高さが高かったように思います。それだけお尻を三塁側には落としやすかったのですが、バランスを保つのが難しい。体を捻り出すスペースは確保できなくはなりましたが、コントロールはブレ難くなっている可能性があります。 「着地」までの粘りも平均的で、可も不可もなしといった感じに。そういった意味では、武器になる変化球の習得はどうかと思う部分はあるものの、コントロールの安定の方を取ったように感じます。左投手だけに、基本のストレートが良ければ、変化球に絶対的なものがなくても、ある程度はどうにかなるようにも思えます。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 昨秋からグラブは最後まで抱えられ、足の甲の地面への押しつけもできていました。しかし「球持ち」が浅くボールの押し込みや指先の感覚が悪い欠点がありました。しかしその辺も、幾分良くなってきているように見えます。フォームの土台は良いので、体ができてきてリリースが安定してくれば、そこまで元来ノーコンの左腕ではないのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が以前ほど落とせなくなったことで、体を捻り出すスペースが確保できなくなっている可能性があります。その上、緩いカーブを多めに混ぜてているので、肘への負担は多少増している可能性があります。それでも、このぐらいならば悲観しなくてもとは思います。 また若干ではあるのですが、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がるフォームです。多少腕の送り出しに肩への負担も感じますが、これも許容範囲ぐらいではないかと。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということはないのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的なので、それほど合わせ難いフォームとは言えないでしょう。それでも球の出処は隠せているので、見えないところからピュッとボールが出てくる感覚には陥りそう。「着地」までの粘りという観点では、以前の方が良かったぐらいです。 腕はしっかり振れるようになっており、勢いがあるので空振りは誘いやすいはず。ボールにも適度に体重は乗せられてきているので、打者の手元までの勢いは悪くありません。さらに下半身が粘れるようになると、グッと打者に迫って来る勢いが増す可能性があります。 (フォームのまとめ) お尻を落としを緩和したことで、多少故障のリスクや変化球のキレや球種に制限されてしまっている点は否めません。しかしその辺のデメリットを取ってでも、ブレの少なくコントロールを優先させた方が現時点では良いのかもしれません。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、大きな欠点は特に見当たらないレベルにあります。 故障のリスクは多少高まったものの、コントロールは安定しやすくなった。また将来的に、決め手となる変化球を習得できるのかには多少の不安が出てきました。まぁ何をとるかでフォームも変わってくるので、現時点ではコントロールを大きく乱さないことが彼にとっては重要だという判断だと思われます。 (最後に) 選抜の2回までのピッチング、春季大会・桐光学園戦でリリーフした際の最初のイニングの投球。それらを見る限り、昨秋よりは緩やかな成長は感じます。自分のリズムで投げられないときの投球と、できれば夏にはストレートで押し切るぐらいの凄みが出てくれば、ドラフト会議で上位12名に入ってくるだろうと思います。そう確信させてくれるだけの投球を、夏の大会では期待してやみません。現時点では、あくまでもまだ半信半疑なので。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2019年 春季神奈川大会) |
及川 雅貴(横浜2年)投手 183/74 左/左 | |
左腕からすでに150キロまで到達する速球に、抜群の切れ味を誇るスライダーを投げ込む 及川 雅貴 。ボール1つ1つを見ている限りは、今年のサウスポーの中でも屈指の素材だと言えよう。しかしコントロールが不安定であり、秋の関東大会では準々決勝で敗戦。センバツ出場は、微妙な位置にいる。将来的にも、凄い大物になるのか、散々な結果に終わるのかは、今のところどっちに転ぶのか想像できないでいる。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。 ストレート 常時145キロ前後~150キロ ☆☆☆★ 3.5 ビシッとミットに突き刺さるような速球の勢いは、大学・社会人を含めても左腕ではNO.1。両サイドにアバウトに投げ分け、高めに抜ける球も少なくない。かなりコントロールはアバウトではあるが、まともにコースに決まったら手も足も出ない。問題は一冬超えてこのストレートが、ある程度制御できるレベルになっているかではないのだろうか。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ ☆☆☆★ 3.5 投球の多くは、スライダーとのコンビネーション。右打者には小さく外に逃げるチェンジアップも持っている。ストレートよりは変化球の方がストライクが取れるので、変化球を投球の軸に置いて余裕のある時にストレートでといった配球にした方が楽に組み立てられそう。それでもこのスライダーも、自在に操れるというほどの精度はまだない。 その他 牽制は時々入れることはあるが、走者を刺すような鋭いものは見られない。フィールディングもそれなりで、クィックも1.2秒前後と平均的。特に投球以外の能力に優れているといった感じはしない。中学時代からU-15などで活躍してきた選手だそうだが、それほどマウンド捌きや投球術に優れているといった感じではない。あくまでも技術よりも、圧倒的なボールの力で勝負するタイプ。 (投球のまとめ) 現時点では、高校生では上位の速球の勢いとスライダーのキレがあるといった投球に終始している。実際この秋の大会では、41.回1/3イニングで四死球は23個と、四死球率55.7%とかなり高い(基準は投球回数の1/3以下)。被安打率は、53.3%(高校生なら70%以下)と、打者を圧倒していることがわかる。奪三振は59個に及び、1イニングあたり1.43個 と、極めて高い奪三振率を誇っている。 実際の投球でも見られるようにボールの威力は図抜けているものの、制球に不安があることは変わっていない。このへんが一冬超えて改善してこないと、プロではかなり厳しいのではないかと見ている。逆に多少なりとも改善されるようだと、菊池雄星のような存在になれるかもしれない。むしろ参考にすべきは、同じ神奈川の先輩である 松井裕樹(楽天)あたりとの比較なのかもしれない。彼もボールの力は群を抜いていたが、かなり制球力に不安があったタイプなので。それでも最終学年では、許容範囲内の制球力を身につけることができていた。及川も、その許容範囲の制球力を身につけられるkではないのだろうか。 (投球フォーム) まだまだ今後どう転ぶかはわからないが、投球フォームの観点から将来像を模索してみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 比較的高い位置で足をピンと伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落ちています。そういった意味では体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種でも無理はありません。 「着地」までの粘りなどを見ていても、あっさりとは地面を捉えていません。そのため、体を捻り出す時間はそれなりに確保。将来的には、スライダー以外にも好い変化球を習得できる可能性があります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで体の近くで抱えられており、両サイドへの投げ分けはつけやすい。足の甲も地面についているので、ボールも上吊り難そうなもの。しかし現実では高めに抜けてしまうことが多いのは、リリースの時にまだボールを押し込む前に放してしまっているから。今後球持ちを意識して、指先まで力が伝えられるようなリリースに変わってくると、もっと細かなコントロールや低めへも集まるようになるのではないのでしょうか。土台となるフォーム自体は、けして悪くありません。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈さは感じないはず。またそういった球種も見られないので、肘への負担は少ないと考えられます。 腕の送り出しを見ていても無理はなく、肩への負担も少ないのでは? また力投派というほどでもないので、疲労を貯めやすいということもなさそう。そういった意味では、フォームを乱して故障に繋がるというリスクも少ないはず <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りもそれなりで、けして合わせやすいフォームではありません。まして「開き」も抑えられており、ボールの出どころも見難いのではないのでしょうか。 腕もしっかり振れており、勢いがあるので空振りを誘いやすいはず。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできており、打者の手元までの勢いが落ちません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「球持ち」に改善の余地があります。しかし後の部分は、かなりしっかりできていると言えるでしょう。 制球を司る動作自体もよく、あとは指先の感覚を磨きたいところ。故障のリスクも低く、投球の幅もまだまだ広げて行ける可能性があります。実際の粗っぽい投球とは裏腹に、フォームの技術としてはかなり高い投手だとわかりました。そういった部分では、佐々木朗希(大船渡)や奥川恭伸(星稜)あたりよりも技術的に高いことがわかります。あとは、体ができてリリースが安定してくれば、制球力もついて来るのではないかと期待させます。 (最後に) 実は、菊池雄星や松井裕樹などは技術的には欠点の多い選手でした。それに比べると及川は、かなり技術的には高いことがわかってきました。しかしまだまだその技術と実際のパフォーマンスとの間に、大きな開きがあることは確かです。そういったギャップを、いかに一冬の間に埋められるのか注目したいところです。 私が当初想像していた以上にその将来性は高く、春には凄い投手になっているかもしれないという期待も広がります。菊池雄星や松井裕樹など、そんな先輩達と並び評される領域にまで、夏には到達するのではないかと夢は膨らみます。 (2018年 秋季神奈川大会) |