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岡林 勇希(中日)外野手のルーキー回顧へ







 岡林 勇希(菰野3年)投手 176/71 右/左





 「野手の方が面白いかも」





 春季東海大会で、スコーンと外野を破る長打を放つのをみて、この選手は野手としての方が面白いのではないかと思えた 岡林 勇希 。すでに投手としての寸評は作成しているが、今回は野手としての可能性を検証してみたい。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、左打席から4.2秒前後。ドラフト指名された左打者としては平凡なタイムなのだが、これは全てベース前で緩めたもの。そのため全力で走りきれば4.0秒前後では充分に走れる走力はあるだろう。そうなれば、プロでも 中の上~上の下 ぐらいの走力はあるとみて良さそうだ。ただし気になるのは、必ずベース前で勢いを緩めてしまうこと。プレースタイル全体が、消極的に見えてしまう。これだと走力があっても、盗塁を積極的に仕掛けられる選手になれるかには不安が残る。

 残念ながら観戦した試合では投手としての姿しか見ていないので、外野手としての守備力はわからなかった。ただし投手として1.05秒強ぐらいの素早いクィックに、鋭い牽制なども入れられる選手。けして、動作が緩慢な選手ではない。まして投手としてコンスタントに145~150キロ級のボールを投げ込む、全国指折りの爆発力があった選手。地肩が強いのは、まず間違いない。

 純粋に走力・肩という意味では、かなりのものがあるのではないのだろうか。気になるのは、その身体能力を活かすセンス・意欲がどの程度備わっているのか?その点では、プレースタイルを観る限り不安が残った。





(打撃内容)

 さすがに中背の体格ながら150キロ級のボールを投げられるだけに、体幹の強さは相当なものなのだろう。捉えた時には、びっくりするようなライナー性の打球が飛んでゆく。高校通算21本塁打の数字が示す通り、現状はホームラン打者というよりも、野手の間を抜けて行く、二塁打・三塁打が多いタイプではないのだろうか。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは下げ気味に構えます。背筋を伸ばしつつも、重心は後ろ足に預けた形。両眼で前を見据える姿勢は悪くないが、全体のバランスとしては並ぐらい。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきった時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる始動です。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足をしっかり引き上げ、ベース側にインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。上手くタイミングを合わせるというよりは、強く踏み込むことを重視している気がします。

 ベース側に踏み込むように、外角を強く意識したスタイルです。踏み込んだ足元はインパクトの際にもブレずに止まっているので、逃げて行く球や低めの球にも食らいつき、レフト方向にも身体を上手く残して流せます。どうしても左のインステップ打者は、最初の駆け出しがワンテンポ遅れるので、一塁到達タイムよりも走力は速い可能性があります。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、力み無くボールを呼び込めているところは良いところ。バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではないのですが、外角の球に対してはロスなくインパクトまで持ってきています。バットを寝せながらヘッドを立ててスイングしているので、ボールを広い面で捉えてフェアゾーンにボールを飛びやす捉え方をトしています。打球に角度をつけて飛ばすとか、そういったタイプではありません。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが大きい割に、頭の上下動は少なめで目線が安定している。身体の開きも我慢できており、軸足にも強さと粘りが感じられた。そのため良く我慢してレフト方向に流せるし、内モモの筋肉も強そうなので強烈な打球を生み出すことができるのだろう。

(打撃のまとめ)

 技術的には完成度が高く、それほどイジるところはないのではないのだろうか。元々投手へのこだわりが強い選手かもしれないので、何処まで野手として割り切ることができるかだろう。本当に自分を追い込んでまで打撃に向き合ったことがあるかは疑問なので、本気に野手に専念した時に持ち得る潜在能力をどのぐらい引き出されるのか興味深い。


(最後に)

 球団によると、投手・野手両方の可能性を模索して一年目は取り組むとのこと。身体能力や秘めたる打撃の潜在能力は相当なものだと思うのだが、野手としては積極性に欠けるプレースタイルなのがどう出るのか気になる部分。

 そういった内面的な部分を除けば、個人的には今年の高校生野手の中でもオススメの1人だと言える。投手としての爆発力も魅力だが、野手としての可能性はそれ以上なのかもしれない。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年夏・三重大会)


 








 岡林 勇希(菰野3年)投手 176/71 右/左
 




「一番凄みがあった」 





 今年生で見た高校生の中では、この 岡林 勇希 ボールが、一番迫力があったのではないのだろうか。おそらくボールの勢い・迫力という意味では、当たり年の今年の高校生の中でも 全国で5本の指には入るだろう。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、思いっきり腕を振って来る力投派。春季東海大会で、その勇姿を確認してきた。

ストレート 常時140キロ台~MAX93マイル・150キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 力んで投げ込んでくるので、どうしてもコントロールのバラツキは見られる。ズシッと重いストレートは、少々甘いところに入っても容易には打ち返されない。球速もコンスタントに140キロ台を越えてきて、最速で150キロまで到達。ボールは確かに暴れるのだが、ストライクゾーンの外に外に散るので痛打されることは少ない。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダーでしっかりカウントを取れ、チェンジアップやフォークも交えてくる。緩いカーブはそれほどでもなく、縦の変化球も精度としては発展途上。それでもストレートが暴れても、変化球ででカウントを整えられる。それこそが、この荒削りな投手の投球を成り立たせている。

その他

 牽制はまずまず鋭く、クィックも1.05~1.25秒ぐらいと基準レベル。一見力任せに投げているように見えるが、ある程度試合をまとめる力を持っている。その証に、チームを春・秋の東海大会に導いているのは一辺倒な投手ができることではない。

(投球のまとめ)

 粗っぽい素材ではあるが、身体に力があり将来性は高い。プロでモノになるのには少し時間がかかりそうだが、力を入れた時のボールはプロの打者でも押されることだろう。また打っても4番を務めるなど、打撃の迫力もなかなかのもの。将来性では、投手によりも打者かもしれないというほどの打力を誇っている。


(投球フォーム)

 オフに作成したレポートでもフォーム分析をしましたが、この春は何か変化があったのか比較して考えてみたい。パッとみての違いは、昨秋よりもグラブを大きく突きあげなくなったことではないのだろうか。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻がバッテリーライン上に落ちてしまいます。したがってカーブやフォークといった、腕を捻り出して投げる球種を投げようとすると窮屈になるので適しません。

 以前ほどは大きくはステップしていないので、身体を捻り出す時間も並ぐらいに。むしろ昨秋までのフォームの方が、身体を捻り出す時間は確保できていたようにすら思えます。したがってキレや曲がりの大きな変化球を習得するには、昨秋のフォームの方が適していたと考えられます。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に抱えることができている。しかし足の甲の地面への押しつけはまだ不十分で、力を入れて投げようとするとボールが上吊りやすい。

 それでも「球持ち」自体は良いので、ある程度はボールを指先で制御できるはず。さらに昨秋は降り下ろす腕と身体が離れていてフォームが暴れやすくなっていたのを、かなり改善できている。コントロールに関しては、昨秋よりも良いフォームになってきたのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻が落とせない割に、カーブやフォークといった球種を投げてくる。窮屈な腕の振りになり、肘への負担も少なくはないだろう。それ以上に気になるのが、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がる極端な送り出しであり、肩で投げている印象は否めない。それでいてかなりの力投派なので、疲労は溜めやすくフォームを崩して故障にも繋がる危険性もある。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りや身体の「開き」も並ぐらいであり、けして合わせ難いフォームではない。しかしそこは、尋常じゃないボールの勢いで打者を圧倒できている。逆に勢いが鈍った時には、餌食になりやすいことを注意したい。

 素晴らしいのは腕の振りが強く勢いがあるので、変化球もつられて空振りしやすいということ。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているので、爆発的な力を生み出すことができている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はないものの「着地」や「開き」にはまだよくなる余地が残されている。制球を司る動作は良くなっている一方で、故障のリスクが高いことや将来決め手となる変化球を習得できるのには疑問が残る。


(最後に)

 ここまでの成長過程を見る限り、順調にスケールアップは遂げられているのではないのだろうか。この投手は、意外に荒れ荒れでも要所を締めることができるし、見た目ほどコントロールも悪くない。将来的には、リリーフでならば面白い存在になりえるだけの馬力を持っている。身体の大きさでは劣るが、昨年の 勝又 温史(日大鶴ケ丘-DeNA4位)的な位置づけではないのだろうか。打撃の才能が非凡なところも、二人は良く似ている。順位的には5位前後の位置づけで、兄の飛翔(広島)よりもワンランク上の、本会議での指名が期待できるのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年春 春季東海大会)








岡林 勇希(菰野2年)投手 176/67 右/左 
 




 「爆発力がある」





 残念ながら夏の大会では早々破れてしまい確認できず、秋の模様を映した一部の動画を参考に寸評を作成してみたい 岡林 勇希 。ぜひ実際の投球を確認する前に、秋の時点での彼の投球を分析してみたかった。


(投球内容)

 前の腕を高々突き出して投げる独特なフォーム。秋季大会では、決勝の三重高校戦で完封。しかし東海大会で中京大中京に破れてしまい、選抜入りを逃した。ちなみにこの試合での最速は、149キロまで到達したという。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆★ 3.5

 普段のストレートは、それほど驚くものはない。しかし、力を入れて決めに来たときのボールは、140キロ台後半を記録し高校生離れした高校生離れした爆発力がある。秋は、38回2/3イニングを投げて15四死球。四死球率は、38.9% 。四死球率の目安は、投球回数の1/3(33.3%)以下だが、30%台であれば極端に悪いというほどではない。アバウトではあるが、制球で苦しむといったほどではないのだろう。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど ?

 僅かな映像を見る限り、変化球はほとんどスライダーとのコンビネーション。他の変化球は、正直よくわからなかった。このスライダーも小さく横に滑る感じで、カウントは整えられるものの決め球といった感じの球ではない。それでも秋の大会では、投球回数を遥かに上回る46個の三振を奪っている。1イニングあたり1.19l個と奪えているが、おそらくその多くは力を入れたときのストレートで奪ったのではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 チームを秋の東海大会まで導いたように、けして箸にも棒にもといった荒々しいタイプではなく、けして素材型という範疇で片付けられないだろう。ある程度の総合力がある上に、確かな爆発力がある球を投げ込める素材だということ。プロ入りした先輩達と比べても、ヒケを取らない能力の持ち主だとは思うが、彼ら同様に下位指名~育成枠あたりに留まってしまう可能性も否定できない。一冬越えて、どのぐらいのアピールできるかに懸かっているのではないのだろうか。





(投球フォーム)

今度は投球フォームを分析して、今後の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に残ってしまっている。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのには適さない。

 前に大きくステップすることで、「着地」までの時間は確保。そのため体を捻り出す時間は稼ぐことができ、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレや曲がりの大きな変化球を習得しても不思議ではない。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドへの制球はつけやすい。ただし足の甲での押しつけが地面から浮きがちなため、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。また腕と頭が離れ過ぎているので、腕をブンと遠くから振る感じになりコントロールを乱しやすい。スライダーでカウントを整えられたり、両サイドへの制球は悪くないので、四死球で自滅というほどではないのかもしれないが。

<故障のリスク> 
☆★ 1.5

 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった球種をあまり投げないので、肘への負担はあまり気にしなくても好いのかもしれない。

 しかし腕の送り出しには無理があり、グラブを持った肩が下がりボールを持った肩が極端に上がっている。こうなると、肩を痛めやすいので注意したい。また尋常でない腕の叩きつけなので、消耗が激しいのは確かだろう。疲労からフォームを乱し、故障に繋がらないか心配にはなる。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りが作れるので、打者としては合わせやすくはないだろう。さらに体の「開き」も抑えられており、ボールの出処も隠せている。したがって甘く入らなければ、痛手は喰らい難い。そのへんのことは、秋季大会でも38回2/3イニングを投げて被安打は25本。被安打率は、64.8%(高校生なら70%を切りたい)と少ないことからも伺うことができる。

 腕も強く振り下ろされており、勢いがあるので打者の空振りを誘いやすいはず。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで爆発的なボールを投げることができている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」「体重移動」には優れていて、「球持ち」が並ぐらいといった感じだろうか。足の甲の押し付けの浅さなどから制球を司る動作に不安があるのと、それ以上に故障のリスクが高いのは気になるところ。将来的には、武器になる変化球を身につけられても不思議ではない。粗っぽいフォームではあるが、打ち難いということに関しては実戦的だと評価する。


(最後に)

 腕を高く突き上げる独特のフォームから、ガンガン力で押してくる。しかし思ったよりも打ち難いフォームで実戦的な上に、コントロールもそこまで悪くない。さすが秋の大会で三重を制し、東海大会まで駒を進めてきた選手。そういった意味では、高校からのプロ入りも充分に意識できる素材ではないのだろうか。今年の東海地区屈指の速球派として、一年間追いかけてみたい一人だった。


(2018年 秋季東海大会)