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宮城 大弥(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 宮城 大弥(興南3年)投手 173/70 左/左





「どう見るべきか」 





 春季九州大会で 宮城 大弥 をみたときは、上位指名は確実だと思った。しかし夏の沖縄大会では、春よりも調子を落としており甲子園出場も逃す。しかし∪18のワールドカップでは、3試合・8回2/3イニングを投げて自責点1と好投した。果たして宮城を、どのように位置づければいいか悩むところではある。


(投球内容)

 一塁側にインステップして踏み出すフォームで、腕の振りもスリークォーターといった感じのサウスポー。

ストレート 常時140キロ前後~MAX149キロ 
☆☆☆★ 3.5

 先発だと常時140キロ前後~力を入れた時に140キロ台後半を記録するといった感じ。しかしリリーフだとコンスタントに145キロ前後を記録し、150キロ近いボールも投げ込んできます。高1の頃に比べると、明らかにボールの勢い・球威は増してきています。

 それほど細かいコントロールはないのですが、ボールを両サイドに散らすことはできます。またカウントが悪くなると、力を抑えてストライクを取りに来るなど、余計な四死球はあまり出さない感じがします。力の入れ加減を調整し、メリハリの効いた投球ができます。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ 
☆☆☆★ 3.5

 九州大会では、スライダーに対し打者についていかれていたこと。そして沖縄大会の決勝戦では、沖縄尚学にスライダーはストライクゾーンからボールゾーンに投げ込むので、最後はボールになることがわかってしまい完全に捨てられていたことが気になりました。

 むしろ∪18では、スライダーだけでなく緩いカーブを使うことでカウントを整える機会が多かったです。またスライダーで空振りをとるよりも、チェンジアップを有効に使っていました。特に韓国戦では、宮城の外角に決まるチェンジアップをなかなか見極めることができていなかったのは印象的でした。そういった意味では、夏の敗戦からストライクを変化球で取れるようになったこと、決め球としてチェンジアップに磨きがかかったことは評価できるのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.10~1.45と、ランナーが出ると投げるタイミングを多いに変えて投げ込んできます。牽制も軽く間を外して入れてくるものから、鋭く走者を刺すような勢いのものまで巧みに織り交ぜます。フィールディングも非常にうまく、運動神経・野球センス含めて非常に高いものがあります。スカウトによっては、将来は野手としての才能をと推すものも少なくありません。

(投球のまとめ)

 チェンジアップの精度は日によって違う感じもしますが、うまく決まるときは非常に速球との見分けが難しく空振りが誘えます。曲がりながら低めに切れ込むスライダーを振らせるのが武器だったのですが、レベルが高い相手だとこの球を振ってもらえません。その代わりチェンジアップが∪18では有効な決め球となっておりました。またカーブを多く織り交ぜることで、カウントを整えられる変化球もでき、以前ほどボールが見られたときでもピッチングが汲々にならなくなったことは成長した部分。

 夏の大会から1ヶ月あまりで、ここまで修正してきたセンス・器用さは高く評価できます。またインステップして踏み出すフォームだけに、左打者にとっては非常に身体に当たりそうで恐怖感を抱く球筋。そういった特徴も考えると、正統派ではありませんが、一定の評価はしないといけないだろうと改めて感じました。


(成績から考える)

 昨年・今春とフォーム分析はしてきたので、今回は∪18での成績を元に、よりレベルの高い相手ではどのような傾向が見られそうなのか考えてみた。サンプルとしては少ないのだが、実にこの成績が彼の今の実力を現しているように感じる。さらにレベルが高いであろうプロの打者相手では、よりこの傾向がハッキリ出るのではないのだろうか。

3試合 8回2/3 10安 3四死 9振 自責点1 防御率 1.04

1,被安打は投球回数の80%以下 ✕

 8回2/3イニングで10安打と、投球回数を被安打が上回っている。これはけして偶然ではなく、それほど宮城の球が苦になり難い可能性があるということ。確かに球威・球速も増したし、インステップからの独特の球筋はあるものの、ボールには角度はなく、物凄く切れるとか、そういった凄味は感じられない。そのためレベルの高い相手ならば、それなりにはじき返すことが可能だということを、この数字は現している。

2,四死球はイニングの1/3以下 △

 8回2/3イニングで3四死球ということで、ほぼ基準はクリアしているように見える。しかしよりストライクゾーンが狭くなるプロの世界で、さらに打者のレベルが上がるプロの打者相手だと、それほど細かいコントロールがあるわけではない彼のコントロールは、高校生相手よりも余計な四死球を出す可能性もあるのではないのだろうかと思うのだ。

3,三振は1イニングあたり0.8個以上 ◯

 僅かながらだが、奪三振はイニング数以上の三振が奪えている。この点は、夏の予選以上にチェンジアップに磨きがかかったことでより数字として現れたのではないかと。この傾向は、プロでも続くのではないかと考えている。

4,防御率は1点台 ◯

 防御率は結果的に1.04で済んでいるが、被安打は投球回数を上回っている。また味方のエラーなどもあり自責点は1で済んでいるが、失点時点は6点あり抑え込んでいたという感じではなかった。むしろ沖縄大会の決勝戦を見ていても、確かに200球を超える球数を投げて辛かったのはわかるが、意外に要所では踏ん張りが効かないのかなといった印象をこの大会も含めて感じた。この数字は、あまり信用しすぎない方が好いのではないかと。

(成績からわかること)

 プロを想定した時に、けして絶対的なボールの威力や制球力があるわけではないのではないかという不安は感じる。そのためよりこの傾向はプロでは顕著に出て、さらに防御率にもハッキリ現れるのではないかと危惧する。

(最後に)

 大学・社会人含めても、今年の左腕の中では3本の指に入る存在。ピッチング内容を見ていると、河野竜生(21歳・JFE西日本)と投球内容・ボールの威力などに大きな差は感じないような気もする。それだけにドラフトにおいては、2,3位ぐらいでは指名されるだろうなといった感じはしている。

 その一方で、もう少しプロで技量・ボールの威力を伸ばさないと厳しいのではないかとも見ている。すでに完成度の高い投手だけに、そういった伸び代が残されているかどうか? ただし春にフォーム分析をした限りでは、まだ改善の余地が残されているので、その辺が良くなると内容も変わってくるかもという期待も残されている。同じ興南の先輩である 島袋洋奨 の高校時代に比べると、絶対的なものは感じられない物足りなさは残った。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 ∪18ワールドカップ)


 








宮城 大弥(興南3年)投手 172/78 左/左 





「トップクラスの左腕」 





 高校・大学・社会人を含めても、今年のサウスポーの中でもトップクラスに位置づけられるのが、この 宮城 大弥 。U-15日本代表の経歴の持ち主で、高1の時から甲子園でも登板するなど全国でもお馴染み。そんな完成度の高い投手が、最終学年においてさらなるパワーアップを遂げてきた。


(投球内容)

 一塁側に踏み出すインステップ気味なのは相変わらずだが、以前ほど体を捻らずに投げ込むようになってきた気がします。左投手がインステップして来ると、どうしても左打者には抜けて体の方に来そうな恐怖感を抱く。そういった意味では、左打者には厄介なタイプのサウスポーかもしれません。

ストレート 130キロ台後半~MAX91マイル(146キロ) 
☆☆☆★ 3.5

 春季九州大会では、立ち上がりこそ130キロ台中盤~要所で140キロを超えキレのある球を投げ込んでいた。4イニング目ぐらいからエンジンがかかってきたのか、コンスタントに140キロ台を超えビシッとした球が決まりだす。私が計測した中では、91マイル・146キロぐらいだったが、他のガンでは140キロ台後半を記録するものも少くなかった。この選手は、同じストレートを投げるにしても、強弱をつけたりして投球にメリハリが効くところが素晴らしい。力を入れて投げたときのボールは、さすがに見応えがあった。

 左打者には外角中心に、右打者には両サイドを投げ分けて来る。ボールも高めに抜けることは少なく、四死球で自滅するような危うさはない。何より培ってきた経験がある選手なので、打者を打ち取る術を知っている。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 気になったのは、意外にスライダーに対し各打者がついていけてヒットされたり好い当たりが多かったこと。そしてチェンジアップが110キロ台と遅すぎて、ストレートとの見分けがつかないというよりもカーブ的なめくらませ的な役割になっていた点だろうか。けして速球との見分けがつかずタイミングを狂わされたり、空振りを誘うような球ではなかった点だ。ピッチング自体は上手いのだが、変化球のレベルは思ったよりも平凡。どうしても苦しくなると、ストレートに頼らざるえない投球に陥ってしまう。

その他

 クィックは1.25秒前後と、やや遅い。牽制はよくわからなかったが、フィールディングはかなり上手い部類。投球以外の動作にも優れ、野球センスの高さが伺われる。

(投球のまとめ)

 早熟の左腕とのイメージもあったが、最終学年に向けて確実にパワーアップは遂げられてきている。投球のうまさ、マウンド度胸などはさすがで、要所をしっかり締めることもできていた。ただし思ったほど変化球レベルが高くなく、相手打線によっては打ち込まれてしまう部分もあるということ。一見高校生レベルでは隙きなしの投球をしそうだが、全国の強豪相手だとつけいる隙きは充分あるようにも思える。それでもサウスポーで、これぐらいの投球ができる投手が他にどの程度いるのか?といった稀少価値は確かにある。


(投球フォーム)

 オフシーズンに作成した、「本当に凄い奴」でも取り上げたのですが、一冬の間に変化があったのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 センターカメラからの映像だと、お尻が三塁側に落ちているように見えた。しかしこの春バックネット裏正面からみたら、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって体を捻り出すスペースは確保されておらず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのには適していないように見えた。

 「着地」までの根張も平凡で、体を捻り出す時間も並。そういった意味では、武器となる変化球の習得が厳しく、決め手不足で伸び悩む危険性は秘めている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に抱えられており、両サイドへの制球は安定しやすい。足の甲の押し付けがやや浅いところがあるが、ボール自体は真ん中~低めに集まりやすく心配するほどではないだろう。「球持ち」も悪くなく、指先の感覚は悪くない。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻を落とせないフォームではあるが、カーブやフォークといった球種を多くは投げて来ないので肘への負担は少なそう。腕の送り出しをみても無理はないので、肩も痛め難いのではないかとみている。それほど力投派でもなければ、力の入れ加減や抜き加減を心得ているので肉体の疲労も溜め難いとみている。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平凡で、それほどタイミングが合わせ難いわけではないだろう。それでも球の出どころは隠せている上に、インステップを活かした独特の球筋も相まって甘く入らなければ痛打を浴び難いのでは?

 降り下ろした腕は体には絡んで来るので、速球では空振りも誘える。ただしボールにしっかり体重を乗せきれていないというか、作り出したエネルギーが流れてしまって、まだボールにしっかりエネルギーをぶつけられていない部分は残る。そのため、投げ終わったあとの地面の蹴り上げは強くない。こういったロスが減ると、さらに速球に凄みを増してくるのかもしれない。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でみると、「開き」や「球持ち」は悪くないが、「着地」や「体重移動」には改善の余地が残されているようにも感じられる。

 制球を司る動作や故障のリスクは悪くないが、将来的にピッチングの幅を広げて行けるのかといった部分で不安が残る。完成度が高い投手というイメージだが、技術的にはそこまで実戦的ではなく平凡だった。


(最後に)

 豊富なマウンド経験と天性の投球術に加え、ストレートのレベルアップで一躍上位指名を意識できるようになってきた。一見完成度が高く、比較的早くプロの世界でも一軍を意識できるようにも感じられる。その一方で、それほど苦になるといったほどでもないフォームに加え、プロ想定すると変化球のレベル・決め手という部分に不安が残る。一軍で通用するようになるためには、もう一皮・二皮むける必要があり、そういった余力が素材としてあるのかは微妙ではないのだろうか。

 それでも左腕でこれだけの投球をできる選手は、高校~社会人含めても3人いるかどうかといった状況。プロ入りを表明すれば2位以内では消えるのかな?といった気はする。しかし春・夏を連覇した 島袋 洋奨(ソフトバンク)ほどの絶対的なものはまだ感じられない気がする。果たして夏までに、完成度をどこまで高めて行けるのか見届けたい。



蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2019年 春季九州大会) 










宮城 大弥(興南2年)投手 173/70 左/左 
 




                      「島袋級になれる男」





 1年夏に甲子園で見て以来、宮城 大弥 は、興南が春・夏連覇したときのエース・島袋 洋奨(ソフトバンク)級の投手に育つのではないかと期待してきた。最終学年を迎え 宮城 は、どのような進化を魅せてくれるのだろうか?


(投球内容)

 足を一塁側に踏み出してから投げ込む、インステップに特徴があるフォーム。特にこのフォームは、左打者にとってサイドスローのように背中越しから来る感覚に陥り、体にぶつかりそうになる恐怖感を抱く球筋となる。そのため左打者には、より厄介なタイプのサウスポーだと言えるであろう。

ストレート 130キロ台後半~MAX143キロ 
☆☆☆★ 3.5

 旧チームでは、リリーフで登場することが多かった。そのため思いっきり腕が振れるので、コンスタントに140キロ前後のボールを投げ込んでくる。球速的には平凡ではあるものの、気持ちの乗ったストレートには球速以上の勢いがある。そのため高めへの球には思わずバットはまわってしまうし、右打者の内角を厳しくも突いて来ることができる。また上記にも記したように、左打者にとっても厄介な球筋なのだ。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 変化球は、スライダーとのコンビネーション。たまに右打者外角に小さく逃げるチェンジアップや緩いカーブを投げてくる。ただし本当に頼れるのはスライダーのみで、他の球は余裕がないとあまり見られない。また変化球の精度・キレという部分では、それほど特筆すべきものはない。ストレートでは空振りは奪えるが、スライダーは低めのボールゾーンに切れ込まないと、うまく振らせることはできないのだ。そのため現状は、速球でグイグイ押すスタイルになってしまっている。

その他

 中学時代はU-15の日本代表投手だっただけに、投げっぷりは好い。更にフィールディングなどの技術も、しっかりしている。

(投球のまとめ)

 ボールの勢いは確かなのだが、意外に荒れ球で細かいコントロールがあるとか、ゲームメイクをして来る先発タイプなのかと言われると疑問が残る。そのへんの不安は、最終学年でどのぐらい払拭してくれるかに懸かっている。

 ボールの勢い・マウンド度胸などは、まさにドラフト候補といった投球を魅せてくれる。ただしポテンシャルで圧倒するタイプではないだけに、よほど春季大会でスカウトにアピールできないと有力大学に進んでからといった判断になる可能性は高い。春夏連覇した島袋洋奨でさえ、大学に進学したのだから。





(投球フォーム)

今度は、技術的な観点から今後の可能性を模索してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は三塁側にしっかり落ちているので、カーブで緩急を効かせたりフォークのような球を投げてもスペースが確保できているので無理は感じない。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。球種は一通り投げられるかもしれないが、武器となる変化球を身につけられるかは今後とも微妙なフォームではある。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けはつけやい。足の甲の地面への押しつけは若干浅いが、ボールが高めに抜けるというほどでは無さそうだ。ただしインステップするということは、結構体の軸がブレやすい投げ方で、コントロールがつけ難い。それも腕の振りがスリークォーターであることを考えるとなおさらとなる。したがって独特の球筋を活かせる一方で、細かい制球力をつけ難いのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 体を捻り出すスペースは確保できているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈にはなり難い。またそういった球もほとんど見られないので、肘への負担は少ないとみている。

 腕の送り出しをみても、肩に大きな負担がかかる腕の振りではないようには見える。結構力投派ではあるので疲労を貯めやすく、そこからフォームを乱して故障につながるというリスクがないわけではないのだが。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出処も見難いといったほどではない。そういった意味では、けして合わせ難いフォームではないのかもしれない。それでもインステップして独特の球筋を活かすことで、打者のタイミングを図り難くはできているのではないのだろうか。

 振り下ろした腕はあまり体に絡んで来ないなど、フォームに粘っこさがあるわけではない。ボールへの体重の乗せ具合も、まだ発展途上といった感じで、さらに良くなれる可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪いところはないが特別優れているところも見当たらない。それだけまだ良くなる伸び代は、残していると言えるのではないのだろうか。

 インステップによって軸がブレやすくて細かい制球がつけ難いといった反面はあるが、故障のリスクは少ないフォーム。むしろ今後は、決め球になるような変化球をいかに見出して行けるかではないのだろうか。実戦派には見えるが、技術的にはけして完成度が高い投手ではない。見た目よりも未完成であり、それでいて伸びしろをまだ残している素材なのかもしれない。


(最後に)

 今年は目立った高校生左腕が少ないだけに、春季大会でのアピール次第では一気に評価が高くなっても不思議ではない。その一方で、それほど肉体のポテンシャルで圧倒するタイプでもないので、大学に進学してからという判断になっても不思議ではないだろう。

 しかし一冬越えた成長次第では、高校球界屈指のサウスポーという位置づけになっても不思議ではない。またそういった存在になっていってくれることを、期待せずるにはいられない。


(2018年夏 甲子園)