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村田 賢一(明治大4年)投手 181/90 右/右 (春日部共栄出身) 
 




 「イメージが変わった」





 普段のリーグ戦だと140キロ前後の球速で、投球術の巧みさで相手の打ち損じを誘うタイプといった印象だった 村田 賢一 。しかし、平塚合宿では、短いイニングということもあり、150キロ級の真っすぐでグイグイ押すイメージを一変させる投球を魅せてくれた。


(投球内容)

 春日部共栄時代から、実戦力の高い投手でした。それが、さらに大学進学後に磨きがかかった印象です。今や実績・実力的にも、東京六大学屈指の存在です。

ストレート 140キロ前後~MAX91マイル・146キロ ☆☆☆ 3.0

 平塚のガンでは150キロを記録していたが、マイガンでは91マイル・146キロほどだった。それでも普段とは違い、力で押せるだけの球威も示していた。特に右打者外角、左打者内角を突く
クロスの球筋を得意としています。両サイドに投げ分ける、コマンド力の高さもこの選手の魅力の一つ。先発時のボールの物足りなさは残るものの、投げようと思えば140キロ台中盤の球を連発できる馬力はあるようです。ただし、平均すると、プロの投手としては、やはり物足りないものにはなってしまう恐れはあります。

変化球 スライダー・ツーシーム・カット・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 球種はかなり多彩な印象ですが、
軸となるのはスライダーとスプリットではないのでしょうか。特に投球の中では縦の変化が多く、この球で空振りというよりは引っ掛けさせる印象。三振を奪うのは、変化球ではなくコーナーにビシッと決まったときの真っすぐで奪います。あくまでも変化球は、真っ直ぐを演出するためのものなのかもしれません。

その他

 牽制は適度に鋭く、クィックは 1.0秒を切るような高速クィック。フィールディングの動きもよく、ランナーを背負うとじっくりボールを持って、相手打者や走者を焦らすような投球術も持ち合わせています。要所でも力を加減を変えるなど、メリハリを付けたピッチングができます。

(投球のまとめ)

 これまでは、
投球の上手いまとまった投手といった感じで、どうしても物足りなさが残っていた村田。しかし、この平塚合宿でのエネルギーをぶつけた時の投球をみると、今年の大学生の中でも指折りの総合力を持った投手といったイメージに変わってきた。ただし、普段のリーグ戦で魅せるような投球が、プロの長いシーズンを想定すると平均的なパフォーマンスとなりうる可能性は充分あるのではないかと。そう考えると、アマとしては典型的な先発タイプに見える彼も、プロでは長いイニングもできるリリーフ投手と見る方が妥当なのかもしれない。


(成績から考える)

 この春のシーズンは、
45回 21安 5四死 36三 防 0.80(2位)
 といった内容でした。

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、46.7% 。この数字を、六大学のリーグ戦で残している意味は大きい。特に普段の真っ直ぐが平凡なのにこの数字を残せるのは、多彩な球種で的を絞らせない投球術や、要所では力の入れた球で仕留められるメリハリがあるからだろう。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率は、脅威の 11.1% 。被安打の少なさに加え、この四死球率の低さこそが、抜群の安定感を残せる原動力になっているのではないのだろうか。

3,三振は1イニングあたり 0.8個以上 ○

 1イニングあたりの奪三振は、、0.8個 と基準を満たしている。こういったところに、彼がただの好投手ではないことを示しているのかもしれない。特に上記でも記したように、
三振は相手の手の出ないようなところに、ビシッと決める真っ直ぐで奪っている

4,防御率は 1点台以内 ○

 今シーズンの防御率は、0.80 と基準を満たしている。2年秋に主力投手になって以降、2点台~1点台~0点台と、
年々安定感を増してきたところに、努力の人といった印象を持つ。

(成績からわかること)

 安定した制球力・巧みな投球術だけでなく、要所で仕留められる真っ直ぐの力も兼ね備えていることが伺われる。また、年々成績・内容を良化してきている点も見逃せないだろう。


(最後に)

 明らかな球速アップが著しく、打撃のパワーも遂げている近年のNPB。そんな中に混ざったときに、彼が持ち味を発揮して行けるのか?といった不安はどうしても残る。しかし、この春の平塚合宿での投球は、そういった不安を払拭するのに充分な内容だった気がする。それだけにプロでは、むしろローテーションの一角というよりも、リリーフ向きなのかもしれない。あるいは、さらに今後パワーアップを図り、プロでも先発を担うまでになるのか? いずれにしてもベースとなる土台は確かなので、そうなって行ける可能性は感じさせてくれたのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年 平塚合宿)









村田 賢一(春日部共栄2年)投手 182/78 右/右 
 




 「ピッチングができる投手」

               





 投球の1球1球の配球に意図があり、しっかりそこに基づいて投球できる。そんなピッチングを高校生ながらできるのが、村田 賢一 。選抜出場を決め、にわかにクローズアップしたい投手の一人である。


(投球内容)

 テイクバックが小さめで、けしてスケール感溢れる素材ではない。むしろスケールよりも、1つ1つの精度を高めてくることを追求してきた投手ではないのだろうか。

ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 球速は140キロ前後と驚くほどのものはまだないが、打者の手元までシッカリボールは伸びてくる。またこの投手、非常にコントロールが安定している。秋の関東大会準決勝・山梨学院戦では、9回を投げて無四球完投。質の好い真っ直ぐと制球力の高さがある一方で、ボールの出どころが見やすく合わされやすいのが課題だろうか。

変化球 スライダー・カット・カーブ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 これらの変化球を巧みに織り交ぜ、相手に的を絞らせない投球が持ち味。けして、ストレート中心にというピッチングスタイルではない。スライダーでも縦・横使い分けている感じだし、カットボール気味の球も使ってくるなど動かして来ることも少なくない。勝負どころでは、縦に切れ込むスライダーやスプリットを振らせるなど、そういった技術も高い。変化の大きな球よりも、スピードのある小さな変化を得意としている。その中で一辺倒にならないように、結構多くカーブを入れて緩急を使おうとしてくる。

その他

 牽制は非常に鋭いし、クィックは1.0秒台を切るような高速クィック。フィールディングの動きもよく、投球以外の部分も素晴らしい。さらにランナーを背負うとじっくりボールを持って走者や打者を焦らすなど、天性のピッチングセンスを持っている。

(投球のまとめ)

 投手としてのセンスや技術という意味では、今年確認した19年度組の高校生でも一番ではないのだろうか。あとは、すでに引き出しを使いきってイメージがあるので、ポテンシャル的に何処まで上積みが残されているのかだろう。このへんが一冬の間に引き上げて来られるようだと、一気に選抜で評価が高まるのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 今後の成長や今の技術で、どの程度上のレベルで通用するのかといった部分が特に気になる選手です。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 お尻の一塁側への落としは、甘さは残すもののある程度落とせています。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球も投げられないことはないでしょう。

 気になるのは、「着地」までの粘りがなく地面を捉えるのが早いこと。これによって体を捻り出す時間が短く、キレや曲がりの大きな変化球が投げづらい。彼の変化球の精度は高いものの、打者の空振りを誘うほどの絶対的なものが少ないのは、そのせいかもしれない。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定しやすい。足の甲の地面への押しつけ浮いてしまっているのだが、腕を縦に振りボールを押し込めているため、抜け球はほとんど見られない。「球持ち」もよく、細かいコントロールがつけやすい。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は甘さを残すものの、ある程度落とせている。そのためカーブを結構使ってくるが、肘への負担は少なめかと。縦の変化も、フォークよりも握りの浅いスプリット。そういった意味では、肘への負担はさほど大きくはないのでは。

 腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担も少なそう。それほど力投派でもないので疲労も溜め難く、フォームを乱して故障につながるというリスクも低いのではないかとみています。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りがないので、打者としては合わせやすい。さらに球の出どころが見やすく、ボールや配球の割にヒットが打たれやすいのは気になる部分。

 腕も体に巻き付くような粘っこそはないので、打者の空振りが何処まで誘えるかは微妙。しかしボールに体重を乗せてからリリースはできているので、打者の手元まで活きた球は投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」が非常に良いのですが、「着地」と「開き」に課題があり合わされやすいのが欠点かと。

 故障のリスクも少なめで、制球を司る動作も足の甲の押し付けができない割に他の動作で補えている。問題は、将来的に武器になるほどの変化球を習得できず、決め手不足で伸び悩む危険性があるのではないかということ。しかし速球と多彩な変化球をうまく織り交ぜ、その曲がり以上に上手く扱う精度の高さがあり、そうやって振らせる・活かせる技術を持っている


(最後に)

 フォームの違いはあれど、高校生としては非常にハイレベルだった 村西 哲幸(比叡山-ベイスターズ)投手を思い出させる投手。問題はすでに完成度が高く、投球に膨らみをもたせたり、素材としての凄みをさらに増して行けるのか?といった部分。そのへんのことが、一冬越えた選抜でハッキリするのではないかとみている。その成長を確認してからでも、ドラフト候補として位置づけられるのか判断しても良いのではないのだろうか。しかし現在は140キロ前後の投球が、コンスタントに145キロ前後まで今の投球で引き上げられたら、一気に上位候補にまで昇りつめても不思議ではない。ぜひ選抜での投球ぶりに注、目して頂きたい一人でだった。


(2018年秋 関東大会)