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佐々木 朗希(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







佐々木 朗希(大船渡3年)投手 190/86 右/右  





「抜き加減も知っている」 





 とかく球速ばかりに目がゆきがちだが、この 佐々木 朗希 は、力の抜き加減と入れ加減を良く心得ている。この夏の岩手大会の盛岡四戦では、190球を超える球数を投げていた。そういった投球を可能にしたのは、投球の強弱をしっかり心得ているからだろう。

(投球内容)

 セットポジションながら、大きく足を引き上げて来るフォームです。大谷翔平が素直でキレイなフォームをしていたのに比べると、佐々木は非常に上げた足に迫力があり、打者からより大きく魅せる圧力を感じさせる投手ではないかと思います。

ストレート 140キロ前後~MAX160キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 大谷が球速の割には苦になり難いフォームだったのに比べると、佐々木はフォームに迫力がありボールの威力も球速表示に見合ったボールを投げ込んでくる印象がある。指にかかった時のボールの勢い・球速に見合ったボールの質・フォームによる威圧感という意味では、素直で比較的合わせやすかった大谷よりもワンランク凄味では上回っている。

 いつでも150~150キロ台中盤を叩き出せる能力がありながら、走者を一塁に置いてクィックを使う時などは、140キロ前後まで球速は遅くなる。しかし走者を二塁まで進ませると、クィックを多少緩めつつも力加減を強めて150キロ前後のボールを投げ込むスタイルに切り替えてきます。走者がいない時・一塁に走者がいる時・得点圏に走者がいる時では、力の加減やクィックのスピードを意識的に変えてきているわけです。

 配球は、基本的に打者の外角に集めるように構成されています。それほど細いコントロールや微妙な駆け引きはできませんが、大まかに自分の狙ったところには集められます。ストレート全体の球筋が真ん中~高めに集まるところが、これからの課題でしょうか。もう少しボールを押し込めるようになると、膝下あたりにビシビシ決まり出すと手がつけられなくなるでしょう。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク 
☆☆☆☆ 4.0

 球種はシンプルに、この3つの変化球をストレートに混ぜて使ってきます。スライダーはそれほどブレーキや曲がりが大きなわけではないのですが、130キロ台で小さく変化しカウントを稼ぎます。チェンジアップは120キロ弱ですが、たまに混ぜて相手の意表を突きます。そして追い込むと130キロ台中盤のフォークを投げるのですが、この球は落差が非常にあり空振りを誘える球種となっています。将来は、この球への依存度が高まることが予想されます。

その他

 クィックは、ランナーが一塁にいる時には1.0秒前後と高速。二塁に進めてからは、1.15秒前後と平均的になります。これは、二塁に進めてからは走者よりも打者への意識を高めるためでしょう。あまり鋭い牽制を入れてくる印象はなく、フィールディングも丁寧に処理するといった感じで、特に素早いとか上手いといった印象はありません。

(投球のまとめ)

 春からの大幅な上積みは感じられなかったものの、改めてただの速いだけの投手ではないことを強く実感させられた夏でした。最後の夏は本気で投げる姿が見られないのではないかとも言われていましたが、要所要所では全力でねじ伏せにゆく姿も見られました。

 何より素晴らしいのは、155キロ前後のボールならいつでも投げられること。そしてその先のイメージできるところが、この投手の素晴らしい点ではないのでしょうか。大谷翔平にも同様のものは感じられましたが、それ以上の総合力を誇り、少なくても大谷が高校時点では到達できなかった領域に到達しています。それどころか、過去の誰も18歳の時点はで到達できなかったところに到達していると言っても過言でないのでしょう。


(投球フォーム)

 大谷翔平が素晴らしかったのは、確かな素材をプロ入り後短期間で磨いていった点にありました。佐々木の最終的な到達点がどこにあるのか?フォームを分析しながら、考えてゆきましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちなフォームで、身体を捻り出すスペースは充分ではありません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような球を投げるのに窮屈で適してはいません。

 しかしながら前に大きくステップさせることで、「着地」までの粘りは作れています。したがって身体を捻り出す時間は確保できており、カーブやフォークという球種は適さないものの、その他の変化球ならば武器になるような球を身につける可能性は充分にあります。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。元々お尻を一塁側に落とすフォームではなく、縦に推進してゆく外人的な動きなので、左右のコントロールのブレは小さいと考えられます。

 まだ股関節の柔軟性や下半身の筋力が発展途上なので、足の甲の押し付けが浅くなる程度の重心の沈み方しかできません。そのため浮き上がろうとする力を抑え込めず、ボールが真ん中~高めに集まりやすい状況を作っています。

 「球持ち」自体はよく指先の感覚も悪くないと思うのですが、もっとボールを押し込められるようになると低めへの球も増えてゆくものと考えられます。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせないフォームなので、カーブは見られませんがフォークを投げる時には肘への負担は少なくないと考えられます。ただし今のように依存度がそれほど高くならないならば、これだけの落差があるボールを投げられるので投げ続ければ好いと思います。逆にプロの打者を仕留めるために、この球への依存度が高まり過ぎる時は怖い気がします。

 腕の送り出しに関しては、角度を感じさせる割に無理は感じません。そういった意味では、肩への負担は少ないと考えられます。またフォームもゆったりしており、滅多に力投して投げません。そういった意味では、疲労も溜め難く故障は起こし難いといえるのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」まで粘りを作れているの上に、足を大きく引き上げることでの威圧感・ボールの角度も感じさせ打ち難さを演出します。ボールの出どころ自体は並ぐらいなので、コースに散った球でも打ち返されたり、縦の変化を見極められてしまう危険性はあります。

 腕も身体には絡んできますが、腕の振り自体はまだ強いとは言えないでしょう。骨密度の関係で、そこまで無理に腕が振れないなどの理由はあるのでしょうが、これだけのボールを投げる投手の割には腕の振りは平凡です。またボールへも体重を乗せてリリースできているように見えますが、地面への蹴り上げは物足りません。このへんも今後股関節の柔軟性を養いつつ、下半身の強化・ウエートアップなどをすることでもっと力強いエネルギー伝達が可能になると思います。ようは、まだまだ発展途上であり伸び代を残しているということです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」「体重移動」は平均的で、まだ良くなる余地が残されていると考えられます。コントロールを司る動作・故障のリスクも悪くはなく、今後武器になる変化球を習得して行ける可能性も感じます。フォームの土台という意味では、打ち難さもありこの佐々木の方が投手としてさらに上の領域まで行ける可能性があると私はみます。


(最後に)

 奥川恭伸(星稜)が能力をフルに絞ってやっていることを、佐々木は7,8割で出来てしまう余力というか器の差は感じます。しかし細部の追求・完成度・現時点での総合力では、奥川が上回っているということでしょう。しかしこれは、8歳時点での話であり、将来に向けてそうあり続けるかは別問題です。

 奥川も確かに歴史的な素材ではあると思いますが、過去の逸材と比較検証できるレベル。しかし佐々木朗希が到達する未来像は、過去の日本人プレーヤーが見たことの景色になることが期待されるほどの逸材だということ。それも私は、その領域に達するまでには、それほど時間を要しないで到達するのではないかとみています。具体的に言えば、プロ入り3年目ぐらいにはその領域までゆくのではないかと思います。そういった意味では大谷翔平こそ過去最高の器だと評していましたが、それを上回る才能の持ち主が出てきたと素直に捉えて好いのではないのでしょうか。☆☆☆☆☆ どころか、評価にはない ☆☆☆☆☆☆ を付けたいようなかつてない逸材です。メジャーでサイヤング賞、期待しても良いのではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆☆☆☆(目玉級)


(2019年夏 岩手大会) 









佐々木 朗希(大船渡3年)投手 189/81 右/右 





 「すでに高校時代の大谷を越えている」





 2年秋に作成した寸評では、佐々木朗希は3年春の大谷翔平 を超えるスピードで進化を続けていると書きました。しかし一冬越えた成長がどうなるかは、正直半信半疑でした。しかし私の不安とは裏腹に、一冬越えた彼は日本のアマチュア史上類を見ない領域へと足を踏み入れていると言っても過言ではありません。その領域とはどのようなものなのか 今回は考えてみましょう。


(投球内容)

 まだまだ不安定で才能が本格化させることができたら、かつて日本球界に存在しないレベルの選手になるのではないかと評価していた大谷翔平の高校時代。しかし何処かまだ未完成で、危うさが残る選手だった。しかしこの佐々木朗希の場合は、そういった不安定な部分が極めて少なく、すでにもう3年春の時点で誰もかつて到達したことがないところまで来ているのが、高校時代の大谷との大きな違いではないのでしょうか。

ストレート 150~163キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 大谷は3年夏の時にでも、確かに異次元に速かったものの、球速ほどは打てないボールではないという感じがしました。しかし佐々木の場合は、足を大きく引き上げたフォームに威圧感を感じさせ、マウンドで実に大きく魅せる特徴があります。そういった無言の圧力が、大谷にはなく佐々木にはすでに備わっています。

 そしてもう一つの違いは、3年夏の大谷の球には確かな尋常じゃない勢いが感じられました。しかしこの佐々木の球には、それに加え角度が感じられるということ。ボールの尋常じゃない球速・+ボールの勢い+角度よる打ち難さ が存在し、容易には捉えることが難しい。そして大谷がそこまで速いのか?と驚かされる球であったのに対し、佐々木の球は本当にそのぐらい出ているよね と体感速度と実際の球速が一致する球であること。今まで見たことのないようなボールではあるのだけれども、それが見ているものが納得させられる球を投げ込んでくれます。

 そしてもう一つ特筆すべきは、そのボールをかなりの割合で狙いどうり操る術を持っている点にあります。そう、ストレートを自分のイメージに近い感覚で操る技術も兼ね備えています。これだけの球速があれば、なかなか思い通り投げるのは難しいはず。しかしそれが、めちゃくちゃにならないところに、この選手の本当の凄みを感じずにはいられません。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク など 
☆☆☆☆ 4.0

 曲がりながら沈む大きなスライダーでカウントを整えることができ、フォークを投げれば大きく確実に落ちる。高3年の春の時点で、これだけの落差のあるフォークを、かなりの確率でしっかり落とせる選手は中々いません。また上のレベルで使えるかは微妙ですが、緩いカーブも使って投球のアクセントにしています。秋見た時は、このカーブは見られませんでした。

 曲がりの大きなスライダーを、しっかり制御できる能力。確実に落とすのが難しいフォークを、秋以上に精度を高めてきたこと。秋には見られなかったカーブを、しっかり自分のものにしてきたことなど、変化球の精度や引き出しを増やしてきたところにも驚きは隠せません。


その他

 クィックなども1.1秒台で投げられますし、ランナーを背負っても気持ちが揺らぐような不安定さは見られませんでした。しかし今春は、突然制球を乱したりと不安定な部分が顔を覗かせる時があるのは確かです。まだまだ彼も、高校生なのだなとホッとさせられるところでもあります。けして彼も、完成された選手ではないという意味で。

(投球のまとめ)

 163キロを記録した後の佐々木は、明らかにギアを落として投球をしています。それは、球速以外の部分を夏の大会に向けて磨こうという意識の現れ。そしてまだ身体が、160キロ台のボールに耐えうるだけのものになっていないことを自覚しているからだと言えるでしょう。しかし夏の大会では、本気モードの佐々木の姿を我々は目撃することになるのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

では昨秋に比べ、技術的には何か変化はあったのでしょうか。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちで甘さを残するのですが、秋よりは一塁側に落ちるようになってきています。今なら多少窮屈さは残るものの、カーブやフォークを投げることも可能ではないかと思えるようになりました。

 また前に大きくステップすることで、「着地」のタイミングを遅らせることができています。そのため身体を捻り出す時間は確保できているので、キレや曲がりの大きな変化球も習得できるはずです。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは身体の近くにはあるものの、しっかり最後まで内に抱えられているわけではありません。そのへんが外に逃げようとする力を充分には抑え込めず、多少ボールがバラつく要因を作っているようにも見えます。

 足の甲での地面への押しつけはできるようになり、秋よりも浮き上がろうとする力を抑えることができています。「球持ち」も良くなり、ボール押し込んでリリースできるようになってきました。この辺は、秋からの着実な成長を感じます。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせるようになり身体を捻り出すスペースは確保できるようになってきたのですが、それでもあんまりカーブやフォークを多投すると肘を痛める危険性は感じます。夏の消耗も考えて変化球を多めに使って試しているのはわかるのですが、あまりそういった球に頼りすぎない方が私は好いと思います。

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担は大きくないように見えます。それほど力投派でもないのですが、足を大きく上げ降ろす上下動の激しいフォームだけに、腰などに疲労を溜めやすい恐れがあります。その状況で無理に投げると、故障に繋がる危険性も感じます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りがあり、打者としては合わせやすいフォームではありません。それに加え球の出どころもある程度は隠せており、球筋にも角度があり打ち損じが多いのでは?

 腕は強く振れて勢いがあるので、空振りも誘いやすいはず。「球持ち」が良くなったことで、しっかりボールに体重を乗せてからリリースできるようになってきました。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ並ですが「着地」「球持ち」「体重移動」が良くなり、秋からの大きな成長が感じられます。

 股関節が柔軟に使えるようになり低目に集まりやすくなってきたこと、そして「球持ち」が良くなることで細かいコントロールもつくようになってきました。またお尻も少し一塁側に落とせるようになったことで、カーブやフォークを無理なく投げられるようになりつつあり、変化球のキレや曲がりにも改善が見られるようになってきています。まだ故障のリスクは感じますが、そのへんも少しずつですが改善されつつあるのではないのでしょうか。

 昨秋までは、ボールは凄いけれど技術は並といった感じでした。しかし課題に対し真摯に向き合い、かなり実戦的なフォームになってきています。このへんが、高校時代の大谷よりも危うさを感じない理由かもしれません。


(最後に)

 肉体的にも技術的にも、自分の欠点を冷静に見つめつつ、それを改善できる器用さと頭の良さを感じます。このへんは、高校時代の大谷には感じられなかった部分です。いまセーブして投げているのも、単に身体が負担に耐えられないという理由だけでなく、夏に疲れからパフォーマンスが低下した時を想定して、あえてストレートの出力を落として投げているのではないかとさえ思います。

 上下動の激しいフォーム故に疲労が溜まりやすく、故障の可能性などが唯一の心配といった感じでしょうか。このまま成長を続けると、本当にどえらい選手が誕生することになるぞという現実感は、過去に類をみないほどの期待に変わろうとしています。間違いなく3年春の時点において、今までの逸材が誰も到達していないところにいることだけは間違いないでしょう。一体最後の夏には、どんな衝撃を我々に与えてくれるのでしょうか?


(2019年 春季大会)









佐々木 朗希(大船渡2年)投手 189/81 右/右 





                      「掛け値なしに大谷級」





 2年秋の時点では、間違いなくあの 大谷 翔平(エンゼルス)に匹敵する素材と言えるのが、この 佐々木 朗希 。秋季大会では、MAX157キロまで自己最速記録を伸ばしてきた。選抜大会の出場を逃したように、まだ全国大会で勝てるほどの総合力はないが、素材としての器の大きさは大谷以来の逸材であることは間違いない。


(投球内容)

ストレート 140キロ台~157キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 少し力を入れれば、けして力まなくても150キロ台を連発できるスピード能力があります。見ていると内角を突くとかそういった投げ分けは見られませんが、打者の外角にボールを集めます。大谷の高校時代以上に、球速表示に見合う感じの球を投げ込んできます。また大谷ほど、フォームが合わせやすそうな感じはしません。こと3年春の大谷と比べても、2年秋の佐々木の方が、ストレートの球速・質という意味でも、上を行っているのではないかとさえ思います。ちなみに大谷翔平が3年春に甲子園に出た時の最速は、150キロだったと記憶しております。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 この佐々木の素晴らしいのは、スライダーの曲がりもかなりハードだということ。それでいて、曲がり過ぎて制御できないということはありません。曲がりがしっかりしているスライダーを、しっかり制御してカウントを整えている点は素晴らしいです。また追い込むと、落差のあるフォークも投げます。これも、かなり2年秋の時点で使いこなすことができています。そういった指先の感覚の良さも兼ね備えているということ。このへんが、一冬超えてさらに精度を増して来るようだと、手がつけられなくなるでしょう。

(投球のまとめ)

 クィックなども1.1秒台で投げられますし、ランナーを背負っても気持ちが揺らぐような不安定さは見られません。ただのボールの速いだけの投手ではなく、投手としての総合力やセンスも兼ね備えている。むしろ素材は図抜けていたけれど、そういったセンスがあまり感じられなかった大谷の高校時代に比べると、現時点では完全に上を行っているのではないかとさえ思います。


(投球フォーム)

今度は、フォームの観点から彼の将来性について考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は地面に向けて伸びており、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった球種には適さない投げ方です。

 しかし前に足を大きくステップさせることで、「着地」までの時間は確保。体を捻り出す時間があるので、カーブやフォークといった球種以外ならば、好い変化球を習得できる可能性があります。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで抱えられているものの、後ろにいってしっかり抱えきれていません。そのため両サイドへのコントロールという意味でも、多少アバウトになってしまっているのではないのでしょうか。

 また足の甲での地面への押しつけも浅く、力を入れて投げると球筋が高めに浮きやすい。実際速球の球筋を見ていると、真ん中~高めのゾーンに集まっていることがわかります。またリリースを見ていても、ボールを押し込むほどには我慢できてないので、低めにはボールがゆかないのでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせない割にフォークは時々投げてくるので、肘への負担は気になります。勝負どころで使う程度ならばさほど心配はないのですが、フォークの精度が上がってきて使う頻度が多くなってくると、窮屈な状態で無理に投げるので故障に繋がる危険性は感じます。

 腕の送り出しには無理は感じず、現時点では肩への負担は大きくはないのでは? それほど力投派でもないので、疲労は貯め難いのではないかと考えています。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはあるので、けして合わせやすいフォームではありません。球の出どころは並ぐらいで、「開き」はさほど抑えられているわけではないでしょう。

 腕はしっかり振れているので、勢いがあり空振りは誘いやすいはず。ボールへの体重の乗せ具合は成長途上で、しっかり乗せてからリリースできているというほどではありません。このへんは、もっと良くなると質の好い真っ直ぐを投げられる余地が残されているということ。このへんが良くなると、グッと打者に迫ってくるような迫力のある球が見られるようになるはずです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」以外はまだ並で発展途上と言えます。それだけ、今後の意識とトレーニング次第では良くなる可能性を秘めているとも言えます。

 グラブの抱え、足の甲の押し付け、球持ち などから見ても、制球を司る動作は優れているとは言えません。お尻が落とせない上にフォークなども時々使うことからも、肘への負担の心配。将来的にお尻が落とせないことで、カーブで緩急・フォークで縦の変化などの投球でピッチングの幅を広げて行けるかも微妙でしょう。ただし「着地」までの時間は稼げているので、違う球で投球の幅を広げて行くことが求められます。いずれにしても下半身の柔軟性を養いつつ、下半身を強化することで下が使えるようになると、手がつけられなくなる可能性があります。投球フォームの完成度・技術的には並であり、まだまだ高校生レベルだといった気がしました。このへんが、まだ全国大会まで勝ち上がれない要因になっているのかもしれません。


(最後に)

 とりあえずわかったことは、持ち得る能力を出し切って今のレベルにあるわけではないということ。そして今後の意識と努力次第では、まだまだ好い投手、速い球を投げられる可能性を秘めているということです。

 心配なのは、大谷翔平のいた名門の花巻東ほど大船渡というチームが彼を大きく育てるというノウハウや環境があるのかといった部分。それだけ本人の意識や周りのサポートが大切になるということです。そのため、現時点では大谷以上のペースで成長を遂げているものの、最後の夏までに大谷レベルまで能力を引き上げられるのかといった部分では、若干の不安が残ることは否定できません。

 しかしここまでの成長過程を見ている限り、本人の取り組みも周りのサポートも悪くないからこそ、このレベルまで来たのだろうと思います。また大船渡というチーム自体が、全国大会には出ていないものの、けしてレベルの低い彼のワンマンチームではないことを夏の大会を見る限り感じました。彼の成長と共にチームも共に成長して行ければ、最高の形で最後の夏を彼らは迎えるのではないかという気がします。現時点では、掛け値無しに、大谷翔平の再来 を期待しても間違いない選手だという気がします。


(2018年秋 秋季岩手大会)