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出井 敏博(西武)投手のルーキー回顧へ







出井 敏博(神奈川大4年)投手 185/70 右/右 (埼玉栄出身) 
 




 「素材は面白い」





 埼玉栄時代から、身体ができてきたら面白い投手になりそうと思っていた 出井 敏博 。神奈川大では、リーグ戦で8試合程度の登板に留まった4年間だったが、4年春のリーグ戦では5試合に登板し防御率2.57で6位の成績を残している。


(投球内容)

 残念ながら大学時代の投球のメモが残っていないので、埼玉栄時代の映像を元にレポートさせて頂きたい。この投手の最も目を惹くのは、腕の振りの柔らかさにある。

ストレート 常時135~140キロ台前半 
☆☆★ 2.5

 まだ当時は身体がビシッとしていなく、ストレートの球威・球速はやや物足りないところがあった。しかしボールは両サイドに投げ分けられていて、コントロールが悪い荒れ荒れの素材型ではない。身体が発展途上で、ビシッとしてくれば面白いのでは?と思わせてくれる筋の良い投手だった。神奈川大4年春の成績をみると、21イニングで20安打と被安打率が高く、苦になく合わされてしまうところはあるようだ。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りスライダーを外角に集めたりと、ストライクを取るのには苦労していない。大学4年春の成績をみても、21イニングで7四死球と投球回数の1/3と許容範囲。それほどコントロールで苦しむタイプではないのだろう。

 当時はチェンジアップのようなフォークを結構投げていたが、この球の精度がどの程度上がってきていたのか? ただし21イニングで18奪三振と、三振比率は8.6個であり、先発では三振が奪えるほうだと言えるであろう。そういった意味では、ある程度フォークでも三振が取れるようになっていたののでは?と思わせるものがある。他に緩いカーブも、高校時代は織り混ぜていた。

その他

 牽制こそれほど鋭いものは見られなかったが、クィックは1.0秒前後と高速。フィールディングの動きも良く、投球以外の部分も上手い部類の選手だった。自分の身体を、思い通り動かすことを苦にすることはない。

(投球のまとめ)

 大学の4年間で、才能が開花したとは言える実績はありません。4年秋のシーズンでも、僅か3回1/3程度の登板に留まりました。ただし大学での映像を観ると、かなり力投して投げている姿が見られるので、そういった腕を強く振れるとかそういった身体の強さは身につけられたのではないかと好感は持てます。





(投球フォーム)

 高校時代の映像は先発もので落ち着いて投げていましたが、大学のものは恐らくリリーフでの登板なのでしょう。全身を使って投げる力投派のフォームに変わっていました。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻が一塁側にしっかり落とせるフォームなので、身体を捻り出すスペースは確保できています。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種を投げても無理はありません。

 「着地」までの粘りもそれなりになって、以前よりは身体を捻り出す時間は確保できるようになったと思います。そのため変化球のキレ味も増している可能性があり、決め球の習得も期待できます。現状フォークが、どの程度のレベルまで来ているのか気になります。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 高校時代の方が1つ1つの動作がしっかりできていたのですが、大学では力投派になったぶん、その辺の動作が粗くなってしまった感じがしました。グラブは最後まで内に抱えられていたのですが、今は投げ終わったあと後ろまでいってグラブが解けてしまっています。こうなると何処まで外に逃げようとする遠心力を、内に抑えられていたのかには疑問が残ります。左右のブレが大きくなって、横のコントロールが損なわれていないか心配です。

 足の甲の押し付けは高校時代はできていたのですが、ちょっと確認した映像だとハッキリはわかりません。ただしこの点は、足の引きずりかたを観る限り、それほど変わっていないのではないかと。むしろ気になったのは、「球持ち」が良かったフォームがあまりリリースに粘りが感じられくなったのは残念でした。球質にも粘っこさがなくなるでしょうし、細かいコントロールがついていたかには不安が残ります。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈になることは少ないかと。そういった意味では、肘への負担はあまり気にしなくても良さそう。

 ただし腕の送り出しは以前よりも、無理が感じられるようになりました。角度をより意識したのか? ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がり気味になっています。以前よりも肩への負担が増したことと、全身を使った力投派になり消耗が激しそうなのは気になります。以前は負担の少ないフォームだっただけに、その変貌ぶりに驚きです。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 高校時代に比べ、着地までの粘りが出てきて合わされ難くはなってきたのかと。ボールの出どころも見やすいフォームだったのですが、今は隠せていて球筋は読まれ難くはなっていると思います。

 腕を身体に叩きつけられるほどに強くなっているので、勢いがあって空振りが誘えそう。ボールへの体重の乗せ具合も悪くないので、打者の手元まで勢いの落ちない球は投げられているのではないかと。ただし投げ終わったあと一塁側に重心が流れるのをみると、ステップの幅が適正ではなく、上半身の強い振りに下半身が追いついていないことがわかります。どうしてもエネルギーが、ロスしてしまっていることが考えられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外の部分は高校時代よりも良くなっているように感じます。制球を司る動作や故障のリスクは高校時代よりも悪くっている点は気になります。将来的に、武器になる変化球はものにできそうです。そういった意味では、良くなった部分と悪くなった部分があり、それが今後のプロ人生でどちらに出るのか注目されます。


(最後に)

 高校時代は、身体がビシッとしてくればピッチングの基礎やフォームの技術は高かったので楽しみな素材でした。しかし大学での4年間では、こちらの思い描くような感じには育たなかったようです。それでも指名されたのですから、素材としての魅力は残されているのでしょう。その辺がどう変わったのか、プロ入り後確認できる日を楽しみにしています。残念ながら大学4年時の投球がしっかり確認できていないので、評価づけはできないことをご了承くださいませ。


(2015年夏 埼玉大会)