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橋本 侑樹(中日)投手のルーキー回顧へ







橋本 侑樹(大商大4年)投手 180/71 左/左 (大垣日大出身) 
 




 「イメージが変わった」





 春の大学選手権で見た時は、140キロ前後だけれどもタイミングがとり難く、イヤらしいタイプの技巧派左腕に見えた 橋本 侑樹 。しかしこの秋のピッチングを見ると、ストレートはコンスタントに145キロを越えて来るなど、力と技を兼ね備えた本格派左腕に変わってきた。僅か5ヶ月ぐらいの間に、そのイメージは全然一変していたのである。


(投球内容)

 ドラフト上位指名の噂が耳に入り、ちょっと左腕とはいえ人気がインフレ気味ではないかと思っていた。しかしこの秋の投球をみると、なるほど春とはワンランクもツーランクも投球内容が良くなっている。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆★ 3.5

 春見た時は、常時140キロ前後でMAXで146キロほどだった。しかし今は、140キロ台中盤をいつでも叩き出すという感じに変わっている。神宮大会では、東海大札幌戦で148キロまで到達。秋のリーグ戦でもこのぐらいの球速を出していたようなので、今は安定してこのぐらいの球速を出せるようになったと見るべきだろう。ただしこの投手、それほどストレートを続けて投げて来ないし、この球が中心といったピッチングスタイルではない。たまにグ~ンと速い球を混ぜることで、効果的にストレートを使えている。

変化球 カットボール・スライダー・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 投球の中心は、130キロ台後半で小さく変化するカットボールで構成されている。この球でカウントを整えられるので、コントロールへの不安が薄らいだことが大きい。あとは、曲がりながら落ちるカーブのような120キロ台のスライダー。それにちょっとチェンジアップのように外に逃げ気味に落ちるフォークなどもある。相変わらず的を絞り難い。タイミングの合わせ難いフォームでもあり、良い意味での 気持ち悪さ を相手は持つのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.10~1.20 と、春は1.3秒台だったことを考えると改善されていた。相変わらずランナーを背負っても、牽制は観られない。フィールディング等は、けして悪いようには見えなかったが。

(投球のまとめ)

 カットボールでいつでもカウントを整えられるようになり、ストレートの球速も5キロぐらい速くなっていた。春は打ち難さを全面に出した嫌らしさが売りのリリーフタイプだったが、今は多彩さも加わりプロでも先発も可能ではないかと思えてきた。なるほど外れ1位や上位候補と言われていた理由が、神宮大会の投球をみるとわかってくる。


(成績から考える)

 春の寸評ではフォーム分析をしたので、今回は成績から考えてみたい。4年春と秋の成績を比較しながら考えてみたい。

4年春 4試合 1勝0敗 13回1/3 11安 12四死 13三 防 4.05
4年秋 7試合 3勝1敗 37回2/3 23安 13四死 26三 防 2.39


1,被安打は投球回数の80%以下  ◯

 この秋の被安打率は、70.5%と、あと僅かで60%台という絶対領域に到達するところでした。春は、84.6%ですから、かなり春と秋とでは状態も投球内容も違っていたのでしょう。むしろ春は、リーグ戦よりも大学選手権の時に調子を取り戻していたのかもしれません。

2,四死球は、投球回数の1/3以下 △

 この秋の四死球率は、34.6% と、基準である投球回数の1/3以下には及びませんでした。それでも春は、13回1/3イニングで12個と、ほぼ投球回数と同数だったことを考えると、大幅に改善されつつあります。春には目立たなかったカットボール中心に、投球を組み立てられるようになったことが大きいです。それでも根本的にはアバウトな部分は、今も残っていると思います。

3、奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 △

 この秋の奪三振率は、1イニングあたり0.69個と平凡です。逆に春は、13回1/3イニングで13個とイニング数並に取れていました。秋は先発だったので、打たせて取るピッチングを。春はリリーフ中心の起用で、三振をとりに来ていたかもしれません。いずれにしても、速球も変化球も三振をバシバシ奪うというよりは、微妙にタイミングをズラして打ち損じを誘うタイプなのではないかおt考えられます。

4,防御率は1点台 ✕

 春は投球回数も少なく、4.05 と安定感はイマイチ。この秋も、2.39(7位)と絶対的な数字ではありません。プロを想定するのならば、1点台。それも1点台前半~0点台ぐらいの、絶対的な安定感を望みたいところです。それでも3年秋のシーズンでは 0.71 で最優秀防御率に輝いた実績があります。

(データからわかること)

 被安打の少なさはまずまずも、四死球・奪三振・防御率と、数字の上では絶対的なものがあるわけではないことがわかります。それだけに、本当の意味で年間を通して一軍で活躍できるのかといった部分では、実際の投球をみた印象ほど信頼できるのかには不安が残るデータが残っている。


(最後に)

 春の打ち難さを全面に出した春から、秋は力で押せるようになり制球力の不安定さも和らいだと言えます。それだけに評価もワンランク引き上げて、最終の評価としたいところです。それでもまだ、全幅の信頼をおける存在なのかと言われると懐疑的で、ちょっと面白い投手だよねという域は脱していないように感じます。1年目はローテーションでバリバリに活躍するというよりも、中継ぎで信頼を得てから2年目・3年目に先発へとつなげて行くのではないのでしょうか。それでも神宮大会の投球は、上位指名に相応しいピッチングだったと評価します。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2019年秋 神宮大会)










橋本 侑樹(大商大4年)投手 183/72 左/左 (大垣日大出身) 
 




 「気持ち悪い」





 悪い表現になってしまうのだが、橋本 侑樹 の投球は、相手打者にとっては極めて厄介投球をする投手との印象を受ける。けして凄い球を投げるわけでもないのに、なにか間合いが掴めずバッティングをさせてもらえない嫌らしさがある。


(投球内容)

セットポジションから、そろ~と静かに投げ始める投球フォーム。

ストレート 常時140キロ前後~MAX146キロ 
☆☆☆ 3.0

 ボールそのものの、球威・勢い・キレなどは、ドラフト候補の左腕として平均的。けして、際立つようなボールを投げ込んでくるわけではない。むしろ彼の良さは、見えないところからボールが出てくるので、タイミングが合わせ難いところにあるのだろう。タイミングを悩んでいる間に、ズバッと内角に投げ込まれたりするから手が出ない。内外角へのボールの散らすコントロールは、選手権を見る限りあるように見えた。

 大学選手権では、11回1/3イニング3四死球と、さほど大きな制球の乱れは見られなかった。しかしこの春のリーグ戦では、13回1/3イニングで12四死球と、投球回数に近い数でランナーを出している。通常四死球の目安は、投球回数の1/3以下。そう考えると、相当制球力には不安があることがわかる。そういった悪い部分が、大学選手権では出なかったところをどうみるか?

変化球 スライダー・フォーク・チェンジアップ? 
☆☆☆★ 3.5

 スライダーでカウントを整えつつ、フォークやチェンジアップ系のボールで仕留めに来る。スライダーには特徴はないが、フォークやチェンジアップは右打者には厄介な球種だと言えよう。

その他

 ベースカバーなどは悪くなかったが、牽制などはよくわからず。クィックは、走者をみて投球ができる左投手だけに、1.3秒前後と遅い傾向にある。フォームが盗まれた場合は、かなりの確率で盗塁を許すことになりそうだ。

(投球のまとめ)

 選手権ではうまく両サイドに散らせつつ、追い込むと低目にフォークなりチェンジアップ系の球を投げて三振が奪えていました。大学の4年間の成績をみても、投球回数を上回る奪三振が奪えています。

 またタイミングが計り難いフォーム故に、打者が戸惑う場面が見られます。その辺は選手権で投げた11回1/3イニングで、被安打は僅か3本に抑え込んだことからも伺えます。問題はリーグ戦で見せていたような投球回数と、ほぼ同数の四球を出してしまうコントロールをどうみるかという部分。成長してコントロールが良くなっていたのか? それとも相手がよくわからない投手だったので早めに振ってくれて助けられていたのかは判断は難しいところです。より打力が上がり、何度も対戦するプロの世界において、根本的なコントロールがないのは辛い条件になりますから。


(投球フォーム)

では技術的に、彼がプロの世界で通用する投手なのか? 検証してみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に残りがちで、身体を捻り出すスペースは充分とは言えません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような球種を投げるのには無理を感じます。

 「着地」までの粘りは、そろ~りと出して思ったよりは粘れていました。身体を捻り出す時間自体は平均的、武器になる変化球を習得できるのかは微妙だと感じます。今後は、スライダー・チェンジアップ系に、カットボールやツーシーム・スプリットなどの小さな変化を中心に投球の幅を拡げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブが内に抱えられず解けてしまっているので、両サイドへの制球はブレやすいように感じます。足の甲の押し付けも地面から浮きがちで、力を入れて投げるとボールが上吊りそうです。

 しかし「球持ち」は良く、微妙なコントロールはつけられるのかもしれません。またフォーム自体が小さく推進してゆくので、身体のブレが動作の割に小さく済んでいる可能性はあります。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせていない割にフォーク系の球を投げているのは、気になる材料です。ただフォークの他に、チェンジアップ系の球の方が多く投げているようにも見え、もしそうならばあまり悲観しなくても良いようにも思えます。

 腕の送り出しには無理がないので、肩への負担は少なめ。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいタイプではないでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそこそこで、それでいて球の出処は見難いので、打者としては厄介なフォームです。またテイクバックも小さいために、ピュッと見えないところから来る感じに陥るのでしょう。

 しかし降り下ろした腕が身体に絡むような粘っこさも強さも感じられませんし、ボールにも体重を乗せきる前にリリースしてしまって手元までの勢い・球威という点では物足りません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を抱えている。故障リスクはさほど高くないが、制球を司る動作と今後ピッチングの幅をいかに拡げて行けるかも気になる材料として残った。ただし「球持ち」「開き」などには良さがあり、やはり合わせ難いフォームなのだろうというのは実感した。


(最後に)

 左の中継ぎとして見るならば、面白い存在ではないかと思える。その一方で、投げ込まれている球自体は平凡でな点やコントロールにも不安があり、あまり入れ込み過ぎるのも怖いなといった印象も。個人的には中位指名級の評価とするが、実際のところ4,5位ぐらいの投手なのではないかといった感じがする。それ以上の上位で獲るのは、正直どうなのだろうか?


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 大学選手権)