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杉山 晃基(創価大4年)投手 183/88 右/左 (盛岡大付出身) | |
春先のオープン戦の時期から、昨秋同様にピリッとしなかった 杉山 晃基 。しかしこの大学選手権では、春見た時よりはだいぶ状態を上げてきた。それでも、上位指名候補かと言われると物足りないものが残った。今回は、その理由について考えてみたい。 (投球内容) ノーワインドアップから、淡々と投げ込んできます。 ストレート 常時145キロ前後~MAX151キロ ☆☆☆★ 3.5 立ち上がりはシュート回転して、抜け球が多く制球が定まりませんでした。その辺はイニングが進むにつれ、徐々に改善。両サイドにボールを散らすことができていました。この春のリーグ戦でも、26イニングで10四死球と四死球率は38.5%(基準は投球回数の1/3以下)と、ややアバウトであることがわかります。 ボールには球威は感じられるのですが、打者の空振りを誘うといったそういった手元での伸びやキレといったものには欠ける球質です。基本的には、ストレートは力で詰まらせるタイプの球質だといえるでしょう。しかし指先にしっかりかかり、力を入れた150キロ近い球には、それなりに勢いも感じられました。下級生の頃には、リリーフで150キロ級の球を連発していた片鱗は、久々に見られた気がします。 変化球 スライダー・フォーク・ツーシームなど ☆☆☆ 3.0 曲がりながら沈むスライダーを右打者には多く織り交ぜ、左打者にはフォークで空振りを、チェンジアップのようなツーシームでカウント整えてきます。それほど絶対的なものは感じられませんが、リーグ戦では26回で33奪三振を奪っているなど、投球回数をかなり上回っており、三振が奪える投手ということになります。ただし、プロレベルで何処まで三振が奪えるのかは微妙な印象も受けます。 その他 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的で、昨年からほとんど変わっていません。牽制は適度に鋭く、フィールディングも悪くありませんでした。投球以外の部分は平均的で、特に駆け引きが素晴らしいとか、絶妙なところに決めて来るという感じではありません。あくまでも、淡々とボールを投げ込んでくるスタイル。 (投球のまとめ) 投球を見ていると、フォームにキレがなく投球にメリハリに欠けるのが気になります。確かにボールの力・変化球・制球力とソコソコなのですが、見ていて響いて来るものがないのは気になります。悪くはないけれど、特に良くない、そんな印象をどうしても受けてしまいます。 (投球フォーム) フォーム分析に関しては、オフシーズンにも行っておりますし、あとで動画で補おうと思います。主に気になった点は、2つ。 1,足の甲の押し付けが悪い 昨年も足の甲の押し付けが遅く、ボールが低目に集まり難いことを指摘しました。その時よりも更に悪くなり、全体的に最後まで浮き気味になっていました。そのためどうしても浮き上がろうとする力を抑えきれず、ボールが高めに抜けてしまうことが少なくないということ。 2,ボールの出処が見やすくなっている 昨秋みた時よりも、ボール出処が見やすく合わせやすくなっていたのが気になります。しかしリーグ戦では26回12安打(被安打率46.2%)と圧倒的な数字を残しており、大学選手権でも7回を5安打(被安打率は71.4%)と低めだったので悲観するほどではないのでしょうか? 果たしてレベルの高い相手に、これで通用するのかには懐疑的な見方をしています。 (最後に) オフに作成した寸評では、キレ が欲しいと書きました。しかしその点は、あまり改善されていないように感じます。左打者への投球が課題と書いた部分には、以前よりは良くなっているように感じます。そして全国大会で勝てるピッチングをと書いたわけですが、結局緒戦の大阪工業大戦では7回1失点で結果を残したものの、チームは2回戦で敗戦し全国の強豪校相手に力を示すということはできないまま終わりました。そういった意味では、神宮大会から大きな成長は感じられているかは不明のまま。 この春は、大学ジャパンの候補からも漏れておりアピールする機会はなくなりました。あとは、秋のリーグ戦や神宮大会などで、成長したところを示せるかに懸かっています。現時点での評価では、3位前後ぐらいかなといった印象で、少々上位(2位以内)だと、荷が重いのではというのが率直な感想です。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2019年 大学選手権) |
杉山 晃基(創価大3年)投手 183/88 右/左 (盛岡大付出身) | |
神宮大会の関東代表決定戦である横浜市長杯の 杉山 晃基 の投球をみていて、思わずそう思ってしまった。新東京リーグ通算 18勝1敗 。創価大の下級生の時から、圧倒的なパフォーマンスを魅せてきた。しかし続く神宮大会での投球を観ていても、その印象は変わらなかった。杉山って、こんな投手だったけ? と自分の過去の記憶さえ疑いたくなった。 (投球内容) 骨太のガッチリした体格から投げ込む、正統派の右上手投げ。 ストレート 常時140~149キロ ☆☆☆★ 3.5 コンスタントに140キロ台を越えてきて、速い時で140キロ台後半を叩き出す。そのボールは、ズシリと重い。しかしその一方で、手元でグ~ンと伸びてくる感じはなく、それほど空振りを誘えるような球質ではない。またコントロールも結構バラついていて、全体的に高めに浮きがちなのは気になる。この3年間では、183回1/3イニングで四死球は80個。投球回数の1/3以下が目安の四死球率において、43.6% であるから、やはりそれほど細かいコントロールがないのはいつものようだ。 変化球 スライダー・フォーク・カーブ・ツーシーム ☆☆☆ 3.0 ストレートがアバウトなぶん、横滑りするスライダーでカウントを整えてくる。カーブやツーシーム系のボールもたまに投げてくるが、滅多にみられない。あとは、フォークを頻繁に使ってくる。しかしこの球は、空振りを誘うというよりもドロンとして引っ掛ける感じのボールとなっている。183回1/3イニングで、143奪三振。三振比率は、1イニングあたり0.78個。先発投手ならば、0.8個以上がひとつ目安となっており、地方リーグにおいても決め手があるというほど絶対的なボールは持ち合わせていない。 その他 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。牽制やフィールディングをみる機会がなかったので、どのぐらいの技量なのかは今後の宿題。 (投球のまとめ) ボールが手元まで来ないので、何か観ていてピリッとしないというかリズム感がない。またストレートで押し切るほど圧倒的なものもなければ、何かこれは!といった変化球があるわけでもない。繊細なコントロールや、奥行きのある投球術をするわけでもない。そう考えると現状はドラフト候補ではあるものの、上位指名が確実といったレベルにいる投手ではない。それでもリーグ戦では抑えられてしまうからかもしれないが、全国大会でも勝てる投手といったものを目指して取り組んで欲しいという思いはある。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、投げ込んでくる。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻をしっかり一塁側に落とせるフォームのため、体を捻り出すスペースを確保。カーブで緩急をつけたり、フォークで空振りをという投球をするのに無理はない。 しかし「着地」までの粘りが平凡なので、体を捻り出す時間は並。そのためキレや曲がりの大きな変化球を習得するのが難しく、変化球に特徴がないのにも影響しているのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後は後ろに少し抜けがちではあるが、体の近くには抱えられている。したがって両サイドへの投げ分けは、安定しやすいはず。しかし実際には、左打者中心にアバウトな傾向が観られる。 足の甲の押し付けもできているように見えるのだが、若干地面へ押し付けが遅いのとリリースの際にボールが押し込めていないのか? ボールが真ん中~高めに集まりやすい。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻はしっかり落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても肘への負担は少なめ。腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないと考えられる。それほど力投派でもないので、疲労は溜め難くフォームが崩れる危険性も少ない。故障する可能性は、かなり低いのではないかとみている。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは並で、打者にとっては苦になるフォームではない。ボールの出どころは適度に隠せてはいるので、コースにしっかり集めていれば、痛手は喰らい難いのではないのだろうか。ちなみに通算で、183回1/3イニングを投げて被安打は118本。被安打率は、64.4% と充分に基準(地方リーグなら70%以下)はクリアできている。 腕はしっかり振れており勢いはあるので、打者の空振りは誘いやすいとは思うのだが・・・。ボールにはしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで重い球は投げられている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、特に大きな欠点は見当たらない。しかし「着地」とに関しては、さらによくなる改善の余地は残されている。 制球を司る動作自体は悪くない割に、左打者中心に的が定まらない傾向が観られる。故障のリスクは低いフォームであるが、今後決め手になるほどの変化球を身につけられるかには疑問が残る。フォーム全体でみると、特に悪くはないが特筆すべきところも見当たらない。これは、ファームだけでなく投球全体にも言えることではないのだろうか。 (最後に) ボールには力はあるものの、打者の空振りを誘う球質ではない。また変化球も、空振りを誘うような球には乏しい。そのうえ球威で詰まらせるほどの低めのコントロールがあるわけではなく、今のままだとプロでは中途半端な位置づけに陥る可能性もあるだろう。仮に現状通用するとすれば、リリーフではないのだろうか。下級生の時は、グイグイと力で押し切る投球を魅せていたのはリリーフだったからだ。 それだけに今年は、リーグ戦ではなく全国で勝てる投球。プロの世界でも通用するための工夫を、その投球から感じたい。その変化が観られないようだと、高い評価をするのは難しいのではないのだろうか。現時点では、大学でも3本の指に入るぐらいの存在。しかしその前途は、けして明るいとは言えない。そのためには、まず体やボールに キレ が欲しい! (2019年 神宮大会) |