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大西 広樹(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ






大西 広樹(大商大4年)投手 176/80 右/右 (大商大高出身) 
 




 「プロっぽくないのは何故か?」





 大西 広樹 の投球を見ていると、何が悪いというわけではないのだが、不思議とドラフト候補の匂いがしてこない。これはいかなることなのか? 今回は考えてみたい。


(投球内容)

ストレート 常時140~MAX146キロ 
☆☆☆ 3.0

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。球速はコンスタントに140~MAX146キロ程度とドラフト候補としては平均的なのだが、不思議と訴えかけて来るものがないのだ。それは恐らく、ボールの質にあるのだと考えられる。何処か抜けたような回転の悪いボールが、スポッとミットに収まるように見えてしまうから。

 それでもこの春のリーグ戦では、44イニングで9四死球と極めて四死球率(20.5%)と極めて低い。通常投球回数に対し1/3(33.3%)以下ならば合格点と考えられるなかで、実に1/5ぐらいに四死球率は抑えられている点は評価できるポイントではないのだろうか。そのためストレートとしての質は評価できないが、余計な四死球を出さないという意味では極めて優れている。

変化球 スライダー・フォーク など 
☆☆☆ 3.0

 特にスライダーや曲がり幅やキレに特筆すべきところはないものの、この球でしっかりカウントを整えられる。フォークも空振りを誘うような落差はないが、低目には確実に落ちるので相手としては低目にも意識を傾けないといけなくなる。その変わり、この球が見逃されてしまうことが多い。このフォークでカウントでも整えられるようになると、野手も安易にフォークを見逃すことはできなくなるかもしれない。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒 ぐらいとまずまずで、牽制やフィールディングなども悪くない。投球以外の技量というのは、比較的高い投手とみて良いだろう。細かい駆け引きをしているかは微妙だが、淡々と波のない安定した投球を刻んでくる。

(投球のまとめ)

 ドラフト候補っぽいくないのは、ストレートでも変化球でも特筆すべきほどの球がないからだろう。しかし持ち球をうまく活かし、投球を組み立てまとめることには長けている。これでスカウトの眼を惹くことができるのかは疑問だが、終わってみれば抑えているといった計算できる安定感がある。緒戦の日本文理大戦では、9回1失点完投勝ち。しかし続く東海大戦では、5回を9安打打たれて4失点と、レベルの高い相手に通用するのかには不安を残した。


(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、この選手の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に残りがちだが、フォークやカーブといった捻り出して投げる球を投げられないことは無さそう。しかし「
着地」までの粘りは平均的で、キレや曲がりの大きな武器となる変化球を習得できるかには疑問が残る。一通りの変化球は投げられても、決め球に欠けるといった投手になりがちだ。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへのブレは少ない。このへんは、フォーム全体が縦に推進するフォームなので、左右のブレの少ないフォームとなっている。

 その反面、足の甲の地面への押しつけは浮いてしまっている。したがって浮き上がろうとする力を抑え込めず、ボールが高めに抜けやすい。もう少し上から押し込めるようなリリースならば、球筋を下げることはできるかもしれないが。ようするにサイドのコントロールは良いが、ボールが高めに集まりやすいということ。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としは甘さは残すものの、カーブやフォークといった球を多投しなければ悲観するほどではないだろう。ただしフォークの依存は、けして少ない投球ではない。

 またボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がるのが、かなり極端な腕の振りとなっている。その点では、肩への負担は大きいのではないのだろうか。けして力投派ではないので疲労は貯め難く、そこからフォームを崩して故障するという可能性は低そうだ。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りがさほどなくフォームも直線的で、ボールの出処は見やすく合わせやすいフォームだと言えよう。

 良いのは、腕の振りはしっかりしていて身体には絡んできている点。しかしボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているといった感じではないので、球威がないわけではないが打者の手元までの勢いが物足りないことは否めない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも粘りが足りず物足りないフォームとなっている。故障のリスク、コントロールを司る動作、投球の幅を拡げてゆくといった観点でも平均的で、投球は実戦的でもフォームは実戦的という感じはしないのだ。そう考えると、学生には通用してもプロの打者に通用するのは厳しいのではないかといった感じがする。


(最後に)

 こういったフォームに課題がある投手がプロで通用するためには、全体の球速を引き上げられるかに懸かっている。また出力を上げると、それだけフォームのブレが大きくなる可能性が高まり、持ち味だった実戦的な投球ができるのか?といった不安も出てくるだろう。しかしいずれにしても、プロを想定するならばココを改善しないと厳しいとみる。したがってそのためには、回り道でも社会人あたりで力を付ける方が良い選択だと思うのだが。いずれにしても私の見立てとしては、大学からプロにゆく投手といった評価にはなれなかった。


(2019年 大学選手権)