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大関 友久(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







大関 友久(仙台大新4年)投手 186/90 左/左 (土浦湖北出身) 





 「意外に評価が低かった」





 春のオープン戦で見た時は、まるで助っ人外人のような迫力のあるフォームで投げ込むことで魅力を感じた 大関 友久 。しかしシーズン中の登板やこの秋の投球は確認できていなかったので、幾つかの映像で確認してみた。特にセンター方向から映像は、生で見るのとはまた違う印象を残したのである。


(投球内容)

 春のオープン戦の時は、ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込んでいた記憶があります。しかし秋の映像を見ると、ノーワインドアップからゆったりと投げ込んでいました。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤ぐらい 
☆☆☆★ 3.5

 ボールが見え始めてからミットに収まるまでが一瞬で、実際生で見てみると差し込まれそうな勢いがあります。しかし細かいコントロールはなく、ストライクゾーンの枠の中に投げ込んでくるタイプといった感じがします。四死球で自滅するような危うさはありませんが、安易に甘く入ってくる球もあり、その点はボールが揃い出すと怖いなと感じる部分がありました。この秋の防御率 5.14 というのも、そういった部分が出てしまったのではないのでしょうか。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 ストレートがアバウトでも四死球が少ないのは、スライダーや緩いカーブでカウントが整えられるかではないかと思います。またチェンジアップも右打者低めに決まっており、この球で結構三振が奪えるようになったのが大きいかと。スライダーも含めて、変化球が低めに決まるところは評価できます。

(投球のまとめ)

 ストレートのアバウトさが春の観戦時より気になった一方で、チェンジアップがよく見えました。センター方向からみると、生で見た時ほどの凄みは感じませんでしたが、やはり一定の評価はできる投手だと思います。特にこの秋も、リーグ戦の防御率こそ悪かったものの、内容が極端に劣化していたわけでは無さそうです。本当のコントロールがないので、じっくり見られた時にどうなのかな?という不安は残りましたが。





(成績から考える)

 サンプルが少ないので、最終学年でのリーグ戦成績と神宮大会代表決定戦の内容を合算して傾向を見てゆきたいと思います。

8試合 22回 10安 4四死 24三 防3.00

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、45.5% 。目安は、80%以下なので充分に合格点の総合力はありそうだ。少なくても球威・球速という意味では、プロでも見劣ることは無さそう。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 四死球率も18.2%で、投球回数の1/3(33.3%)以下で申し分ない。ストライクゾーンの枠の中でのアバウトさは感じられるものの、ストライクも枠の中には収められるし、変化球も低めに集められカウントを整えられる。

3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 ◎

 奪三振は投球回数を上回っており、このファクターも申し分ない。ストレートでズバッと見逃しの三振を奪ったり、ボールになる変化球を振らせる技術にも磨きがかかっていた。

4,防御率は1点台 ✕

 短いイニングでの登板が多いので、大量失点してしまうと数字を取り返すのが難しい。ただし下級生時代のリーグ戦成績でも1点台のシーズンはなく、絶対的なシーズンはなかったようなのだ。悪い時は、悪いというタイプなのかもしれない。

(成績からわかること)

 防御率以外のファクターは、全て申し分のない数字を残している。あくまでも地方リーグの成績であり鵜呑みはできないが、馬力型の左腕でも、実戦力に欠けるタイプではないということ。特に勢いで押せるリリーフならば、粗は出にくいのではないのだろうか。


(最後に)

 センター方向からの映像や、シーズンの成績を見て春のイメージから修正できた部分はあります。それでもこの選手、充分にドラフト指名されるだけの力はあり、育成枠での指名は美味しいのではないかと思えるものがありました。それほど荒れ荒れでもないので、比較的短期間に支配下登録されるかもしれません。生で見た時よりはワンランク評価は下げますが、☆ を付けてみたいと改めて思わせてくれる投手でした。



蔵の評価:
 (下位指名級)


(2019年 秋季リーグ戦)


 








大関 友久(仙台大4年)投手 186/95 左/左 (土浦湖北出身) 
 




 「まるで外人投手のようだ」





 分厚い体格から強い上半身の振りで投げ込んでくる姿は、まるで外国人のようなフォーム。粗っぽいフォームではあるが、ドラフト候補に入ってくる選手だと言えよう。土浦湖北自体は、全体にキレに欠けるもっさりしたタイプだったと記憶している。その頃に比べると、格段に成長していた。


(投球内容)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(146キロ) 
☆☆☆★ 3.5

 ボールが見え始めてからベース版を通過するまでが短く感じるので、打者としては相当速く感じられるタイプなのではないのでしょうか。実際に球速自体も、コンスタントに140キロ台を越えてきて最速で140キロ台中盤と左腕としては基準以上。それほど細かいコースの投げわけができる感じはしませんが、ストライクゾーンの枠の中にポンポンと勢いのあるボールを投げ込んできます。昨秋のリーグ戦で、5回1/3イニングながら無四球だったのは偶然ではなかったのかもしれません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 速球とスライダーとのコンビネーションで、投球を組み立ててきます。そのスライダーも、カウントを稼ぐものとボールゾーンに投げて空振りを誘うものがあるようには見えました。実際何処まで使い分けているのかは微妙ですが、全体的に低めに集まっているところが好いところ。右打者に対する、チェンジアップのキレも悪くありませんでしたし、カーブのような緩い球も1球程度は投げていました。3年間の通算では、37回1/3イニングで30奪三振。1イニングあたり0.81個ですから、アマチュアとしては突出した数字ではありません。

 プロの打者相手に空振りを誘うほどの変化球があるかは別にして、投球において使えるレベルの変化球があるのは確かです。したがって、ストレート一本で押さなければならないといった投球ではありません。変化球のキレ・精度に関してはもう少し観てみたいところですが、水準レベルにはあるのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 勢いのある真っ直ぐに加え、変化球でもしっかりカウントを整えられる。制球や投球術に繊細なものは感じられないものの、許容範囲のまとまりがあると言えます。プロを想定するのならば、短いイニングを力で抑え込む左のパワーピッチャーといったイメージでした。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすため、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としはバッテリーライン上に落ちがち。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークのような捻り出す時間が必要な球種には適していません。

 しかしながら前へには大きくステップできており、体を捻り出す時間はある程度確保。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化で空振りを誘うのには適しませんが、そういった球種以外ならばキレや曲がりの大きな変化球の習得も可能だと言えるでしょう。すなわち投球の幅は狭いかもしれないけれど、変化球のキレはある程度期待できそうだということ。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがって両サイドへの制球は、ある程度つけやすい。

 むしろ心配なのは、足の甲の押し付けが浮きがちなので力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのではないかということ。「球持ち」も並ではあるのだけれども、高めに抜けるような球は観られなかった。全体的にはアバウトだが、許容範囲の制球動作といった感じはする。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせないものの、カーブは滅多に投げずフォークのような球種も見当たらない。そういった意味では、窮屈な腕の振りではあるが、肘への負担は大きくはないだろう。

 腕の送り出しにも、それほど無理は感じられない。したがって、肩への負担も大きいとは言えない。腕の振りが強い力投派ではあると思うので、登板過多になった時に疲労を溜めやすい。そこからフォームを崩し、故障に繋がらなければといった気がする。故障のリスクとしては、平均的な選手ではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも作れているので、打者としては合わせやすくはないはず。さらに「球の出処」も隠せており、ボールが見えてから到達までの時間は短く感じられて差し込まれやすいフォーム。

 腕の振りが素晴らしく勢いがあるので、変化球でも空振りが誘いやすい。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いと球威の落ちないボールが投げられている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ平均的でも、それ以外部分には優れていて実戦的。制球を司る動作や故障のリスクは並ながら、好い変化球を投げられる下地は整っている。一見技術的にはどうかな?と思えたフォームだったが、実は見た目の粗っぽさに反して実戦的なフォームをしていることがわかった。


(最後に)

 「間」を使った投球だとか、微妙なコースの出し入れができるような繊細な投手ではありません。したがって現時点では、ボールの力やフォームの勢いで抑え込む、パワー系のリリーフ投手といった感じがします。しかしその割には、許容範囲の粗さであり実戦的なフォームであるところは買えます。

 高校時代のもっさり感から、今は強く腕が振れる投手になりました。資質を少しずつ伸ばしてきたところも買える選手であり、個人的には指名リストに入れてみたい選手。本当ならば、公式戦の登板を見てから評価を定めたいところ。しかし今年見られるのは最後かもしれないので、現時点で評価は定めておきたいと思います。今回の投球だけみても、☆☆(中位級)前後の価値はあったのではないのでしょうか。今後の内容次第では、それ以上でもそれ以下にもなると思いますが。今後も要注視の、サウスポーだと言えるでしょう。できれば大学選手権なりリーグ戦の登板を確認し、もう一度レポートを作成してみたいと思わせてくれる選手でした。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2019年 春季オープン戦)