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吉田 大成(ヤクルト)内野手のルーキー回顧へ






吉田 大成(23歳・明治安田生命)遊撃 174/78 右/左 (佼成学園-明治大出身) 
 




 「しぶとい」





 昨年の春先、DeNAとのプロアマ交流戦で明治安田生命入社直後の 吉田 大成 をみた。 DeNAのクローザーである 山崎 康晃 に対し粘りに粘っていたのが印象に残っている。佼成学園時代から、小柄ながらも東京で話題の選手だった。とくにスピード感溢れる守備には、早くから定評があった。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5

 一塁までの到達タイムは、左打席から4.05秒前後と 中の上 レベルの脚力。絶対的な脚力ではないが、隙きをみて盗塁を仕掛けて来ることも少なくない。プロで足を売りにできるほどかと言われると、現状はそこまで速いようには見えないが。

守備面:
☆☆☆☆ 4.0

 スピード感溢れる守備が、この選手の最大の売り。守備範囲が非常に広く、それでいて深いところから刺せる強肩でもある。飛んだり跳ねたりと忙しく動き回るので、捕ったあとの送球が乱れたりすることもある。凄いプレーもするが、ミスもそれなりにするタイプではないのだろうか。むしろ現代野球で言うと、菊池涼介(広島)や吉川尚輝(巨人)のように、こういったタイプはセカンドで大成するケースが多いように思う。


(打撃内容)

 ヒットで出塁するというよりも、とにかく粘って四球を奪いとってくる嫌らしいタイプ。明治大の4年秋のシーズンに、打率.424厘でリーグ2位になったことはあるが、普段の打率はさほど高くない。むしろスイングはひ弱さを感じさせるぐらいで、この選手は出塁率で評価すべき選手ではないのだろうか。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を引いて、グリップを高めに添えて構えます。背筋はしっかり伸ばされており、球筋をしっかり追える形が作れています。両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスは、平均的だと言えます。特に嫌らしい打撃を持ち味にしますが、構え自体は比較的オーソドックスな印象を受けました。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がってくる時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。確実性を重視した、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を早めに引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はとれており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも幅広く対応したいといったタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足も、インパクトの際にブレずに止まっています。外に逃げて行く球や低めの球にも喰らいつくことができ、ゴロで抜けてゆく打球も少なくありません。俊足を活かす嫌らしいタイプとしては、これは悪くないはずです。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力むこと無くボールを呼び込めているのは良いところ。バットの振り出しもインサイド・アウトではないのですが、外の球を捉えるまでにロスは感じられません。バットの先端であるヘッドもうまく残し、打球をどの方向にも飛ばすことができます。

 スイング自体ひ弱には見えるのですが、インサイド・アウトで最短距離で捉えるという当てに行くスイングではありません。バットのしなりを活かした遠心力を使ったスイングであり、上手く捉えると意外な長打も期待できるでしょう。ただしまだこのスイングを活かすだけの、筋力が備わっていない可能性があります。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはそれなりなので、目線の上下動は並ぐらい。身体の「開き」は我慢できており、軸足にも粘りが感じられる。

(打撃のまとめ)

 スイングが弱々しく、プロの投手相手だと力負けして厳しいのではないかという印象は正直持ちました。粘ることはできるものの、出塁するのはヒットではなく、根負けした投手が四球を出すといったスタイル。そのため、打率はさほど高くはありません。

 技術的に大きな欠点は見当たらず、スイング自体はしなりを活かしたプロ仕様のスイング。今後筋力をつけたり、振込みを徹底させることで、プロの球に力負けしないスイングを身につけて行くことが求められます。


(最後に)

 とにかく守備範囲が広く、これで安定感も伴えば充分球界でも上位のショートになれる資質はあります。また四球を選べるプレースタイルは、伝統的な日本野球の嫌らしい二番タイプ。一時代前の、ショート・2番打者像を継承するタイプです。

 その一方で、このスイングで一軍の投手の球に対応できるのか?という疑問も残り、この順位まで残っていたことも頷けます。彼が企業チームの選手でなければ、通常なら独立リーグあたりにいるタイプの選手ですから育成指名ぐらいの選手だとみて良いでしょう。

 そういった意味では大卒社会人の野手ではありますが、プロに順応するのには数年はかかるとみています。その数年経った時に、どの程度変わっているかに懸かっています。残念ながら個人的には「旬」だとはまだ思えず、指名リストに入れるほどの評価ではありません。しかし個性のある選手なので、こういった選手が欲しいという需要と合致したのでしょうから、アリの指名なのではないのでしょうか。


(2018年 都市対抗)