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岩本 喜照(23歳・日本新薬)投手の個別寸評へ








岩本 喜照(22歳・日本新薬)投手 187/84 右/右 (常葉菊川-九州共立大出身)





                        「正統派」





 常葉学園菊川時代から好投手として知られ、九州共立大でも3年生までに通算15勝をあげた。しかし高校・大学では、肘痛に悩まされてきた。大学卒業後は、日本新薬に進む。先の日本選手権では、準決勝の日本生命戦で先発。8回を、5安打1失点と好投した。一躍この投球で、18年度のドラフト候補としてクローズアップされることとなる。


(投球内容)

 スラッとした投手体型の投手で、非常にキレイなフォームから投げ込む正統派といった感じがします。

ストレート 140~145キロ 
☆☆☆ 3.0

 ほとんどのストレートは140キロを越えてくる感じで、球速に水準以上のものを持っています。左打者外角に投げる速球は、少しナチュラルシュートするというか、ツーシームように外に逃げてゆきます。打者の内角を厳しく突いたりもするのですが、全般的にストレートのコマンドは低くてアバウト。とりあえず、ストライクゾーンに投げ込んでくるという感じです。気になるのはキレイな球という感じで、プロレベルの打者だとこのぐらいの球威で甘く入ると餌食になるのではないかという不安が残りました。

変化球 スライダー・カットボール・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りするカットボール気味の球と、多少曲がりながら沈むスライダーとがあるように見えました。さらに追い込むと、ストンと落ちるフォークもあります。ただし準決勝で登板した日本生命戦では、8イニングで2奪三振ですから空振りをバシバシ奪うような決め手のあるフォークの使い手ではないようです。けして細かいコントロールはないのですが、8回を投げて無四球ですから無駄なランナーは出しません。

その他

 走者が出ると、執拗に牽制を入れてきます。非常に鋭いターンで投げ込めるので、牽制には自信があるのでしょうし、実際かなり上手いと思います。またクィックは1.15秒ぐらいと平均的ですし(使って来ないことも多い)、フィールディングの動きも悪くありません。

(投球のまとめ)

 それほど繊細なコントロールや、深味のある配球をしてくるわけではありません。140キロ台の速球を魅せておいて、変化球で目先を交わしつつ、相手の打ち損じを誘うタイプなのでしょう。プロとなると何か決め手になるほどの球を覚えるが、今のスタイルならば速球の球威をもう少し増さないと厳しいでしょう。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を最後までピンと伸ばすことなく体重を落として来るので、どうしてもお尻の一塁側への落としは甘くなりがち。そのため身体を捻り出すスペースは不十分あり、カーブやフォークを投げる際には窮屈になりがちです。

 「着地」までの粘りは、それなりといった感じで悪くはありません。したがって身体を捻り出す時間は、そこそこ確保。三振を奪えるほどの決め手のある変化球を覚えられるかは微妙ですが、いろいろな球を覚えられる下地はあります。

<ボールの支配> 
☆☆ 2.0

 グラブはしっかり抱えられていないので、両サイドの制球はブレやすい傾向にあります。足の甲の地面への押しつけも浅く、力を入れて投げると高めに集まりやすくなります。「球持ち」自体は悪くありませんが、それほど指先の感覚には優れていないのでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、現時点ではカーブは観られませんし、フォークの頻度もそれほど高くはありません。フォークを武器に使うのは良いのですが、窮屈になって肘への負担がかかりやすいので現在のようにここぞの時に使う感じの方が良いと思います。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそこそこで、けして合わせやすいというほどではないでしょう。ただし「開き」自体は少し早いので、いち早く球筋が読まれてしまう危険性があります。そのためコースを突いたような球でも打ち返されたり、フォークを見極められてしまったりすることも少なくないように感じます。

 腕は適度に振れているので、そういった意味では悪くありません。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースはできているものの、肝心のウエート自体があまりないのでボールに球威が生まれ難いのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に課題があります。故障のリスクは肘を痛めてきたように、多少肘への負担はあるフォームではあります。気になるのは、制球を司る動作が悪いこと。このことが、アバウトな投球を生み出しているのではないのでしょうか。


(最後に)

 それほど繊細なコントロールや決め手のあるボールがないだけに、全体の球威をもう少し引き上げたいところ。確かに球速はある程度あるのですが、ここを改善して行かないとプロは見えて来ないと思います。積極的にウエートアップを心がけ、球威を生み出すことができれば、指名が現実味を帯びてくるかもしれません。それでも今年1年、注目して行きたい若手投手です。


(2017年秋 日本選手権)