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富山 凌雅(オリックス)投手のルーキー回顧へ







富山 凌雅(21歳・トヨタ自動車)投手 178/82 左/左 (九州国際大付出身) 





 「大舞台での登板なし」





 高卒3年目でドラフト指名された 富山 凌雅 。しかしこの一年間、都市対抗でも日本選手権でも登板がないまま、社会人でのキャリアを終えた。昨秋の日本選手権では、高卒2年目ながら2試合に先発し存在感を示していただけに残念。唯一の収穫と言えば、社会人日本代表に選ばれて国際大会を経験したことだろうか。


(投球内容)

 春先の全日本合宿にも招集されていたが、私が訪ねた2日目の登板はなかった。しかし8月に行われた阪神とのプロアマ交流戦の映像があったので、昨秋の日本選手権の時と比較して考えてみたい。

ストレート 130キロ台後半~MAX143キロ 
☆☆☆ 3.0

 阪神との試合の模様をみると、イニング限定で投げているのかストレートもコンスタントに140キロ台を超えてきていた。またこの投手は腕の振りが強く、球速は平凡でもそれ以上に感じさせる勢いがある。全体的に高めに集まりやすく、大まかに両サイドに散らせてくるのは相変わらず。やはり甘く入る球を痛打されて、チームの信頼を勝ち得ることができなかったことが、大舞台での登板がなかった理由だろうか?

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・ツーシーム・カットボールなど 
☆☆☆ 3.0

 カットボール気味の球やツーシーム的な小さく動かすボールを、昨年よりも結構使ってカウントを整えている印象はある。スライダーなどは高めに抜けたりと、いまいち精度が低い。それでも左打者の外角には、この球が軸となる。昨秋の日本選手権で見られたような、緩いカーブは見られなかった。またツーシーム系のボールも、こまめに入れてきて、チェンジアップやフォークのような球は明確にはわからなかった。

 変化球ではカウントを稼げて的を絞らせない働きはあるものの、狙って空振りを誘える変化球はないように思う。むしろ勝負球は、高めに力のある真っ直ぐで詰まらせることが多い。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的で、牽制も並ぐらいだろうか。特に投球センスに優れるといった感じではないのだが、投げっぷりはよく気持ちの強さは感じられる。現状は、ゲームメイクする先発よりもリリーフ向きなのではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 劇的に変わった感じはしなく、何か良くなった感じはしない。やはり高卒3年目とまだ若いので、一軍でバリバリに働くためには、ファームで1,2年漬けて力を養う必要はあるのかもしれない。まだまだ成長途上の投手、そういった印象は変わらない。


(投球フォーム)

昨年から何か変化があったのか? 技術的な観点から見比べてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースが確保できず、捻り出して投げるカーブやフォークといった球種には適しません。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間も並ぐらい。そのためキレや曲がりの大きな変化球の習得は難しく、カットボールやツーシーム系のボールを投球に多く織り交ぜるのは正しい判断だと思います。あとは、いかにして武器となる変化球を習得できるかではないのでしょうか。このへんの動作は、昨秋とほとんど変わっていませんでした。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドへの投げ分けはつけやすい。足の甲での地面への押しつけは短いので、充分にボールを低めに集めるというほどの効果には乏しいのかもしれない。「球持ち」もボールを押し込むほどではないので、ボールが低めに集まりずらい。元々指先の感覚は、あまり良い投手とは言えないのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせないフォームの割に昨秋は結構カーブを使っていたのが、肘へ負担という意味では気になっていました。しかし今年は、カットボール気味の動かす球でカウントを整えられるようになっているように思います。フォークらしき縦の変化も現状見られないので、肘への負担はそれほど気にしなくてもといったピッチングにはなっています。

 腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担も少ないのではと考えています。腕を強く振って来る力投派ではあるので、疲労を溜めやすい可能性があります。そこからフォームを崩して、故障に繋がるという可能性はありますが、現状それほど気にしなくて良いのではないかと。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、球の出どころはある程度隠せています。それほど苦になるフォームではありませんが、コントロールを間違わなければ痛手は喰らわないのでは。

 腕の振りが良いので、打者の空振りを誘える勢いは感じます。ボールのへの体重の乗せ具合も悪くないので、打者の手元まで勢いと球威の落ちない球は投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「球持ち」あたりは平凡ですが、どれも大きな欠点はありません。もう少しフォーム全体に粘りが出てくると、もっと淡白ではなく粘っこい投球も可能でしょう。そういった意味では、「球持ち」や「着地」にまで、意識が行くようだと変わってきそう。

 制球を司る動作は許容範囲ですし、故障のリスクも平均的。今後はいかにピッチングの幅を広げつつ、武器になる球を習得して行けるかではないのでしょうか。フォームに関しては、昨秋からほとんど変えていないものだと考えられます。技術的には、可も不可もなしといった感じです。


(最後に)

 高卒3年目の若手投手ですが、実際の投球も技術的にも昨秋とほとんど変わっていませんでした。そういった意味では、もうトヨタでやれることはなくなったのかなとも思えます。けして即戦力で活躍するといった「旬」であるようには感じませんが、1,2年二軍で漬け込んでという考えならば、指名もありではないのでしょうか。イメージ的には、新潟医療大時代の 笠原 祥太郎(中日)に近いものを感じます。彼はプロ入り後、チェンジアップに磨きをかけて2年目の今年一軍で活躍しました。そういった、成長曲線が描けると良いのですが。高くは評価できませんが、指名リストに名前を残すべき素材だと判断します。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2018年 プロアマ交流戦) 









 富山 凌雅(20歳・トヨタ自動車)投手 178/82 左/左 (九州国際大付)
 




                     「意外に当たらない」





 富山凌雅の速球は、手元でピュッとキレるとかグ~ンと伸びるような球ではないように見えるのに、思いのほか打者が当たらない。その秘密は何処にあるのか考えてみたい。


(投球内容)

高卒2年目にして、社会人屈指の強豪チーム・トヨタ自動車で先発を任されるまでに成長したサウスポー。

ストレート 135キロ~MAX142キロ 
☆☆☆★ 3.5

 日本選手権のNTT東日本戦の模様を見たが、NTT東日本の各打者が思いのほか振り遅れたり、空振りする姿に驚いた。コントロール自体は結構アバウトなのだが、右打者には両サイドに散り左打者には外角中心に集まる。ボールそのものは冒頭にも書いたように、キレや伸びより球威型。それも球速は140キロ台前後と平凡なのに、打者が空振りをするのは何故なのだろうか?

変化球 カーブ・ツーシーム・チェンジアップ・スライダーなど ☆☆☆ 3.0

 変化球は、緩いカーブと速球とのコンビネーションでカウントを整えて来ることが多い。スライダーは滅多に見られず、右打者の外角低めにツーシーム系の小さく逃げる球があり、この球は低めに集まるところが良いところ。特に絶対的なボールはないのだが、ストレートで押せて空振りが取れているところが強味か。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的で、牽制も並ぐらいだろうか。特に投球センスに優れるといった感じではないのだが、気持ちの強さを感じさせる。

(投球のまとめ)

 コントロールやボールのそのものが凄いわけではないのだが、早めに追い込んで精神的に有利な状況を作り出すのはうまい。あとは三振の取れる真っ直ぐを全面に、グイグイと押してくるイメージ。社会人レベルの打者相手でも、ボールの威力で圧倒できている点は大きい。





(投球フォーム)

何故この球速・球質で、空振りを奪えるのか? そのフォームの秘密について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足は地面に向けて伸びており、お尻はバッテリーライン上に残ってしまっています。したがって身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークなどの球種を投げるのには窮屈になりがちです。

 また「着地」までの粘りもさほどないので、身体を捻り出す時間も並。そういった意味ではキレのある変化球や曲がりの大きな変化球の修得は厳しいかもしれません。すなわち将来的にも、決め手となるほどの変化球を身につけられるかは微妙になります。


<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けはつけやすいはず。足の甲の押し付けも深くはないものの、ある程度は押し付けられてはいます。実際には「球持ち」も悪くないのですが、ボールが高めに集まりやすい傾向ではあるのですが。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせず窮屈なフォームの割に、カーブを結構使って来るので肘への負担は心配になります。腕の送り出しには無理がないので、肩への負担は少なめでは。腕の振りは強いのですが、全身を使ってめい一杯というほどの力投派ではありません。そのため身体への疲労は、平均的な投手なのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは並ですが、「開き」自体は早くはありません。また腕は強く振れていて、フォームには勢いが感じられ空振りを誘いやすいのでしょう。ボールにも適度に体重は乗せられており、打者の手元まで勢いのある球は投げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところは見当たりません。「開き」「球持ち」「体重移動」は、それなりといった感じでしょうか。

 お尻が落とせない割にカーブを多く投げることでの肘への負担や、足の甲の押し付けが若干浅いからなのか?ボールが高めに集まりやすいところ。それ以上に心配なのは、将来的に使える変化球をどの程度増やして行けるのかという部分で伸び悩む危険性です。

 また球速やボールの質的には平凡でも、これだけの空振りが奪えるのかという部分。これは、「開き」が抑えれていることで、打者が球の出どころが見難いこと。それでいてボールが見えてからも、なかなかボールが出てこない「球持ち」の良さがあり、強い腕の振りやフォームの勢いに吊られて空振りを誘いやすいのではないかと。どれか一つの部分が優れているというよりも、複数の中の上ぐらいの技術が融合することで、全体の打ち難さ・空振りを誘える要素を作り出しているものと思われます。



(最後に)

 今後決め手不足や制球のアバウトさなどで伸び悩む要素はあるので、リスキーな素材だとは思います。しかし高卒2年目で、社会人でも実績を残し始めた実力は、プロ側からみても大いに魅力に映るはず。3年目を迎える今年、順調にアピールを続けられれば、充分に今年指名される存在になるのではないのでしょうか。期待の若手左腕として、追いかけてみたい1人です。


(2017年秋 日本選手権)