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長谷川 凌太(日ハム)投手のルーキー回顧へ







長谷川 凌太(24歳・BC新潟)投手 188/92 右/右 (福井商-龍谷大出身)





 「ボールの勢いは確か」





 昨年は、育成ドラフトも含めればまず指名は確実だろうと思っていた 長谷川 凌太 。まさかの指名漏れから1年、6月のDeNA戦での登板を確認。しかしその時は、ピリッとしない内容で指名漏れしたのも頷ける内容だった。その時は先発だったが、7月に行われた巨人戦では、リリーフでの登板。DeNA戦とは、また違った投球を確認することができた。


(投球内容)

 スラッとした投手体型で、惚れ惚れするようなフォームから投げ込む正統派です。今回はリリーフだったので、全身を使って投げ込む力投派の投球でした。

ストレート 常時145キロ前後~92マイル・148キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 短いイニングで全力で投げ込んで来るだけに、ボールの勢いには素晴らしいものがありました。またそれだけ思いっきり投げても、四死球で自滅するような危うさもありません。実際今シーズンの成績では、118回2/3イニングで32四死球なので、四死球率は 27.0% と、基準である投球回数の1/3以下を遥かに満たす数字です。

 ただし前回の寸評にも書いたように、この投手のボールは中に中にと甘く入ってくるところがある点。球筋が真ん中~高めのゾーンに集まることが多いのがこの試合でも気になりました。被安打は99本で、被安打率は 83.5% ということで、独立リーグの選手としては突出した数字ではありません。できれば、70%台に乗せるような絶対的なものがないと、NPBで即戦力は難しいと言えます。いずれにしても多少アバウトな球を、プロの打者相手に勢いで押し切れるかどうかに懸かっていると思います。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 巨人戦では、全てストレートで押していたと記憶します。そのため変化球は、DeNA戦のレポートをそのまま今回も採用させてください。一番の持ち味は、外角低目のスライダーを振らせることだと考えられます。また左右の打者に対し、フォーク系の縦の変化も見られます。その他緩急を作ろうとして、緩いカーブも時々織り混ぜていました。まだ絶対的な変化球はないように見えましたが、ある程度スライダーなどでカウントを整えて、ボールになるスライダーやフォークを振らせようという意図は感じられます。

 リーグ戦での三振数は105個で、1イニングあたり 0.89個 。先発を担ってきた選手なので、0.8個以上奪えているので合格ライン。リリーフ投手の目安である、0.9個に迫る数字です。

その他

 ここも巨人戦ではランナーを背負う場面がなかったので、DeNA戦のレポートから引用させて頂きます。牽制はそれなりに鋭く、クィックも1.1秒前後と基準以内。特に大きな欠点は見当たりませんが、特に投球術が巧みだとか、うまく間をとりながらといった感じはしませんでした。

(投球のまとめ)

 年間の防御率は、2.05 と昨年の 3.09 から1点近く引き下げることに成功しました。ただし昨年見た時と、何か大きく変わったのか?と言われると、この2試合を見て変わった印象はありませんでした。各球団もそう判断したからこそ、育成会議でも3位まで残っていたのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 投球内容に大きな変化が感じられなかったので、フォームに何か違いがあるのか? 昨年のフォーム分析と比較しながら考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に落ちる球種には適しません。

 「着地」までの粘りは、早すぎることはなく粘り強いというほどでもありません。また身体を捻り出す時間は、それなりといった感じです。そういった意味では、武器になる変化球を習得できる微妙でしょう。昨年と比べても、この部分は変わっていませんでした。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブを最後までしっかり内に抱えられており、両サイドへの制球は安定しやすい。足の甲でもしっかり地面を捉えており、ボールは上吊り難いはずだが、実際は真ん中~高めに集まりがち。「球持ち」は並ぐらいで指先まで力を伝えるような細かいコントロールはないが、投げ終わった後もバランスもよく球筋は乱れ難い。若干投げる時に、顔と腕が離れ気味なのは気になりますが、制球を司る動作も、昨年と大きく変わった印象はありません。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻は落とせないフォームの割に、結構カーブやフォークは投げてくる。そのため窮屈になり、肘への負担は少なくはないだろう。

 また腕の送り出しも、昨年より無理を感じました。ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がり気味になっていた。偶然そう見えたのかもしれないが、昨年よりも角度を付けようという意識があるのかもしれない。またリリーフでの登板だけに、力投して投げていました。リリーフでの起用が中心になると、疲労も溜めやすいフォームになっているのは気になる部分。


<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りはさほどではないので、打者としては苦にはなり難いのかもしれない。しかし「開き」自体は抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛手は喰らい難い。

 腕はしっかり振れて勢いがあるので、空振りは誘いやすいはず。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースはできており、地面の蹴り上げも素晴らしい。打者の手元まで、勢いのある球が投げられている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」は悪くない。「着地」と「球持ち」がもう少し粘っこくなると、勢いだけで押しているというイメージが変わってきそう。

 制球を司る動作は好いが、故障のリスクと将来的に武器になる変化球を習得できるのかは微妙といった感じがします。そういった意味では、プロの打者を今のストレートで押し切れるかが活躍のポイントというのはフォームを分析しても変わらなかった。



(最後に)

 フォーム分析をしても、昨年からの大きな変化はわからない。しいて言えば、腕の振りに角度を付けて投げるようになった可能性があること。そのことで打者の打ち難さを作ることはできたかもしれないが、体への負担は増した危険性があることぐらいだろうか。

 実際昨年との変化は乏しく、今の力量のままでは一軍での活躍は厳しいのではないかと思う。しかしプロで何かを掴めれば一気に変わる可能性もあり、またもう独立リーグで得るものもほとんどないだろう。そういった意味では、今年は指名リストには残さないものの、プロ入りするタイミングは間違いではないと思う。あとは、その何かをプロで見つけ出すことができるかではないのだろうか。



(2019年 巨人とのプロ・アマ交流戦)



 








 長谷川 凌太(24歳・BC新潟)投手 188/92 右/右





 「交流戦の内容は悪かったけれど」





 BCリーグ選抜の先発として、DeNAとの交流戦に登板した 長谷川 凌太 。昨年個人的には ☆ を付けた選手だったが、まさかの指名漏れとなった。それだけに今年こそはの思いで見ていたのだが、なるほど指名されただけの理由は感じられる内容で、正直物足りなく映ったのは確かだった。ただしこの試合だけではと、今年の登板の模様も別に映像として確認してみた。


(投球内容)

 あらかじめ2イニングと決まっていたので、普段よりも力を入れてアピールしようという意識は強かったように思えます。

ストレート 常時140キロ~MAX91マイル(146キロ) 
☆☆☆ 3.0

 球速はドラフト候補の右投手としては平均的で、けして際立つ数字ではありません。昨年レポートを作った時は、常時145キロ前後~150キロぐらい投げていたと記録しているので、球速自体は若干落ちているように感じます。この数字も、他の試合の投球でもそのぐらいなので、今年は球速的にはこのぐらいなのではないのでしょうか?

 むしろ気になったのは、ボールがかなりばらついていた点。この辺は、プロとの対戦ということでかなり力んでいたと思われます。それはシーズン中の映像に比べると、かなりコントロールが悪く感じられました。ただNPBレベルであれば平均ぐらいの球速の球を、あまり制御できないとなると厳しいという印象を受けてしまうのは致し方なかった気がします。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 一番の持ち味は、外角低目のスライダーを振らせることだと考えられます。また左右の打者に対し、フォーク系の縦の変化も見られます。その他緩急を作ろうとして、緩いカーブも時々織り交ぜます。まだ絶対的な変化球はないように見えましたが、ある程度スライダーなどでカウントを整えて、ボールになるスライダーやフォークを振らせようという意図は感じられました。

その他

 牽制はそれなりに鋭く、クィックも1.1秒前後と基準以内。特に大きな欠点は見当たりませんが、特に投球術が巧みだとか、うまく間をとりながらといった感じはしませんでした。

(投球のまとめ)

 NPBレベルでも速球や変化球は平均的で、突き抜けたものは感じられません。特にストレートで相手を押すほどの、光るものがなかったのは残念なところ。それでいて実戦力やフォームに嫌らしさがあるわけではないので、微妙な印象は受けました。改めて生でみた感想だと、昨年指名漏れしたのも不思議ではなかったという印象です。しかしリーグ戦の模様をみると、なるほど今年のBCで最も注目度の高い選手だと言われるのも納得のところがあり、その辺どう評価すべきかは悩むところです。そこで、前記リーグで残したを元に、傾向を考えてみたいと思います。


(データから考える)

10試合 3勝1敗 47回 33安 41振 10四死 防 1.91(5位)

1,被安打は投球回数の80%以下 ◯

 47イニングを投げて33安打ということで、被安打率は 70.2% 。この数字は、充分NPBを意識できるところに総合力があることを伺わせる。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 47回で10四死球ということで、四死球率は 21.3% と極めて少ない。そのため多少アバウトなところはあるが、四死球で自滅するようなタイプではないのだろう。

3、奪三振は1イニングあたり 0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振は、0.87個と先発投手としては基準以上。絶対的な数字ではないが、それなりに三振を奪える能力は持っている。

4、防御率は1点台以内 ◯

 防御率は1.91と、これまた絶対的な数字ではないが、基準を満たしている。NPBにいた、宮川哲(元楽天)が1.88だから、ほぼ同等の成績だといえる。

(成績からわかること)

 被安打・四死球の少なさは高く評価できるポイントで、奪三振・防御率も基準の範囲内。データの上からは、充分にNPB入りを期待できる素材だというのがわかってくる。


(最後に)

 昨年は、
 を付けた選手でしたが、今回観戦した印象だと ☆ をつけようとは思いませんでした。しかし今回の投球がたまたま悪い面が前面に出たかもしれないので、シーズンの映像を確認 。さらにシーズンの成績も加味しながら考えると、ここで見切りをつけるよりは、もう少し継続的に見てゆく必要があるのかな?といった印象を持った。


蔵の評価:
追跡級!


(2019年 BCリーグ選抜)
 









長谷川 凌汰(23歳・BC新潟)投手 188/92 右/左 (福井商-龍谷大出身) 
 




                     「独立屈指のスケール」





 私が知る限り、独立リーガーの中で最もスケールを感じさせるのが、この 長谷川 凌汰 ではないのだろうか。188/92 の恵まれた体格をダイナミックに使い、150キロ台を連発する注目の逸材なのだ。


(投球内容)

ストレート 145キロ前後~150キロ強 
☆☆☆☆ 4.0

 球速だけでなくボールの勢いでも、充分なものを持っている。合わせやすいフォームなのか? これだけのボールを持ってしても打ち返されてしまうことが少なくない。この選手が良いのは、速球派でありながら四死球で自滅するといった粗さがないところ。打者の外角を中心に、投球を組み立てられている。

変化球 フォーク・スライダーなど 
☆☆☆ 3.0

 変化球は、フォークが中心。打者の空振りを誘うというよりは、低めに沈んで目先を変えたり、引っ掛けさせることが多い。その他には、スライダー系のボールを使いカウントを整えて来る。変化球で、空振りを誘うほどのキレは持ち合わせはいない。

(投球のまとめ)

 ストレートの勢いは素晴らしいが、それでもNPBの一軍打者を力で押し切る程の威力があるのかは疑問。変化球も、カウントを稼いだり目先を変えることはできるが、空振りを誘うことは難しい。

 大卒出ではあるが、まだ発展途上であり二軍で1,2年漬け込む必要はあるだろう。そういった身体ができたり、フォームが固まってきたときに、どのぐらいのボールが投げられるかに懸っているのではないのだろうか。現時点での内容では、一軍で数字を期待するのは厳しそうだ。

(成績からわかること)

今度は、今シーズン残した成績から傾向を考えてみたい。シーズン中には、先発もリリーフでも登板していた。

32試合 6勝5敗4S 87回1/3 96安 28四死 72奪 防 3.09(6位)

1,被安打は投球回数の80%以下 ✕

 被安打は、投球回数を遥かに上回る数を与えており、これは多すぎる。これだけの球速を誇っても、相手を抑え込むことなく打たれてしまっている。

2、四死球は、投球回数の1/3以下 ◯

 四死球率は、32.1%。基準である、投球回数の1/3以下にとどめている。実際投球をみていても、四死球で自滅するような危うさはみられない。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8~0.9個 △

 1イニング当たりの奪三振は、0.83個。これは先発の基準はクリアしているが、リリーフの基準は満たしていない。NPBを意識すると、まだボールに絶対的なものがないことがわかる。

4、防御率は、1点台以内 ✕

 防御率は3.09ということで、1点台には遠く及ばない。やはりこの数字からも、実戦的ではないことがよくわかる。

(成績からわかること)

 コントロールは安定しており、奪三振の割合も悪くなかった。しかし被安打の多さと防御率の悪さは、やはりNPBの即戦力としては厳しいだろう。それだけに何処に問題があるのか、フォームの観点から考えてみたい。


(投球フォーム)

ランナーがいなくても、セットポジションからスッと足を勢いよく引き上げてきます。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に落ちる球種には適しません。

 「着地」までの粘りは、早すぎることはなく粘り強いというほどでもありません。まだ身体を捻り出す時間は、それなりといった感じです。そういった意味では、キレや曲がりの大きな変化球を習得できる微妙でしょう。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブを最後までしっかり内に抱えられており、両サイドへの制球は安定。足の甲でもしっかり地面を捉えており、ボールは上吊り難い。「球持ち」は並ぐらいで指先まで力を伝えるような細かいコントロールはないが、投げ終わった後もバランスがよく球筋は乱れ難い。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせないフォームの割に、結構フォークは投げてくる。そのため窮屈になり、肘への負担は気になる。

 腕の送り出しには無理な感じはしないので、肩への負担は少なそう。腕はしっかり振れているものの、特別力投派ということはないと思うので、疲労が溜まりやすいということはないのでは?

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはさほどないので、打者としては苦にはなり難いのかもしれない。しかし「開き」自体は抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛手は喰らい難い。それでも被安打が多いということは、やはりストライクゾーンの枠の中で甘い球が多いということなのではないのだろうか。

 腕はしっかり振れて勢いがあるので、変化球での空振りは誘いやすいはず。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースはできており、打者の手元まで勢いは落ちていない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き「」「体重移動」では、まだ「着地」と「球持ち」が並なので伸び代を残している。ここがもっと粘り強くなって来ると、打者にも嫌がられるようになるのではないのだろうか。

 制球を司る動作には優れているが、肘への負担が心配される部分がある。そのため、フォークに依存しすぎるのは止めた方がいいのでは? 将来的にも、ピッチングの幅を広げて行けるのかは微妙だと言わざるえない。


(最後に)

 投げ込まれるボールの割に、被安打が多いのは気になるところ。また球種がスライダー・フォークなどで単調に陥りやすいわりに、今後投球の幅を広げて行けるのかには疑問が残る。そういった意味では、伸び悩む可能性は秘めている。

 それでも恵まれた体格をダイナミックに使え、それでいてコントロールも悪くない素材は一級品。独立リーグの選手ではあるが、本会議で指名されるのではないかとみている。即戦力としては計算しづらいが、ドラフトでも本会議の下位ぐらいでは指名があっても不思議ではないと思っている。今年の独立リーガーの中では、最も魅力を感じる選手だった。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2018年 プロアマ交流戦&リーグ戦)








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