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板東 湧梧(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







板東 湧梧(23歳・JR東日本)投手 180/75 右/右 (鳴門出身) 
 




「今年はチャンスだけれども」





 毎年のように、プロ野球界に人材を送り込んでいるJR東日本。しかし今年は、指名確実な候補がいるわけではない。そういった意味では、入社5年目にして大事な場面を任されることが増えてきた 板東 湧梧 にとって、今年ほどプロ入りのチャンスはない。また来年にもなれば、後輩に有力な候補が控えている。しかし春先の社会人日本代表との壮行試合で見たときと今回の都市対抗での登板では、坂東の課題が改善されているようには思えなかったのである。


(投球内容)

スラッとした投手体型から、やわらかく体を使ってくるセンスの良さは、鳴門時代から光っていた。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆ 3.0

 春先に見たとき同様に、東京ドームでも145キロ前後を連発。ボールには角度があり、膝元に集まったときは容易には打てない勢いもある。時には打者の内角を、ズバッと決めてくるときもある。しかしコントロールは結構アバウトであり、予選では11回1/3イニングで5四死球。このアバウトな印象は春先も同様で、まだ本当のコントロールに欠ける一面がある。また勢いは適度にあるものの、キレ型の球質で甘く入ると球威に欠けるだけに心配。微妙に収まりの悪いコントロールと球威に欠ける球質は、プロの一軍打者の餌食になるのではないかという不安は、今回の登板でも拭えなかった。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど 
☆☆★ 2.5

 それほどスライダーに特徴があるわけではないので、この球に頼るというタイプではない。また精度が高いとも思えない緩いカーブを結構使ってきたり、フォークのような縦の変化を織り交ぜ的を絞らせないようにするのが持ち味。それでもフォークの精度もまだ発展途上であり、予選では11回1/3イニングで13安打と投球回数を上回る安打を浴び、的を絞らせないといった投球にはなっていなかった。

そのほか

 クィックは1.1秒前後とまずまずで、牽制・フィールディングも基準レベル。特に、投球以外の部分に大きな欠点は見当たらない。もともと運動神経に優れたタイプというよりも、野球センスに勝ったタイプだった。

(投球のまとめ)

 都市対抗では、予選での不安定さを解消するがごとく、西濃運輸戦で好投。しかし勢いはあったものの、根本的には春先の不安定を解消した上での投球ではなかったように私には感じられた。それだけに私には、プロの打者を想定するとまだ厳しいのではないかと評価せざるえない。

(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点からプロでの可能性について検証してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に落ちがちで、十分に体を捻り出すスペースが確保しているとは言えない。カーブやフォークといった球種が投げられないというほどではないのだろうが、充分な変化は期待しづらいのではないのだろうか。

 それでも前に大きくステップさせることで、体を捻り出す時間は適度に確保。カーブやフォークを武器にするのは難しいが、それ以外の球種をモノにしてゆくことは期待できる。現状良い変化球を身につけられていないのは、お尻の一塁側への落としが甘いのが原因ではないかと。


<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、両サイドの投げわけはつけやすい。しかし足の甲の地面への押し付けが浮いてしまっているので、ボールが高めに抜けやすい傾向にある。「球もち」自体は悪くないように見えるので、指先への意識が変われば、もう少し修正できそうな気はするのだが・・・。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としは甘さはあるものの、カーブやフォークを投げても窮屈すぎるということはなさそう。そういった意味では、投げること自体への肘への負担は少なめなのかもしれない。それでもカーブやフォークを投げる頻度は高いので、肘のアフターケアには充分注意したい。

 また腕の送り出しも、ボールを持った肩は上がりグラブを持った肩が下がるため無理があることがわかる。この角度こそ彼の持ち味でもあるので、これを修正してしまうと持ち味が損なわれる危険性があり悩ましい。肩への負担は少なくないのだろうが、けして力投派でもないので、故障に気をつけつつ上手く付き合ってゆくのが無難なのかもしれない。


<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはあるので、合わされやすいといったフォームではないだろう。体の「開き」も平均的で、コントロールを間違わなければ痛手は喰らい難い。

 腕も強く振れており、勢いがあるので空振りは誘いやすいはず。足の甲での地面への押し付けができないぶん球威のある球は投げられないものの、前の足には体重が移っているので打者の手元まで勢いのある球は投げられている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4代動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が並であと好い。ボールが高めに浮きやすく、故障のリスクが高いのが不安要素ではないのだろうか。


(最後に)

 
まだ伸び代を感じさせる素材でもあり、指名してくる球団が出てきても不思議ではないだろう。ファームで1,2年ぐらい漬け込む覚悟があるのならば、指名してみるのも手ではあると思う(社会人でも5年いたので)。しかし即戦力としてはまだ厳しい印象なだけに、個人的にはプロ入りの「旬」だとは判断はしない。そのため ☆ をつけることはできないという評価に落ち着きそうだ。


(2018年 都市対抗)










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