18sp-1
吉川 峻平(23歳・パナソニック)投手 183/78 右/右 〔関大北陽-関西大出身) | |
都市対抗前にメジャー球団と契約を結んだことが規約違反として、社会人野球での登録を除名された 吉川 峻平 。もしこの秋のドラフト会議に挑んでいたら、どのような位置づけになったのか考えてみたい。 (投球内容) 以前はもっとサイドに近いスリークォーターといった感じだったが、今は本当に普通のスリークォーターになっている。 ストレート 140~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0 都市対抗の投球を見る限り、結構勢いのあるボールを投げ込んでいました。しかし春のスポニチ大会や全日本の合宿などを見ていても、生で見るとボールの軽さが気になります。都市対抗のJR東海戦でも立ち上がりに早々ホームランを打たれたように、勢いやキレは感じさせるものの、球威という点では物足りないものを感じます。今のNPBの一軍打者の打力を考えると、甘い球は簡単に持ってゆかれる可能性が高いのではないかと。ましてアメリカに渡ったら、この点はより心配になります。 両サイドには適度にボールを散らすコントロールはあり、四死球で自滅するような危うさはありません。左打者外角の逆クロスへの投球は、若干ショート気味に逃げてゆく感じ。また意図的に、左打者の内角を厳しく突くことはできています。 変化球 シンカー・スライダー・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 最大の特徴は、小さく沈む魔球・シンカーにあります。彼の場合は、落差の大きな縦の変化ではなく、速球を見分けの難しく小さく沈むのが特徴です。明確にスライダーを使うことなく少なく、速球とシンカーというコンビネーションに依存してしまって投球が汲々になることがあります。 それでも細かく見てみると、左打者の内角にカットボールのような小さな変化を使って来ることもあり、意外に嫌らしい攻めができています。また今年の都市対抗では確認できませんでしたが、緩いカーブを織り交ぜて緩急を意識することもあります。 その他 牽制は軽くマウンドを外したりして使うことが多いのですが、走者を刺すような鋭い送球もできます。クィックは、1.1~1.2秒ぐらいでまとまっており、平均的。全体的に投球以外の部分にも、大きな欠点は見当たりません。 (投球のまとめ) スリークォーター気味のフォームのために、左打者を苦手にするようなタイプに見えます。しかしインコースを厳しく攻めることができ、外角への投球も外に外にと逃げてゆくクセ球。右打者に対しても、速球とスライダーといったコンビネーションにとどまらず、シンカーを積極的に落としてきます。 速球の球威には不安は残りますが、ボールの活かし方、投球術は、さすがに社会人でも上位の投手であることは間違いないでしょう。 (成績から考える) オフの寸評ではフォーム分析をしているので、今年の都市対抗予選と本戦で残した成績から、その傾向を考えてみたい。 5試合 36回1/3 25安 10四死 38奪 防 1.98 1,被安打は投球回数の80%以下 ◎ 被安打率は68.9%であり、基準である80%以下どころか70%以下となっている。少なくても社会人レベルであれば、この球威の無さでも甘く入らなければ、それほど痛手は喰らわないことがわかってきた。厳しい攻めで踏み込みを封じ、投げミスに気をつける彼のピッチングが功を奏していたということなのだろう。 2,四死球は投球回数の1/3以下 ○ 四死球率も27.5%と、基準である33.3%以下をクリアしている。元々好投手タイプで、余計な四死球を出すような選手ではない。この選手の場合は、ストライクゾーンの枠の中で高めに甘く入ったストレートを一発を食らうことが多いことに課題がある。 3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎ 1イニングあたりの奪三振は、1.05個と投球回数を上回っている。特にシンカーという強烈な武器があり、この球の存在が大きい。昨夏の都市対抗では、3回を投げて9奪三振という快投を魅せていた。 4、防御率は1点台以内 ○ 都市対抗時の防御率は、1.98と基準をなんとかクリア。昨年の公式戦での成績が、1.28なので、かなり安定した投手であるのは間違いない。 (成績でわかること) データの上からみれば、大きな欠点がなく基準をすべてクリアできている。少なくてもNPB入りしたら、1年目から一軍で全く使えないということはなかったのではないのだろうか。 (最後に) NPBのドラフトでは、2位・3位ぐらいの間には消えていただろうと推測する。投手としてもある程度出来上がっているので、一年目から一軍の舞台での登板機会にも恵まれていただろう。ただし先の球威の点から、何処まで活躍できたのかと言われれば、懐疑的な見方をしている。 そのへんがより顕著にパワーの違いが出る海外の野球において、いかにかわすだけの術があるのかということになると思う。個人的には上位(1,2位)で指名するのには物足りないが、中位(3位~5位)ぐらいでの指名ならば妥当なのではないかと。それも今後の上積みというよりも、一年目からある程度の結果を求めたくなる完成されているタイプ。むしろ、全く違うような野球観を植え付けてくれる海外の方が、より現在の彼とは違ったものが掘り下げられるかもといった期待も抱きたくなる。まずは、このレベルの選手が向こうでどのぐらいやれるのか興味深い。現在の内容だと、2A~3Aぐらいで中後悠平(現DeNA)ぐらいの成績を想定している。果たして、メジャー昇格まで行けるのか見届けてみたい。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2018年 都市対抗) |
吉川 峻平(22歳・パナソニック)投手 183/77 右/右 (関大北陽-関大出身) |
「3回で9奪三振」 都市対抗の大舞台で、ルーキーながら3回で9奪三振の離れ業をやってのけた 吉川 峻平 。速球とシンカーのコンビネーションで、三振の山を築く。その完成度の高い投球は、解禁組の社会人投手の中でもトップクラスの実力の持ち主だと言えよう。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくるスリークォーター。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0 常時140キロ前後の速球は、球速以上に勢いを感じさせる。両サイドに散らすコントロールはあるものの、球筋は全体的に高い。またキレ型の球質のため、甘く中に入ってくると長打を食らいやすく、その点では心配。 変化球 シンカー・カーブ・スライダーなど ☆☆☆☆ 4.0 大きく落ちるというよりは、打者の手元で小さく沈むシンカーが最大の武器。また都市対抗では、緩いカーブが良いアクセントになっていた。この試合ではあまり観られなかったが、スライダーも持っている。このスライダーの精度が上がってもう少し多く織り交ぜられるようだと、よりカーブやシンカーといったボールが活きてくるだろう。 変化球でカウントを整えることができ、勝負どころではシンカーで空振りを誘える。そういった意味では、あとは中間球であるスライダー磨くことではないのだろうか。プロでもシンカーは、充分武器になる球種になりそうだ。。 その他 牽制や滅多に入れて来ないで、たまに軽いのを混ぜて来るぐらい。クィックは、1.10秒~1.15秒ぐらいとまずまず。フィールディング等は、よくわからなかった。 (投球のまとめ) 四死球で自滅するような危うさはないものの、それほど絶妙なコントロールがあるわけではない。そのためプロレベルの打者では見逃してくれなそうな高めの甘い球も、結構観られるのは気になった。 また変化球もカーブとシンカーといった配球で、中間球のスライダーをあまり使われないのは気になるところ。どうしても落ちる球と緩い球だけでは、打者に山を張られて投球が汲々となってしまう。今季のチェックは、 1,高めに集まりやすい球筋 2,中間球であるスライダーの活かし方 この2点に注意して、この選手はみてみたい。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみる。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 お尻は適度に一塁側に落ちており、身体を捻り出すスペースは確保できている。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球を投げても、負担の少ないフォームだと言えるでしょう。 しかし「着地」までの粘りはそれほどでもなく、身体を捻り出す時間は並ぐらい。そういった意味では、曲がりの大きな変化というよりも、小さな変化で勝負するタイプかと。彼のシンカーも、大きく落ちるというよりも小さく沈む感じの球なのも頷けます。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しています。足の甲の押し付けは少し浅いというのもありますが、それ以上にスリークォーターの腕の振りからボールが押し込めないリリースのため、ボールが高めに集まりやすい要因を作っているのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5 お尻はある程度落とせているので、窮屈になることも少なく肘への負担は少ないのでは。また腕の送り出しにも無理は感じず、肩への負担も少なそう。さらに力投派でもないので、疲労を貯めやすいということもなさそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは並で、身体の「開き」もそれほど隠せているというほどではありません。そういった意味では、高めに甘く入れば簡単に打ち返されてしまう危険性はあります。 腕の振りに勢いがあるので、打者の空振りは誘いやすいのでは? ボールには適度に体重が乗せられているので、打者の手元まで勢い・球質は悪くありません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」があっさりしていて粘りがもう少し欲しい気がします。また故障のリスクは低いものの、ボールが高めに浮きやすい動作の欠点があります。投球の幅もカーブやフォーク系の修得は可能ですが、捻り出す時間が少ないので、絶対的な球種を覚えられるかは微妙。それでも現時点では、高速で小さく沈むシンカーという強烈な武器があります。動作全体に粘っこさが欲しいのと高めに集まりやすい部分を改善できれば、実戦力に磨きがかかりそうです。 (最後に) 今後大きな上積みが望めるかと言われれば、そういったタイプではないでしょう。むしろ今の完成度でも、ある程度一軍でやれてしまうのではないかという実戦力に期待したいタイプです。 しかしその実戦力も、一軍レベルで見ると微妙な気がしています。そのため上記に記したような課題を、今年はどのぐらい改善しパフォーマンスで示せるかにかかっているのではないのでしょうか。ドラフト1位でゆくような隙無しの完成度や、チームの主力を担うようなスケールが感じられない選手であり、期待どうりの活躍を魅せてくれても2位前後ぐらいが基本線の評価ではないかと思います。ハズレ1位候補までゆくのか? あるいは、3位以降でもということになるのかは、今年の内容に懸かっていると言えそうです。 (2017年 都市対抗) |