益子　京右（青藍泰斗３年）捕手　１７６/９０　右／右

「地肩は高校NO.1」

　ハマったときの送球は、まさに「エグい！」という言葉ぴったりな強肩捕手、それがこの　益子　京右　。まだ送球が不安定なところは気になるが、ハマったときには１．７秒台に余裕で到達。その地肩の強さは今年の高校生捕手でNO.1なのではないのだろうか。

（ディフェンス面）

　とかく地肩ばかりが話題になりがちだが、実に他の部分もしっかりした選手なのだ。投手が低めにボールがゆきやすいように、重心を常に低くして構え、審判にも低めの球筋を見やすくしている。ミットを余計に下げる癖もないし、ボールの押し込みなども悪くなくミットがブレることも特にない。グラブ捌き、足回り、打球への反応などもまずまずで、キャッチング全体に大きな欠点は見当たらない。

　素晴らしいのは、相手をしっかり見るという習慣が身についており、それは味方の投手へも同様にできるということ。こういった部分は、なかなか一朝一夕では身につかない。ピンチでも精神的に乱れないで、実に気持ちが安定している。気になるのは、自慢の送球の部分。捕ってから素早く投げようという意識が強すぎるのか？　腕が下がって（投手で言えばスリークォーターのような感じ）出てくることが多く、球筋が安定しない傾向にある。特に試合間練習では気にならないのだが、実戦になるとそういった部分が顔を覗かせる。常に試合中は、飛び出した走者に送球したりと地肩を見せつけて相手を威圧してくる。リードなどはまだまだこれからの選手だとは思うが、見る力、捕手として冷静に試合を運べるという適正を持っているところは素晴らしい。ことディフェンスに関しては、充分にプロの基準を満たしている。

（打撃内容）

　高校通算２３本塁打の数字が示すように、パワフルな打撃をします。身体に力があるので打球は強烈なのですが、対応力に課題を残します。これを、将来的に改善できるかは微妙でしょう。

＜構え＞　☆☆☆★　3.5

　両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えられています。腰の据わりはよく、背筋もしっかり伸ばしています。両眼で前を見据える姿勢や、全体のバランスは並ぐらい。少し捕手にしては、身体が硬いのかな？というふうにも見えました。

＜仕掛け＞　早め

　投手の重心が下がる時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。対応力を重視した、アベレージヒッターに多くみられる始動です。

＜足の運び＞　☆☆☆★　3.5

　足を引き上げてまわし込み、真っ直ぐから軽くベース側に踏み出してきます。始動～着地までの「間」はとれているので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。ほぼ真っ直ぐに踏み出して来るので、内角でも外角でも捌きたいタイプなのでしょうが、少し外角への意識が強いのではないのでしょうか。踏み出した前のあ足が、インパクトの際には止まってブレません。そのため逃げてゆく球や、低めの球に対しても「開き」を我慢して対応できます。

＜リストワーク＞　☆☆☆　3.0

　打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。「トップ」を深く作り過ぎているのか？　素直にバットが出て気にくい感じのスイングではあります。スイング軌道も少しインパクトまで遠回りですが、バットの先端であるヘッドが下るというほどではないので極端ではありません。ボールを遠くに運ぶというよりは、しっかり振り抜いて強い打球を飛ばすタイプなのでしょう。

＜軸＞　☆☆☆★　3.5

　足の上げ下げが静かなので、目線の上下動は少なめ。身体の「開き」は我慢できていますが、軸足が窮屈に見えます。このへんがスイングの際に地面から真っ直伸びた形でスイングできるようになると、もっと確実性と捌けるコースが広がってきそうです。

（打撃のまとめ）

　スイングに関しては、内角を中心にバットの出が悪いのが気になります。また素材的に柔軟性がないので、硬い印象が残ります。しかし形としては、大きな癖はないので修正は充分可能でしょう。ある程度プロの球になれることと、打撃への意識を傾ければ、ひ弱な打者ではないのでそれなりにはなると思いますが。しかし現時点では、1年目から二軍で二割を超すのは厳しいのではないのでしょうか。こと打撃に関しては、プロレベルなのかと言われると厳しいです。捕手だから、このレベルでもという感じでしょうか。

（最後に）

　捕手としての心構えや姿勢を、かなりみっちり教え込まれてきた選手だという気がします。けして頭が切れるタイプではないと思いますが、精神的にもブレないし、人を見るという習慣がついているところは素晴らしいと思います。表情にも気と意志の強さが感じられ、好い面構えをしていると思います。

　送球の精度と打撃の確実性がネックとなりますが、鍛えがいのある素材ではないのでしょうか。5年ぐらいはかかると思いますが、じっくりと育ててみたいと思わせてくれる選手です。本人の努力と意識次第では、正捕手まで昇りつめられる選手になるかもしれません。

蔵の評価：☆☆　（中位指名級）

（２０１８年夏　栃木大会）