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万波 中正(横浜)外野手のルーキー回顧へ







万波 中正(横浜3年)中堅・一塁・投手 190/88 右/右 
 




 「規格外のパワー」





 横浜スタジアムのレフトスタンド最上段に運んだり、センターバックスクリーンにぶち当てる圧倒的な飛距離は、今年の高校生の中でも一番ではないかと思わせる 万波 中正 。夏前にはベンチ入りメンバーからも外されていたほどの絶不調だったが、3年夏の神奈川大会では一気にその才能が開花した。しかし甲子園では、14打数2安打 と不完全燃焼のまま甲子園をあとにした。


走塁面:
☆☆☆★ 3.5

一塁までの到達タイミは、右打席から4.3秒前後。これを左打者換算にすると4.05秒前後に相当し、ドラフト候補としては中の上レベルの脚力だと考えられる。夏の予選の6試合では1盗塁、甲子園での3試合でも盗塁は0個。基本的には走れる能力がないわけではないが、走塁でアピールしようという意識は高くない。

守備面:
☆☆★ 2.5

 夏の神奈川大会決勝では、一塁手として出場。また甲子園では、中堅手。元々外野手で出場することが多かった選手で、守備範囲は広くはないが打球判断を大きく誤るとかそういった姿をみた記憶はない。甲子園でも見せたように、投手としても140キロ台を連発する地肩の強さは、プロでも上位レベルの強肩であるのは間違いない。そのためプロで鍛えられれば、左翼もしくは右翼あたりを無難にこなすぐらいのレベルになっても不思議ではないだろう。ただし現状は、一塁手としても外野手としても、プロでは中の下レベルではないかと判断する。それでも鍛えれば、平均的なレベルにまでは引き上げられる可能性は秘めている。


(打撃内容)

 コンゴ人の父と日本人の母という血筋を活かし、圧倒的なパワーを誇っている。それも技術で打っているというよりは、腕っぷしの強さや金属バットの反発力に頼った打ち方だけに、プロの球を木製バットで捌けるのかという疑問はつきまとう。ちなみに覚醒したと話題になった夏の神奈川大会では、6試合 2本 12点 打率.542厘 と、4番として甲子園出場に大きく貢献した。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。背筋を伸ばし、少し体重を後ろ足にかけ気味。両眼で前を見据える姿勢はよく、球筋を錯覚を起こすことなく追う姿勢がとれている。打席では、リラックスして構えられているところも良いところ。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下る時にベース側につま先立ちし、リリース直前に動き出すという「遅すぎる仕掛け」を採用。通常日本人の筋力やヘッドスピードだと、ここまで遅いとプロレベルの投手の球を木製バットで打ち返すのは困難。しかし万波ぐらいのパワーがあれば、このタイミングでもある程度打ててしまう可能性がある。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 小さく足を浮かし、軽くアウトステップ気味に踏み出します。始動~着地まで「間」が作れないので、どうしても打てるタイミングが限られ 点 の打撃になってしまいます。そのため狙い球を絞って、打ち損じしない「鋭さ」が求められるわけです。

 軽くベースから離れた方向に踏み出すため、できれば懐に余裕を持たせられるように内角を意識したスイングなのがわかります。踏み込んだ前の足は、なんとかインパクトの際にはブレずに我慢できています。少し地面から離れるのは早い気がするので、基本は引っ張りたいのでしょう。それでも外角でも高めの球ならば、右方向に飛ばせる形にはなっています。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、ボールを呼び込めて作れています。バットは遠回りに出てきますが、先端であるヘッドまでは下がっていないのでドアスイングというほどは極端ではありません。けして大きな弧を描いているとか、フォロースルーを生かしてボールを飛ばしているわけではなく、最後まで強く振り抜くことで強烈な打球を生み出しています。

 そのため現状は、金属バットの反発力と圧倒的な腕っぷしの強さに頼ってスタンドインさせている形。木製バットに変わって、思いどうり打球が上がるのか? それとも理屈を抜きにして、木製バットでも長打を連発できるのかはやらせてみないとわかりません。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは大きくはないので、目線の上下動は並ぐらい。体の「開き」もなんとか抑えられており、軸足は少し前に崩れるなど、体がツッコミやすいので注意したい。打ち気にはやって、自分からボールを追いかけに行ってしまうと調子を崩してしまう。

(打撃のまとめ)

 打席では力みがなく、ボールの呼び込み方も自然体で悪くない。しかし気持ちがはやり出すと、体が前に突っ込んで修正するのに時間がかかるのだろうと想像する。ドラフト候補としてはコンタクト能力が低く、プロのキレのある変化球などに対応しきれるのかという疑問は残る。そこそこ当たるようになれば、ヒットの延長線上でもホームランになる打球が増えるのではないのだろうか。


(最後に)

 守備でも打撃でも走塁でも、すべてが発展途上の素材型。それでもモノになるかもというタイプと厳しいのではないかというタイプに別れるが、個人的には厳しい方ではないかとみている。しかしこういったポテンシャル型の野手がアマに進んでもろくなことはないので、プロの環境・指導に一か八かで託すのが一番良いのではないかと思う。頭の良い選手らしいので、何かを掴むことができれば大化けするかもしれない。しかし現時点での評価としては、☆ をつけるまでには至らなかった。こういう選手こそ、育成枠が良いのではないかと思うのだが。それでもドラフトではその素材を買って、本会議中に指名されるのではないかとみている。


(2018年夏 甲子園)









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