18ky-19


 




林 晃汰(広島)内野手のルーキー回顧へ







林 晃汰(智弁和歌山・3年)三塁 181/87 右/左 





「引っ張れるようになった」 





 林 晃汰 の打球の特徴としては、レフト方向への打球が多く、スタンドに叩き込めることにあった。しかしその一方で、ほとんど強引に引っ張る打球を見ることがなかった春。しかしこの夏は、内角の球を鋭いヘッドスピードで引っ張る打球が目立つようになってきた。このこと一つとっても、林の打撃の幅が夏に向けて広がったことを意味している。


守備・走塁面

 2年夏から甲子園で8試合に出場し、盗塁は0個。この夏の和歌山大会でも0盗塁であり、足でアピールするという意識は薄いようだ。夏の予選・甲子園の模様とも確認したが、残念ながら一塁までの到達タイムは計測できず。特にアウトだとわかると緩めてしまうところもあり、走塁に関しての意識は薄い。

 その一方で、数多くいる高校生三塁手の中でも動きの良さは目立っている。打球への反応・足回りの良さがあり、高校生としては上位の部類だろう。気になるのは、けして肩が弱いだけではないが送球が乱れることが時々あること。この夏の和歌山予選の5試合でも、2個の失策をしている。それでも一歩目の反応がよく、動けるという部分では基準を満たしており、プロで鍛えれば充分に三塁を担える素材ではないのだろうか。アマ時代三塁手の選手が、プロだと失格となって一塁や外野にコンバートされる選手がほとんどの中、この選手は純粋にサードで勝負できそうな三塁手。この点では、非常に貴重な存在だと言えよう。


(打撃内容)

 選抜では5試合で21打数4安打と確実性に乏しいところが気になったが、夏の和歌山大会では.412厘。甲子園では初戦で破れたものの、内角の球を引っ張ってヒットを放ち3打数1安打。内角を引っ張れるようになって、打撃の幅が広がったことで打てるゾーンは広がった気がする。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップは高めに添えられた強打者スタイル。腰の据わり・全体のバランスとしては平均的だが、両目で前を見据える姿勢はよく、錯覚を起こすことなくボールを追うことができている。春よりは、全体のバランスは取れているのではないのだろうか。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる仕掛けです。始動のタイミングは、春と変わっていません。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 大きく足を引き上げていたのを少し小さくして、ベース側に踏み込むようになってきた。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込むように、外角を強く意識しているのは変わらない。

 踏み込んだ足元も、インパクトの際にかかとをめり込ませて前の足を止めている。これにより低めの球や逃げてゆく球に食らいつくことができ、お得意の左方向への打撃を可能にしている。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 春同様にバットを引くのが遅れがちで、速い球に立ち遅れることが多い。けしてインサイド・アウトにバットが出てくるタイプではないので、しなりを活かし大きな弧を描いてボールを飛ばせるが、内角の捌きが窮屈になるのは変わらない。

 それでもこの夏は、「開く」ことなく内角の球を引っ張り、強烈な打球で抜けてゆく打球が目立った。けしてこの選手は、フォロースルーでボールを遠くに運ぶタイプではないのだが、抜群のヘッドスピードとインパクトの際の押し込みが素晴らしく、この2点は今年の強打者の中でも一番ではないかと思えるほどだ。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さくなり、目線の上下動は小さくなった。さらに「開き」も我慢できており、軸足は地面から真っ直ぐ伸びている安定感はないものの、内モモの筋肉が強く強烈な打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 引っ張る打球は上がらない傾向にはあるが、開かずにさばけることで内角も打てることを証明。打球が上がるのは、左方向へ放ったものが多いことがわかってきた。まだまだ打ち損じが多く確実性には課題を残すが、ヘッドスピードの速さとインパクトの押し込みは特筆もので、ここをうまく活かせばプロでも飛距離を売りにして行ける素材ではないのだろうか。


(最後に)

 個人的に対応力が低い選手は好みではないのだが、プロでも三塁がしっかり守れる守備力がある点は他の候補にはない希少価値がある。さらに、ヘッドスピードとインパクトの押し込みに内モモの筋肉の強さからして、プロでも飛距離を売りにして行ける才能を秘めている点で評価してみたい。

 対応力の低さから大成できないで終わる可能性もあるが、長距離砲になれる素材の選手はリスクを覚悟してでも育ててゆかなければ行けないだろう。1位となると荷は重いが、2位~3位ぐらいの間には消えるのではないのだろうか。どうしても将来を託せる三塁が欲しい球団にとっては、しっかりサードが守れる長距離砲という稀な素材であり、ぜひおさえておきたい選手ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2018年夏 甲子園)


 








林 晃汰(智弁和歌山・3年)三塁 180/90 右/左 





 「ミート力がいまいち」





 センバツ緒戦では、5打数ノーヒット。その後ホームランなどを放ち評価は取り戻したものの、この春のセンバツでは 21打数4安打 打率.190厘 に留まった 林 晃汰 。私にはどうしても、彼のボールを捉える能力に違和感を感じずにはいられないのだ。その理由について、考えてみた。


(守備・走塁面)

  残念ながら、一塁まで全力で走り抜けたのを確認できず純粋な走力は計測できなかった。過去甲子園では、7試合に出場し盗塁は0個。結構アウトだとわかってしまうと、走るのを緩めてしまう傾向が強い。少なくても、走力でアピールしようという意識は感じられない。

しかし強打のスラッガーにしては、なかなか三塁の守備が安定しているのが好いところ。打球への反応もよく、キャッチング・スローイングまでドラフト候補としても基準以上だと言えるのではないのだろうか。肩も中の上レベルはありそうで、プロで鍛えれば守備で足を引っ張ることはなくなるのではないかと。


(打撃内容)

 打球は、圧倒的にセンターからレフト方向が多い。今大会では、東海大相模戦に右中間方向への打球が1本見られたぐらいだった。この選手の最大の特徴は、流してもスタンドインできる打球にある。その反面、内角の捌きは窮屈なのだ。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップを高めに添えバットを前に倒して構えてくる。腰の据わりはやや浅く、全体のバランスとしてはもうひとつ。それでも、両眼でしっかり前を見据えられているところは好いところ。両眼で前を見据えることで、錯覚を起こすことなくボールを追うことができる。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる仕掛けです。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を大きく引き上げて、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込んで来るように、外角を強く意識したスイングであることがわかる。

 そのぶん内角が窮屈になるので、内角をうまくさばけない。完全に、外角に特化した打撃だということ。踏み込んだ前の足は、ブレずに地面を捉えることができている。そのため外角に逃げてゆく球や低めの球でも、開きを我慢して食らいつくことができている。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 バットを引くのが遅れがちで、打撃の準備である「トップ」の形を作るのに立ち遅れることが多い。また振り出しも、少し遠回りに出てくるのでロスがある。それでもバットの先端であるヘッドの下がりは小さく、ボールを捉えてからも大きなスイングでバットを振り切ることができている。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが大きいので、目線の上下動も少なくない。身体の「開き」は我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びている。また内モモの筋肉も強そうだが、軸足が窮屈な形で懐に余裕がないのが伺われる。

(打撃のまとめ)

 この選手の確実性が低いのは、左打者ながら踏み込んで来るので内角の捌きが窮屈だということ。打撃の準備である「トップ」の形を作るのがお遅れがちになること。スイングの振り出しが遠回りで、インパクトまでロスがあることや上下動が激しいなど、多くの課題を抱えている。これらを、プロ入り後うまく修正して行けるかに懸かっている。そういった意味では、かなり時間のかかりそうな素材ではないのだろうか。

 その一方で、反対方向に運ぶパワーは一級品。スイング・打球の速さは、さすがだと言わざるえない。全国の高校生の中でも、上位のスラッガーであることは間違いないだろう。


(最後に)

 スラッガーでありながら、三塁の守備がきっちりできているところには希少価値がある。ただし根本的なコンタクト能力の高くないとみているので、そのへんが大きなネックにならないのかという不安は拭えない。ドラフトでは三塁を守れるスラッガーとして、3位以内での指名もありそうなものだが、個人的にはどうもそのへんが引っかかって大成を危ぶみたくなる。夏の大会では、文句なしの活躍を魅せて、上位指名まで昇つめ頂きたい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年 センバツ)