18kp-9


 




鈴木 裕太(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







鈴木 裕太(日本文理3年)投手 182/87 右/右 
 




 「良くなっているのでは?」






 最終学年での投球は、僅かに動画を見る程度であり、しっかり確認することができなかった 鈴木 裕太 。しかしその映像を見る限り、昨夏の時よりもだいぶ投手らしくなってきたのではないかという気がした。わかることは限られているが、気がついた変化について考えてみたい。


(投球内容)

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆☆ 4.0

 ノーワインドアップから投げて来るのですが、以前よりも力が抜けて落ちついて投げているように感じます。コントロールは相変わらずアバウトではありますが、打者の内角を突いたりと適度に両サイドに散らせてきます。

 球速もコンスタントに145キロ前後を記録できるパワーがあり、確認した映像では147キロを記録。以前のように力んで投げているのではなく、しっかり抑えるところは抑えつつ145キロ前後を投げられているところに確かな成長が感じられます。元々馬力という意味では、全国でも指折りの存在だったので。

変化球 スライダー・スプリット? 
☆☆☆★ 3.5

 最終学年の映像を幾つかみたのですが、横滑りするスライダーでカウントを整えています。また縦のスライダーだかスプリットなのかわかりませんが、追い込むと縦の変化球で空振りを誘います。しかし投球の多くはストレートで構成されており、縦の変化に依存しすぎている感じはしません。

その他

 牽制やフィールディングに関してはよくわからなかったのですが、クィックは1.0秒前後と高速です。

(投球のまとめ)

 だいぶ投手らしくなってきたなというのが、率直な感想です。それでいて元々の馬力があるので、無理しなくても145キロ前後を叩き出せるパワーがあります。変化球も悪くありませんし、荒削りではありますが楽しみな素材ではないのでしょうか。


(投球フォーム)

 残念ながら投球内容は僅かにしか確認できなかったので、フォームが昨夏からどのぐらい変わっているのか比較してみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は一塁側に落とており、身体を捻りだすスペースは確保。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化を投げても窮屈にはなりません。

 またステップの幅自体は狭いのですが、「着地」までの粘りも悪くありません。そのため身体を捻り出す時間はある程度確保できており、カーブやフォーク以外にもキレや曲がりの大きな変化球の習得も可能ではないかとみています。この辺の動作は、かなり昨夏よりも良くなっています。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブはしっかり内に抱えられているわけではないのですが、昨年のよりも最後まで身体の近くにはあるようになって暴れなくなりました。そういった意味では、アバウトながらも両サイドへの投げ分けもしやすくなったのではないかと。

 足の甲の押し付けは、完全にベタという感じではありません。しかしある程度は地面を押し付けることはできており、以前ほどボールが上吊らなくなったように思います。球離れも早すぎる感じはしませんし、まだまだ未熟ですが昨夏からは少しずつ良くなっています。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせなかったのが、だいぶ一塁側に落とせるようになっていました。そういった意味では、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのではないのでしょうか。それにカーブは滅多に投げないようですし、縦の変化もストレート中心に組み立てられており、多投しないので問題ありません。

 腕の送り出しにも、それほど無理がないように感じます。そういった意味では、肩への負担も大きくは無さそう。ただし相変わらずフォーム自体は力投派なので、あまり無理をするとフォームを崩して故障に繋がりやすいかもしれません。


<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、球の出どころもある程度隠せています。そのため、けして合わせやすいフォームではありません。コントロールが甘くならなければ、痛手は喰らわないのではないかと考えられます。

 気になるのは、「球持ち」が悪いようには見えないものの、振り下ろした腕が身体に絡んで来ない粘りの無さ。それでもボールへの体重の乗せは良く、打者の手元まで勢いと球威は落ちません。しかし投げ終わったあと一塁側に流れているのは、ステップが狭く力が前に充分に伝えきれずロスしてしまっているということ。このへんは、今後股関節の可動域を広げ、下半身を強化する中で改善してゆきたいポイントです。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらなくなりました。コントロールを司る動作にはまだまだ課題がありますが、故障のリスクや将来的に投球の幅を広げて行ける可能性も感じます。


(最後に)

 最終学年の投球は限られたものしか見られていませんが、かなり投手らしくなり実戦的になっていたのではないかと思います。その裏付けとなる技術的な部分でも、この一年で格段に成長を感じます。そういった意味では、実際の投球をちゃんと見ていられれば指名リストに名前を残していたのではないかと思えるほどです。

 細かく見られたわけではありませんので評価付けはできませんが、確かな成長が感じられ好感が持てます。インタビューを聞いていると、俺様キャラからと思ったら愛されキャラなのもわかってきました。この努力の過程を大切にし、プロでも弛まぬ努力を続けてもらいたいと思います。プロで、その勇姿を確認できるのが今から楽しみです。



(2018年夏 新潟大会)










鈴木 裕太(日本文理2年)投手 181/87 右/右 





                 「ボールの威力はドラフト級」





 いまどき珍しいぐらいの、全身を使って投げ込む力投派である 鈴木 裕太 。その荒削りなフォームから繰り出されるそのボールは、まさに高校からプロを意識できる威力をすでに持っている。しかしそれだけでは単純に、指名確実だとは言えない理由があるのだ。


(投球フォーム)

ノーワインドアップから、勢いよく足を引き上げて来る力感溢れるフォーム。

ストレート 140~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 ストレートのボールの勢い・球威は、2年夏の時点でドラフト指名レベルの球を投げています。ボールそのものの威力は素晴らしいものの、非常にコントロールがアバウトで高めに抜ける球が多い。甲子園でも2回を投げて2四死球だったように、秋の大会でも9回2/3イニングを投げて7四死球と不安定さに変わりはない。また「開き」が早く、打者としては合わせやすいフォームなのも気になるところ。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど 
☆☆★ 2.5

 スライダーは、縦・横二種類のスライダーがある。特に日本文理伝統の、縦のスライダーを織り交ぜてきます。そのほか緩いカーブや縦スラ以外にも沈む球を持っているよう。全国レベルの打者相手だと見極められてしまうのですが、秋には9回2/3イニングで19奪三振という驚異的な奪三振を誇っています。勢いのある真っ直ぐを魅せられた上での低めへの変化球は、並の高校生ではなかなか対応しきれないのでしょう。





(投球のまとめ)

 秋はチームでもリリーフとして登板しており、エースという役割ではありませんでした。それでチームが勝てれば良かったのですが、北信越大会で早々破れてしまい、選抜出場を逃しました。やはり先発を任されなかったのは、コントロールなどに不安があって、全幅の信頼を置けないという不安があったからかもしれません。一冬越えて、不安定さが改善されるのかがポイントです。

(投球フォーム)

今の粗っぽい投球フォームでは、将来的にどうなのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足は地面に向けて伸ばされており、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 「着地」までの粘りは平均的で、可も不可もなしといった感じ。そのため身体を捻り出す時間も並で、将来的に武器になるほどの球が覚えられるかは微妙でしょう。しかし彼の場合は、ボールの変化よりも見極められやすいフォームの方が問題だと思います。

<ボールの支配> 
☆★ 1.5

 グラブが抱えられていないので、どうしても外に逃げようとする遠心力を内に抱えられません。そのため両サイドへの制球を中心に、コントロールを乱しやすいわけです。また足の甲の押し付けが一部分しか地面を捉えていないので、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまいます。球離れも早くボールを押し込めていないので、余計に低めには集まってきません。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせないものの、捻り出して投げるカーブやフォークはあまり見られません。スプリットだと負担は多少軽減されるのと、縦スラを使うことも多いので、お尻が落とせないこと自体は気にしなくてもよいでしょう。

 腕の送り出しも上から腕を叩こうという意識はあるものの、送り出しに無理はありません。そういった意味では、肩への負担も少なめなのでは? ただしかなり力投派であり消耗も激しいので、故障のリスクがけして低いとは言えないでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並で、それほど打者がタイミングが合わせ難いフォームではありません。また「開き」が早いので、どうしてもコースを突いても打ち返されたり、縦の変化球を見極められてしまうことも少ないと考えられます。

 腕は強く振れているので、打者としては速球との見分けがつき難い。ボールへはしっかり体重が乗る前にリリースを迎えており、その辺が打者の手元まで生きた球が投げられているかは微妙な可能性があります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」は並であとの部分には課題を感じます。また制球を乱す動作には課題があり、ここを改善できるのか? 故障のリスクやピッチングの幅を広げて行けるのか?という部分でも、伸び悩むリスクが高いフォームだと言えます。


(最後に)

 ボール1つ1つの威力はすでにドラフト級なのですが、それを活かす術など技術的に部分には大きな不安を感じます。どうしても今は肉体のポテンシャルに頼り切った投球なので、ここを夏までにいかに改善できるかではないのでしょうか。高校からプロに進むべき素材だとは思いますが、プロで活躍できるのか?と言われると、これまでの投球では疑問を持たざるえません。能力は間違いなくドラフト級だけに、

課題と向き合いそれを改善できる可能性を、ぜひ確認したい


ところです。


(2017年夏 甲子園)