18kp-6
田中 法彦(菰野3年)投手 173/81 右/右 | |
最終学年における 田中 法彦 の投球は、ほとんどまともに確認できなかった。数球の動画を幾つかみての感想と、今年のフォーム分析をして、昨年からの変化があるのか探ってみたい。 (投球内容) 夏は、甲子園に出場した 白山高校 に破れ3回戦で敗退。この試合ではリリーフで登場し、3イニングを投げて4失点を喫して敗戦となった。 ストレート 常時145~150キロ強 ☆☆☆☆ 4.0 僅かな映像の投球でしたが、145~150キロ級のボールを投げており、明らかに速く見えます。昨年の時点から速かったのですが、さらに輪をかけてパワーアップしていたのではないかと思います。昨年もそうだったのですが、両サイドにはボールを散らすことはできます。しかしボールが高めに抜けることが改善されていなそうなのと、これだけのボールがありながら簡単に打ち返されてしまうところは気になります。 変化球 スライダー 確認できたのは、高めに浮いたスライダーを打たれた場面ぐらいでした。他にも昨年は、カーブ・チェンジアップ・スプリット系の球もあったように記憶しますが、そういった球の精度が上がっているかは確認できませんでした。結構落ちる球も使って来る投手だったのだが、打者に見極められて振ってもらえなかった。そのへんは、どうなったのでしょうか? その他 昨年の記録では、クィックは、0.9秒台と超高速。牽制も非常にうまく、フィールディングやベースカバーの動きも水準以上。投球以外の動作に優れ、運動神経の高さを感じさせると書いてある。さらに打撃も良い選手のようなので、ひょっとすると高校通算30本塁打の野手としての才能の方が将来性が高いのかもしれない。 (投球のまとめ) 正直数球の映像を見ただけなので、昨年からの欠点が改善されているのかはよくわからなかった。ただしボールの勢い・球速は、高校生でも最上位クラスの一人であったのは間違いない。 (投球フォーム) よくわからないことが多いので、昨年のフォームと比較して考えてみよう。ノーワインドアップから、投げ込んでくる。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を二塁側に送り、お尻はバッテリーライン上に残ってしまっています。そのため身体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたりフォークのような球種には適さない投げ方です。 「着地」までの足の逃し方は悪くなく、身体を捻り出す時間はある程度確保。そのためカーブやフォークといった球種以外ならば、いろいろな変化球を投げられる下地がある。実際武器になるほどの球はないが、球種自体は豊富であるように見える。「着地」に関しては、昨年よりも粘れるようにはなっているようだ。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けはしやすい。しかし足の甲での地面への押しつけは、つま先のみが地面を捉えていて浮きがち。「球持ち」もさほどではないので、ボールがどうしても上吊りやすい。そのへんは、昨年から変わっていなかった。それでも昨年は完全に地面から浮いていた足が、浅くではあるが地面を捉えようにはなってきている。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻は落とせていないので、カーブやフォークといった球種を相変わらず多めに投げているようだと肘への負担が心配になる。腕の送り出しも、グラブを持っている肩が下がりボールを持っている肩が上がって、肩への負担も少なくない。身体離れたところを腕がブンと外旋しがちな上に、非常に力投派であることを考えると疲労も溜めやすいはず。日頃から、身体のケアには充分注意して頂きたい。昨年よりも腕の角度が上がったのか? 肩への負担は大きくなっているのではないかと感じる。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは適度に作れており、ボールの出処も隠れていて合わせ難くなっている。そういった意味では、昨年までの合わせやすく見やすかったフォームに比べると、一年でかなり改善されていると言える。 腕は強く振れているので、打者の空振りを誘いやすい。昨年よりも「体重移動」はできるようになっているが、それでも踏み出した前の足がブロックしてしまい、体重移動は充分とは言えない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」にまだ改善の余地はある。しかし「着地」と「開き」に関しては、この一年でかなり改善されていた。 足の甲の押し付けが浅かったりしてボールが上吊りやすく、故障のリスクも高いのは気になる材料。それでもカーブやフォークといった球種以外ならば、投球の幅は広げて行ける余地は残されている。技術的には発展途上ではあるものの、昨年からの成長は感じられた。 (最後に) ちょっと見た感じでは、昨年からそれほど欠点は変わっていないのではないかと思えた。しかし全体的にさらにパワーアップしており、投球フォームにも改善の跡が見られたのは評価したいポイント。しかし評価付けできるほどのサンプルはないので、評価はできないことをご了承願いたい。なんとなく昨年プロ入りした 平良 海馬(八重山商工-西武4位)とダブって見える。またフィールディングにも優れ打撃も良いので、投手として数年やって目処がたたなければ野手へのコンバートもあるかもしれない。いずれにしてもパワー型が揃うカープ投手陣の中で、いかに特徴を出してゆくのか興味深く見守ってゆきたい。 |
田中 法彦(菰野2年)投手 174/79 右/右 |
「意外に粗っぽい」 旧チームから背番号3をつけながら、主戦を任されていた 田中 法彦 。 夏の予選でも、下級生ながらドラフト指名された 岡林飛翔(広島育成指名)を差し置き、先発を任されてきた。一見総合力に優れたタイプかと思いきや、その投球は想像以上に粗っぽい。 (投球内容) 中背の体格から、少し力んで投げ込んで来る力投派。 ストレート 常時140キロ~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0 ほとんどの速球が140キロ台を越えてきて、最速では準決勝のいなべ総合学園戦で148キロまで到達。ボールは両サイドに散るものの、高めに抜けることも少なくない。ボールの勢いは確かにA級なのだが、その精度は高くない。またこれだけのボールがありながら、意外に打者に対応されてしまうところは気になった。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・スプリットなど ☆☆☆ 3.0 スライダーは曲がりながら落ちる軌道なので、正直カーブとの見分けは難しい。またスプリットなのかチェンジアップなのかも、区別がつき難い。そのため変化球は、カーブ気味な球と、スプリット気味な沈む球の2種類があるといった感じだろうか。変化球でカウントを整えることはでき、沈む球もそれなりに落ちては来る。しかしこの球に対しも、打者は見極めたり合わしたりしてきたのだ。 その他 クィックは、0.9秒台と非常に高速。むしろ投げ急ぎ過ぎているので、もう少しクィックのスピードを落としてでも、しっかり投球をすることを重視した方が良いのではないのだろうか。牽制も非常にうまく、フィールディングやベースカバーの動きも基準以上。投球以外の動作にも優れ、運動神経の高さを感じさせる。 (投球のまとめ) もう少し実戦的な投手かと思っていたが、かなり速球はバラツキ粗っぽいのがわかった。ストレートのスピード能力には優れているものの、ボールが浮きやすく精度・打ち難さという意味ではどうだろうか? 変化球もまだ、発展途上といった感じがする。 体格に恵まれていない右投手なので、よほどのものを示さないと高校からのプロ入りは厳しい。それでも昨今は、中背の速球派投手が高校から指名される機会も増えているので、彼もその追い風に乗って指名される可能性は残っている。ただし、もう少し実戦的な総合力に優れた技術は身につけておく必要がありそうだ。 (投球フォーム) その粗っぽい投球の原因は何なのか? フォーム分析をして考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を空中でピンと伸ばさないまま体重を落としてくるので、お尻はバッテリーライン上に残っている。そうなると身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球は投げ難い。 また「着地」までの粘りもやや淡白なために、身体を捻り出す時間も充分ではない。こうなるとキレや曲がりの大きな変化球を将来的に身につけられるかは微妙だろう。むしろ腕の振りの良さを活かして、カットボール・ツーシーム・スプリットなどの球速のある小さな変化で幅を広げてゆくことになりそうだ。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けはつけやすい。しかし足の甲での押しつけは浮いてしまい、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまう。また「球持ち」が悪いようには見えないが、腕が身体から離れて振られているので、制球を乱しやすい。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせていなく、カーブやフォークといった捻り出して投げる球を投げようとすると窮屈になる。そういった意味では、肘への負担はそれなりにあるのではないのだろうか。 それでも腕の送り出しには無理がないので、肩への負担は少なめ。力投派なので、疲労を貯めやすい危険性はある。それによりフォームを崩し、知らず知らずに負荷をかける危険性は否定できない。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りもさほどなく、打者としては合わせやすいのでは? さらにフォームが直線的で、身体の「開き」も早くなりがち。そのためなのか? ボールの勢いの割に対応されてしまい、縦の変化も見極められたり当てられたりしてしまう。 中背の体格で140キロ台後半を叩き出せるのは、非常に強い腕の振りがあるから。またボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできているので打者の手元まで勢いが落ちない。ただしステップが狭すぎるせいか? 投げ終わったあとバランスを崩しやすいのは気になる材料。体重移動が、しっかりなされていない。ここを改善できれば、もっと凄い球が投げられるようになるだろう。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外には課題があることがわかった。お尻が落とせないことでの肘への負担、足の甲を押し付けられないことでの高めに集まりやすい球筋、将来的にピッチングの幅を広げて行けるのかという部分では、正直疑問が残る。 (最後に) 投げっぷりは良いものの、細かい投球術や繊細なコントロールがあるわけでもない。またフォームの完成度も低く、思ったよりも素材型だったのがわかってきた。これだけのボールと旧チームからの経験を考えれば、秋は東海大会に進んでも不思議ではなかったはず。しかし3回戦の三重高校に破れてしまったあたりに、まだ実戦力には図抜けたものがないことが伝わってくる。 果たして最終学年において、何処まで課題をクリアして行けるかだろう。全国屈指の速球派だけに、この体格の右腕でも指名されるだけの総合力が身につけられるのか注目したい。ただの速いだけの投手で終わるのか? 確かな実戦力を兼ね備えプロ入りできるのか? 一年間追いかけてみたいと思わせる選手だった。 (2017年夏 三重大会) |