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沼田 翔平(巨人)投手のルーキー回顧へ






沼田 翔平(旭川大高3年)投手 175/64 右/右 
 




「スケールはないけれど」 





 175センチ前後の体格で、スケールで魅了するというよりは実戦的な投球で勝負する 沼田 翔平 。高校からプロといったスケールは感じられなく、大学や社会人を経てさらなる球速アップが望めるようだと面白いかなと思っていた投手。


(投球内容)

ワインドアップから振りかぶって、コンパクトな腕の振りから投げ込んできます。

ストレート 135キロ~142キロ 
☆☆☆ 3.0

 プロ入りする高校生としては、球速的には平均以下だと言えます。しかしボールの回転が実によく、打者の外角中心に集めることができます。また球筋も全体的に低めに決まることが多く、コマンドの高さもあります。驚くような球威・球速はありませんが、ストレートをかなり思い通り操ることができています。

変化球 カーブ・スライダーなど 
☆☆☆ 3.0

 右打者にはスライダーを外角に集め、左打者にはブレーキの効いたカーブを多く織り交ぜてきます。特に空振りを誘えるほどの変化球はないのですが、緩急やカウントを整えることができ、多めに変化球を織り交ぜてきます。そのため、コンビネーションで打ち取るタイプだと言えるでしょう。

その他

 クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。素晴らしいのは、味方のエラーが続出しても気持ちが揺らぐことなく極めて冷静であること。マウンドさばきも洗練されていて、「天性の投手」といった感じがします。

(投球のまとめ)

 すでにかなり完成された投手との印象で、成長が今後見込めるかがポイントかと。投手としてのセンスは素晴らしく、感情面のコントロールにも優れています。ボールの質・コマンドもよく、素直に今のベースの上にパワーアップが遂げられればと思います。



(投球フォーム)

今後の可能性について、フォームを分析して考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はバッテリーライン上に残ってしまって、身体を捻り出すスペースは充分ではありません。そういった意味では窮屈になってしまって、カーブで緩急をつけたりフォークのような捻り出してなげる球種には適しません。

 前に大きくステップさせることで、身体を捻り出す時間を確保。カーブやフォークといった球種には適しませんが、キレや曲がりの大きな変化球を習得して行ける可能性は感じます。ただしテイクバックが小さめなので、実際そこまで大きな変化をするのかには少し不安にはなりますが。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆★ 4.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすいはず。足の甲の地面への押しつけもできており、球筋は低めに集まりやすい。「球持ち」もまずまずで、指先の感覚にも優れたタイプそのため、コントロールを大きく乱す要素は見当たらない。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせない割に、捻り出して投げるカーブを多投するのは気になる材料。そういった意味では、肘への負担は少なくないのでは?

 腕の送り出しには無理はなく、肩への負担は少なそう。けして力投派ではないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそれなりで、球の出どころは平均的。しかしフォームが直線的なので、動作の割には合わされやすいかもしれません。

 気になるのは、振り下ろした腕があまり身体に絡んで来ないところ。そのため、速球と変化球の見極めがつきやすく、武器であるカーブが上のレベルで使えるかは微妙です。さらに「球持ち」は悪くないように見えるのですが、踏み出した足が体重移動をブロックして阻害してしまっています。そのためどうしても前に体重が乗らず、上半身だけで投げてしまう傾向が強いことです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」ですが、特に「体重移動」の部分が気になります。コントロールを司る動作には優れていますが、お尻が落とせない割にカーブを多く投げるので肘への負担はどうでしょうか? それでもカーブやフォーク以外ならば、球種を増やし投球の幅を広げて行くことは可能です。投球フォームとしては、良い面と悪い面がそれぞれあり、どちらが全面に出るかは流動的です。


(最後に)

 通常ならば、プロが高校から獲るタイプではないと思います。実戦型で、大学や社会人で上積みを確認してから指名するタイプでしょう。そのため、今後のさらなる上積みができるかにかかっています。実戦的な投手ではあるので、それができるようだと比較的早い段階で一軍に出てくると思います。この辺は、実際入れてみたいとわからないという部分ではないのでしょうか。しかし私ならば、もう少し様子をみたいという判断をしたと思います。


(2018年夏 甲子園)