18kp-36





佐藤 智輝(楽天)投手のルーキー回顧へ







佐藤 智輝(山形中央3年)投手 184/82 左/左 
 




「どのぐらいパワーアップしたのか?」 





 2年夏の山形大会決勝戦・日大山形戦でリリーフで躍動していたサウスポーが 佐藤 智輝 だった。残念ながら3年時は、3回戦で敗退。その勇姿を確認できないまま、最後の夏を終えてしまった。あくまでも2年夏の模様をみてのレポートになるが、どのような選手なのかご紹介してみたい。


(投球内容)

 2年夏の時点では、細身でスラッとしたサウスポーといった感じだった。しかし体格も3年時には 184/82 と、だいぶガッチリして成長を感じさせる。球速も2年時はMAXで130キロ台後半ぐらいかなという感じだったが、最後の夏の大会では144キロにまで到達していたという。

ストレート 130~後半 
☆☆★ 2.5

 2年生当時の投球を見る限り、常時130キロ~最速で130キロ台後半ぐらい。球速以上に球筋も良く、将来もっと良いストレートを投げられそうだなという印象は受けた。その辺がこの一年で、着実に力強さを増したのだろう。最終学年では力で押すだけのピッチングができるようになっていたということで、コンスタントに140キロ前後は投げられるようになっていたのではないのだろうか。

 フォームは本格派のサウスポーで、角度をつけて真上から投げ込んでくる。そのため左打者にとっては、それほど苦にする球筋ではない。ボールは両サイドに散っており、細かいコントロールはないものの四死球で自滅するといった危うさは感じられなかった。

変化球 カーブ・スライダー 
☆☆★ 2.5

 2年時の投球では、緩いカーブかストレートとのコンビネーション。中間球のスライダーは観られず、この辺がこの一年でどのぐらい変わったのか気になる部分でした。カーブ自体のブレーキは悪くないのですが、さすがにこの極端な配球だと、なかなか打者から空振りを奪うことは難しい感じでした。

その他

 牽制は左腕投手らしく、モーションとの見分けが難しくまずまず。クィックも1.2秒前後でしたが、この一年でさらに磨かれていたかもしれません。

(投球のまとめ)

 ストレートはさらに力強さを増していたようですが、中間球のスライダーをどの程度の頻度や精度で扱えるようになっていたのかは気になるところです。2年夏の時点で、来年のドラフト候補にあがって来るだろうなと思わせる内容ではあったので、この一年間順調にパワーアップを遂げることができたのでしょう。



(投球フォーム)

2年夏の時点でのフォームを元に分析しますが、その将来性について考えてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側(左投手は)の落としは甘めなのですが、フォームが進むにつれてお尻は深く落ちてゆきます。お尻が落ちた時にまだリリースは迎えてはいないので、ある程度は身体を捻り出すスペースは確保できていると考えられます。カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのには、それほど無理はないのでは。

 「着地」までの粘りは並ぐらいで、身体を捻り出す時間も平凡。いろいろな球は投げられるのでしょうが、それが武器になるほどのキレや曲がりの大きな球を習得できるのかは微妙です。決め手不足で、伸び悩む可能性も否定できません。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは解けてしまっているほどではないのですが、内にしっかり抱えられているというほどでもありません。球筋を見る限りは、大まかには両サイドに散らすことはできています。

 足の甲の地面の押し付けができずに浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが上吊る危険性があります。それを抑え込むためなのか? 真上から投げ込んでくるので思ったほどは上吊ってはいませんが。ただし高低のコントロールは、けして良いとは言えないでしょう。それでも「球持ち」は結構良いので、指先まで力が伝えらえボールをある程度制御できているようにも見えます。このことで、この動作でも四死球を連発しない程度にはコントロールできているのかもしれません。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークような球を投げても窮屈になることは少ないのでは。そのため肘への負担は、カーブを多投しても痛め難いのではないかと考えています。

 気になるのは、背中を後ろに反るぐらいにしながら、無理に腕を上から投げ下ろそうとするところ。グラブを持っている肩は下がり、ボールを持っている肩が極端に上がっているような無理な送り出しなので、肩への負担は大きいと考えられます。ある程度の球数を投げるようになると、その辺が心配な部分です。身体のケアには、充分なぐらい注意して欲しいところです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平凡で、それほど合わせ難いわけではなさそうです。それでも球の出どころは隠せているので、コントロールミスをしなければ、痛手は喰らい難いと考えられます。

 腕は強く振れており勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすいはず。ストレートと似た腕の振りから繰り出される変化球を習得できれば、効果的に使える可能性があります。

 ボールへの体重の乗せは発展途上なので、まだ打者の手元までグッと来るほどの球威や勢いはありませんでした。しかし最後の一年間で、この辺が改善されていると球速以上に威力を感じさせる球が投げられるようになっていたのかもしれません。特に踏み出す前の足がブロックしてしまって、前に体重移動するのを阻害していた点は気になりました。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「開き」には優れ実戦的な一方、「着地」「体重移動」に課題があり、質の良い真っ直ぐを投げられるかのエネルギー伝達に課題がありました。

 コントロールを司る動作に課題は多いのですが、「球持ち」の良さを活かし指先の感覚で上手く補っていたこと。しかし肩に負担がかかるフォームなのと、今後どのようにピッチングの幅を広げて行けるのかには課題が残っていました。この一年でその辺が、どの程度改善されていたのかと。


(最後に)

 全国的には名前は知られていませんでしたが、2年生当時から楽しみな投球をしていました。そんな中、順調にパワーアップを遂げて一年間過ごせたようです。問題は、技術的に改善できているのか? という部分で、この辺が変わっていないと伸び悩む要素は秘めた投手だと思います。 

 将来性を多分に秘めているサウスポーなので、ぜひイースタンなどで成長した姿を確認したいものです。残念ながら最終学年での投球は確認できていないので、評価付けはできないことをご了承くださいませ。


(2017年夏 山形大会)