18kp-34
川原 陸(創成館3年)投手 185/84 左/左 | |
例えランナーを背負っても、粘っこい投球で踏ん張るのが、この 川原 陸 の持ち味。しかし夏の甲子園・創志学園戦では、わずか3回2/3イニングで7安打4失点と、持ち味を発揮することなく甲子園をあとにした。秋の神宮大会で大阪桐蔭に土をつけた男の最後は、あっけないものだった。 (投球内容) 185/84 の恵まれた体格を、雄大に使って投げ込んでくる大型サウスポー。 ストレート 常時135~140 ☆☆★ 2.5 球持ちの良さを活かした、ねばっこい投球が持ち味。しかし球速は、135キロ~後半が多くドラフト候補としては物足りない。それでも球持ちの良さもあり、球速以上に感じさせる勢いはある。ボールも外角を中心に集めることができ、夏の長崎大会では23回1/3イニングで5四死球であり、四死球率は21.5%(投球回数の1/3以下が目安)と安定。ピンポイントに投げ込んでくるコントロールがあるわけではないが、ストライクを先行させ、余計なフォアボールを出すことは少ない。しかしどうしてもこの球速だけに、ストレートで相手を押し切るほどの絶対的なものがない。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ ☆☆☆ 3.0 スライダーは、カウントを整える横滑りのものと、曲がりながらボールゾーンに沈んでゆく空振りを誘うものを使い分けている。他にも右打者にはチェンジアップを、あるいは緩いカーブもあるのだが、それほど多くは使って来ない。変化球でも、相手を仕留めるほどの絶対的なキレ・曲がりのある球は持っていない。高いレベルの打者相手だと、粘られて苦しくなってしまう。 その他 牽制は平均的で、それほど走者を刺そうといった鋭いものは混ぜて来ない。クィックは、1.20~1.25秒とけして素早くもない。ただし、走者を見て投球ができる左腕だけに、走者への注意力さえ疎かにならなければ問題はないだろう。フィールディングも、落ち着いてボールを処理することができている。特に派手さはないが、やることはできている。 (投球のまとめ) 神宮大会・選抜と見てきたが、ただ淡々と投げている印象で投球にメリハリとか抑揚みたいなものが感じられなかった。そのため投げ込むボールも含めて、何かぼやけた投球をする選手とのイメージが強かった。しかし夏の予選あたりから、要所を締めることができる、高い精神力の持ち主ではないかという思いが強くなってきた。しかし最後の夏は、長崎予選でもピリッとした内容ではなかったのは正直気になっていた。 (投球フォーム) この投手の場合、現在の力よりも今後もっと良くなるという未来像を描きやすいことで評価されるタイプだと思う。実際にそういった可能性を秘めた選手なのか? フォームを分析することで、考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落ちている。そのため体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球を投げるのにも無理はなさそうだ。 「着地」までの粘りは、それなりといった感じで悪くはない。そのため体を捻り出す時間はある程度確保できており、キレや変化の大きな変化の球を身につけても不思議ではないだろう。現状は変化球が流れ気味でしっかり曲がりきらないことが多いのだが、もっと投球の幅を広げていける可能性は秘めている。 <ボールの支配> ☆☆☆☆★ 4.5 グラブは最後まで体の近くで留まっており、両サイドへの投げ分けはつけやすい。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールが低めに集まりやすくネチッコイ投球を演出できている。「球持ち」も良いので、指先まで力が伝えられ細かいコントロールがつけやすい。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈になることはない。そのため肘への負担は少ないと考えられるし、現状こういった球種はほとんど見られない。 また腕の送り出しを見ていても、角度をつけて投げていても無理は感じられない。そのため肩への負担も少ない、無理のないフォーム。結構腕を振ってくるので思ったよりも力投派の印象を受けたが、ゆったりと始動してくるので疲労を溜めやすいということも少なそうなのだが。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りも悪くなく、「開き」も抑えられている。そのため、打者としては合わせ難い。 振り下ろした腕は体に絡む勢いがあり、速球と変化球の見極めは難しい。また「球持ち」もよく、ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、球速はなくても打者の手元まで活きた球が投げられている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「球持ち」「開き」に優れている。一見オーソドックスなサウスポーには見えるが、粘っこく捉えづらい投球をするように打席では感じられるのではないのだろうか。 制球を司る動作に優れ、故障のリスクなど負担も少ない。今後はもっと投球の幅を広げて行ける可能性も秘めており、技術的には相当ハイレベルな投球フォームだと言えるであろう。 (最後に) まだまだ伸び代を感じさせる余力があり、技術的にも素晴らしい土台を持っている。そういった意味では、素直に肉付けできればプロでも先発を担えるような投手になっても、何ら不思議はない。 ただし心配なのは、今のままでボールが変わらない場合である。この時は、どうしてもプロレベルでも見劣る球速・ボールの力で勝負してゆかなければならず、非常に苦しいプロ生活が待っている。本当ならばボールが一変するかを大学や社会人で見極めてからの方がベターであるのだと思うが、貴重な大型左腕だけに指名される可能性は高いとみる。 あくまでも現時点での内容と言うよりも、化けることを期待してという評価にはなるが、ボールが一変したときには球界を代表するようなサウスポーになっても不思議ではない。培ってきた経験、天性の投手としてのセンス、人並み外れた精神面などもあることを考えると、☆ をつけないわけにはゆかないだろう。ただし指名するとなれば、本会議でも下位の方になるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2018年夏 甲子園) |