18kp-31
横川 凱(大阪・大阪桐蔭)投手 190/85 左/左 | |
彼を初めてみたのは、2年春の選抜大会だっただろうか? 190センチ台の長身から、140キロ台の速球を投げ込み将来を嘱望された大型左腕。しかしその後結果がともなわなかったからだろうか? スケールを増すことよりも制球重視の投球になり、こちらの期待どうりの成長を遂げて来なかった。そんな男の、最後の夏をみた。 (投球内容) ノーワインドアップから、勢いよく足を引き上げてきます。むしろこういった大型左腕は、ゆったりと体を使ってきた方が、相手としては組難い感じがする気がします。 ストレート 135キロ前後~後半 ☆☆★ 2.5 2年春に全国デビューしたときの最速は142キロ、しかしこの選抜での最速は137キロと球速的にはむしろ退化している。190センチの上背で上から腕を振ってきている割に角度にいやらしさを感じないのは、やはり球威・球速がドラフト候補としては物足りないからではないのだろうか。 むしろ球筋で特徴があるのは、一塁側にインステップすることで左打者には体に当たりそうな感覚に陥る横の角度にある。これは、左サイドハンドに似た効果があり、容易に外角の球に対し踏み込むことができない。制球重視といっても、元々細かいコントロールがないので、とりあえず打者の外角に集める程度。夏の甲子園・高岡商業戦でも、5回を投げて3四死球とそれほど驚くものではなかった。 変化球 スライダー・チェンジアップ ・カーブ ☆☆☆★ 3.5 ストレートのコントロールがアバウトな分、スライダーではしっかりカウントを整えてくる。スライダーも曲がりながら落ちる空振りを誘えるスライダーと、カウントを整えてくる横滑りのものと2種類を使いわけて来る。右打者にはチェンジアップも使って来るが、それほどまだ絶対的な切れ・精度はない。さらに緩いカーブも持っているはずだが、滅多にみられない。とりあえずスライダー中心に組み立ててカウントを有利にし、ストレートを織り交ぜてくるというピッチングスタイルの方が良さそうだ。 その他 牽制は左腕らしく、結構見分けが難しく走者としては厄介。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと平均的。フィールディングは大型選手らしく、少し動きが緩慢に見える。 細かい投球術、繊細な制球力はなく、淡々とストライクゾーンの枠の中に投げ込んでいるのみといった、まだ単純なものに終始している。 (投球のまとめ) 190センチ台の大型左腕だけに、この恵まれたスペックを活かした素材に期待して評価するべき選手なのだろう。残念ながら現時点では、ドラフト候補としては特別優れたものは見当たらない。大阪桐蔭で鍛えられた才能を、いかに次のステージで実戦に応用できるかにかかっている。ギラギラ向上心あふれる選手が集まる同校の中では、かなりのんびりした性格なのではないのだろうか? 果たしてプロ入り後、目の色が変わるにかかっている。 (投球フォーム) 今度は投球フォームの観点から、その可能性について模索してみたい。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足は地面に向けて伸ばされており、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため体を捻り出して投げる、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方をしている。 また「着地」までの粘りも淡白で、まだまだ体を捻り出す時間も不十分。そのため切れや曲がりの大きな変化球の習得は厳しく、将来的に伸び悩む可能性を秘めている。ただし現時点で、二種類のスライダーは悪くないので、この球を中心に他の球種を磨いてい欲しい。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブはしっかり抱えられているわけではないが、結果的に体の近くにある。そのため外に逃げようとする遠心力は抑え込めており、両サイドの投げ分けはつけやすい。 足の甲での地面への押しつけが浮いてしまっていて、ボールが高めに上吊りやすい。それでも「球持ち」は悪くないので、ある程度指先でボールをコントロールをする器用さは持っていそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球をほとんど投げていない。そのため、肘への負担は気にしなくて良いのではないのだろうか。 腕の振りには角度があるものの、送り出しに無理はなく角度の割に肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労をい溜めやすいタイプではなさそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがないので、打者としては苦になく合わせやすいタイプ。それをインステップする横の角度や190センチの上背で芯をズラしてゆくのが持ち味。それに加え球の出どころは抑えられており、「開き」は遅くボールがなかなか見えて来ないところは救いではないのだろうか。 腕は結構振れており、投げ終わったあと体に絡んでくる。そういった意味では、ボールゾーンに切れ込む変化球などは、速球との見分けが難しく効果的。ボールへの体重の乗せは発展途上で、もう少し「球持ち」を粘れれば、もっとグッと打者に迫って来るような迫力も出てきそうだ。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「球持ち」や「開き」は想像以上に良かったが、「着地」「体重移動」に改善の余地が残されている。ここが良くなるようだと、グッと良い投手に変貌しそうだし、その可能性は感じさせる。 足の甲が浮いてしまうことで高めにボールが抜けがちなこと、将来的に良い変化球を覚えて投球の幅を広げて行けるのか?という不安は残る。しかし箸にも棒にもといった滅茶苦茶なフォームではないので、本人の意識・周りの指導力次第では大化けしても不思議ではない土台は持っている。 (最後に) 大型だが正統派というよりは、インステップすることでの左打者に強いタイプの左腕ではある。現在の力量としてはドラフト候補としても心許ないが、将来的には見違えるようになっても不思議ではない。まさにこの伸び代を感じさせるところが、この投手の最大の魅力ではないのだろうか。育成力に自信のある球団に、ぜひ指名して頂きたい素材型。ドラフト的には、下位指名(6位以降)ぐらいに落ち着くのではないのだろうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2018年夏 甲子園) |