18kp-30
垣越 建伸(山梨学院3年)投手 183/93 左/左 | |
甲子園では、高知商業戦に先発した 垣越 建伸 。しかし5回1/3イニングを投げて9安打・9失点を浴び力を出しきれないまま終わってしまった。山梨県大会では背筋痛のため、先発は初戦の3イニングのみ。あとは、すべてリリーフでの登板だった。実際のところ、彼の能力がどのレベルにあるのかは掴み難い。 (投球内容) 非常にゆったりとした静かなモーションから、ビュンと腕を振って来るために高めのボール球でも吊られて振ってをしてしまうといった勢いが持ち味。 ストレート 常時140キロ前後~146キロ ☆☆☆★ 3.5 常時速球は140キロ前後であり、力を入れた時には140キロ台中盤まで記録する。けしてキレというよりは球威のある重い球という感じではあるのだが、ゆったりしたモーションと腕の振りのギャップで打者としてはタイミングが計り難い。そのため高めのボール球でも、思わずバットが出てしまうのだろう。ほとんどのストレートは、真ん中~高めのゾーンに集中。両サイドには散らすことができ、なんと予選の15イニングで四死球は僅か1個。甲子園では5回1/3イニングで3四死球だったことを考えると、いかに自分の投球ができなかったかが伺われる。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・カットボールなど ☆☆☆ 3.0 県大会では、ほとんどがストレートでの投球。たまに、スライダーを交える程度だった。しかし甲子園では、チェンジアップ・カーブ・カットボールなども駆使したが、勢いづく高知商打線を抑え込むことはできなかった。腕の振りに勢いがあるので、スライダーなどの変化球でも空振りは奪える。山梨県大会では15イニングで、実に26個の三振が奪っていた。 その他 ランナーを出してもあまり鋭い牽制などは見られないが、クィックは左投手なので1.25秒前後とやや遅い。全体的にもっさりしたタイプなのだが、フィールディングの動きは悪くなかった。 細かい投球術や繊細なコントロールで仕留めるというよりは、ボールの勢いと力で相手をねじ伏せてゆくタイプなのだろう。 (投球のまとめ) 球の出どころが見難く、それでいて静かな入りから鋭い腕の振りによるギャップで想像以上に打ち難い。彼のこの夏のベストピッチングは、準決勝の甲府商業戦ではなかったのだろうか。このときもリリーフでの登場だったが、MAX146キロを記録するなどボールの勢いがあった。 甲子園ではリズムに乗りきれず持ち味を生かせなかったが、逆に県大会ではあまり見られなかった多彩な変化球を確認できたことは収穫。まだまだ発展途上の投手ではあるが、馬力のありそうな体格だけに復調すれば力で押すようなピッチングも見られるのではないのだろうか。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻は三塁側(左投手の場合)に落とせていない。したがって身体を捻り出すスペースは充分とはいえず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適していない投げ方をしている。 それでも地面に着きそうなところまで降ろした足を、なかなか着地させない粘りはある。そのため身体を捻り出す時間は確保でき、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレのある変化球を習得できる可能性は広がる。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドへの投げ分けはつけやすい。足の甲の押し付けがやや浅いのと、「球持ち」は悪くないもののボールの押し込みが不十分なので、まだボールが高めに抜けがちなのが今後の課題だろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせないものの、カーブやフォークを多投するようなピッチングスタイルではないので、肘への負担は気にしなくても好いのかもしれない。腕の送り出しを見る限り、肩への負担は小さそう。けして力投派ではないので、フォームのバランスを崩して故障に繋がるといったタイプでも無さそうだ。 背筋痛だとか腰が悪いなどの話もあり、充分な能力を発揮できないことは気がかりな材料ではある。そのため成長期の、一過性のものだと好いのだが・・・。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りがあるので、打者としてはタイミングが図り難い。そのうえ「球の出どころ」も見難く、ボールが見えてからビュンとボールが一瞬で到達する感覚に陥るのでは? 腕の振りは悪くないが、まだ粘っこいというほど「球持ち」は良くない。ボールへの体重もある程度乗せてからリリースはできているが、もっと我慢してから投げられると、グッと打者に迫って来るような迫力が出てくるのではないのだろうか。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」などは良く、「球持ち」「体重移動」は発展途上でもっとよくなりそう。お尻を落とせないことよる肘への負担よりも、腰などが悪そうなのが気になる材料。足の甲の押し付けの浅さよりも、ボールを押し込めないことで高めにボールが上吊りやすい。ただし、この球筋こそが彼の長所でもあり欠点でもある。将来的には緩急・決め手のある球をいかに見出すかというのが、課題になってきそうだ。 (最後に) 持ち得る能力を何処まで出せていたのかという部分では掴み難かったが、今の能力でも志望届けを提出すれば本会議で指名されるのではないかというレベルにはある。評価的には、5位前後ぐらいにはなってしまうかもしれないが。完全に回復したら、140キロ台後半ぐらいの押せるような、パワーピッチも期待したくなる素材ではある。 もし身体に不安があるのであれば、大学などでワンクッション置いてからという選択もありだろうが、どのような選択するのか注視したい一人であった。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2018年夏 甲子園) |