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阿部 雄大(22歳・ENEOS)投手の個別寸評へ







阿部 雄大(酒田南3年)投手 182/80 左/左 
 




 「使いようによっては」





 山形大会に、使いようによっては面白いサウスポーがいる。その男の名前は、阿部 雄大 。元々は打たせてとるピッチングが持ち味だったというが、ボールに力がついてきて三振を狙って奪える投手になってきたのだという。


(投球内容)

 サイドハンドのように、少し前に体を折って投げ込む左のスリークォーター。リリースの際には、肘を立てて投げこんでくる。

ストレート 常時135キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 試合の実況を聴く限り、球速は135キロ前後と際立つものはない。しかしボールにキレと勢いがあり、それ以上に打者は感じられているはず。全体に球が高いのは気になるが、勢いがあるのでキレがある間は痛打は喰らいにくい。また右打者に対しては、内角胸元に、ズバッと投げ込んで見逃し奪える。ボールは高くても、両サイドへはある程度投げ分けられるコントロールがある。そして、余計な四死球を出すようなタイプではないのだろう。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 スリークォーターの腕の振りを生かした、曲がりの大きなスライダーが最大の武器。特に外角低めに決まるので、左打者には非常に遠くに感じられ厄介。右打者にはチェンジアップ系の球もあるようだが、まだそれほど際立つキレ・精度はないようだ。そのため投球は、スライダーとのコンビネーションがほとんどで構成されている。

(投球のまとめ)

 元々が打たせてとる好投手タイプだけに、ゲームメイクできる適度なまとまりと、マウンド捌きの良さがある。高めの速球の勢いや左打者に対するスライダーのキレ・活かし方には見るべきものを持っている。しかしボールの力・総合力を考えると、まだ本会議で指名されるほどのものがあるのかには疑問が残る部分も。左打者に強い左投手という特徴があるので、一年ぐらい独立リーグで腕を磨きプロを目指すとか、短期間で上を目指すほうがスケールで圧倒するタイプではないので良いのではないのだろうか。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、今後の可能性を考えてみたい。

<広がる可能性> ☆☆ 2.0

 サイドハンドのように前に体を折るような感じで重心を下げてくるのので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまう。体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急を利かせたり、フォークのような縦に落差のある球は難しい。

 「着地」までも、地面を捉えるのはアッサリしてしまっているので、体を捻り出す時間は不十分。そういった意味では、曲がりの大きな変化よりも球速のある小さな変化球でピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。ただしスライダーのキレ・曲がりはあるので、決め手不足というよりも単調になるのに注意したい。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けはつけやすい。足の甲での地面への押しつけが浮いてしまうので、ボールが上吊りやすい。球離れは平均的だが、それほど指先の感覚に優れているといった繊細なタイプではなさそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻を三塁側(左投手の場合)落とせるフォームではないが、カーブやフォーク系の球を投げないので、肘への負担は気にしなくても良さそう。

 腕の送り出しもスリークォーターで、無理は感じられない。そのため、肩への負担は少ないだろう。けして力投派というほどでもないので、疲労も貯めやすくはなさそうで、疲れからフォームを乱して故障するリスクも少ないのではないのだろうか。


<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがあるわけではないので、けして打者が苦になるフォームではないのだろう。それでもボールの出処は隠れていて、見えてから一瞬で手元まで到達するような感覚に陥るキレがある。切れがある間は、打者も差し込まれやすいタイプ。

 腕の振りは悪くないのでキレを生み出せるが、けして「球持ち」が良いわけではない。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではないので、球威という点ではまだ発展途上といった気がする。この辺は、もう少し球持ちがよく体重を乗せてからリリースできるようになると、キレだけでなく球威も加わって来るのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外の部分に粘りが欲しい。そのためどうしても、一辺倒で淡白な印象を受けてしまう。

 高めに集まりやすい球筋と今後投球の幅を広げて行けるのかという疑問もあり、プロ入りにはもう少上のレベルでし実績を残してからでもといった印象を受けた。


(最後に)

 本人のプロ志向がどの程度なのかは定かではないが、もし少しでも早くプロ入りしたいと願うならば、独立リーグ等で最短でのプロ入りを目指す、数字のはっきり残る世界で実戦力を証明するのも悪くないだろう。もしそれほどプロ志向が現時点で高くないのであれば、大学なり社会人に進むことが望ましいかなという気はしている。面白いものを持っているので、どんな進路をたどろうとも今後もその成り行きを注視してゆきたい投手だった。


(2018年夏 山形大会)