米倉　貫太（埼玉栄３年）投手　１８３／８０　右／右

「筋は抜群にいい」

　昨秋ぐらいから、関東でも最も注目される存在となっていたのが、米倉　貫太　。動画なでおおよそのイメージはできていたが、ぜひ生でしっかり観てみたいと思い春季埼玉大会に足を運んだ。なるほどまだまだ未完成な部分は目立つが、投手としての筋の良さは評判どうりの好素材だった。

（投球内容）

　正統派の右上手投げで、ワインドアップから振りかぶって投げてくる。

ストレート　１３０キロ台後半～MAX８９マイル・１４３キロ　☆☆★　2.5

　球速は常時１４０キロ前後と、高校生のドラフト候補と平均的。特に打者の手元でグ～ンと伸びてくるとか、ピュッとキレて空振りを誘うといったほどの球ではない。特に右打者外角のクロスへの球筋を得意としており、左打者には内角へ投げてくることが多い。それほど細かいコントロールはないが、四死球で自滅するような危うさはない。

変化球　カーブ・スライダー・フォーク・チェンジアップなど　☆☆☆★　3.5

　むしろ現時点で評価できるのは、どの変化球もしっかりと曲がり、使えるレベルにあるということ。ブレーキの効いたカーブでもカウントを整え、軌道のよく似たスライダーもある。チェンジアップ系の球やストンと落ちるフォークも投げられるなど、一通りの変化球をしっかり投げる指先の感覚の良さを持ち合わせている。まだ絶対的な球種はないものの、将来的には武器になる球を覚えても不思議ではない。

その他

　クィックは、１．１秒台で投げ込めるなど悪くない。バッターボックスに入る時もラインを踏まないように意識しているなど、投手らしい細やかさは併せ持っている。

（投球のまとめ）

　まだストレートの質・球速が思ったほどではないなど、上位候補としては物足りない一面が。しかし柔らかい腕の振りから、変化球のキレ・精度も一定レベルを満たすなど筋の良さは垣間見られる。

　投球練習の最後の球までしっかり力を入れて投げることからも、けして力を出し惜しむとか手を抜くようなタイプなのではないのだろう。逆にそのへんが汲々と自分を追い込みしぎて、投球に遊びや余裕の無さに繋がっているのかもしれない。

　いずれにしても、夏の予選までにもうワンランクストレートののレベルアップを望みたい。それが実感できるようだと、上位指名も現実味を帯びてくるのではないのだろうか。

（投球フォーム）

今度はフォームの観点から、その可能性について考えてみたい。

＜広がる可能性＞　☆☆☆★　3.5

　お尻は適度に一塁側には落ちており、身体を捻り出すスペースは確保。そのため捻り出して投げるカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化球を投げるのにも窮屈さは感じない。

　「着地」までも適度に足を前に逃がすことができ、身体を捻り出す時間を確保。そのため変化球のキレ・曲がり幅もそれなりで、どの球種も使える下地を作っている。今後さらに下半身の強化・股関節の柔軟性を磨ければ、武器になる変化球も身につけてもおかしくはない。

＜ボールの支配＞　☆☆☆☆　4.0

　グラブを最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けもつけやすい。足の甲でも地面を捉えているので、ボールも上吊り難い。「球持ち」自体はまだ並でああるが、投げ終わった後のバランスもよく、大きくコントロールを乱す要素は少ない。

＜故障のリスク＞　☆☆☆★　3.5

　お尻は落ちているので、カーブやフォークを投げても窮屈になることがなく、肘への負担は少なそう。少しグラブを持っている肩が下がり、ボールを持っている肩が上がっている傾向はあるが、送り出しに無理があるというほどではないだろう。また力投派でもないので、疲れを貯めやすいということもなさそうだ。

＜実戦的な術＞　☆☆☆☆　4.0

　「着地」までの粘りもそれなりであり、身体の「開き」も抑えられており、コントロールを間違わなければ痛手は食らい難いはず。

　振り下ろした腕は身体に絡むなど、腕の振りも悪くない。ただしもっと強く・シャープに腕が振られるようになれば、空振りを誘うような勢いやキレが出てくるはず。ボールへの体重移動も悪くないが、まだまだ発展途上の段階。さらに下半身や股関節の使い方がよくなれば、グッと打者の手元まで生きた球がゆくようになるのではないのだろうか。

（フォームのまとめ）

　フォームの４大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。しいて言えば「球持ち」「着地」「体重移動」などに、もうワンランク上の粘りが欲しい。

　制球を司る動作もよく、故障のリスクもさほど高くない。将来的にも、投球の幅をまだまだ広げて行けるのではないのだろうか。フォームの観点からも、好素材なのは間違いない。

（最後に）

　まだまだ速球に訴えかけて来るような勢いや迫力はないものの、誰が観ても惚れ惚れするような体格とフォームをしている。ストレートの質さえ変わってくればという感じの選手で、あとは申し分のない素材。現状はボールが並なので上位候補となると物足りないが、しっかり育成できる球団ならば大化けしても不思議ではない。できれば春～夏への大幅な成長を実感したいところであり、それが実現すれば一躍上位候補になるのではないのだろうか。現状は、素材を買っての中位指名。そのぐらいが、妥当な評価ではないのだろうか。

蔵の評価：☆☆　（中位指名級）

（２０１８年春　埼玉大会）