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増居 翔太(24歳・トヨタ自動車) 投手 171/68 左/左 (彦根東-慶応大出身)





 「地味だけれども実力者」





 彦根東-慶応大-トヨタ自動車と、主力投手として確かな経験と実績を積み重ねてきた 増居 翔太 。久々に都市対抗でじっくりみたが、かなり球速が上がっていたのに驚いた。あまりドラフト戦線で騒がれることはないが、密かに着実に進化を続けていたのである。


(投球内容)

 投球センスに優れたタイプで、凄みよりも実戦的な投球が持ち味。

ストレート 常時140キロ~146キロ ☆☆☆ 3.0

 キレ型で球威に欠ける部分もあり、甘く入るとスコーンと飛ばされてしまう強さがあります。それでも試合を作れるように、


 









増居 翔太(彦根東3年)投手 171/64 左/左 





 「大学に行った方がいいと思う」





 いつも口にすることだが、高校からプロに入る選手は、上手い選手や良い選手といった総合力に優れたタイプではない。何かが、凄い選手こそ高校からプロに入るべき選手なのだと。そういった意味では、増居 翔太 は、典型的な良い選手、上手い選手のタイプに属する選手。進学を明言しているが、その選択は私自身も正しいと思っている。


(投球内容)

 170センチそこそこの小柄な体格から、キレのある速球と変化球とのコンビネーションで打ち取るサウスポー。

ストレート 常時135~140キロ ☆☆☆ 3.0

 球速表示こそ並だが、ボールにキレがあるのと多彩な変化球との緩急でボールを速く感じさせる術を知っている。この投手は、左腕でも打者の懐を厳しく突くといった投球ではなく、きっちり外角にボールを集めて投球を組み立ててくる。結構制球はバラついていて、四死球は少なくない。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ ☆☆☆ 3.0

 カーブでしっかりカウントが取れるし、左打者の外角低めに集めてスライダーは空振りが取れる。右打者にはチェンジアップ系の球も投げてくるが、この球の精度・曲がりは発展途上。現状は、速球とカーブ・スライダーを中心に投球を組み立ててくる。今後は、右打者への投球が課題になってくるのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.1~1.15秒ぐらいと平均的。牽制も、二塁などにも入れることが多く、技術的には自信ががあるのだろう。特に運動神経に優れているというよりも、野球センスの高さでしっかりこなせている感じがする。

(投球のまとめ)

 打者をみてしっかり投球ができる選手であり、相手を仕留めるコツというものを熟知している。けしてまだ完成されているという感じはしないので、球威・球速を増したりチェンジアップなどを自分のものにできたら、まだまだ投球の幅を広げて行けるだろう。

 そういったことを磨くために、大学に進んで腕を磨く時間が必要なのではないのだろうか。東 克樹(立命館大-DeNA)左腕も、愛工大名電時代はこのぐらいの左腕だったと記憶する。非常に頭の良さそうな選手なので、目標を設定して段階を踏んで伸びてきて欲しい。


(投球フォーム)

ノーワインドアップ、足を勢いよく引き上げて来る。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は、それなりに三塁側に落ちてゆく。そのため身体を捻り出すスペースはある程度確保できているので、カーブなどは無理なく投げられている。フォークを投げるのも無理は無さそうだが、手が小さい可能性があり、その点はどうだろうか?

 「着地」までの粘りも、ある程度粘ることができ身体を捻り出す時間を確保。将来的にも、キレや曲がりの大きな変化球を、習得できる可能性を秘めている。もっともっといろいろな球を覚えて投球の幅を広げて行けそうだ。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5
 
 グラブは最後まで身体の近くにはあり、両サイドへの投げ分けはできそう。足の甲でも地面をしっかり捉えて離さないので、ボールはそれほど高めには抜けない。さらにリリース時にもっとボールを押し込めるようになれば、膝下に集まる球も増えてきそうだ。少し気になる点をあげるとすれば、腕振りが身体から離れ気味なので、こういった投手はコントロールが乱れやすい傾向にある。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈になり難く、肘への負担は少なそう。腕の送り出しにも無理はなく、肩を痛める心配も少ないのではないのだろうか。それほど力投派でもないので、疲労も貯め難くそうだ。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、それほど合わせやすいフォームではないだろう。また「開き」も抑えられているので、ボールの出処もわかり難いはず。コントロールを間違えなければ、痛手は喰らわないのではないのだろうか。

 腕は振れて勢いがあるので、変化球でも空振りを誘いやすい。ボールへの体重の乗せ具合も、充分とは言えないが悪くはない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は特にはない。しかし「着地」「球持ち」「開き」なども発展途上であり、もっと追求すれば打ち難かったり、エネルギー効率の良いフォームになって行けるだろう。

 故障のリスク・制球を司る動作も悪くなく、今後投球の幅広げて行ける下地もある。肉体の成長と意識次第では、まだまだ良くなって行ける可能性を秘めている。


(最後に)

 身体も小さく、マウンド捌きの良さからも、上積みがあまり残ってなさそうに見えるかもしれない。しかしこの投手は、まだまだ肉体的にも技術的にも発展途上であり、これからグッと伸びて行ける可能性を秘めている。

 現時点では驚くほではないが、これが大学を卒業する頃にはどのぐらいになっているのか非常に興味深い。まずは大学などでワンクッション置いてから、4年後に上位指名候補に浮上して来ることを楽しみにしている。そのため現時点では、プロ入りへの「旬」だとは判断しない。


(2018年 センバツ)