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矢澤 宏太(日ハム)のルーキー回顧へ







 矢澤 宏太(日体大4年)外野&投手 173/71 左/左 (藤嶺藤沢出身)





 「数年に一度の逸材」





 高校時代は、投手として評価していた 矢澤 宏太 。しかし今は、野手としての方が、個人的には高く評価している。いずれにしても、投手としても上位指名候補・野手としても1位候補 。その両方の才能を、これだけハイレベルに兼ね備えている選手は、毎年出てくるレベルの選手ではないだろう。


走塁面:☆☆☆☆ 4.0

 一塁までの到達タイムは、速い時だと左打席から 3.7秒前後 で到達する。これは、まさに球界でもトップクラスの脚力だといえよう。また、今年の大学日本代表を決める平塚合宿では、全国の並み居る野手達を抑え、50メートル走で最速のラップを叩き出した。実際は投手もやっていることが多く、実戦では盗塁を控えることが多い。ただし元来は、攻撃的な性格な選手だけに、そういった束縛が無くなれば、積極的な走塁が見られることになりそうだ。ちなみにハーレム大会では、5試合で3盗塁を決めている。

守備面:☆☆☆★ 3.5

 高校時代は、そのフィールディングの上手さから、右投げだったらショートをやらせるたいと思ったほど動きの良さが際立っていた。また、上記にも書いた平塚合宿では、走力だけでなく外野からの返球も頭一つ抜けた存在であったのは間違いない。投手としてならば、150キロ前後投げられる地肩は外野手としても健在だ。ただし、これだけの破格の身体能力を持つも、打球勘や落下点までの入りを見ていると、やや危なっかしいというか慎重にプレーしている感じがする。


(打撃内容)

 ちょっと払うようなスイングから、鋭く野手の間を抜けて行きます。スラッガーではないのですが、ポテンシャルの高さから長打も多い気がします。ちなみにこの秋は、11試合 1本 8点 0盗 打率.350厘(6位) といった成績でした。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を大きく引いた、左オープンスタンス。カカトを浮かしながら、グリップを高めに添えてきます。後ろ足にやや重心を預け、背筋を伸ばしつつも、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては、それなりといった感じがします。大きく体をゆらぎ、独特のリズムでボールを待ちます。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきったあたりから動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備えた、中距離ヒッターや勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られる始動のタイミングです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプ。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にしっかり止まってブレません。スイングとしては、踏み込んだ足で壁を作り前でさばくスイング。踏み込んだ前の足も、インパクトの際にはブレません。そのため、逃げてゆく球や、低めの球にも食らいつくことができます。

 大学日本代表とNPB若手選抜が対戦した試合では、低めの難しい球を上手く拾ってさばいたのが印象的でした。理屈よりも、体が反応してさばけてしまうのが、この選手の能力の高さを垣間見せます。また足も武器である彼がインステップするのは、一歩目が遅れると昨年指摘しました。今年の場合は、は真っ直ぐ踏み出すオーソドックスな踏み出しに変わっていました。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、力みなくボールを呼び込めています。昨年は早めにトップを作っていたのですが、今年は自然体にすることで、より彼の感性が活きる形になっていました。

 バットを寝かせながらも、インパクトまでは大きなロスは感じられません。脇をしっかり閉じてスイングして来る選手で、長打はセンターからライト方向の引っ張った時に多いのかもしれません。流す時は、ヘッドが下がらず広い面で捉えるので、フェアゾーンに低い打球が飛んでゆきます。

 彼の非凡なのは、スイングの前が大きく、鋭い打球を放つことができる点ではないのでしょうか。けしてボールに角度を付けて飛ばすタイプではないのですが、上手く巻き込めた打球を大きな打球として飛んでゆきます。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げはありますが、目線の上下動は大きくありません。体の開きも我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて回転できています。軸足の内モモが強いというよりも、粘りを感じさせます。

(打撃のまとめ)

 技術的にも、大きな癖や大きな欠点は見当たりません。しかし、そういった理屈よりも、体が勝手に反応して、良い結果をもたらすことができる、天性の才能の持ち主ではないのでしょうか。野手としての練習に多くの時間をかけるようになれば、まだまだ引き出されていない能力が全面に出てきそうです。打者としても独特の感性を持っており、底知れぬものを持っています。


(最後に)

 体は大きくはないのですが、破格の走力や肩の強さだけでなく、打撃でも非凡な可能性を感じます。ただし、二刀流をやるためには、まだ筋力や体力といった意味では物足りないものを感じます。まして、持っている能力を出し惜しまいないサービス精神が旺盛な選手だけに、二刀流などをやらせてしまうと、想像以上に消耗が激しくなる可能性があります。

 そういった意味では、最初は野手から入り、打者としてある程度やれるようになった数年後から、投手もやるといった方がいいのかもしれません。その野手としても、即戦力として年間やれるだけの、心身のスタミナが現時点であるのかには疑問も残ります。まずは、プロがどんなところであるのか? あるいは、球団もどのぐらいまでならやれそうのか 手探りな一年目となるのではないのでしょうか。それでも球界に新たなスター誕生を予感させ、大谷翔平とはまた違った「二刀流」を魅せてくれるのではないかという期待が高まります。そういったワクワ感では、間違いなく今年のNO.1選手だと言えるのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆☆☆(1位指名級)


(2022年 秋季リーグ戦) 










矢澤 宏太(日体大3年)投手 173/65 左/左 (藤嶺藤沢出身)  
 




「将来性では野手なのかもしれない」 





 藤嶺藤沢時代は、投手・矢澤 宏太 として見ていたのだが、むしろ大学に入ってからは 野手・矢澤 宏太 としてみる機会が圧倒的に多かった。果たして彼は、現状どちらの比重の方が高いのだろうか?


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、3.7秒前後前後で到達するという、プロでもそうはいないレベルの脚力の持ち主です。ただし、バシバシ盗塁をして来るとかそういった感じはせず、本気で走ったらやたら速いのだという潜在的な部分で優れています。仮に、野手に専念させて走塁に意識を傾けた時には、どのぐらいの走力を魅せるのかは正直謎です。

  この脚力に、投手として150キロ級のボールを投げ込んでくるので、肩・足の能力は間違い有りません。また、2年生の時に外野手としてベストナインを獲得していますが、この秋に見た時はDHでの出場。下級生の時に見た印象では、さほど打球感・キャッチングなどは上手い感じはしませんでした。

むしろフィールディングなど抜群のうまさを高校時代から魅せていたので、右投げだったらショートをやらせてみたいぐらいに上手いだけに惜しいです。彼が左投げである時点で、私の中では・野手・矢澤 宏太 という見方は薄れしまったのは確かです。まぁ脚力を活かして、1番か3番あたりで、中堅なり右翼あたりを任せてみたいという未来像こそが、この 矢澤 宏太 の求められている姿ではないのでしょうか。





(打撃内容)

 「二刀流」ということで大谷翔平と比べられることもありますが、大谷が飛距離を売りに飛ばせる長距離打者ならば、矢澤はスイングの弧こそ大きく捉えた打球時の打球は飛んでゆくものの、けして天性の長距離打者ではありません。走力のある中距離打者なので、タイプ的にはかなり違うように思えます。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を大きく引いた左オープンスタンスで、後ろ足に体重を預けて立ちます。グリップの高さは平均的で、全体としてのバランスは少々癖があるのですが、両眼ではしっかり前を見据えられています。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈みきった底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られます。矢澤選手も、本質的には中距離打者なのではないかとみています。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

足を引き上げて回し込み、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応します。ベース側に踏み込むように、外角への意識が強いのではないのでしょうか。

 ただし、矢澤の選手の場合は、足も強力な武器。インステップすると、それだけ最初の一歩目のスタートが遅れがちになるので、できれば真っ直ぐに踏み出すぐらいの方が良いのではないかと。さらに、内角への対応という意味でもそう思います。またインパクトの際にしっかり足元は止まっているので、逃げてゆく球や低めの球については喰らいつくことができます。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配は無さそう。バットを寝せながら振り出し、インパクトまでに大きなロスは感じません。ボールを捉える時も、広い面で捉えられており、フェアゾーンに飛びやすい形。けしてボールの下にバットを潜らせて、角度を付けて飛ばす打者ではありません。

 それでもスイングの弧が大きく、特に前を大きく取れるのは非凡です。ここが、強烈な打球を生み出す一つの要因になっています。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはありますが、目線の上下動はそれなり。体の開きも我慢できていますし、軸足にも粘り強さを感じます。内モモの筋肉も発達しており、強い打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 2年秋に、打率.368厘(5位)でベストナインを獲得。しかし、それ以外のシーズンでは2割台か規定打席に乗っていないなど、それほど際立つ数字を残しているわけではありません。むしろ現在は、対応力よりも破壊力を秘めた打者といった感じはしています。


(最後に)

 それでも、走力と肩の能力は図抜けており、それでいて捉えた時の打球には見るべきものがあります。現状、両方の資質ともドラフトにかかるぐらいの選手だと思います。しかし両方の資質が、1位級かと言われると疑問が残ります。しいてどちらかと言われれば、現在は毎日試合に出られる野手としての才能の方が魅力は勝っているのかなといった気はします。大谷翔平が、両方をやることで上手くバランスを取っていたように、矢澤もそういったタイプの打者なのかもしれませんが。むしろ「二頭流」をプロでもさせるのであれば、あえてリリーフで起用する方が彼の場合は面白いのではないのでしょうか。打順の周りや、試合状況次第で肩をつくらせる。そんな、大谷にはない「二刀流」を、彼には目指して欲しいと願っています。


(2021年 秋季リーグ戦)










矢澤 宏太(日体大3年)投手 173/65 左/左 (藤嶺藤沢出身)  
 




「投手矢澤はやっぱり怖い」 





 藤嶺藤沢時代に高く投手として評価した 矢澤 宏太 。しかし、大学で改めて彼の投球を確認してみると、本当のコントロールがないなど、危うさと隣合わせであることを実感する。果たして、投手・矢澤 をどのように見れば良いのか考えてみた。


(投球内容)

 3年秋の首都リーグ開幕戦・帝京大との試合。この試合で矢澤は、9回 2安打 11三 2四死 0失 という快投を魅せた。球速でも、自己最速の150キロを到達。恐らく大学に入ってからの、彼のベストピッチングだったのではないかと思われるほどの内容だった。

ストレート 145キロ前後~MAX150キロ ☆☆☆★ 3.5

 コンスタントに145キロ~150キロ級の真っ直ぐを投げ、適度な勢いが感じられます。その一方で、明らかにストライクゾーンから外れるボールも少なくありませんでした。そのため、欲しいところでストライクが取れるような、本当のコントロールがないのは正直気になります。その一方で、球速という観点では、高校時代より3キロ~5キロ程度は速くなっている感じはします。

変化球 スライダー・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションで、たまにもっと緩いカーブが見られます。チェンジアップやフォーク系の球もありますが、どれがその球なのかは容易にはわかりません。ただし、スライダーではシッカリカウントが整えられるようになっており、そういったことができる時は、試合が作れる時だと考えます。ただし、それがいつも出来るのか?というところが、今シーズンの見極めポイントなのではないのでしょうか。

その他

 牽制もそれなり鋭いですし、クィックも1.0秒前後~1.1秒前後とまずまず。フィールディングの動きも良く、ベースカバーなども素早いです。ただし、上手いがゆえに際どいプレーに走りがちで、セーフなのにセカンド・サードに投げてしまい、ピンチを広げる場面も見られます。

(投球のまとめ)

 かなり自信を持ってマウンドに立てるようになり、フィルダースチョイスでランナーを進めても、ジタバタすることはなくなりました。そういった力みが薄れた点は、高校時代よりも少し安心してみていられるようになったところ。制球は相変わらずアバウトなのですが、ランナーを背負っても冷静に対処できるようになったところに、成長の跡が感じれます。


(投球フォーム)

 高校時代のフォームと比較しながら、昨秋のフォームを観てみましょう。セットポジションから足を比較的高く引き上げてきますが、軸足の膝からピンと伸び切って立っているのは気になります。これだと軸足一本で立った時に直立したような形になり、バランスをなんとか取ろうとして無駄なところに力が入って力みやすいからです。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 高校時代に比べると、かなりお尻を三塁側(左投手の場合は)に落とせるようになっています。そのため、カーブやフォークを投げるのにもスペースが確保できているので、無理はありません。

 「着地」までの地面の捉えも粘れるようになっており、体を捻り出す時間も確保できています。これならば、変化の大きな球種の習得も期待できます。下半身の使い方は、高校時代から比べるとかなり良くなっているのではと。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内にしっかり抱えられているわけではないのですが、遊んでいるわけでもありません。したがってアバウトながらも、両サイドにボールを散らすことはできているのではないかと。

 足の甲の地面の捉えもできているので、ボールが高めに集まりやすいというほどでも無さそう。しかし、ボールの押し込みが平凡なので、抜けてしまう球も時々見られます。高校時代は、足の甲が地面を捉えられず浮いてしまっていましたが、その点は改善されてました。あとは、「球持ち」を中心とした、押し込みが改善されるかではないのででしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種でも窮屈にはなり難い。したがって、肘への負担はそれほど気にしなくても良さそうです。

 ただし、腕の送り出しに関しては、ボールを持っている方の肩は上がり、グラブを抱えている方の肩は下がり気味で、肩への負担はそれなりに感じます。それでもけして力投派ではないので、疲労は溜め難いのではないかと考えられます。 このへもは、あまり高校時代と変わっていません。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までに粘りが出てきて、さらにボールの出どころも隠せているので、打者にとってはピュッと見えないところから出てくる感じになりタイミングはとり難いのではないのかと。

 むしろ気になるのは、制球を重視してか? 腕の振りが鋭くなく、ボールを置きにゆくような感じになること。また「球持ち」もあまり良くないので、充分に体重を乗せてから投げられているわけではないので、思ったほど地面をポ~ンと強く蹴り上げるような躍動感がフィニッシュにないのは気になります。この辺も、高校時代とはあまり変わっておらず、球速ほどボールが手元まで来る感じがしません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」にまだ物足りなさを残します。制球を司る動作は以前とあまり変わっていなく、故障のリスクも平均的。ただし、「着地」までの時間が稼げるようになったことで、変化球が良くなってゆく可能性が考えられます。まだまだ発展途上と思わせる部分も多いのですが、>高校時代に比べると幾つか欠点が改善されてはいました


(最後に)

 大学では、まず野手としての才能が評価され注目されるようになってきました。一方で投手・矢澤に関しては、3年生になってから。実際のところ、投手としてどのぐらいの位置づけにランクすればよいのかは、最終学年のアピール次第といった感じでしょうか。☆☆(中位指名級)と評価した高校時代に比べ、何処まで評価を高くすれば良いのか? 4つ年齢も上がっていることも考慮すると、難しい判断となります。最終学年において、圧倒的な内容を示せるようになれば最上位の評価をされそうなものですが、現状はまだ危うさと未完成さを残しており、その投球内容からは上位指名確実とは現時点では言い切れないのではないのではないのでしょうか。現状の評価としましては、2位前後といった順位を基本線に今後は見てゆきたいと考えます。世間で言われるほど、まだ絶対的な存在では投手・矢澤はないのではないのでしょうか。


(2021年 秋季リーグ戦)










矢澤 宏太(藤嶺藤沢3年)投手 173/65 左/左





 「ボールの威力はNO.1左腕」





 春季大会・慶応藤沢戦では、素晴らしい投球を披露してくれた 矢澤 宏太 。しかし続く日大藤沢戦では、四死球を出しまくったと聞いていた。私がみた慶応藤沢戦では、そこまで制球難ではなかっただけに、その話を聞いて戸惑った。どうも精神的に余裕がないと、力んでしまって制球を乱す癖があるようだ。


(投球内容)

 夏の予選では、高校最後の登板となった 横浜創学館戦 の模様をみた。なるほど、噂どおり初回からコントロールに苦しみ、荒れ荒れの内容。これがいわゆる、悪いときの矢澤だということを確認できたことは大きかった。この選手は、両極端の振れ幅が半端ではないのだ。

ストレート 常時140キロ台~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 どうしても力んで投げてしまうと、ストレートのコマンドが大きく乱れる。しかしそういった球がストラクゾーンに決まったときは、鉛玉のような球がズボズボにミットに収まるのだ。春生で観た時はミットにビシッと収まる感じのボールに見えたが、今はキレよりも球威が勝っている感じ。しかしこの投手、少し力が抜けて140キロぐらいで投げているときには、打者の外角に決まって四死球で自滅するような危うさはみられない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 この暴れるストレートを補うのが、スライダーの存在。この球でカウントを整えることが多いのだが、さすがに多投すると甘く入ったところを狙われて打たれることも少なくない。ストレートが決まらない、スライダーが狙い打たれるというパターンに陥ると、どうしようもなくなる。他にはもっと緩いカーブや、右打者には小さく外に逃げてツーシームだかチェンジアップ系の球を持っている。この球自体は、それなりに有効ではある。もっと精度を磨いて、左打者の内角にも使えるようになると面白い。

 変化球でカウントを整えることはできるものの、ストライクゾーンの枠の中での制球力はさほど高くはない。そのため、甘く入ったところを打たれてしまうことがある。あとコントロールが特に乱れるのは左打者のことが多くく、打線に左打者が多いとリズムが掴めないのかもしれない。そういった意味では、あまり左投手ながら左腕の有り難みは薄いのかもしれない。

その他

 素晴らしいのは、フィールディングの動きの良さ。これは、高校生でも全国でもトップクラスの動きの良さがある。またクィックも1.0~1.15秒と素早く投げ込み、牽制もかなり鋭い。そういった運動神経の良さがあり、彼がもし右投げだったらショートで鍛えてみたいと思わせる運動神経と打撃能力を持っている。

(投球のまとめ)

 高校生レベルでもコントロールがままならないので、プロ入り後もさらに悪化する可能性は秘めている。しかし精神的に余裕があるときは、それほど乱さないので、身体ができてきたりセルフコントロールができたら、ある程度許容範囲のレベルに収まる可能性はあるとみている。好調時の投球は、大学・社会人含めても、今年みた左腕で一番のボールと投球を魅せていたので。


(投球フォーム)

 今後の可能性として、投球フォームの改善が見込めるのか検証してみたい。春もフォーム分析をしたが、改めて考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の落としは甘さは残すものの深くは落ちている。カーブで緩急をつけたり、フォークを投げるのにも、全く投げられないというほどではない。

 「着地」までの粘りは思ったよりもあり、身体を捻り出す時間はそれなり。決め手になるほどの変化球を投げられるかは別にして、いろいろな球種の習得は可能なフォームではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは抱えられているが、最後少し身体から離れてしまう。しかし両サイドにはボールを散っており、この動作が大きな問題とは考え難い。気になるのは、足の甲が地面から浮いてしまい、ボールが高めに抜けやすいこと。また「球持ち」が浅く、腕の振りが好い割にも投げ終わったあと全く身体に腕が絡んで来ない。また肘を立てて投げられないので、ボールが抜けてしまいやすいのもあるのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブは滅多に投げないし、フォークなどの縦の変化も観られない。そういった意味では、肘への負担はさほど大きくはないのでは?

 若干ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩が下がっていて、腕の送り出しに負担がかかっているようには見える。しかし全体的に力むと無駄な力がかかって負担は少なくないようにも見えるが、普段から球数が多いのに慣れているのだろう、150球投げても全然球威が衰えないタフさはあるようだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体の「開き」は抑えられている。すなわちコントロールを間違わなければ、けして打ちやすいフォームではないのだろう。

 気になるのは腕を振る勢いはあるものの、身体に絡んでくるような粘りがない。その辺が、プロの打者相手に空振りが誘えるのかというのは、やってみないとよくわからない。ボールへの体重の乗せ自体は悪くなく、打者の手元まで勢いが落ちないボールが投げられている。

(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に大きな欠点を持っている。「開き」と「体重移動」は悪くなく、そのへんは修正が不可能なほど癖が強いわけではない。

 故障のリスクや今後投球の幅を広げて行けるかに関して微妙ではあるが、最大の課題はやはりコントロールの部分。本人が力の抜いてもボールがゆく感覚を覚えられるかが、一つ大きな別れ目ではないかと思っている。


(最後に)

 持っているポテンシャルの高さは、今年の大学・社会人含めても、この投手が左腕ではNO.1ではないかと思っている。ただし、かなりモノにするのには乗り越えないといけないハードルも多く、リスキーな素材であることは間違いない。イメージ的には、大洋ファンならお馴染みの 田辺 学 を彷彿とさせるタイプ。果たして、どのような未来が待っているのか? 私自身、大変興味深い。春みたときは、ここまで荒れ荒れの素材だとは思わなかったので、その時よりはワンランク落として最終評価としたいと思う。しかし左腕だということも加味すると、中位(3位~5位)ぐらいの間では指名されるのではないのだろうか。確かな育成力のある球団に、託してみたいA級の逸材だった。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年夏 神奈川大会)









矢澤 宏太(藤嶺藤沢3年)投手 172/61 左/左  
 


 「本物きた~!」

        





 今年の神奈川で話題の投手といえば、この 矢澤 宏太 だった。奪三振マシーンとして秋から話題になっていたが、東大との練習試合では3打席連続ホームランを放ったなんて話まで耳にしていたサウスポー。その実力はいかなるものかと、春季大会に足を運んでみた。この春話題の選手を何人かみてきたが、はじめて本物と出会えた気がする。


(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションからゆっくり足を引き上げてきます。小柄ですが、シャープに身体を使ってくる左投手です。

ストレート 常時140キロ前後~MAX91マイル・146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ビシッとミットに突き刺さる感じの球質で、キレ型の球質ですがボールの軽さはあまり感じられません。それほど細かいコントロールはありませんが、打者の外角には安定してボールが集められます。そのため、四死球で自滅するとかそういった危うさもありません。下級生の時は四死球も多かったようですが、この試合を観る限りそういったところも薄れているのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど

 横滑りするスライダーと、カーブのように曲がりながら落ちる2種類のスライダーを織り交ぜます。また右打者の外角には、チェンジアップ系の球も覚えたようで、速球と変化球との見分けが難しく三振を奪えます。さらに緩いカーブのような球もあるようですが、その球はあまり観られません。

その他

 左腕らしく、投球モーションと見分けの難しい牽制ができます。クィックはして来ないことが多いのですが、したときには1.10秒前後と、できないわけではなさそう。フィールディングはよくわかりませんでしたが、運動神経に優れたタイプかと。この試合でもセンターバックスクリーン横に本塁打を放つなど、3番を打つ打撃も超高校級です。

(投球のまとめ)

 速球と変化球とのコンビネーションが素晴らしく、三振が奪えるサウスポー。上背はありませんが、早熟で完成された投手という感じも致しません。素晴らしいのは、ピッチングだけではありません。ネクストでは前の打者とのやりとりをしっかり見つめ、タイミングを図っています。またバッターボックスに入るときには、投手らしくラインを踏まないことを意識するなどきめ細やかさがあります。足場の馴らしなどをみていると、それなりにプレーにこだわりも感じられます。精神的にもフラフラしたところがなく、高校生としてはしっかりしたものを持っているように思えます。強豪校相手に、どのぐらいのピッチングを見せるのか気になるところです。





(投球フォーム)

 腕の振りはシャープですが、全身を使って投げ込む力投派というよりもゆったりしたフォームで投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上の残り勝ち。したがって身体を捻り出すスペースは充分ではないので、捻り出して投げるカーブやフォークといった球種には適しません。

 「着地」に関しては、地面に着きそうなところからのひと粘りがあるので、淡白なところがないのも好いところ。カーブやフォークといった球種以外ならば、キレがあったり曲がりの大きな変化球を習得できる下地があります。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにありますので、両サイドの投げ分けしやすいはず。足の甲の押し付けも適度にできるように見え、それほど高めに集まるとか抜けるということもありません。「球持ち」は並で指先の感覚に優れているというほどではなさそうですが、投げ終わったあとのバランスに優れ大きく制球を乱すフォームではないように思います。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせないフォームではあるのですが、カーブやフォークをほとんど投げていないみたいなので問題ないのでは? 捻り出して投げる球を投げるには、どうしても窮屈なフォームなので。

 気になるのは、かなり角度をつけて腕を振り下ろしていること。グラブを持っている肩は下がりボールを持っている肩は上がっているので、角度は生めるものの肩への負担は大きなものになっている。けして力投派ではないので消耗が激しいとは思わないが、登板過多になった時は心配にはなる。


<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」が早すぎることもないので、けして合わせやすいというほどではない。まして肩の「開き」も抑えれており、コントロールを間違いなければ痛手食らい難いはず。

 腕も適度に振れており、特に速球と変化球の見極めが難しいのが特徴。ボールに適度に体重は乗せられており、地面の蹴り上げも好い。上体や腕を鋭く振ってキレを生み出すだけでなく、体重も乗せることができ球威もある程度作れている。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、とくに悪いところは見当たらない。しいていえば「球持ち」が並なので、この辺がもう少しボールを押し込めたり粘りが出てくると、さらに厄介になってくるだろう。

 制球を司る動作に大きな欠点はないが、身体への負担がかかりやすいフォームなのが気になるところだろうか。



(最後に)

 春季大会・慶応藤沢戦を見る限り、とくに悪いところが見当たらない。こういったピッチングが安定して出せるのか? 本当に強い学校相手に、どのぐらいのピッチングができるのかは気になる。特に秋までは、結構四死球が多い投手だったので。

 しかしこの試合を投球見る限り、コントロールや精神面の不安定さは感じられなかった。またボールの威力・変化球のキレとも含め総合力で判断する限り、今年の高校生左腕では1番ではないかと思う。すでに大学・社会人の有力左腕の大半を今年見ているが、それを含めてもこの春一番だった。他候補との力関係はもう少し慎重に見極めて行きたいが、現時点で2位前後を意識できるではないかと思う。170センチ前半とそれほど体格に恵まれていないことを考えると、左腕だとはいえ1位指名とかいうことはないと思うが。それでも、今年見た選手の中では一番の衝撃だった。ぜひ、夏まで追いかけて評価を定めて行きたい。



蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2018年 春季神奈川大会)