18kp-14
勝又 温史(日大鶴ケ丘3年)投手 180/78 右/右 | |
夏の西東京大会決勝戦・日大三高戦において、本気モードの彼の投球を確認できた。ドラフト候補である 日置 航 に、甘く浮いたスライダーをレフトスタンドに叩き込まれる。それまで慎重に投げていた彼の闘争心に火がついたのか? この直後から、150キロ前後(最速151キロ)の球速を連発して、彼の底力を目の当たりにすることになる。 (投球内容) ワインドアップから、振りかぶって投球してくる。 ストレート 常時145キロ前後~151キロ ☆☆☆☆ 4.0 春見たときは、常時140キロ台を割ることはなかったものの、MAXで148キロぐらいまで。しかしこの試合では、終盤まで140キロ台後半を出し続けるなど、球威・球速は春よりも5キロ程度引き上がっていた。特にややアーム式な腕の振りのせいか? ボールの回転はキレイではないので、空振りを誘うというよりも球威で詰まらせる感じの球質。しかしさすがに140キロ台後半を連発するようになると、そういった球でも空振りが誘えるようになる。春まではストレートを見せ球にしておいて変化球でというイメージだったが、ストレートで押して仕留める投球が可能になってきたのだ。この点では、春から格段に成長が感じられた部分。 ボールのばらつきが顕著だった制球力は相変わらずで、高めに抜ける球も少なくない。破れた日大三高戦でも8回1/3イニングで8四死球と、やはりコントロールの不安定さは気になる材料。特にストレートのコマンドに、この選手のコントロールは課題があるのだ。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5 むしろ彼の良さは、小さく横滑りするスライダーでカウントを整えられるところにある。圧倒的に速球とスライダーのコンビネーションで構成されているのだが、たまに緩いカーブ、それに小さく沈むスプリット系のボールも持っている。現状カーブは腕が緩んであまり使える代物ではないが、縦の変化をこれからは磨いてゆくことになるのでは? ただし腕の振りは意外にスリークォーター気味なので、フォークよりもチェンジアップ系の球のほうが適しているように思うのだが。いずれにしても暴れるストレートに対し、制御できるスライダーがあることは大きい。 その他 クィックは、1.15秒前後と平均的。フィールディングの動きは、けして悪くない。牽制はモーションが大きく、もう少しターンの小さなものを身につけたい。打者としての才能も高く、ミートセンスよりも体の強さを活かした飛距離が魅力。春の観戦の際にも、センターバックスクリーンに突き刺さる特大の一発を放って見せた。しかし野球センスや運動神経が優れているというよりも、体の強さが尋常ではないということではないのだろうか。 (投球のまとめ) 球速の割に合わされやすく有難味に欠けるストレート、その一方で想像以上に変化球がしっかりしている投手との印象が春にはあった。しかし球威・球速を春から5キロ程度増すことで、ストレートでも相手をねじ伏せられるだけの強さを身につけてきた。全国を見渡しても、この猛暑のなか先発をして終盤まで140キロ台後半を投げ続けられるエンジンを持った選手は彼しかいないのではないのだろうか。春は指名ボーダーレベルだと考えていたが、明らかに指名圏内に入ってきた夏だった。 (成績から考える) フォームに関しては、制球を司る動作と体への負担の大きなフォームなのは変わらない。ただし上から無理に放ろうとしていた腕の振りを、だいぶ下げてスリークォーターにして肩への負担を軽減させた夏だった。春にフォーム分析はしているので、今回は決勝まで進んだ夏の成績を検証してみたい。この夏の成績は 6試合 25回 23安 19四死 25奪 防 6.17 1,被安打は投球回数の80%以内 ✕ 25イニングで23安打打たれており、被安打率は92% 。基準である80%からは大きな開きがあり、相手が高校生レベルであることを考えると厳しい。春の時点でも指摘したが、特に合わされやすいフォームでない割に連打を浴びることも少なくない。春は球速の割に苦になり難いストレートが甘く入ったところを打たれるケースが多かったが、日大三戦を見ていると高めに浮いたスライダーを長打されるケースが目立っていた。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕ 四死球は19個で、四死球率は76%。これは、基準である33.3%以下の倍以上ペースで四死球を出していたことになる。すなわちコントロールには相当な難があり、無駄の四死球も頻繁に出すということ。 3,奪三振は1イニングあたり0.9個以上 ○ 奪三振は投球回数と同数であり、1イニングあたり1個のペースで三振が奪えている。これは非常に高い数字であり、それだけボールの威力が図抜けていることを示している。 4,防御率は1点台以内 ✕ この夏の防御率は、準決勝・決勝で5失点ずつしてしまい、防御率 6.17 と跳ね上がった。猛暑での激闘で熱中症にかかっていたことも影響していると思うが、数字的には高校生相手の数字だけに厳しいものとなっている。 (数字からわかること) ボールの威力は想像どうりの数字が出ているものの、被安打・四死球・防御率は想像以上のs数字で改めて超素材型であることを再認識させられた。150キロ級のボールを終盤まで投げ続けられる馬力は素晴らしいが、それに目を奪われすぎて過大評価することは危険だと数字は言っている。 (最後に) とは言っても、このエンジンの大きさは今年の高校生の中でも屈指。まして更なる上積みも期待できそうな余力も残されており、将来的には155キロ前後を連発できるぐらいの才能はあるのではないのだろうか。問題はその領域に入ってきたときに、たとえ荒削りな選手であっても、プロの打者がどの程度対応できるのかという部分。そういった可能性を感じさせてくれることを考えると、ある程度評価しないと行けないのではないのか。ましてストレートだけでなく、スライダーではしっかりカウントを整えられる投手なのだから。ドラフト的には、中位(3~5位)ぐらいでの指名があっても不思議ではない選手に成長していた。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2018年夏 西東京大会) |
勝又 温史(日大鶴ケ丘3年)投手 180/78 右/左 | |
昨秋から、東京で一番の素材はこの 勝又 温史 だと聞かされていた.それゆえぜひ、春季大会になったら確認してみたいと思っていた。会場にはプロ11球団のスカウトが集結しており、背番号10の登板を今か今かと待ち望んでいる。そんな勝又が登場したのは、マウンドではなく代打での出場。なんと、センターバックスクリーンに突き刺さる特大の一発で我々を驚かせた。この選手、投手としての才能だけでなく、打者としての可能性も大いに秘めているのではないのだろうか。 (投球内容) ワインドアップで振りかぶり、大きなテイクバックをとって投げ込んでくる力投派。 ストレート 常時140キロ台~MAX92マイル・148キロ ☆☆☆★ 3.5 確かにボールの勢いは本物で、140キロ台を割ることなく最速で148キロまで到達。ボール自体は結構バラつき、正直細かいコントロールはない。また球速ほどボールが手元まで来ている感じはなく、けして「開き」の早いフォームではないのだが、打者に苦になく合わされる傾向がある。現時点では、その球速ほど有り難みのあるボールは投げていない。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク? ☆☆☆★ 3.5 むしろ関心したのは、変化球が意外に良かった点。スライダーでしっかりカウントを整えることができ、高速で小さく沈む縦の変化も悪くない。しいて言えば、カーブを投げるときに腕が緩んで上のレベルでは使えないだろうということ。それ以外は、変化球の精度・切れともに合格点が与えられる内容だった。課題が制球力と言われていたが、この試合では四死球は一切なかった。 その他 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。しかしフィールディングや牽制などは、正直よくわからなかった。投球センスを感じるタイプではないが、動きの良さなど運動神経、身体能力は高そう。 (投球のまとめ) チームでも絶対的な存在ではなく、継投の中で投げる一人といった位置づけ。そのためあくまでも、速い球を投げられる素材型といった範疇を越えていない。まだまだ細かい制球術、奥深い投球術で翻弄できるわけではないそのため。強豪相手だと、力で抑え込めるほどの絶対的な力はまだなかった。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から将来像を考えてみた。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は適度に一塁側に落ちている。身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのにも無理はない。 「着地」までの粘りも悪くなく、身体を捻り出す時間はある程度確保。そのため好い変化球を習得し、ピッチングの幅を広げて行けることは期待できるだろう。ただし肩の可動域は柔らかいものの、腕は突っ張って投げるので好い変化球を習得する上で弊害にならないかは心配になる。 <ボールの支配> ☆☆ 2.0 グラブは最後まで内に抱えられておらず、後ろに解けてしまっている。そのため、両サイドへのコントロールも定まり難い。足の甲での地面への押しつけも爪先のみを地面につけて引きずっている。そのため力を入れて投げると、どうしても上吊って抜けてしまうことが多いのだろう。「球持ち」は悪くないが、ボールを低めに押し込めるようなことはできていない。制球が不安定なのは、こういった動作が蔑ろにされているからではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻は落とすことができているので、カーブやフォークなどを投げても窮屈さを感じ難い。そのため肘への負担は、少ないのではないのだろうか。 気になるのは、腕を送り出すときにボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がっているということ。そのため腕の送り出しの際には、肩への負担が大きい。さらにテイクバックした時も、背中のラインよりも奥に肩が入ってしまっている。そういった意味では、肩へのケアは日頃から充分に注意して欲しい。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは悪くなく、打者としてそれほど合わせやすいフォームではないはず。さらに「開き」も抑えられており、コースを間違わなければ痛打され難い。それでも苦になく合わされてしまうことが多いのは、ボールが手元までしっかり伸びて来ないからではないのだろうか。腕の振り自体は素晴らしいのだが、肘が突っ張ってしなりを生かして腕が振れていない。そのゆえ某球となり、球速ほど打者は速く感じていないのではないのだろうか。 腕は勢いよく振れており、速球と変化球の見極めが難しく空振りを誘いやすそう。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、投げ終わったあとは強く地面を蹴り上げることができている。フィニッシュ形としては、実に躍動感あって素晴らしい。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」などに優れ速い球を投げるのに適している。気になるのは、制球を司る動作が悪いことと故障のリスクが高い部分。それだけに実戦的にはならず、素材型の域を脱っすることができていない。 この素材をまだまだ伸ばせられるという確信を持った球団ならば、指名して来る球団が出てきても不思議ではない。むしろ根本的にプロで通用する素材に仕立てられるのかという不安もあり、意見はスカウトによって割れる選手ではないのだろうか。 (最後に) 東京屈指のスピード能力を誇ることは、この試合をみてハッキリわかった。かなりの素材型ゆえに、高校からプロに入った方が好いのか、アマでワンクッション置いてからの方がいいのか判断が別れそうだ。個人的には現時点で☆をつけることはできなかったが、夏まで追いかけてみたいと思わせてくれる魅力はあった。夏までには、150キロ台の王台の話題も耳にできるかもしれない。 蔵の評価:追跡級! (2018年 春季東京大会) |