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伊藤 裕季也(DeNA)内野手のルーキー回顧へ







伊藤 裕季也(立正大4年)二塁 182/95 右/右 (日大三出身) 





「覚醒」 





 立正大進学の3年秋のリーグ戦までは、東都リーグの二部にいた選手。2年春からレギュラーになるも、2部での3シーズンで放った本塁打は僅か2本と、けして強打者でも長打力が際立つタイプではなかった。しかし3年秋に一部昇格を果たすと、3シーズンで6本塁打。4年春には、大学ジャパンのメンバーに選出されて国際大会では中軸を任される存在となった。また高校ジャパンとの試合では、右中間スタンドに強烈な一発を放ち能力の高さを示す。しかし彼が本当の意味で覚醒したと言えるのは、4年秋もシーズンの終盤になってから。ドラフト前のリーグ終盤戦に優勝決定戦・そして神宮大会などの直近5試合で、実に試合を決める4本の本塁打を放って魅せた。まさに神宮大会は、彼のための大会だったのではないかというぐらいの神がかった活躍だった。


走塁面:
☆☆★ 2.5

 見るたびに体つきが肥えて行く感じだが、神宮大会で計測したときでも一塁までの到達タイムは右打席から4.4秒~4.6秒ぐらいだった。この4.4秒を左打者に換算すると、4.15秒前後に相当。ドラフト指名される右打者として、中~中の下 ぐらいだと考えて良いだろう。2年秋のシーズンには4盗塁を決めた時もあったが、これから益々走力でアピールするという可能性は低くなってゆくのではないのだろうか。

守備面:
☆☆★ 2.5

 日大三高時代は、レフトとして出場。立正大でも最終学年までは、一塁手として出場していた。4年春のリーグ戦では、一塁手がセカンドをやっているような動きだった。それでも守備範囲は狭そうだったが、丁寧なプレーを心がけていたのが印象的。春は3エラーを記録していたが、この秋はノーエラーでシーズンを全し安定感を増した。6-4-3のゲッツのプレーを見ると、逆の体勢からでも強い送球ができるなど地肩は結構強いし、普段の守備位置も後ろに守っており地肩にはそれなりに自信があるのだろう。上手い選手ではないが雑なプレーをする選手ではけしてなく、プロで二塁手として許容範囲になるか、将来的にコンバートという運びになるのかは非常に微妙なレベルにいる気がする。自分の能力を常に向上させようという意識は感じるので、セカンドでも足を引っ張らないぐらいの選手にはなれるのではないかと期待している





(打撃内容)

 春までは軸が崩れないまま、センターから右方向に打ち返す中距離打者やポイントゲッターの色彩が強かった。しかしシーズン終盤には、バランスを崩してでも難しい球を右方向に流したり、内角の球を狙い済ましたかように滞空時間の長い放物線を描くレフトスタンドへの打球も増え、何か一皮むけたような打者へと変貌した。自分の中で、何か殻を打ち破った瞬間があったのかもしれない。何よりプロから上位で指名されたということが、良い意味での自信に繋がったのではないのだろうか。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップは高めに添えられています。後ろ足に軽く重心をかけつつも、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢は良いとは言えません。それでもグリップ付近を常に動かして揺らいでおり、柔らかさを感じつつボールを呼び込めているのは良いところ。重厚な体つきからは、投手も威圧感を感じるのではないのでしょうか。

<仕掛け> 早め~平均

 投手の重心が下がり初めて~底のあたりで動き出す、「早め」~「平均」的な仕掛け」を採用してきます。これは対応力重視~中距離・ポイントゲッタータイプによく観られる仕掛けであり、基本的に確実性を重視していることがわかります。そのため、生粋のスラッガーではないのでしょう。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を軽く引き上げ回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応しやすはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。内角の球は思いっきり引っ張り、外角の球はきっちりおっつけてセンターから右方向へと打ち分けることもできています。

 踏み込むタイミングも微妙に図っているように見え、以前よりも合わせるのが上手くなったように感じました。また踏み込んだ前の足はしっかり止まってブレないので、逃げて行く球や低めの球にも喰らいつくことができます。上半身と下半身のバランスが、実にとれたスイングをします。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、ボールを呼び込む際に力みは感じられません。ただし速い球に立ち遅れないように、バットを引くのが遅れならないことに注意したいところです。

 内角寄りの球を叩く時は、肘をたたんで上からバットを出し上手く引っ張ります。外角の球を捌く時は、払うような感じで春まではコンパクトなスイングが見られました。しかし今は、少し遠回り軌道させブンと遠心力を活かしたスイングに変わりつつあるように感じます。そのため、かなり以前よりもスラッガー色の強い打撃に変わりつつあるように思います。特に豪快に引っ張るときには、フォロースルーも使ってボールを遠くに運びます。引っ張ったときの高い放物線は、長距離打者のそれを感じさせるものになってきました。そういったコースによってスイングを使い分けているようで、それは打席によって流そうとか、この場面では引っ張っろうとか決めて入っている感じがします。特に神宮大会の関西国際大戦ではセンターから右方向中心に、逆に逆転のホームランを打った環太平洋大戦の最終打席には、自分で決めてやろうという長打を意識した引っ張りのスイングをしていたことからも伺えます。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動はそれなり。身体の「開き」は我慢できており、軸足の内モモにも強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっています。春までは軸足が地面から真っ直ぐ伸びて安定感抜群だったのですが、今はあえて軸を崩してでもボールを拾いに行くような打撃に変わってきています。

(打撃のまとめ)

 春までは、軸がしっかりしていて自分の型を崩さない打者といった印象が強かったです。そのため打てる球は限られていましたが、甘い球をしっかり叩いて結果を残すタイプの打者との印象を受けていました。しかしシーズン終盤あたりから、多少型を崩してでも、ボールを捕まえに行くような良い意味での強引さが出てきて、捉えられる範囲は広がったように感じます。そして狙いどうり来たときには、ちょっと強引なぐらいに引っ張りに行ってホームランを連発するようになりました。

 良い意味で打撃に幅が出てきて、柔軟性が増した印象はあります。まだまだ甘い球を打ち損じたり、脆い部分もあるのですが、一皮むけた感はあります。少なくても今までは優等生な打撃をしていたのが、多少型からハズレても俺が決めるんだという欲が出てきたのではないのでしょうか。それが、シーズン終盤の大活躍へと繋がったと考えられます。


(最後に)

 春まではセカンドとしては微妙だし、打撃はプロ級でも指名はどうかな?というボーダーレベルの選手との評価でした。しかし全日本に入り国際大会では中軸を任されたり、高校ジャパンとの注目の一戦でも本塁打を記録。秋のシーズン序盤は苦しんだものの、優勝を賭けた終盤戦、そして神宮大会への日本一への過程を経験するなかで、大きな成長を遂げたといえるでしょう。

 中距離・ポイントゲッターから、スラッガー的な才能にも目覚めつつあるように感じます。村田 修一(ベイスターズ)の日大時代と比べるとまだまだ2枚ぐらいは落ちますが、いずれはその領域にまで届くかもしれない。そんな、ワクワク感を抱かせてくれる選手になりました。ただし冷静に春からの評価をみてみると、神宮大会は出来すぎだったのかと思う部分もあり、中位指名ぐらいが現時点では妥当な評価ではないかと思います。しかし非常に人間的にも好感が持てますし、グランドでは常に大きな声を張り上げナインを鼓舞するムードメーカー。良い感じでの成長曲線を描いてきてのプロ入りであり、2~3年後にはベイスターズの中心選手にまで昇りつめるのではないかといった期待が、現実味を帯びてきました。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年 神宮大会)


 









 伊藤 裕季也(立正大4年)二塁 181/90 右/右 (日大三出身)





                    「ちょっと気になる存在」





 東都リーグの中で、ちょっと気になっている野手がいる。その男の名前は、伊藤 裕季也 。パワフルな打撃をする、強打者の二塁手だ。とかく小技や小回りの効くタイプが多い二塁手の中で、パワフルな打撃が目を惹く異色の存在なのだ。


(守備・走塁面)

 残念ながら、一塁までの到達タイムは計測できず。2年秋のシーズンでは、4盗塁を記録。今シーズンも、2盗塁を決めるなど、けして動けない選手ではない。足を売りにするプレースタイルという感じではないが、強打者の割にある程度動けるというのが、この選手の魅力なのではないのだろうか。

 セカンドの守備も、非常に丁寧にボールを扱おうという意識は感じられた。日大三時代は、レフトの控え選手。大学では2年春からレギュラーになり、一塁手として活躍。本格的に二塁手になったのは、4年春から。この春は、11試合で3失策とやや多い。そういった意味では、まだまだ二塁は不慣れで安定感には欠けるのかもしれない。





(打撃内容)

 私が観戦した試合では、上茶谷(東洋大)投手の外角ストレートを右中間スタンドに。また別の投手のスライダーを、センター前にはじき返すなど、パワフルかつ幅の広い打撃を魅せていた。過去のシーズンは、2割台後半~3割5分以内で推移してきた。極端に脆さや粗さを示すことはないが、絶対的な成績を残してはいない。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足のカカトを浮かしたり降ろしたり地面を踏み踏みしながら、グリップは高めに添えてバットを前に倒して構えます。腰の据わり具合・全体のバランス・両眼で前を見据える姿勢も悪くなく、気持ちの強さが伝わって来るタイプです。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。あまり脆さがないのも、早めに動き出すことで対応力を重視したアベレージヒッターの仕掛けを採用しているのが大きいのかもしれない。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を大きく引き上げて、コースによって踏み込む場所が変わっているように感じます。始動~着地までの「間」は充分あるのですが、それ以上に強く踏み出そうという意識が強いのかもしれません。それでも速球でも変化球でも、スピードの変化に対応しやすい打ち方です。

 内角を捌くときにはアウトステップして懐を空けて捌き、右方向にはじき返すときには、ベース側にインステップして打ちに行っているように見えます。そういった意味では、打てるコースの幅も広いのではないかと。踏み込んだ前の足元は、右方向に打ち返すときはしっかり止まっています。身体の開きを我慢できるので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつけます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは早めに作れており、速い球に立ち遅れません。バットの振り出しも、内角の球を捌くときに肘を畳んできれいに捌けていますし、右方向に打つ時にはコンパクトにボールを捉えられます。それでいて豪快に引っ張るときには、フォロスルーを生かしてボールを勝ちあげています。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げは大きいものの、それほど目線の上下動は大きくはありません。身体の開きを我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定しており、それでいて内モモにも強さが感じられるスイングです。内モモの筋肉が発達していると、強烈な打球を生み出す原動力になります。

(打撃のまとめ)

 パワフルな打撃をする選手ですが、独特のタイミングの図り方でき脆さがありません。内角の捌きも上手いですし、外角にもきっちり打ち返せる。右にも左にも、スタンドに叩き込める長打力も光ります。

 こと打つことに関しては、プロを意識できる素材。打席への入り方を見ていても、足場をしっかり馴らしており強いこだわりが感じられます。チームの主将を任されているだけに、気持ちの強さを打席でも感じます。


(最後に)

 ボールを捉える感覚の良さに加え、捌きのうまさもあります。更に、右に左にスタンドインできるパンチ力も兼備。打撃に関しては、プロを意識できる素材だと思います。

 あとは、守備や走塁がどの程度なのか? 秋は、もう少しじっくり確かめたいところ。特に上のレベルでも二塁ができる選手なのか? もしできないときはサードなどをこなせるのかなどが気になる部分。ぜひ秋まで追いかけてlその能力を見極めて行きたい選手の一人です。個人的には、かなり面白い存在ではないかとみています。


蔵の評価:
追跡級!


(2018年 春季リーグ戦)