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東妻 勇輔(ロッテ)投手のルーキー回顧へ







 東妻 勇輔(日体大4年)投手 170/76 右/右 (智弁和歌山出身)





「けして悪いシーズンでがなかった」 





 昨秋の日本一チームが、春のリーグ戦で優勝できなかった日体大。主力投手の 東妻 勇輔 の調子が悪かったからなのかと思っていたら、残した成績は普段のシーズンと大差ないものだった。改めて、この春の投球を振り返ってみたい。


(投球内容)

 リリーフのときは全身を使って投げ込む力投派だが、先発だと静かに振りかぶって投げ込んでくる。

ストレート 常時140キロ台~150キロぐらい ☆☆☆★ 3.5

 先発だとボールが動きたり沈んだりと、かなりのクセ球といえる投手です。またコントロールはアバウトで、四死球も少なくない荒れ球。フォームが合わせやすいのか? 高めに浮いた球を打ち返されてしまうケースが目立ちます。逆にリリーフだと、高めに魂のこもったボールを連発します。このときは、ボールは動かずキレイなフォーシームを投げてきています。ストレートで仕留めにゆくときと打たせて取る時で、同じ速球でも使い分けているのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カットボール・カーブ・チェンジアップ・スプリットなど 
☆☆☆☆ 4.0

 腕の振りが尋常じゃないぐらい強いので、スライダーの曲がり幅は凄いです。ただしこの球が、なかなか上手く制御できません。そのため、カットボールを使って曲がりを抑えてカウントを整えようとするときがあります。左打者にはチェンジアップやスピリットなどを使うのですが、これまた腕の振りが強いので全く打者が対応できません。この選手の素晴らしいのは、速球だけでなくスライダーとチェンジアップの変化がありえないぐらいの変化をすることにあります。この辺の球を自在にコントロールできるようになると、ちょっと手がつけられなくなります。

その他

 クィックは、0.9秒前後と超高速。牽制も非常に鋭く、フィールディングの動きも素晴らしい。ベースカバーも早く、こういった投球以外の部分でも、アマで一番上手いのではないかと思えてくる。

(投球のまとめ)

 本当のコントロールがないので、じっくり観られると苦しくなります。カウントが悪くなって、力を加減して投げた球が苦になくはじき返されてしまう。これだけの凄い球を投げていても、相手に突けいる隙を与えてしまうのではないのでしょうか。先発としての適正がないわけではないのですが、やはりこの選手の持ち味が発揮されるのは、完全に開き直って投げられるリリーフだと考えられます。


(成績から考える)

この春の成績は、

6試合 4勝2敗 34回2/3 26安 17四死 29奪 防 1.30 (リーグ7位)


1、被安打は投球回数の80%以下 ◯

 被安打率は、75.1%。基準である80%以下となっており、相手に的を絞らせない、連打を喰らわない投球はできているように思われる。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ✕

 
四死球は、49.1% とかなり悪い。いつも言うように目安は33.3%以下。余計なランナーを出したり、コントロールがアバウトなことが伺われる。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◯

 
奪三振は、1イニングあたり0.84個 と先発の基準は越えている。しかしボールの勢いや変化球の威力ほどは、三振が上手く奪えていない気もする。先発だと、ボールを動かして打たせて取る傾向が強いことを物語っているのではないのだろうか。

4、防御率は1点台以内 ◯

 
防御率は1.30であり、先発の基準だけでなくリリーフの基準をも満たしている。この3シーズンはすべて1点台を記録しており、調子の波は良い意味で安定している。

(成績からわかること)

 
数字だけ見ていれば、普段のシーズンと比べ特別悪かったわけではなかった。むしろ神宮大会・九州共立大戦のリリーフでのインパクトが強く、先発ではどうしても物足りなく感じられてしまうのかもしれない。それでも先発でも、コントロール以外のファクターは基準を満たしている。もう少し楽にカウントを取れる球があると、メリハリのある投球が期待できるかもしれない。


(最後に)

 ライバル東海大戦で勝ち点を落とすなど、あと一歩力が及ばなかった。しかし、けして悪いシーズンではなかったようなのだ。実際の投球を今年何度かみたが、こちらの求めるハードルが高すぎたのかもしれない。上位候補という目でみなければ、1リリーフ投手として、それなりの評価は与えられるかもしれない。

 今後さらなる成長をというタイプではないので、今ある能力でプロで通用するかどうかという味方。それだけに通用しなかった時を考えると、上位指名でという決断はし難いのではないのだろうか。秋みたときは2位前後もと思ったが、現状は3位前後の評価に落ち着いている。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年 春季リーグ戦) 









東妻 勇輔(日体大3年)投手 170/70 右/右 (智弁和歌山出身) 





「圧巻のパフォーマンス」 





 神宮大会・九州共立大戦でのリリーフの投球は、まさに圧巻だった。MAX151キロを記録した球速以上に、ボールの威力・気迫のこもったマウンド捌きに、改めてこの男の凄みが感じずにはいられない。これだけ魂のこもった投球をする選手は、18年度の候補では彼しかいないだろう。


(投球内容)

 リリーフの時は、全身を使って投げ込む力投派という感じだった。しかし先発の時は、静かに振りかぶって投げ込んで来る。

ストレート 140キロ前後~MAX151キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 先発の時は、140キロ~145キロ程度でむしろボール動かして来るクセ球投手。そして追い込んだり、得点圏にランナーを背負うと150キロ前後のフォーシームを投げ込んでくる。素晴らしいのは、その球質。打者がわかっていても当たらない勢いがあり、155キロぐらい出ているような迫力なのだ。打席に入っている打者も、これまで見たことのない感覚に陥っているのではないのだろうか。また普段のクセ球も、両サイドに散らすコントロールがある。

変化球 スライダー・スプリット・ツーシーム・カットボールなど 
☆☆☆☆ 4.0

 腕の振りが尋常ではないので、スライダーの曲がり幅が半端ではない。またスプリットもチェンジアップのような軌道で、ボールゾーンに切れ込むというよりはストライクゾーンの中に落ちてくる。この2つの球種は、ストレートの勢いが凄まじいのでより効果的に機能する。また普段のストレートは意識しているのかナチュラルなのかわからないが、カットボール気味にズレたり、ツーシーム的に食い込んだりと、グニャグニャ変化するので芯で捉えるのは容易ではない。

その他

 クィックは、0.9秒前後と超高速。牽制も非常に鋭く、フィールディングの動きも素晴らしい。ベースカバーも早く、こういった投球以外の部分でも、アマで一番上手いのではないかと思えてくる。

(投球のまとめ)

 ストレートの感覚は155キロぐらい出ているように感じられるし、変化球の曲がりやキレも凄まじいものがある。投球以外の技術もしっかりしているし、コントロールもアバウトではあるが極端に悪いわけではない。ドラフト1位で獲りたいと思わせるスケール感はないが、リリーフにぜひチームに加えてみたいと思わせる熱いハートの持ち主なのだ。



(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は完全にバッテリーライン上に落ちます。そのため身体を捻り出すスペースは確保されず、カーブやフォークなどを投げようとすると無理があります。

 しかし前に大きくステップさせることで、「着地」までの時間を稼げています。そのことにより身体を捻り出す時間を作り出し、カーブやフォークといった球種以外ならば、ものにできる下地があります。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に抱えられており、両サイドにはボールが散っています。しかし足の甲での地面への押しつけが浮いてしまい、ボールが高めに抜けやすいのは確か。それでも前ではボールを放せているので、ある程度指先で制御できているのでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせていないものの、カーブやフォークといった球種は投げて来ないので、肘への負担は少なそう。また腕の送り出しもけして無理はないので、肩への負担も少ないのでは? ただし尋常ではない力投派ではあるので、どうしても疲労を溜めやすく弊害は身体に出てしまう恐れはあります。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはあるので、けして合わされやすいことはないでしょう。「開き」自体は並だと思うので、ボールの勢いを失うと打たれても不思議ではありません。その辺のこともあって、球速を抑えている時はボールを動かしているのかもしれません。

 腕の振りが尋常になく強くフォームに勢いがあるので、空振りが誘いやすいはず。「球持ち」は悪くないので、体重を乗せてからリリースできています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところはありません。しいて言えば「開き」が平凡で少し見やすいことぐらいでしょうか。故障のリスクもそれほど高いわけではないですし、コントロールも粗っぽいですがそこまで悪くはありません。投球の幅を広げて行ける下地もありますし、技術的には思ったよりも高いものがありました。


(最後に)

 体格に恵まれていないということを除けば、いろいろな意味でスーパーな素材です。チームのリリーバーに、ぜひ加えてみたいとお思わせてくれる選手であり、実際1年目からチームに欠かせない存在になるのではないのでしょうか。この1年追いかけてみたいと思わせてくれる、今年一番熱い男ではないのでしょうか。


(2017年秋 神宮大会) 








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