18dp-5


 




鈴木 翔天(楽天)投手のルーキー回顧へ







 鈴木 翔天(富士大4年)投手 184/77 左/左 (向上出身)





 「あまり良いと思ったことがない」





 向上高校時代から見てきた投手だが、ピンと来たことがない選手だった 鈴木 翔天 。ちまたではドラフト上位候補と騒がれていたが、私は順調に最終学年を過ごしても中位指名ぐらいにとどまっていたのではないかと思っている。残念ながら最終学年で投球を確認できたのは、春のオープン戦でのみ。そのため、シーズンにどんな投球をしていたのかはよくわからない。そこで良かった3年時の投球と春見た印象、それに4年秋の成績を加えながら最終寸評を作成してみたい。


(投球内容)

 小さめのテイクバックから投げ込む、実戦派の左腕です。肘痛から復活した秋のシーズンは、5試合で 1勝1杯 防 3.31 。良かった3年秋のシーズンでは、4勝0敗 防 0.72 で最優秀防御率に輝いているからも、完全復活とは言い難いシーズンだったことがわかる。

ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ 
☆☆☆ 3.0

 春の関東遠征で、慶應戦に先発したのをみました。元々テイクバックは小さめなフォームなのですが、少々ボールを置きに来る感じです。そのため球速は140キロ前後はコンスタントには出るのですが、手元までボールが来ている感じがしません。この日もボール自体は両サイドに散らせていたのですが、甘くない球でも簡単に運ばれてしまうキレ・球威の無さは気になりました。けしてストレートのコマンドが低いわけではないのですが、ボールの出処を見難くしているはずなのに、相手打者が苦にしている感じがしなかったのは気になります。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆★ 2.5

 一通りの変化球は投げられカウントを整えられるのですが、打者の空振りを誘うほどの絶対的な球がないように思います。スライダーやカーブなども曲がり切らず、高めに抜けることも少なくありません。またチェンジアップというよりも逃げて行く球は、小さくズレるシュート・ツーシーム系の感じの球でした。

その他

 牽制は結構鋭いものがあり、走者の走る意欲をを封じることができます。ただし気になるのは、クィックを全く使わない点。あえてこれでも投球を成り立たせているわけですが、プロを意識するのであれば、いつまでもこのままだとはゆかないでしょう。

(投球のまとめ)

 相手の空振りを誘うというよりも、相手の打ち損じを待つというピッチングスタイルなのは気になります。しかし3年秋のような好調時には、相手の的を絞らせない投球でイニングを遥かに上回るペースで三振を奪っていました。

 この投手が良いのは、左腕でありながらしっかり試合を組み立てられる先発型だという部分。しかし実際プロの中に混ぜてしまうと、先発をさせるほどの力があるかは微妙。それでいてリリーフで、短いイニングで相手を圧倒するほどのボールも投げてはいません。まして肘痛などで満足のゆく状態でもないことを加味すると、各球団が手を引き楽天が8位まで残っていたから指名したという理由も頷けます。少なくても4年時だけの投球ならば、指名される内容ではなかったのだろうと思います。


(最後に)

 春は肘痛で全休、秋は復活しても元来の数字は残せませんでした。そのためオープン戦の内容だけでも、それほど評価には影響なかったのではないかとさえ思います。

 マウンド捌きが良くまとまっているようにも見えるのですが、四死球が少ないシーズンを送ったのは3年秋だけ。まずは、この時期の調子に戻すことが先決です。このときの投球ができてはじめて、☆~☆☆ を付けられるぐらいの内容。しかしその投球もできなかったことを考えると、多くの球団が指名を見送り8巡目まで残っていたのも頷けます。個人的にも今年の状況ならば社会人で様子を見てからという判断になり、指名リストには名前を残さないという評価にします。果たして楽天の決断は、吉と出るのでしょうか? 


(2018年 春季オープン戦) 









鈴木 翔天(富士大3年)投手 185/80 左/左 (向上出身) 





                     「数少ない先発型左腕」





 ドラフト戦線においては、なかなか将来プロの先発でやって行けそうな左腕は見当たらない。そういった意味では、18年度の候補のなかでもこの 鈴木 翔天 はそういったタイプに属する貴重な存在。


(投球内容)

 静かに足を引き上げて来るタイプで、典型的な自分の「間」を重視した先発タイプのゆったりとしたフォームである。

ストレート 140~MAX146キロ 
☆☆☆★ 3.5

 ボールを置きにゆくようなフォームのために、球速ほど速くは感じられない。それでもコンスタントに140キロ台を記録し、時には140キロ台中盤に到達します。それほど細かいコントロールはないのですが、右打者の内角を厳しく突いたり、指にかかって低めに集まりやすいなどの特徴があります。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆★ 2.5

 基本は、スライダーと速球とのコンビネーションで投球を組み立てます。ただしそのスライダーが高めに抜けたりとか、甘く入って来ることも少なくありません。カウントを取ることはできても、コースに投げ分けたり甘くないゾーンに集められない点は気になります。たまにもっと緩いカーブ、あるい右打者の外角に小さく逃げながら沈むチェンジアップ系の球があります。その他縦に落ちる、フォークなどもあるように見えます。まだ絶対的な球種があるようには見えませんが、奪三振率は非常に高い投手です。

その他

 牽制は結構鋭いものがあり、走者の踏み出しを封じることができます。ただし気になるのは、クィックを全く使わない点。あえてこれでも投球を成り立たせているわけですが、プロを意識するのであれば、いつまでもこのままだとはゆかないでしょう。

(投球のまとめ)

 特に細かいコントロールがあるわけではないのですが、四死球は少ない傾向に。また何か凄い球があるようにも見えないのですが、奪三振は非常に多い印象があります。ただしこれがプロ目線で見た場合に、本当にプロでもこのような投球ができるのか?と言われると疑問は残ります。

 ゆったりとした先発タイプではありますが、プロのローテーションを任されるほどの器かどうかという判断になろうかと思います。幾ら適性があっても、能力自体が劣っていたらそのチャンスが与えられるとは限りませんので。できれば先発左腕の不足しているチームに進まれることを期待します。


(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、彼の可能性を考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 お尻はバッテリーライン上に残りがちで、身体を捻り出すスペースは充分に確保できていません。そういった意味では、カーブやフォーク投げるには適していないように思います。

 また「着地」までの粘りも充分とはいえないので、身体を捻り出す時間は不十分だと言えます。そのため今後も、武器になるほどの変化球を修得できるのかには微妙な気がします。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブはしっかり内に抱えられているわけではないので、両サイドの投げ分けはアバウトです。足の甲の地面への押しつけも遅くは見えるのですが、ボールが低めに集まることも多いので間にあっているのかもしれません。「球持ち」はそれなりで、指先でボールを操れるタイプの選手ではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻を落とせないフォームの割に、カーブやフォークも使います。それでも多くは投げないので、肘への負担は少ないのでは?腕の送り出しには無理は感じないので、肩への負担は少ないでしょう。けして力投派ではないので、疲労も溜めにくいと考えられます。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りがなく、打者としては合わせやすいはず。しかしそれでも身体の「開き」を抑えることができ、テイクバックも小さくすることで、打ちやすさを和らげています。

 長い腕は投げ終わったあと身体に絡むものの、あまり腕の振りには強く感じられません。この辺が、ボールを置きにゆくように見える要因か? これでは、打者の空振りを誘えるような球が投げられるかは微妙でしょう。またボールへの体重乗せは不十分なので、打者の手元までグッと迫ってくるような勢いや球威が感じられません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」と「体重移動」に課題を感じます。故障のリスクはそれほど感じられませんし、制球を司る動作も悪くはありません。しかし今後、武器になる変化球を修得したりできるかは、微妙だと言わざるえないでしょう。

(最後に)

 貴重な先発型左腕だけに、プロ側からの需要は高いだろう。ただし投球に訴えかけて来るものに欠けているので、上位指名候補かと言われると現時点では微妙だと評価しています。その辺の不安を、いかに最終学年での結果で納得させてゆけるかに懸かっている。ぜひ凄みはなくても、隙なしの投球で唸らせて欲しい。


(2017年 神宮大会)